難聴者の生活

難聴者の日々の生活から、人工内耳など難聴者のコミュニケーション、聴覚障害者の制度改革について語る。

テレビ放送の障害者アクセシビリティが拡大するために

2006年10月25日 22時56分55秒 | 生活

南天の実?10月23日、総務省は「デジタル放送時代の視聴覚障害者向け放送に関する研究会」を開催した。

1)放送法で障害者、高齢者を含むすべての国民が放送にアクセスする権利があることを明文化すること
2)その実現のために、字幕放送、手話放送、解説放送ごとに数値目標を持ったガイドラインを設定すること
3)ガイドラインの実施状況をモニタリングする機関を設定すること
などが出された。

これまで、放送法に第3条4項に、解説放送、字幕放送を「出来る限り多く放送しなければならない」とあるが、字幕放送こそかなり前進したが、解説放送と手話放送は殆ど増えていない。その理由は何かについて言及しないまま、「できるだけ」では拡充は進まないと思われる。

デジタル放送の障害者のアクセスも、何か根本的な問題を避けて、技術的、コストの面だけ取り上げられているような気がする。某局の字幕制作費は年間7億円に上るそうだが、放送事業者の年間売上高からするとゼロコンマ以下の%と思われる。この数字が果たして合理的配慮を越えるのか。
放送法で明確に義務付ければ、字幕制作費も明確に出演者の出演料や制作プロダクションに支払うの制作コストの一部になる。

ラビット 記


インターネット放送番組へのアクセシビリティは?

2006年10月25日 22時49分47秒 | 生活
総務省が23日、IPTVフォーラムの発足をWEBで公開した。IPTVとは、インターネットでテレビの放送番組など配信される「通信」だ。最近は、日本でもギャオが無料動画配信で会員数を急増させ、ヤフーや大手のブロードバンド業者が競って、動画コンテンツを充実させている。アメリカでも、グーグルが動画投稿サイトのユーチューブを買収したとか、今後巨大なメディアに発展しつつある。

くしくもこの23日は同じ総務省の「デジタル放送時代の視聴覚障害者向け放送に関する研究会」の第1回目が開かれた日だった。
この研究会で、聴覚障害者団体からの意見で、放送のバリアフリーについて、放送ではないが、上記のIP放送のアクセスも検討されなければならないと話されたばかりだ。

IPTVフォーラムの中では「放送番組その他コンテンツをIP配信する際の、受信機開発等に必要な技術要件や、運用に関わるルールについて、利用者の利便性、端末開発のフィージビリティや市場競争力、配信されるコンテンツの製作者・権利者の事情等に配意しつつ、関係者間の意見交換等が実施」とされているなら、そのアクセシビリティについても十分検討されなければならない。
アメリカのアメリカオンライン(AOL)のビデオ番組の配信に字幕がつく実験が始まっている。WGBHという障害者のメディアアクセスを研究しているところが技術供与している。わが国も、見習うべきだ。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0607/22/news003.html


IPTVフォーラムには、障害者団体が委員に入っていない。今後要望を強めたい。

ラビット 記
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IPTVフォーラムの発足
http://www.soumu.go.jp/s-news/2006/061023_2.html



難聴遺伝子検査の同意書 医療倫理との絡み

2006年10月25日 20時34分14秒 | 生活
岡山大学医学部耳鼻咽喉科教室の遺伝性難聴ホームページに、遺伝子検査に協力を求める説明と同意書の案が掲載されている。
このホームページには、厚生労働省の遺伝子研究に関わる倫理問題のガイドラインも紹介されている。
難聴者にとって、その治療は願望であるが、難聴に関わる遺伝子の存在の有無、治療、予防のためにその遺伝子を操作するということについては、慎重に考えなければならない。
難聴になりやすい遺伝子があったとして、染色体からその遺伝子を取りのぞいたり、その遺伝子が発現しないように精子や卵子を選別するのだろうか。
2001年5月14日に更新されたままだが、その後どこまで研究が進展しているのか公開して欲しい。

