北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

平成二十七年度二月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2016.02.20/21)

2016-02-19 23:03:03 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 明日から大荒れの天候との予報、梅が咲く中寒くなるのか暖かくなるのか分かりにくい中、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 国産ステルス機X-2の初飛行は一部報道によれば、いよいよ来週に迫っていますが、最新の情報によればX-2を製造する三菱重工小牧南工場に隣接する小牧基地では、先週11日に地上滑走試験を実施して以降、今週は滑走試験を実施していないとの事でX-2の来週の初飛行までの去就に注目したいところです。

 今週末も自衛隊関連行事として、駐屯地祭や基地祭に航空祭等は行われません。まもなく年度末の自衛隊関連行事の時期となりますので、航空祭や駐屯地祭の季節となります、自衛隊関連行事はなし、と毎回のように掲載、例年の事ではありますが、もう少しだけのしんぼう、というところでしょう。

 海上自衛隊週末基地一般公開と艦艇広報についてですが、舞鶴基地、佐世保基地、呉基地、天候次第で変更となる場合があり、今週末の土曜日と日曜日は天候が荒れ模様となる予報がります、週末艦艇広報一般公開については各基地HPにて足を運ばれる前に最新の情報をご確認ください。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭


自衛隊関連行事はなし

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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キューバAGM-114ヘルファイアミサイル誤送問題、アメリカキューバ両国の協力で無事解決

2016-02-18 22:44:41 | 国際・政治
■第二次キューバミサイル危機
 第二次キューバミサイル危機、といえば言い過ぎですが、今月アメリカが2014年にキューバへ誤送していたミサイルが無事アメリカに返還されたという椿事がありました。

 誤送されたのはAGM-114ヘルファイア対戦車ミサイルで誤送先は経済制裁中で国交断絶中のキューバ、元々はスペインへ納輸送される予定のヘルファイアミサイルがフロリダ州からフランスのシャルルドゴール空港へ、そこから何故か手違いによりキューバのハバナ行の貨物機に載せられ、キューバ国内に入ったまま二年間交渉を続け返還が実現したものです。AGM-114ヘルファイアミサイルは我が国でも陸上自衛隊がAH-64D戦闘ヘリコプターの主武装として採用しているほか、海上自衛隊がSH-60K哨戒ヘリコプターに搭載し主としてミサイル艇駆逐用に運用している装備、射程は8kmでレーザー誘導により目標へ正確に命中、ミサイル本体は48kgとこの種のミサイルとしては大型で破壊力も大きい物です。

 ロッキードマーチンは誤送に気づきましたがキューバ当局が押収した後で問題は複雑化しました。AGM-114KヘルファイアIIが誤送されたものと考えられ、これは米国務省が今回のミサイル誤送事案について、“標的の探知能力などで慎重な扱いを要する”ものであったという発言から見てとれます。このK型は発射した航空機等が目標へレーザーを照射し、ミサイルがそのレーザー反射光を認識し目標へ突入するレーザー誘導方式を採りつつ、発射母機による目標へのレーザー照射が例えば敵の高射機関砲等の妨害によって中断した状況であってもミサイル本体のシーカーにより目標を再認識し命中するもので、半自動誘導方式ともいえる装備です。こんなものを誤送するとは、送られた方も驚きですが、まさに、事実は小説よりも奇なり。

 エールフランスが積み替えを行った際の手違いといわれ、アメリカ国防総省は、今回のミサイルが模擬弾であったとしていますが、航空祭などの地上展示に際し航空機へ吊るされる、搭載訓練用の擬制弾ではなく、発射機能を有しており弾頭部分のみを省き命中時に炸裂しない訓練弾を示すようです。訓練弾には炸薬を装填した場合、命中1発で標的を完全に破壊してしまうため、命中の都度標的を再度設置する必要がある事から、発射と誘導機能だけ実弾と同等の装備品が訓練弾として用いられ、スペイン陸軍は欧州共同開発のEC-665ユーロコプタータイガー戦闘ヘリコプターを装備している事からその訓練用のミサイルが誤送されたと分かるでしょう。

 2014年に発生した事案ですが、解決は2016年まで時間を要しました。これには、まずキューバとアメリカがキューバ革命以降国交断絶状態にあり返還交渉を行う窓口が無かった、という状況があります。他方でキューバは社会主義国であり、冷戦時代はソ連との非常に有効的な関係を維持しているほか、キューバから余剰兵器が北朝鮮へ輸出された事例がありました。この事案は2013年7月に発生したものでキューバから北朝鮮のへ向かうパナマ運河を航行中の北朝鮮船籍の貨物船をパナマ政府が麻薬密輸の疑いから臨検したところ、砂糖袋の下からMiG-21戦闘機2機とSA-2地対空ミサイルのレーダー部分が隠されていた、というもの。

