障害者放送協議会著作権委員会では、改正著作権法の持つ問題を打開するために、緊急に著作権問題の集会を行おうとしている。
障害者の権利条約で著作権が障害者の著作物のアクセスを制限しないように定められているにも関わらず、聴覚障害者や他の障害を持つ人のアクセスが十分保障されていないためだ。
河村宏委員が、10年前の著作権問題の院内集会で私たち障害者が著作権問題をどのようにとらえていたか、語っている。
ラビット 記
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10年前の集会は、既に著作権法37条に明記されていた視覚障害者の点字と録音による情報アクセス保障のための権利制限に続いて、ネット会社と著作権者のリアルタイム字幕配信をめぐる聴覚障害者抜きの「交渉」や当時はまだあった講演者による手話通訳拒否等の聴覚障害者にかかわる問題と、Print Disabilityと総称されるLDや上肢障害、知的障害、脳外傷等の読みの障害についての権利保障も著作権法に明記させようと言う意図で持たれました。詳しい記録はリハ協のWebサイトにあると思います。
集会後6か月の交渉の結果として、37条にリアルタイム字幕の配信を一定の条件を満たす団体について政令で指定して認める線で権利者に権利制限を認めるほか、点字のネット送信も権利制限をして認めるという線で合意すれば最短時間で法改正するという文化庁の案が示され、放送協議会でずいぶん議論した結果、「視覚障害に続いて聴覚障害も権利制限の対象であることを法律に明記させることで、障害者の運動で一般法である著作権法も改正できるという実績をまず作り、引き続き著作権法が不備なために情報アクセスが保障されていない他の障害分野にも権利制限を適用させる運動を強める」という合意に達しました。
当時著作権委員会の委員長としてこの合意を取りまとめさせていただいた私として
は、視聴覚障害以外の団体の皆さんが、この妥協に応じた後も、いわば自分たちには直接関係しない法案と政令の交渉に常に同席して連帯を示されたことに感動を覚えると共に、改正著作権法が施行されたらただちに視聴覚障害以外の分野にも権利制限を拡張する活動を展開する責任を負っているという思いを抱きながら運動を進めていたことを記憶しています。
それから10年が経ち、やっとすべての障害について具体的に情報アクセスが妨げられれば著者の権利を制限することができる枠組みが見えてきました。問題は、この新しい枠組みを活用して今までできなかった情報アクセスが保障される可能性があるすべての人々がこの新しい枠組みを活用するにはあと何をするべきかです。そしてすべての障害分野が権利制限の共通の土俵に立ったうえで、一丸となってよりよい方向を目指すべく、皆で床を一段高くする作業が、来年1月1日の改正著作権法施行と権利条約批准に向けて必要です。
そのように考えると、今の時点で井上委員長が提案する国会議員会館内集会は大変重要で、これまでの著作権法に明記されていなかった障害分野を重点にできるだけ障害者本人か直接支援する家族・支援者等から現在抱えている情報アクセスの困難と改正著作権法への期待を語っていただき、文教科学委員会(著作権法)、内閣委員会(国立国会図書館)、予算委員会の国会議員・秘書に重点的に参加を呼び掛けて、来年の国民読書年がこれらの切実な声にきちんと応えるものであるように訴え、政令のパブリックコメントが、今までよりも一回り大きな国会内外の取り組みになるように構成するのが良いと考えます。
その上で、来年2月に予定される放送協議会の集会は、新しく運動に参加される団体
も共により高い目標を掲げて運動をすすめられるのではないでしょうか。
問題はタイミングですので、遅くとも11月下旬までにはこの集会を成功させる必要があると思います。
河村