京都大学の伊藤壽一教授らは、内耳の有毛細胞の再生を促進させるたんぱく質を活性化させる、あるいは再生を妨げているたんぱく質の機能を抑制するために、遺伝子治療を行う可能性があると、最近出版された本※の中で紹介している。内耳再生に関する公開シンポジウムも行われている。
これは、たんぱく質の機能を変えるための遺伝子操作のようで、岡山大学の難聴に関する遺伝子治療のアプローチとは違うと思うが専門的にはどうか良く分からない。

いろいろと医学が発達する過程で、治療を受ける難聴者側の倫理に対する考え方も求められるのだろう。

※「難聴Q&A―発達期から老年まで600万人が悩む シリーズ・暮らしの科学 (25)(伊藤壽一先生・中川隆之先生共著」
http://star.endless.ne.jp/users/kagari/genomu/report/index.html

ラビット 記
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難聴研究のための遺伝子検査の説明および同意書(新案)
http://www.okayama-u.ac.jp/user/med/oto/hhhjpn/hhhsub4.html

難聴になる病気のなかには,原因のわかっていないものがたくさんあります。しかし,原因不明の難聴の一部で,難聴をおこす「遺伝子」が,最近みつかってきました。「遺伝子」の研究は,難聴の原因を明らかにして.治療や予防に役立てることを最終的な目標として行っています。なお一層の難聴遺伝子の解析と治療法の開発のためには、難聴であるご本人やご家族にご協力いただくことが必要です。検査の結果により、倫理的、法的、社会的問題が生じる可能性があります。これには、将来の発病に対する不安、就職、結婚などへの影響、家族の中での不安などが考えられます。こうした不安や相談したいことがある場合に対して、遺伝カウンセリング部門を設置しておりますのでカウンセリングを受けることが可能です。
あなた(試料提供者)は難聴の強い遺伝的素因を有している、あるいはその可能性があると判断しており、本研究の利点と不利な点をよくご配慮の上、ご協力いただきたいと考えております。以下の項目をお読みいただき、難聴研究のための遺伝子検査の試料を提供されることに同意される場合は、同意書に御署名下さい。
(以下、略)



松江市のコミュニケーション支援事業の理解不足

2006年10月25日 13時44分03秒 | 要約筆記事業
松江市は、18年3月31日の松江市告示第217号で「松江市聴覚障害者コミュニケーション支援事業実施要綱」を定め、4月1日から実施している。

第8条に、費用負担が無料と明記されていることから、厚生労働省の主管課長会議でもこの実施要綱が配布された。これは、現在の制度を後退させないという国会審議の際の厚生労働大臣の答弁にも沿うものであるし、当局も市町村が決めることではあるが、現行通り無料で続けることになると言っていた。

しかし、手話通訳者が派遣されるのに、要約筆記者ではなく、要約筆記奉仕員になっているのは、残念だ。
厚生労働省の実施要綱では、「要約筆記者」を派遣することになっており、その要約筆記者に要約筆記奉仕員があたることになっている。
これは、要約筆記者が、これまでの要約筆記奉仕員ではないことを示している。しかし、国は要約筆記者養成・研修事業の実施要綱も出されておらず、要約筆記者養成通訳課程のカリキュラムが発表されていない段階ではやむをえないのかもしれないが、来年度の事業実施前に改正をして欲しい。

要約筆記奉仕員の派遣事業は厚生労働省の通知で行われており、法律で実施されていたわけではなかった。しかし、障害者自立支援法では第77条第2項で市町村の必須事業として、実施主体が市町村と法律に明記された。
また、2000年の社会福祉基礎構造改革による関係八法が改正され、権利擁護の事業として手話通訳事業、要約筆記事業などが社会福祉法人第二種事業として追加された。この法定化されたこと、支援費制度のスタート、グランドデザイン案の発表、障害者自立支援法の成立の流れを見ると、要約筆記事業は行政の責任による権利擁護の事業でなければならなかったのだ。奉仕員事業ではその責任を持ち得ない。