 こうした事からアメリカ政府はキューバからヘルファイアミサイルが第三国へ技術流出する事を非常に警戒しており、中国や北朝鮮若しくはロシアなどに譲渡された場合、誘導方式を解析する事で妨害装置の開発や、新規のミサイル開発に転用される可能性があるとして返還交渉を続けてきました。ここで2015年7月1日にアメリカとキューバがキューバ革命以降断絶されていた国交を正常化する事が両国間で合意に至り、オバマ政権が残した外交的成果の数少ない成功例となりました。ここでキューバのハバナへアメリカ大使館が再開され、アメリカ政府はキューバ政府との間でヘルファイアミサイル返還交渉へ移る事が出来たわけです。しかし、第三国へ技術が流失すれば、我が国自衛隊も運用している装備ですので、妨害手段などを開発されたならば、他人事ではないもので、技術流失に繋がれば1976年のソ連MiG-25函館亡命事件に並ぶ深刻度です。

 キューバにミサイルで大騒ぎ、といいますと1962年のキューバミサイル危機、ソ連がキューバへ核弾頭と中距離弾道弾を持ち来んだ事でアメリカがキューバへ全面攻撃と、ソ連製ミサイルが使用されたならばソ連本土へも全面核攻撃を行う核戦争の瀬戸際となった事件を思い出しますが、今回はアメリカの誤送が原因でした。ヘルファイアミサイルの誤送から始まった国交斬絶中の二か国間を挟んだ事案は、こうして2014年の発生から2016年に解決したわけですが、過去には安い運賃にて重要貨物品を表記を隠し輸送した事で、輸送中にこれが発覚し大騒ぎとなった事例もありました。誤送というものは誰にでもありがちなミスではありますが、モノがモノですと大騒ぎとなりますので、日常の作業であっても手違いが起きないようにしなければなりません。

北大路機関:はるな くらま
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中国軍、南シナ海西沙諸島ウッディー島にHQ-9地対空ミサイル部隊展開 南沙諸島と並ぶ係争地

2016-02-17 22:04:11 | 国際・政治
■緊迫の西沙諸島
 中国軍が南シナ海の西沙諸島のウッディー島に地対空ミサイル部隊を展開させている事が判明しました。アメリカ海軍は航行の自由作戦としてこの海域へ海軍艦艇の航行を継続しており、先月末もイージス艦カーティスウィルバーを航行させています。

 紅旗9、HQ-9地対空ミサイルの発射装置8基とレーダーシステムが衛星写真により確認されたとアメリカ国内報道で報じられ、南沙諸島工島造成問題と共に東南アジア地域の海を更に不安定化させる問題となっています、HQ-9は中国国産の地対空ミサイルで射程は100km、広域防空用に用いられるものです、2009年にはトルコに輸出され、EMP対策等が実施されていないとして返品されましたが、ロシア版ペトリオットと称されるS-300地対空ミサイルシステムの技術を協力により得ており、射程が大きい点が特色です。

 ウッディー島は中国名で永興島、面積は2.1 km²です。具体的な大きさですが京都市中京区が7.41km²、概ね中京区の烏丸通と二条通に四条通と河原町通を結ぶ線、祇園祭の山鉾巡行で一周する内側の面積といえば分かりやすいでしょう、たぶん。ウッディー島は明朝の時代に鄭和が南海遠征に先んじ1405年頃発見したとの記録がありますが、無主地として1932年にフランスがインドシナの一部として領有、1941年に日本軍が占領し1945年より中華民国へ編入、1950年に国共内戦において大陸系武装漁民が占拠し、その後ヴェトナム軍が駆逐、1974年に中国海軍がここを攻撃し占拠、1988年に中国軍が空港と港湾施設を建設し、2012年に中華人民共和国国務院が三沙市を新設、正式に併合しました。

 ウッディー島は近接するロッキー島の間を中国が埋め立て陸続きとなっており、2700m滑走路を有する飛行場が建設されているほか、埋め立て工事が継続しており、その上で中国政府は中国漁民の定着政策を推進、現在、人民解放軍と法執行要員や軍属と建設労働者に漁民を加え1000名程度が居留しています。領有権問題ですが、海底に豊富な天然資源が舞い属している事が海洋調査により判明しており、島嶼部を領有化する事で排他的経済水域を拡張できる利点がある一方、1974年に南ヴェトナム海軍と中国海軍との間で西沙海戦が発生し、中国海軍の駆潜艇4隻及び掃海艇2隻と南ヴェトナム海軍の護衛駆逐艦1隻と哨戒艇3隻が交戦、南ヴェトナム側が敗北しています。この関係で現在のヴェトナム政府は領有権主張を継続、中華民国台湾も高雄市に属すると主張、係争状態は続いています。

