平和エッセイ

スピリチュアルな視点から平和について考える

ハリケーン・カトリーナの影響(1)

2005年09月04日 | Weblog
今回のハリケーン・カトリーナによる被害は甚大のようです。被害にあったアメリカの皆さんが一日も早く立ち直れるよう、心からお祈りするものです。日本も近年、たびたび台風や地震に襲われていて、この災害は決して他人事ではありません。

今回の災害は、おそらくアメリカの、そして世界人類の動きの大きな転機になるでしょう。

まず、ハリケーン・カトリーナはアメリカの暗部を大きく暴露することになりました。

〇黒人差別問題

新聞報道は以下のように伝えています。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050902-00000015-yom-int
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米ハリケーン、絶望の黒人貧困層…ニューオーリンズ

 【バトンルージュ(米ルイジアナ州)=白川義和】ハリケーン「カトリーナ」に襲われた米ルイジアナ州ニューオーリンズが略奪の横行や救援の遅れで混乱を深めている。「まるで市街戦」「途上国の難民キャンプ並み」と表現される第二波の嵐は、米国の貧困と人種間格差の問題を表面化させた。

 州都バトンルージュの郊外に設けられた赤十字の救援施設で、ニューオーリンズから夫と逃れてきた福祉団体職員リリアン・フラビンさん(65)は「打撃を受けているのは貧しい人ばかり。彼らは家を失い、絶望している」と顔を曇らせた。

 フラビンさんの仕事は近所の貧しい人たちの支援。大半は黒人で、脱出する車もなく、市の避難命令を無視したという。毎月1日支給の生活保護をあてにしていたという見方もある。

 他の施設と同様、ここに身を寄せたのも大半が貧しい黒人たちだ。白人のフラビンさんは「見れば分かるでしょう。私たちは浮いている」とこっそり漏らした。

 ジャズ発祥の地ニューオーリンズは、黒人と貧困の街でもある。19世紀には米国最大の黒人奴隷市場があり、今も46万人の人口の3分の2が黒人だ。貧困層の割合は全米平均の約2倍で、両者は密接に重なる。貧困層は市内でも水害に最も脆弱(ぜいじゃく)な地域に暮らしていた。

 一方、白人の多くは事前に退避した。ニューオーリンズ郊外で会った1人は、大破した自宅を前に「これで寝室が造り直せる」と語った。白人の中間層は、保険をかけているから住宅損壊も黒人ほどにはこたえない。「災害は人を差別する」という言葉は今回のハリケーンに最も悲惨な形で当てはまってしまった。
(読売新聞) - 9月3日3時1分更新
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アメリカは、アフリカから大量の黒人を「拉致」してきて、彼らを奴隷として使い、その労働力で富を築いた国です。(インディアンからの土地略奪についてはここでは触れません)

日本の明治維新の少し前に起こった南北戦争で、北軍が勝ち、奴隷制は一応は法律上ではなくなりました。しかし、その後も社会的・経済的な差別は厳然として残りました。キング牧師が公民権運動を起こして、黒人差別と戦い、徐々に差別も少なくなってはいますが、いまだに白人との間に歴然たる格差が残っていることは紛れもない事実です。

今回のハリケーンによって最も大きな打撃を受けたのは明らかに黒人貧困層で、アメリカ南部がいまだに事実上の黒人差別から抜け出せていないことを暴露しました。

ニューオーリンズは「19世紀には米国最大の黒人奴隷市場」があった場所です。ハリケーンはこのトラウマをあらためて呼び覚ましたようです。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050903-00000311-yom-int
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米議会黒人議員グループ、ハリケーン救援の遅れを批判

 【ワシントン=坂元隆】ハリケーン「カトリーナ」の被災者に対する支援活動をめぐり、米議会の黒人議員で作るグループが2日記者会見し、被災者の大半を貧しい黒人住民が占めていることに不満を表明、支援活動をいっそう加速するよう政府に求めた。

 メリーランド州選出のイライジャ・カミングズ下院議員(民主)は、「(被災地で)生き残ろうと格闘している米国人の多くは有色人種だ」と述べたうえで、「歴史のなかで、2005年の大嵐と洪水で生死を分けたのは、貧困や年齢、または肌の色だけだったと言われるようになるのを許すわけにはいかない」と訴えた。

 その他の議員も、黒人の被災者を念頭に、ニューオーリンズ市内の避難場所になっていた競技場「スーパードーム」での生活環境が「奴隷のようだ」と指摘するなど、政府の救援活動が後手に回っていると激しい口調で批判した。

 一方、ブッシュ政権の黒人閣僚の一人で、アラバマ州出身のライス国務長官は2日、国務省内での記者会見で、黒人に甚大な被害が出たことを認めつつ、「今は皆感情的になっている」と話し、ハリケーンと人種問題を結びつけるべきではないとの考えを示唆した。
(読売新聞) - 9月3日19時35分更新
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アメリカ政府が、黒人が被害者だから救助に手を抜いているということはないでしょう。しかし、黒人がそのように受け止めるというところに、いまだに差別の構造がアメリカ社会に存続していると黒人が感じていることが示されています。

「スーパードーム」に収容された黒人たちの様子は、黒人にも白人にも、まさに19世紀の「奴隷市場」を思い起こさせました。

テレビに映るのは、ほとんど黒人難民ばかりです。これを見て、「まるでアフリカのようだ」と言うアメリカ人もいます。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050903-00000060-mai-int
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 発言の背景には、ハリケーンが接近した先月28日、同市が市民に避難命令を出したが、車を持てずレンタカー代金も払えない黒人を中心とした貧困層の多くが脱出できなかったことがある。これに連邦政府の対応の遅れが重なった形だ。テレビで報道される映像に出てくる避難民のほとんどが黒人で、キャスターが「まるでアフリカのようだ」コメントする場面もあった。
(毎日新聞) - 9月3日19時11分更新
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「まるでアフリカのようだ」には、黒人を同胞と見ることができない白人の差別意識が現われている、と言っては言いすぎでしょうか?