このことを、全難聴は福祉医療機構の助成事業で「要約筆記者制度への転換」の報告書で明らかにした。行政は、要約筆記「者」事業になった意味を十分理解して欲しい。

タイミングが合わなかったが、次年にはその他の市町村も含めて、要約筆記者派遣事業として実施して欲しい。

ラビット 記

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松江市聴覚障害者コミュニケーション支援事業実施要綱

(目的)
第1条 この要綱は、松江市聴覚障害者コミュニケーション支援事業(市長が、手話通訳者等又は要約筆記奉仕員を派遣し、聴覚障害者等のコミュニケーションの支援を行うことをいう。)の実施に関し、必要な事項を定めることにより、事業の円滑な実施を図り、聴覚障害者の自立と社会参加を促進することを目的とする。

(定義)
第2条 この事業において「聴覚障害者等」とは、身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)第15条第4項の規定により身体障害者手帳の交付を受けた聴覚障害者又は音声若しくは言語機能障害者で、松江市に住所を有する者をいう。
2 この事業において「手話通訳者等」とは、次の各号に掲げる者をいう。
(1) 手話通訳者 平成元年厚生省局長通知第91号で定める手話通訳技能認定試験に合格した者又は島根県が行う手話通訳者養成講習会を修了し、かつ、統一試験に合格した者で島根県又は松江市に登録した者をいう。
(2) 手話奉仕員 島根県又は松江市が実施する手話奉仕員養成講習会を修了した者で、島根県又は松江市に登録した者をいう。
3 この事業において「要約筆記奉仕員」とは、島根県又は松江市が実施する要約筆記奉仕員養成講習を修了した者で、島根県又は松江市に登録した者をいう。

(中略)

(費用負担)
第8条 本事業に係る利用者負担は、無料とする。

(以下、略)



国連障害者権利条約の採択と日本の批准

2006年10月25日 12時52分31秒 | 福祉サービス
国連の障害者権利条約の草案が8月25日の特別委員会で採択された後、起草委員会で条約文の再検討が続いている。
この検討が長引きそうなので、今秋の総会の採択は難しく、来年の3月の総会になるのではないかと言われているそうだ。

JDFでは、JDFとしての条約案の解釈を外務省、内閣府、関係省庁に示して行くことが大事だと議論している。確かに、文字情報の提供の中に要約筆記が含まれることは、担当官からは聞いているが、きちんと文書で確約を取るためにも必要だ。

また、条約案の批准をすれば終わりではなく、国内法の整備、障害者者差別禁止法の制定の展望、自治体の差別禁止条例の制定の取組み、社会規範の確立などが先だ、これが整備されないうちは批准をさせないくらいの構えが必要ではないかという議論が行われている。

国際条約は、憲法の下だが、国内法の上にあるので、批准すればそれを盾に国内法などの整備を迫っていくものだと思っていたが、そうではなく批准するために国内法の整備を迫るということらしい。
確かに、難聴者等にとって、障害者雇用に関する諸法律、公職選挙法も放送法などは改正が必要だ。あらゆる法律の点検が必要になる。

ラビット 記


アジア太平洋障害フォーラム第2回総会のバンコック声明(仮訳)

2006年10月25日 12時24分04秒 | PHSから
国連障害者権利条約の草案作成の際にも大きな貢献をしたアジア太平洋障害フォーラムの総会がタイのバンコックで開かれ、声明を発表したものをJDFから紹介された。

ラビット 記
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アジア太平洋障害フォーラム第2回総会・会議2006
テーマ:共同の取り組みを通した権利に基づく開発
バンコク声明(仮訳)

UNESCAP(国連アジア太平経済社会委員会)、タイ障害者協議会並びにタイ王国政府の多大な協力により開催された、第2回アジア太平洋障害フォーラム(APDF)総会・会議2006の我々参加者は、2006年10月16日および17日にタイのバンコク国連会議場に参集した。