 地対空ミサイルは先週に中国本土から搬入されたとされ、規模は二個大隊、この地域はASEAN諸国と日本を結ぶ重要なシーレーン上に位置し、西沙諸島はヴェトナムと中国が領有権を争う国際係争地域となっています、過去には中国軍特殊部隊がヴェトナム海軍警備部隊を襲撃し全滅させた事例や、海軍艦艇同士の機銃による海戦、昨年にもヴェトナム海洋警察の警備船へ中国公船が故意に衝突させ沈没させる事案が発生しており、地対空ミサイル部隊の配置はこの紛争を更なる武力紛争に発展させる危険性があるでしょう。

 西沙諸島と共に中国はその南でヴェトナムとフィリピンの中間部分にある南沙諸島においても実効支配を進めています。1988年に赤瓜礁海戦として中国海軍がヴェトナム海軍を攻撃、この際に占領した岩礁とサンゴ礁について2015年から埋め立て工事を本格化し、岩礁地帯であったファイアリークロス礁とスビ礁に滑走路を建設しました。南沙諸島はフィリピンがパラワン州の一部に、マレーシアがサバ州の一部として、ヴェトナムもカインホア省の一部として、中華民国は高雄市の一部として、加えてブルネイも領有権を主張している国際係争地域です。西沙諸島は南沙諸島への経路にある重要拠点となっており、今回の西沙諸島への中国軍ミサイル配備は、南沙諸島への戦力投射へ繋がる可能性があります。

 アメリカは繰り返しこの西沙諸島と南沙諸島での係争と軍事力の投射に対し懸念を示していますが、オバマ政権下では有効な措置を何も取ってきませんでした。南沙諸島での埋め立て工事ですが、本格化したのが2015年でアメリカ政府と研究機関は埋め立てに数年間を要すると考え静観する構えですが、大量の建設資材と人員を投入し数か月間で巨大な人口島を造成したほか、軍用飛行場として転用できる民間空港と称する航空施設を建設し、海軍航空部隊等を展開させています。中国政府は海洋自由原則という国際公序を尊重せず海洋の閉鎖化を志向する施策を継続的に展開している事から、東南アジア地域と我が国シーレーンへも影響が考えられます、特に中東から我が国への石油シーレーンは豪州大陸北方を迂回する事が可能ですが東南アジア諸国と我が国とのシーレーンは迂回できず、今後の施策と必要な措置について慎重に見極める必要があるでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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自衛隊とスーパーハーキュリースの可能性【5】 回転翼機支援にKC-130J空中給油輸送機の必要性

2016-02-16 22:58:01 | 先端軍事テクノロジー
■KC-130Jは必要な装備
 C-130H輸送機後継機としてのC-130J輸送機導入の可能性として数回にわたり視点を示してきましたが、今回はその最終回です。

 C-130は例えば航空自衛隊YS-11輸送機後継機という位置づけとして新規に導入は為されています。そして戦術輸送機以外の用途としまして例えばKC-130等航空救難団ヘリコプター空中給油用の航空機としての採用可能性は、充分考えられるでしょう。ただし、この場合大きな競合機となるのは同じC-130シリーズの予備機となるかもしれません。例えば海上自衛隊が導入したC-130Rなどは、元々が空中給油機で、アメリカ海軍で余剰となったKC-130R輸送機6機を東日本大震災での長時間運用にて酷使し機体寿命が限界となったYS-11輸送機後継機として補正予算により一括取得したものですが、その導入に際し海上自衛隊は当初新造機を要求したものの、限られた予算では適わず、余剰機取得となった背景があり、競合機に中古機の可能性は出てきます。

 C-130J派生型としての空中給油機にはKC-130Jが既にアメリカ海兵隊などにおいて配備されていまして、航空救難団ヘリコプター空中給油用の航空機としての運用適合性は高いものがあるのですが、併せて取得費用も大きくなっています、その分の能力向上も大きく、更に海兵隊に対してメーカーであるロッキード社はISR兵装キットを装備する事で対地制圧任務機としての運用も提示、これは30mm機関砲やJDAM精密誘導爆弾、更にヘルファイア等のミサイルを搭載する攻撃型で、落下傘強襲等の任務に際しても対地攻撃支援を実施可能な点を強調しています、対地攻撃任務と云いますと対地制圧機AC-130UやAC-130J等を連想される方がいるやもしれませんが、ISR兵装キットは攻撃専用機ではなく輸送機へ輸送任務との併用を念頭とした装備です。

 空中給油能力というものは、特に航空自衛隊が新たに導入するUH-60改ヘリコプターの給油用として必要な能力です。C-2輸送機を原型として救難ヘリコプター用の空中給油装置を装備するKC-2という選択肢や、KC-767空中給油輸送機にヘリコプター給油用装置を新たに主翼下に増設し、救難ヘリコプター支援用途に充てる、という選択肢も考えられなくはないのですが、C-2派生型のKC-2については機体が大型過ぎ、KC-767の転用方式については低速で飛行するヘリコプターとの巡航速度の差が大きな障壁となり現実的ではありません。他方で、空中給油は、陸上自衛隊が新たに導入するMV-22可動翼機に対しても必要となるでしょう。