ニューオーリンズでは治安が悪化し、略奪が横行しているとのことです。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050903-00000002-jij-int
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救援遅れ、混沌深まる=無法集団封じ込めへ「戦闘開始」-ハリケーン被災地

 【ニューヨーク2日時事】米南部を襲ったハリケーン「カトリーナ」の被災地ルイジアナ州ニューオーリンズでは2日朝(日本時間同日夜)までに、州兵が続々と到着、ブランコ州知事は無法集団に対する「戦闘開始」を宣言した。しかし、住民の避難活動や救援物資の搬入は進まず、被災地の混沌(こんとん)は深まるばかりだ。ネーギン市長は「物資は一体どこだ」と連邦政府の対応にいら立ちをあらわにした。
 一方、市内では同日朝、化学工場で爆発があった。死傷者の情報はないが、工場は炎上、黒煙が上がっている。
 連邦緊急事態管理庁(FEMA)のブラウン長官は、略奪や銃撃に阻まれている救援活動の状況を「市街戦の様相」と形容した。一方、被災者が搬送されたテキサス州ヒューストンのアストロドームは、被災者の受け入れを打ち切り。後から到着した被災者が「たらい回し」にされる事態も発生している。 
(時事通信) - 9月3日1時2分更新
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「火事場泥棒」という言葉がありますから、災害時に盗みをはたらく不心得者が日本にもいることはたしかでしょう。しかし、阪神大震災以来の近年の大災害で、大規模な略奪行為が起こったということは、聞いたことがありません。

アメリカでは、地震などの災害の時だけではなく、時々略奪が起こりました。しかし、その背後には、貧困や差別による黒人の日頃の鬱憤があると考えられます。人種的な不満が、非日常の状況で爆発するわけです。

今回のハリケーンもまさにそういう状況を作りだしているわけです。

テレビで、スーパーを襲った黒人が、「俺たちには水も食べ物もない。ここには水も食べ物もある。なぜ奪ってはいけないのか」と叫んでいましたが、生きるか死ぬかという状況では、その気持ちもわかります。

もちろん、盗みはいけないことです。しかし、実際に外部からの救援物資が届かないのですから、市内にある商品の水や食べ物を被災者に開放し、所有者にはあとから費用を弁済する、という方法もとれたと思うのです。洪水につかった商品や冷凍のきかなくなった商品は、どうせ売り物にはならないのですし、いずれ腐るだけですから。

「市街戦の様相」とは、軍隊が同じ国民に対して銃を向けている状況です。イラクでやっていることを、米軍は自国内でもやらざるをえなくなっているというわけです。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050902-00000113-yom-int
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収まらぬ略奪、「暴動怖い」恐怖増幅…米ルイジアナ
 【バトンルージュ=白川義和】ハリケーン襲来から4日たった2日も、ルイジアナ州ニューオーリンズ市内の繁華街などで略奪行為が収まらず、治安の悪化に歯止めがかからない。

 同州のキャサリン・ブランコ知事は1日、「ニューオーリンズに到着した州兵300人はイラクから戻ったばかり。彼らは撃ち方も殺し方も知っている」と治安を乱す者に“宣戦布告”した。

 手口も大胆になる一方で、あるドラッグストアでは、フォークリフトでシャッターが壊され、略奪に遭った。AP通信記者が目撃したところでは、この店から出てきた初老の男性は、「私はキリスト教徒だから、こんなことはしたくないが」と言いながら尿漏れ防止パッドが必要なのだと言った。ある女性は「私は糖尿病だから」と言って、自転車で去っていった。歯磨き粉などを盗んだ男は、「これはみんな暮らしに必要なものだろう?」と語った。

 治安を担当するはずの警察も、被災した多くの警官が離職。「地区によっては20%減」と、CNNは伝えた。当局は当初、「生活必需品だから」と緩やかな対応だったが、略奪行為がさらに過激化し、盗んだ銃で武装した者らが、力ずくで水や食糧を略奪するに至って、凶悪犯罪として対処せざるを得なくなった。

 市内のキャナル通りでは、略奪者らが店舗の鉄のシャッターを壊し、衣類や宝石なども奪い始めた。大型スーパーのウォルマートでは、ショッピングカートに電子レンジやクーラー、包丁のセットなど、必需品とは思えない物品を満載して盗む光景も見られたとAP通信が伝えている。

 こうした無法状態に、カナダ人旅行者は「暴動が怖い。地元民が怖い。銃撃戦に巻き込まれるのではないか」と同通信に語った。子供はもちろん、一般市民も互いに疑心暗鬼になって、恐怖を増幅させている。

 ニューオーリンズ市のレイ・ネーギン市長は生存者捜索チームから警官約1500人を治安維持に振り向けたが、治安回復には到底間に合わない状態だ。
(読売新聞) - 9月3日0時16分更新
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「彼らは撃ち方も殺し方も知っている」とは恐ろしい言葉です。まるで、西部劇の時代に戻ったようです。