難聴者の生活

難聴者の日々の生活から、人工内耳など難聴者のコミュニケーション、聴覚障害者の制度改革について語る。

企業にいる難聴者と職場への支援プログラム

2008年09月21日 00時45分45秒 | 就労
080920-支援センター115853.jpg今日は、聴覚障害者就労対策委員会だった。

聴覚障害者の就労問題を具体的に解決しようと、ろう団体、難聴者団体、手話通訳、要約筆記者団体、その他の関係団体も加えて、公開セミナーや学習会を開催してきた。
聴覚障害者自立支援センターでは、聴覚障害者相談支援事業を各区市から委託を受けようと説明に回っているが、そうした取り組みから聴覚障害者を雇用している企業から研修のニーズがあることが分かってきた。

これは、厚生労働省やハローワークなどが行う企業の障害者雇用人事担当者向けの研修ではなく、聴覚障害者と聴覚障害者の配属されている職場の管理者や同僚向けの研修だ。

企業から見ると、ろう者、難聴者にどう接して良いか分からない、なぜ言ったことが伝わらないのか、どうしたら聞こえないことを乗り越えて仕事をしてもらえるか悩む日々だ。
逆に、ろう者、難聴者から見ると、どうして言われたとおりにやったのに怒られるのか、手話を使ってくれるのはありがたいが会議の通訳は無理、どうして通訳を付けてくれないのか、どうしたらスキルを身につけることが出来るのか、皆が話していることが分からず不安、寂しいという不満を抱えている。

080920-商和稲荷120807.jpgこれらは相互理解が不十分なことに起因するが双方にばかり攻められない。聴覚障害は障害者自身が周囲に分かるように説明できない障害だからだ。

委員会では、聴覚障害者の配属されている上司や同僚に対する研修と聴覚障害者に対する研修をそれぞれのプログラムで行う必要がある、自立支援センターで企業向けの研修事業として、採算もとれるようにしよう、テキストは助成をもらって作ろうということになった。

研修の名称は「聴覚障害者との協働研修」を提案した。聴覚障害者を雇用している企業にたいして、配属されている職場の人たちと聴覚障害者が対象者だ。


ラビット 記
東京聴覚障害者自立支援センター玄関
とセンター近くの商和稲荷神社








ラミレスの通訳は「影」 要約筆記者も影。

2008年09月20日 22時26分29秒 | 要約筆記
080920-ラミレス210245.jpg巨人が阪神を9対1で下して、とうとう1ゲーム差に追いついた。

試合後のお立ち台のインタビューで初回にホームランを打って試合の流れを作ったラミレスが出た。アナウンサーとラミレスの間に見慣れない男がいた。通訳だったがテレビのカメラワークは終始ラミレスを映していて、通訳はほとんど陰になっていた。

これは好ましかった。主役はラミレスだ。

要約筆記者は主役の「影」でなければならない。そうでなければ主役の力も魅力も発揮できない。主役を押し退ける存在感を示す要約筆記者はまだいる。


ラビット 記






話し言葉の要約筆記

2008年09月20日 22時13分16秒 | PHSから
080915-155024.jpg人はコミュニケーションする生き物だが、言葉だけでコミュニケーションしているわけではない。表情や立ち位置、服装、髪型、手の動きなども含めて、コミュニケーションしている。

金田一秀穂という国語学者の「新しい日本語の予習方法」を読んでいたら、コミュニケーションにおいて、言葉の占める割合は3割くらいとある。敬語の研究は、言葉のみでなく相手との位置関係やその他の情報を合わせて分析するようになっているという。

とすると、その場で話された言葉をそのまま文字にするだけでは伝わらないことが多いということだ。
聞こえない人と話している人のコミュニケーションを成立させるということは話された言葉をそのまま文字化するだけでは伝わらないことが想像できる。

要約筆記が「通訳」」であるということは、その場で話し言葉の意味(メッセージ)を伝えるからだが、その話されている環境、視覚的な情報も含めて、あるいは話されていない情報も含めて要約筆記者が再構築した言葉(メッセージ)を文字で伝えるということだ。
話された言葉をそのまま書かなくても、全部書かなくても話し手のメッセージを伝えるのだ。