 特にUH-60改に関しては空中給油受脂装置を標準装備していますので、航空自衛隊としてこのヘリコプターへ給油する航空機は必ず一定数が必要となる訳で、この意味から新造機か中古航空機か、は別としましてヘリコプターと同程度まで速度路落とすことができる空中給油輸送機が必要となることは間違いありません。また、航空救難支援任務へも、例えば輸送機は旅客機遭難事案等において海上捜索に低空飛行する能力を活かし投入された事例が昨年と一昨年の航空遭難事案において報じられていますが、滞空時間が8時間以上と非常に長い機体であり、長く捜索救難任務とその指揮に当たる事が可能で、こうした意味でも空中給油機と救難航空機の連携という必要性から維持される可能性は大きいといえるでしょう。また、何より輸送機を二機種同時調達する方式は財政当局からの視点から難しいでしょうが、ヘリコプター用空中給油輸送機という別区分の航空機としてならば、C-2輸送機の調達期間中で当ても取得する余地は出てきます。

 ISR兵装キットについて言及しましたが、今後航空自衛隊や陸上自衛隊が特殊作戦能力の投射を重視する、若しくは戦闘地域からの要員救出などを重視する場合、特殊作戦支援航空機としてISR兵装キットを搭載したC-130Jは、特殊作戦航空機としての運用に最適な航空機でもあります。特殊作戦用のC-130としては米空軍のMC-130が挙げられ、C-130に悪天候時での飛行に必要なAN/APN-147気象/航法レーダー、地形追随飛行に必要となるAN/AAQ-17FLIR赤外線航法装置、機体を敵の攻撃から防護するAPN-59Eレーダー赤外線ミサイル発射警報装置ALE-40チャフ・フレアディスペンサー、地上の特殊部隊員と連携するKY-75-SATCOM無線装置、携帯地対空ミサイルから機体を防護するQRC-84-02A対赤外線アクティブジャマー等各種機材を搭載し、特殊作戦支援に当たるもの。

 MV-22の巡航速度と航続距離はCH-47輸送ヘリコプターと比較し大きなものがありますが、元々MV-22は搭載量がCH-47よりも抑えられ高速飛行と行動半径の大きさを重視した航空機です、そしてそのMV-22も、数十m程度の短距離離着陸を行うのか、ホバーリングにより回転翼航空機として運用するかにより航続距離は変化し、その距離を大きくとればとるほど搭載量に影響が生じますので、空中給油支援を受けての飛行が理想ではあります、こうしますと航空自衛隊にはC-130系統の空中給油能力を持つ航空機の必要数というものが最低限ある事を意味します、このあたりがC-130J導入の可能性といえるかもしれません。

北大路機関:はるな くらま
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伊勢湾機雷戦訓練二〇一六 機雷戦艦艇一七隻の四日市港一般公開(2016.02.11) 後篇

2016-02-15 23:11:42 | 海上自衛隊 催事
■掃海隊群四日市港一般公開
 伊勢湾機雷戦訓練機雷戦艦艇一般公開の様子、本日は後篇を紹介です。

 ひらしま型掃海艇、OYQ-201情報処理装置を中心とする国産機雷掃討システムが漸く海外の第一線級の水準に達した事で建造された掃海艇で、前期型3隻を建造し後期型として新型に区分されますが船体構造を改めたものがあります、そして我が国最後の木造掃海艇となっています。満載排水量650t、国産機雷掃討器具S-10をはじめとした機雷掃討器具と掃海器具両方を搭載しています。

 S-10は従来の機雷掃討器具が搭載していなかったソナーを搭載しており、これまでは母艦となる掃海艇からソナー情報を得て運用されていましたが、S-10は自分でも機雷を探すことができる。また、すがしま型掃海艇はメーカーの説明によれば機雷探知用ソナーの性能から1200m先の機雷を探知できるとされていますが、S-10という機雷掃討器具そのものがソナーを搭載している事で、より掃海艇は遠くから機雷掃討が出来る、ということ。

 S-10機雷掃討器具は、バッテリー駆動も可能ですが母艦から電力ケーブルを得て長時間航行する事が可能で、PAP-104ではバッテリーにより駆動時間が制限されてしまうのですが、S-10には有線ゆえの長時間運用でき、そしてもう一つ機雷処分用爆雷をS-4やS-7にPAP-104では一発しか搭載できなかったのですがS-10は4発の機雷処分用爆雷を搭載し、四基の機雷を処分する事が出来ます、長時間運用故の性能といえるでしょう。

 ひらしま型掃海艇のS-10は、可変深度ソナーVDSの開発経験が応用されており、そのソナーの性能もかなり高いものがあります。また、すがしま型掃海艇では必要に応じ搭載されていました音響掃海器具や磁気掃海器具は、国産新型の機雷掃討システムが小型化に成功したことで常時搭載する余裕が生まれ、感応掃海具1型として音響掃海と磁気掃海を同時実施できる掃海器具を搭載しています。

