すると、聖母マリア寺院の鐘が鳴った。
真夜中 アントニオはベッドから起き 狂乱の叫びをあげた。 「何処だ、何処にいる。・・酒だ、酒だ。・・明かりをつけ、連れてこい。・・レオーネ、何処に隠した。彼女は俺のもの。・・裏切ったな、レオーネ。・・ あの娘は俺のものだ。・・まだ、死んではおらぬ。・・レオーネ、 まだ、生きている。・・あの娘は 俺の・・」
ミガは船室に横たわったまま。
友人のレオーネ中尉は 狂乱する友を ベッドに連れ戻し、落ち着かせようとした。 だが、 瀕死の艦長アントニオは まだ、炎々と気が昂ったまま
W. Raabe :Die schwarze Galeere : Reclam ebd. S.44f.
1831年、北ドイツはブラウンシュヴァイク生まれのラーベは、生涯に68編の長短編を書いた。
この短編は30歳の時の初期の作品で、時は1599年、歴史的にはカトリックのスペインと プロテスタントのオランダとの抗争が 背景にあり、この16世紀大航海時代の覇者スペインの支配下から、独立、解放に向けての中の一挿話が 物語の内実となっている。:
一つはスペイン軍の二人の青年が 対照的に書かれる。 一人は30歳のドリア号艦長のアントニオ、 もう一人は彼の友人で、 部下の中尉レオノーレ。この二人の人間関係と行動が描かれた。
そして、一方では、それにまつわり、支配下のオランダの若き許嫁ヤンとミガの苦難と希望、信頼に満ちた恋愛が描かれた。
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