もちろん推敲された原稿がある学術的な発表など書記言語が元の話は要約しにくい。そのまま文字化すればよいが、目的からすればその原稿のコピーを入手することが望ましいだろう。
これは要約筆記というコミュケーション支援方法の問題ではない。その対象の特性の問題だ。
落語や階段などは声色、身体の向き、扇子と手ぬぐいを道具に見立てて話をするので、音声をそのまま文字化するだけでは面白さは伝わらない。

仮に、「なんか暑いわね」、「今日は暑いところをご参集いただき、ありがとうございました。」、「暑いから窓を開けましょう」、「今年の夏は暑かったので豊作が期待されるます」。
「暑い」という環境が話し手と聞き手が共有しており、主題ではない時、「書かない」選択肢もある。書かないことが主題を浮かび上がらせる。これも通訳の力だ。

全文か要約か、自ずと答えは出ている。


ラビット 記




アンジェラ・アキの「手紙 15歳の君へ」 難聴だった15歳の頃

2008年09月20日 21時57分26秒 | エンパワメント
080918-手紙232351.jpg080918-手紙232425.jpg一昨日、木曜日の夜、NHKでアンジェラアキの「手紙」が今年の中学校合唱コンクール女声の課題曲になって、各地の学校で予選に臨む様子が放送されていた。
http://www.dailymotion.com/swf/x692yl&related=1&autoplay=1,1,560,425

その歌の内容にもアンジェラの声の聴きやすさにも思わず引き込まれて聴いていた。
初めて人工内耳の音楽モードを使ってみた。ちょっとピーキーなダビンチと一緒だ。

ちょっと、このところ精神的に苦しい時期だったので、余計想い入れを持って聴いていた。
親しい人から心配や気遣いのメールもあって、思い切って話していた。
その日の午後、自分が何をすべきか、何でこんなに苦しい想いをしていたのか見えてきた。

問題が見えてくれば、その解決手法はいろいろある。


自分の15歳は中学三年生。その前年に担任の岡部昌子先生が補聴器をつけることをじゅんじゅんと諭してくれ、難聴のコンプレックスだった自分がどうしてかよくわからないが、こっそり詰め襟の学生服の中に補聴器をして登校した。
HRで補聴器をした自分をめざとく発見した先生は前に立たせて補聴器をしてきたことを誉めてくれた。皆に補聴器は難聴者が使う機器でメガネと同じ感覚を補償するもので恥ずかしいものではないことを説明してくれた。
自分の障害受容はこの日がターニングポイントだった。


>いい歌だよ。涙が出るくらい。
>
手紙  作詞・作曲 アンジェラ・アキ

拝啓 この手紙読んでいるあなたは
どこで何をしているのだろう
15の僕には誰にも話せない
悩みの種があるのです

(中略)

いつの時代も悲しみを避けては通れないけれど
笑顔を見せて 今を生きていこう
今を生きていこう

拝啓 この手紙読んでいるあなたが幸せなことを願います

みんなのうた(英語の詩がついている) 
http://jp.youtube.com/watch?v=McQNAEK8xAw

歌詞全文はこちらから
http://www.uta-net.com/user/phplib/Link.php?ID=70553
歌ネット
「歌ネットはストリーム形式にてJASRACの許諾を得て運営しておりますので、歌詞の印刷行為を禁止しております。」→画面上で見て下さい。


ラビット 記





汗と人工内耳。補聴器。

2008年09月19日 23時06分23秒 | 補聴器

人工内ィの汗.jpg補聴器の汗.jpgちょっと歩けば汗をかく。風呂上がりに面白そうなテレビがあっても見られない。汗だくだくで補聴器を付けられないからだ。

人工内耳に水滴が着く。その都度拭き取るが大丈夫か不安になる。補聴器も同じ状態だ。

ひと頃の補聴器は汗でよく故障した。補聴器のコードが汗で固くなり、被覆の裂けた銅電が錆びて緑青がふいているのはよく見られた。

全埋め込み人工内耳も開発されているらしいから、汗問題とはおさらばできそう?!