 一方ひらしま型の上部構造物は、すがしま型掃海艇の艦橋前部に配置されていた可変深度ソナーとCICの並列構造を、CICのみとなり、張出した上部構造物という外観上の共通点はあるのですが、その規模が縮小しており、前方からの両型の識別点となっています、もっとも、双方の最大の識別点は煙突が一本か二本か、という部分が最も大きな識別点なのですが、ね。

 えのしま型掃海艇、ひらしま型掃海艇の船体を木造船体からFRP船体とした掃海艇です。木造掃海艇、といいますとこの科学文明の時代に木造か、と云われる方がいますが、機雷戦闘に対応する掃海艇は上記の通り掃海技術に限界がある為掃海艇そのものが触雷する可能性が残ります、すると、木造掃海艇であれば爆発の衝撃を受けても弾性を以て受け止める事が出来ます、複合素材ではそうはいかず、例えば楽器等もピアノやヴァイオリンがFPRで製造できないのもこのため。

 木造船体は、磁気を帯びないという利点があります、木材に磁石を近づけても鋼製船体のような反応は当然おきませんので磁気機雷に対し有利です。ただ、木材は船大工による名人芸というべき加工技術が必要となり、更に良質な木材が必要となります。えのしま型掃海艇は、海上自衛隊がこの木材と職人の維持へ限界を来した時代を想定しFRP製船体の研究を進めてきました技術の成果です。

 FRP製船体は木造船体に対して、温度変化持続と紫外線等により劣化し、突如割れる、という特性が当初指摘されていましたが、他に選択肢はありません。欧州ではドイツを中心に船体に微弱電流を流し磁気的に中和させ磁気機雷に備える軽合金船舶が開発されていますが、近年その微弱電流を感知する機雷が開発されており、結局添加剤と成形方式を工夫し海上自衛隊はFRP製船体を採用しました。

 海上自衛隊はFRP製船体よりも木造船体を重視していたのですが、財政上の問題があり掃海艇の建造もかつての毎年二隻から三隻建造出来た時代から掃海艇は機雷掃討システムの費用高騰を受け、三年間に二隻を建造できる程度となり、船大工さんが防衛需要だけで産業を維持できない状態ともなりました、このため新型掃海艇として、えのしま型はFRP船体を採用した訳です。

 えのしま型掃海艇ですが、FRP船体を採用した事で掃海艇としての寿命は30年に延びました、木造船体は機雷戦を展開する場合には利点が多いのですが木造故に劣化に曝されるため、長期間の現役運用には向きません。アメリカなどは苦肉の策としてオスプレイ級機雷掃討艇に木造船体上からFRP船体で覆う構造を採用していますが、海上自衛隊は切り替えた訳です。三番艇からは、管制式機関砲を搭載しました。

 以上の通り掃海艇を紹介してきましたが、海上自衛隊の機雷戦部隊の最大の至宝は訓練された乗員にあります。掃海艇気質、と云われるものは、競技会も休日返上で兎に角順位にこだわるという、旧海軍の駆逐艦乗り気質に通じるものがあり、護衛艦と比べれば小型であり波浪には動揺にも曝される艦艇ではありますが、長期間の航海に耐える気概があるという。

 海上自衛隊の掃海部隊は規模と能力共に高く、欧州のNATO諸国とのペルシャ湾多国籍訓練へも展開しています。この際に所用期間は往路袋共に一ヶ月の航海となり、NATO海軍では一部に台船を利用して掃海艇を運搬している事例もあるようですが海上自衛隊の気質では自分の船は自分で動かすもの、という認識があり一か月間の航海でも難なく遂行します。

 また、湾岸戦争後の機雷処分任務では新型機雷に悩まされましたが、海外製機雷戦装備とその後の新開発の国産装備を導入し能力水準を第一線水準とすると共に、国際訓練を繰り返すことで最新の機雷戦への能力構築を精力的に進めています。もちろん我が国周辺には中国とロシアという伝統的に機雷戦を重視する海軍が存在しており、能力は幾ら整備しても十分というものはありませんが、今日この瞬間も任務と能力向上に傾注しています。

北大路機関:はるな くらま
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伊勢湾機雷戦訓練二〇一六 機雷戦艦艇一七隻の四日市港一般公開(2016.02.11) 中篇

2016-02-14 21:56:18 | 海上自衛隊 催事
■自衛隊機雷戦艦艇一七隻
 機雷戦艦艇一七隻の四日市港一般公開、今回は掃海艇すがしま型、掃海艦やえやま型一般公開の様子を紹介します。

海上自衛隊の掃海艇は、1979年に一番艦が就役した掃海艇はつしま型の就役から大きな転換点を迎えました、機雷掃海方式として海上自衛隊は掃海具を曳航し係維機雷や磁気機雷と音響機雷を処分する方式に加え、S-4機雷処分具を搭載し掃海艇よりも前に位置する機雷を処分する機雷掃討能力を付与することとなり、機雷掃海から確実な機雷掃討へ転換した訳です。