我々はここに以下のことを主張する。

1. 障害と開発は密接な関係があり、切り離すことが出来ず、権利に基づくものでなければならない。この目標達成のためにすべての関係者は共同して取り組まなければならない。

2. 国連総会で、ひとたび国連障害者権利条約が採択されれば、アジア太平洋域内の国と政府は、条約に署名し、批准と施行に向けて積極的な行動を取らなければならない。また、条約のすべてのテクストは、草案の脚注に述べられているように、あらゆる言語において解釈される余地を残してはならない。誤解を生じないようこの脚注は削除されなくてはならない。

3. BMFとBMF+5のターゲットと目標到達のために継続的な取り組みが必要である。それにはBMF+5の同定される主要領域に注意を向けることが含まれる。特に、しばしば認められず、無視されがちな障害をもつ人たちのニーズに注目する必要がある。中間年での評価は、21のターゲット到達に向けた進展を詳細に反映させ、また、UNESCAPと共同で行わなくてはならない。
評価は参加型プロセスを経る方法で行われ、障害者とその団体に主眼を置き、政府とNGO両者からバランスの取れたインプットを確実にする。
  
4. 障害者とその所属団体は、国家政策や法律の立案、開発、実行並びに評価において、重要なパートナーでなければならない。

5. 権利に基づく資源分配を確実にし、障害者の現状を反映させるために、より多くの適切なデータ収集のための更なる取り組みが必要である。障害分野のデータ比較を可能にするために、(各国)共通に受け入れられる障害の定義の確立に向け、世界的およびアジア太平洋地域内における継続的な取り組みが必要である。
6.政府ならびにその他の関係開発機関は、開発のあらゆる側面に障害が含まれる政策を追求する必要がある。

7.すべてのアジア太平洋域内政府は、障害のあるすべての子どもたちの教育を受ける権利を擁護し、障害のあるすべての子供たちの就学に全責任を持たなければならない。積極的な行動がインクルーシブ教育を実現させるためには必要である。政府はインクルーシブ教育の実現のために、障害のあるこどもの親の会、草の根の組織を含むNGOや障害者自助団体と協調する必要がある。障害のある子どもや若者たちの成長の可能性を認識し、また尊重する必要がある。

8.施設型や従来のリハビリテーション・サービスに代わるものとして、現在、アジア太平洋地域の多くのNGOの支援を受け、CBRと自立生活を含む、地域に根ざした取り組みの成功物語を我々は褒め称えるものである。サービスの維持継続のためには、当事者主導かつコミュニティ・ベース(地域ベース)の解決がはかられるよう政府は更に取り組む必要がある。

9.我々は、障害のある女性のエンパワーメントが遅々として進まず、障害コミュニティと一般の女性運動が協力して、また双方が継続して取り組む必要があることを留意する。女性障害者団体へのリーダーシップ育成と権利擁護に焦点をあてた支援が更に必要である。

10.メインストリームの社会において、障害者運動は、障害問題への認識、理解、関心を高めるためにメディアに影響を与え、メディアの力を利用できるよう力をつけなくてはならない。メディアは地方レベル、国レベル、地域レベル、そして国際レベルで活用される必要がある。障害問題は政治的配慮を受ける必要がある。

11.障害のあるこどもの親の会を含む、障害者団体、障害者支援団体は、アジア太平洋地域において、BMFおよびBMFプラス5のターゲットと目標を達成し、国連権利条約の批准と完全施行を実現させるために緊密に協働する必要がある。

12.訓練や雇用、収入創出を含む障害問題に対応するための提携や協同体制を築くために、パートナーや関係者の枠を広げる必要がある。これらの連携する団体は一般の国際的およびアジア太平洋地域のNGOやメインストリームで国際的およびアジア太平洋地域の開発機関、人権機関、多国籍企業などを含むが、これらに限定する必要はない。

                    2006年10月17日16時30分に採択