ラビット 記







NPO難聴者協会の広報戦略

2008年09月15日 00時12分58秒 | 生活

補聴器相談会.jpg新聞に織り込まれていたコミュニティ・フリーペーパー(地域無料宣伝紙)に、「聞こえの健康無料相談会」と「補聴器の試聴会」のチラシが折込まれていた。

難聴者協会が10月に開く「難聴者の集い」で補聴器相談や医療相談を実施するので、どこの団体が行うのかと思ってみたら近所のスーパーに入っている眼鏡屋さんだった。

協会の集いのPR方法の検討を広報担当に依頼している。これまでは難聴者協会の会員に対しては「協会ニュース」やサークル、専門部を通じて呼びかけたり,地域の難聴者団体,聴覚障害者関係団体に参加を呼びかけてきた。他にも、新聞のローカル版に案内を載せてもらうよう各紙に依頼していた。

今回の難聴者の集いは、地域福祉が見直しを迫られている時に、会員でない難聴者への支援を地域での関わりを強めることで展開出来ないかと考えて開かれる。

集い機器相談.jpg社会に難聴者は非常に多いがほとんど難聴者協会とつながりがない。大勢いる難聴者は社会にただ散在しているのではなく、高齢者施設や補聴器店、病院、その他に難聴者は「リンク」している。
集いのチラシは初めてカラーで制作する。地域の社会資源と会場周辺に織り込み,ポスティングで配布する予定だ。

NPO法人の難聴者協会の使命を果たすための広報戦略(マーケティング)も試される。


ラビット 記



NHKのIP配信番組のアクセシビリティは?

2008年09月14日 23時39分53秒 | 放送・通信
080803-202829.jpg080914-NHKIP232450.jpgNHKが12月よりIPで番組の配信をするという(朝日新聞9月14日付け)。

著作権処理に多くの経費をかけて処理したとある。しかし、アクセシビリティの対応をどうしたのか、記事にはない。
過去の字幕放送の字幕データが使えるのか、PCでの視聴だけなのか、クローズドキャプション方式で見られるのか。字幕放送機能のあるデジタル放送テレビに接続してみるのか、説明が足りない。障害者権利条約に署名した政府の総務省もきちんと指導すべきではないか。

視聴料に聴覚障害を持つ理由の割引は不要だ。障害の有無に関わらず、コンテンツにアクセスできるようにするのがNHKの社会的使命ではないか。

天下の朝日新聞も記事の掘り下げ方が浅い。次回の記事に期待したい。


ラビット 記




デジタル補聴器の音は遅延する?

2008年09月14日 20時10分49秒 | 補聴器
080910-125105.jpgダビンチは、人工内耳と合わせて聞くにはとてもフィットした。しかし、もう2年くらい前に生産中止している。メーカーにも在庫はなく、市中在庫のみという。

後継の最新機種を同じようにセットしてもらって、聞いたがかなり聞こえ方が違う。メーカーの担当者が一所懸命調整していたが不思議がっていた。

人工内耳と一緒に聞いている時に「横から」何か聞こえた。初めは何の音か分からなかった。話すと横から何か音がするのだ。目の前で何を話しているのかさっぱり分からず、これは聞こえないと言って返してしまった。

後で聞くと、デジタル補聴器の遅延ではないかという。入力された音がデジタル補聴器で処理されて出力されるまでにタイムラグがあるということなのか。
確かにデジタル補聴器を付けた右耳から聞こえた。人工内耳より音が遅れて聞こえるということなのだろうか。音質の違いがそう聞こえたと思っていたが。
これはきちんと確認したいが今のダビンチは調整不足を感じるが「ズレ」は感じない。また、新しい課題か。


ラビット 記




病院の文字の呼び出しは難聴者のため?