はつしま型は満載排水量520tの木造掃海艇で、後期型と併せ実に32隻が建造されました。その中枢となるS-4掃海具ですが、初の国産機雷掃討器具として完成しました。機雷掃討器具とは掃海艇よりも前方の機雷を処分する一種の水中ロボットですが、前型に当たる掃海艇たかみ型は機雷掃海と水中処分員を乗せ、水中ロボットに代えて人間が危険な任務に当たりました。

水中処分員が掃海艇よりも前方に展開するという方式で機雷掃討任務に充てる苦肉の策を採っており、S-4機雷処分器具の搭載は文字通り海上自衛隊の掃海に革命的変化を及ぼしたものでした。機雷掃討は、掃海艇がソナーにより機雷を発見、この目標をS-4が航行し機雷処分用爆雷を投下し処分します。ただ、国産最初の機雷処分器具であったS-4にはカメラが搭載されておらず文字通り手さぐりでの機雷掃討を行います。

もちろん、S-4にはマジックハンドは搭載されていますが、感覚がないので手さぐりといっても方法はS-4のソナー探知映像を掃海艇が機雷探知ソナーにより追尾し機雷のソナー反応と重なった瞬間S-4から処分用爆雷を投下する、非常に不安な方式を採っています。この最初の実任務は多国間協同の実機雷掃海、ペルシャ湾掃海任務、ガルフドーン作戦でした。

1991年の湾岸戦争戦闘終了後、イラク軍が大量に敷設しタンカー航行に大きな不安要素となった機雷原の処理に関する有志連合による掃海任務へ海上自衛隊は掃海艇うわじま型を派遣しましたが、ペルシャ湾は海流が早く、そもそも海上自衛隊が任務として処分した第二次大戦型機雷よりもソナーへ反響が少ない新型機雷が大量に敷設されており、灼熱の中東の気候と併せ困難な任務でした。

S-4について、新型機雷へは併せて厳しい海底地形や潮流からソナー画像と掃海器具に依頼の影を重ねる方式では実際の対応が難しく、海上自衛隊は水中処分員を展開させ掃討する危険な方式を余儀なくされました。このため、より新しい機雷掃海器具を搭載し、我が国が有事の際に想定しなければならない最新の機雷へ対処能力を構築する必要に迫られました。

うわじま型掃海艇は、はつしま型掃海艇に続き建造されたもので新型掃海器具S-7を搭載していますジェーン年鑑では後期はつしま型に区分されるものですが、はつしま型掃海艇にS-7機雷処分器具を搭載したものです。S-4の能力限界はペルシャ湾派遣前に既に指摘されており、S-7は元々S-4の後継として開発が進められているものでした。S-4の限界は、浅海域に行動が限定されたことです。

S-7は中深度域での機雷掃討を可能とする装備です。S-4はカメラを搭載していませんでしたので、一定以上の水深に敷設された機雷へ対処する場合、距離が増大する事から掃海艇のソナーでの追尾が難しく、また機雷の真贋判定にもカメラの有無が響きます、しかし、水中処分員の潜水にも限度があり、中深度域に対応する機雷掃討任務用掃海艇の建造必要性を受け建造されました。

現在現役艇が残っている海上自衛隊掃海艇としては最古参のものとなりますが、9隻が建造されました。満載排水量570tの木造掃海艇で、S-7機雷処分器具からは水中TVカメラと超音波近距離ソナーが搭載され、掃海艇には新型の機雷探知ソナーZQS-3を搭載、機雷掃討能力が強化されており、湾岸戦争の時点では一番艇が就役直後の状態にありました。ただ、完熟訓練中であり、ペルシャ湾派遣が見送られた、というもの。

うわじま型掃海艇から機雷掃討任務が強化された背景には、機雷との戦いは狐との化かし合いに似ている部分があり、音響機雷も磁気機雷も、機雷に爆発するまでの感応回数を自由に設定する事が出来ます、二回三回と感知しなければ爆発しない機雷、十回二十回は我慢する設定とすれば、掃海艇が掃海器具を使い安全に通過して、その数回か十数回後に通行する船舶を撃破する事も出来るということ。

機雷との戦いは狐との化かし合いに似ているとは爆発までの感知回数を自由に設定できるためで、掃海器具を引っ張って通行できたのでこの航路は安全航路だ、と宣言するよりは、ソナーで機雷をひとつひとつ発見し、確実に爆破して処分することが理想といえるでしょう。多数の機雷が敷設された場合には相当には時間を要しますが、機雷敷設の手段が潜水艦や航空機が含まれ、一度に大量運搬できない為、大量敷設を隠密裏に行う事は難しくなりました。

やえやま型掃海艦は、うわじま型掃海艇の手の届かないところを掃海します。前述の沈底機雷ですが、物凄く深い所に敷設された場合どうするのでしょうか。そんな深い所を通る船は無いので安全、と思われる方が多いでしょうが海軍には潜水艦という水中の深い所を専門に航行する艦船がありまして、そして深い海底に設置し潜水艦を狙う深深度沈底機雷というものがあるのです。

そして普通の掃海艇では機雷探知ソナーをあまり深い所まで探知する事が想定されていません。やえやま型掃海艦は木造で満載排水量1200t、期せずして量産された木造軍艦としては現在世界最大の艦艇となるのですが、深海の機雷を探知するSLQ-32VDS機雷戦ソナーと深海の機雷を掃討するS-7/2型機雷処分器具を搭載、S-8深深度掃海器具なども搭載し、潜水艦の航路へ機雷を配置された場合に備えています。

やえやま型掃海艦、同型艦は3隻建造され、三隻そろって横須賀へ配備されていますが、後継艦は木造からFRP製掃海艦となりました。やえやま型が深深度機雷に対応し、うわじま型掃海艇が中深度機雷に対応、特に掃海艦を深深度機雷に対応させ、掃海艇は浅海面専用の掃海艇を全て中深度敷設機雷への対応能力を付与する、という二段構えの機雷掃討態勢を構築する事となりました。

すがしま型掃海艇は12隻建造された現在海上自衛隊の主力掃海艇です。はつしま型掃海艇はペルシャ湾においてS-4機雷掃海器具がカメラを有さない為に大変な苦労となりましたが、それだけではなく、対機雷システムにイギリスのNAUTIS-M情報処理システムを搭載したところにあります、ソナーが発見した目標を機雷かを標定し航路情報に併せ表示します。

国産に限界を考え、海外製に位置から教えを乞うたかたち。機雷掃討器具はPAP-104,フランス製の機雷掃討器具です。PAP-104はバッテリー式の機雷掃討器具で、搭載する機雷戦ソナーはイギリス製TYPE-2093ソナーとNAUTIS-Mを併用する事で1200m先の機雷を探知可能となっており、目標位置を同時追跡し一発の機雷だけではなく複数の機雷を標定可能です。

ただ、音響掃海と磁気掃海については、海外製掃海器具が機雷掃討に重点を大型化している為、常時搭載する事は無く、必要に応じ搭載する機雷掃討重視型という設計です。NAUTIS-Mを搭載する掃海艇すがしま型は、満載排水量590t、特徴的な外観、艦橋構造物の前に置かれた大型の張り出し部分にソナー部分の可変深度ソナーや機雷戦CICが設置されています。

上部構造物が大型化しましたが、加えて煙突部分を単一から二基並列型へ改める事で、二つの煙突の中央部から後方を確認できるように配慮されています、実際は其処まで利便性が高くなかったようですが上部構造物の大きさが本型の外見上の特色となっています、そして上部構造物の大きさはこの後に建造される海上自衛隊掃海艇の新旧識別点となりました。

すがしま型の大型の構造物はCICと可変深度ソナーなど器材と設備の大型化が挙げられるのですが、実は掃海艇は戦闘配置が全て上部構造物に集中し出来るだけ乗員が甲板に出る配置を採ります、護衛艦などの水上戦闘艦は見張り員等を除き基本的に艦内に入ります、潜水艦などは潜るときは全員艦内、というのは当然ですが、掃海艇が外に出る理由には、機雷に触雷した際、艦内にいた方が危険という運用上の必要性からで、浸水しても離脱が容易となるようCICも上部構造物に設けられたためというものです。

北大路機関:はるな くらま
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伊勢湾機雷戦訓練二〇一六 機雷戦艦艇一七隻の四日市港一般公開(2016.02.11) 前篇

2016-02-13 22:02:00 | 海上自衛隊 催事
■伊勢湾機雷戦訓練二〇一六
伊勢湾において今月1日から10日の期間、掃海隊群司令岡浩海将補指揮の下、伊勢湾機雷戦訓練が実施されました。

伊勢湾機雷戦訓練は、実際に訓練機雷を伊勢湾に敷設し、掃海艇が機雷戦システムを駆使し発見し処分する訓練で、訓練機雷を使用しての機雷敷設訓練と掃海訓練及び潜水訓練を行うもので、掃海母艦1隻、掃海艦3隻、掃海艇15隻、掃海管制艇2隻、実に21隻もの機雷戦艦艇、そしてMH-53掃海ヘリコプターも1機が参加する大規模な訓練です。

掃海母艦うらが型、うらが、ぶんご、が掃海隊群へ配備されています。満載排水量6800tの大型艦で掃海艦艇への支援や掃海ヘリコプターへの掃海器具支援と機雷敷設能力を併せて持つ母艦です。母艦の支援を受ける事で掃海艇は長期間の行動が可能で、遠くペルシャ湾へも片道一か月間の長期航海を経て任務に当たっています。また、災害派遣にも大きな能力を発揮しました。