2008年09月14日 19時56分41秒 | 生活
2008914195647.jpg080914-193938.jpg規模の大きい病院の呼び出しは文字で示されるようになっている。しかし、呼び出された後は、聞こえないといっても戸惑うか、大きな声を出すだけだ。
これは、文字表示で呼び出すのが聞こえない人のために導入されたシステムではないことを物語っている。文字表示すれば何度も声で呼び出す必要がなく、呼んだ呼ばれていないというトラブルをなくすためのものだ。

回転すしチェーン店でも受付は客が入力し、待ち時間が自動で表示されている。ご丁寧に呼んだがいなかった人の番号まで表示されている。

文字表示されて、一見バリアーがなくなったかのように見えるがその意味が理解されなければ意味がない。
文字表示システムのバリアフリーとその後の接客対応も啓発しよう。

ここの回転寿司は希望のネタはマイクにしゃべるシステムなので応答が聞こえないとお手上げだ。いつも紙に書いて店員に渡すことにしている。
病院は、筆談ボードを持参して書いてもらおう。実際に使ってみることで理解されるし、対応方法も学んでもらえる。


ラビット 記




レポートの締め切りが!聴覚障害者の受講保障。

2008年09月14日 12時15分01秒 | 社会福祉の学習
080903-124628.jpg通信教育の後期スクーリングが近づいてきたので、日程を選定して申し込んだ。
さらに、要約筆記の費用の負担を依頼するファックスを送った。前期は、学校の返事は手配をすることは出来ないというものだった。理由も検討の経過の説明もなかった。
しばらくして、「学園から手配することは、申し訳ございませんが難しい状況です」と返事があった。今回も、理由も検討したかどうかの説明もない。

前回のスクーリングで、最前席に座られた初老の男性がいた。イヤホンの着いた薄いブルーの箱型の機器をしきりにいじっている。聞くと補聴器だという。私以外にも難聴の受講者がいたのだったのだ。

難聴に限らず、様々な障害を持ったものが社会福祉を学び、資格を持って当事者支援サービスや施策形成に関わることは重要だ。
こういう資格を得るためのあるいは地域コミュニティの中に専門知識を持ったボランティアリーダーやコーディネーターを養成する学校法人だ。
その社会的使命のために学校法人としての様々な支援を得ているはずだ。その施設が障害を持っている受講者に対して、学習保障の負担をしないといことは差別にあたるのではないか。
なるほど、補聴器対応のワイヤレスマイクの使用や前方の席の確保などの受講に伴う配慮はしてくれるが費用の負担は頑として鼻から受け付けない姿勢はいかがなものだろうか。

障害を持つ生徒、学生に対して、学校側が入学や通講を許可するが他の生徒と平等に扱うため、特別な配慮はしませんということが多い。これは、何もしないという時点で差別に当たる。
コミュニケーションの障害を持つものの支援は言葉による支援、要約筆記や手話通訳、音訳者などが必要だ。いずれも周囲の状況に応じて、音声や文字、視覚情報を文字、手話、音声で伝えるという「通訳行為」を行う人が必要だ。物理的な位置の配慮だけでは解決されないのだ。

学校関係者も毎日利用しているだろう駅のエレベーターやエスカレーターは交通事業を経営する事業者が社会的役割を認識して費用を負担して設置している。車いすの乗客が利用する際には社員が誘導や補助をしたり階段昇降機の操作をしたりする。つまり人的支援もしている。

教育権は学校教育だけではなく、社会教育、職業教育も含まれることを学んだ。障害者権利条約は障害を持つものは誰しもその権利を奪われない。教育はインクルージョンが基本理念だ。もちろん学校教育だけではなく生涯教育も対象にしている。
本学園の受講は学校法に規定された法人が行うれっきとした学校教育だ。

学園は、聴覚障害を持つものに通訳者の派遣費用を負担すべきだ。


レポートの締め切りを失念したと焦ったが、よく見たら、来月だった。

ラビット 記
写真は、国立身体障害者リハビリテーションセンター




人工内耳とイヤホンで聞く

2008年09月13日 17時56分42秒 | 人工内耳
050707-人工内耳イヤホン092800.jpg人工内耳には、オーディオ出力を受けるためのアダプターがあるが、出力コードもアダプターもない場合は、イヤホンを人工内耳のアンテナに付けても聞こえる。

最近のイヤホンは磁波が強いのでアンテナを通じて直接聞こえている感じだ。
アンテナの磁石とイヤホンのスピーカーの磁石でぴたっと付く。
飛行機に乗る時のイヤホンを人工内耳に付けてみた。


ラビット 記




デジタル放送の声の遅延? 読話

2008年09月11日 08時53分08秒 | 生活
080909-213642.jpg政権党の総裁が突然辞任すると表明したために、テレビ放送は総裁選挙報道一色だ。

生放送の政治ニュースにも字幕が着くようになった。これは、総務省の視聴覚障害者向け放送の行政の指針に複数の人が同時に話さない場合の生放送も対象にしたからだ。

ともあれ、画面を見ていると声と口の動きがずれていることに気が付いた。デジタル放送の画面は圧縮された画像データを伸張させるのに時間がかかり、リアルタイムでなくなっていることはアナログテレビと同時に見ていると分かる。
しかし、口の動きが声とずれている。見ていると声が遅れているようにもみえるが???だ。

政権党とはいえ、一政党の総裁選挙投票者のたかだか数百人のために公器であるテレビの電波を使うのはいかがなものか。


ラビット 記




難聴者の知らない社会音 シートベルト警告音

2008年09月10日 01時56分35秒 | 生活
20089101576.jpg車に乗ってエンジンをかけると。ピーピー音がする。何かとダッシュボードを見たら、シートベルトの記号が点滅している。シートベルト着用の警告音だった。

人工内耳のマップと補聴器を新しくしてから、初めて気が付いた。

何件もの相手先に送信するファックスを送り続けている会社のコピー兼用機の電話の鳴動音も結構うるさいし、机のパソコンの壊れているファンの音も騒がしい。


ラピッド 記




宴会の要約筆記の代わりに筆談

2008年09月09日 20時17分26秒 | 就労
080829-195832.jpg080906-筆談165304.jpg勤務先の本社で「○○を検討する会」として、夜召集がかかったので、要約筆記を依頼しようとしたが、上司から宴席なので止めて下さい、自分がフォローするからと言われた。

気持ちはありがたいが実際には無理な話なので、筆談ボードと人工内耳の機能を使って対応することにした。

遅れて席に着くなり、専務に歳を聞かれた。若いと言われるが定年後のコース選択を来年には答えなくてはならない歳だ。苦労が足りないものでと話す。

隣の課長と何について話をするか考えたが、健康、子育て、天気、酒という定番の話題から、そう言えば課長の子供も幾つになったのかと子育てについて聞いたところ、兄弟二人の性格が全く正反対と言う。これは筆談ではなく、読話と人工内耳のビーム機能で、「子供」、「性格」、「大変」と言っているのが分かったので、それは我が家も同じだと相づちを打つことが出来た。こうした話題はどこの家でも同じなのだ。

部屋に入るって着席する前に、管理部長に皆に聞こえるように「明日の災害帰宅訓練は本当に歩くの?」と、話題を振った。本社から工場まで20キロを帰宅訓練として歩くのだが6時間近くかかる。この企画の立案者が管理部長で、翌日予定されていた。
格好の話題提供となったようで、ひとしきりその話に花が咲いた。自分から話題を出せば、てんでに話されてもそうずれない(「た」を修正)話が出来る。もっともその場をとりなすだけで、皆の談笑に入れないのは悲しい。

いつもバッグに入れてある筆談ボードを使って、専務に話しかける。上司がいかに派遣社員に親しまれているか、ボードに書く。上司と自分と部下の日頃の仕事の状況をイラストにして表す。専務が笑って何か言っているが分からないのでこちらも笑って誤魔化すしかない。部下と上司が話して合わせている。その間は、目の前のほとんどないものを箸でつついて、酒を飲み続けるしかない。

仕事がらみでちょっと提案ぽいことを話したが、相手の言うことが分からないので会話がリレーにならない。仕事の話も出来ず、心に空洞が広がる。

お開きになって、外へ出ると雨だった。皆の傘に入っても聞こえないので声もかけなかった。しばらく待っていると店員が傘を貸してくれた。
サラリーマンは企業の中でコミュニケーションが大切だ。聞こえなくてもノミュニケーションも楽しみたい。要約筆記者の派遣が受けられないなら、自費でもと思ったりしたが。

この宴席の要約筆記のことで、ずーっと心に重石が乗っている。


ラビット 記