四日市港、三重県のわが国有数の石油化学産業集積地でありコンビナートのが並ぶ特定重要港湾、その一角に並ぶ掃海艇の群れは非常に強い印象を残しました、なにしろ母艦1隻と16隻もの掃海艇が一カ所の埠頭に並び停泊する様子は、掃海隊群司令部の置かれる呉基地でも自衛艦隊司令部が置かれる横須賀基地でも、海上自衛隊護衛艦最大の母港である佐世保基地でも簡単には見る事は出来ません。

伊勢湾機雷戦訓練機雷戦艦艇一般公開、2月11日に四日市港において開催されました掃海艇の一般公開の様子を本日から紹介しましょう。掃海艇と掃海管制艇が16隻も並ぶ様子は壮観そのもので、海上自衛隊は伊勢湾機雷戦訓練と陸奥湾機雷戦訓練に錦江湾機雷戦訓練として毎年同様の訓練を実施した上で硫黄島機雷戦訓練として実機雷を用いた訓練を実施しています。

機雷は最も危険な脅威です、一発でも触雷すれば最新鋭のイージス艦でも航行不能となり、LNG液化天然ガスタンカー等を撃破すれば広範囲に被害が及びタンカーを破壊すれば広範囲の海洋汚染に繋がります、そしてその最大の脅威は威力もさることながら、被害が出るまで存在に気付かない点で、機雷戦部隊により掃海掃討を実施したとしても、全て破壊できたかは、次の被害により掃海が完全でなかったことが判明するまで分からない点です。

機雷の種類を見ますと、大きく係維機雷と沈底機雷に区別されます。係維機雷は機雷缶と係維器により海底に設置され爆発する部分のみが海中に鎖などで係留されている方式で、触発機雷という船舶に触れた事で爆発するものがあり一番安価で仕掛けるのも掃海も楽なものがあります。ただ、兎に角安価なものですから大量に敷設される可能性があり、係維索が切れれば危険な浮流機雷となり油断できません。

 沈底機雷は面倒なもので、船舶の機関音や推進音に反応し爆発する音響機雷、船舶が動くことで生じる水圧変化に反応する水圧感応機雷、船舶の鋼製船体が発する磁気に反応し起爆する磁気機雷、双方何れかに反応する複合機雷、があります。もう一段高価なものに魚雷を抱いて船舶が接近すると感知して魚雷を発射するキャプター機雷というものもある。

 イージス艦という千数百億円の艦船を機雷は一発で無力化し、タンカーを破壊すれば千数泊億円相当の被害を沿岸と海洋にもたらす機雷は、最も安価なもので数十万円、通常の航空機用爆弾を転用することでも生産でき、最貧国であっても大量に調達できるところにも機雷の脅威はあります。そして機雷敷設方法は、機雷敷設艦、航空機、潜水艦、自動車運搬船や改造漁船によっても出来るほど。

 第二次世界大戦ではアメリカは戦略爆撃機B-29を機雷敷設用に投入し、瀬戸内海や日本海沿岸を含む我が国港湾を海上封鎖し、対日飢餓作戦を展開、我が国は無条件降伏に追い込まれました。そもそも日本帝国海軍の掃海艇は駆逐艦を転用したものがあり、当時最新の磁気機雷に対し掃海艇で進出した場合、逆に掃海艇が先に機雷に撃沈されるほどの有様でした。

 掃海任務とは、掃海艇から、ぐおんぐおんと船舶音を擬した音響掃海器具を曳航して機雷が船舶が接近したと勘違いし自爆させ機雷を処分する音響掃海、曳航するびりびり掃海電纜という電磁線から磁気を発して機雷に大型船が接近したと勘違いさせ自爆させる磁気掃海、掃海器具を曳航して機雷缶と係維器を繋ぐ鎖を大型カッターにより切り離して浮上させ機関砲で直接射撃し処分する係維掃海具掃海、というものがあります。

 掃海は概ね掃海艇から引っ張る掃海方式で、これとは別に掃海艇の前にある機雷を掃海艇が進む前に処理する方式を機雷掃討という。機雷掃討は、掃海艇が曳航方式の掃海器具を前に配置する事が出来ないので、機雷を探すにはソナーが必要となります。この為、機雷戦ソナーと機雷掃討に必要な器具、水中ロボットと無ければ水中処分員という機雷を直接探して爆破する専門のダイバーを乗せる必要がある。

 戦後日本の海上防衛の始まりは、先ずB-29が敷設した機雷の処分、そしてそれ以上に我が国が本土決戦に備え敷設した大量の機雷を処分し、海上交通路を再開させ、飢餓状態から脱するところから始まりました、早く処分しなければ我が国が設置した係維機雷が老朽化し海流によって運ばれる浮流機雷となり広範囲に被害が及びます、機雷の爆薬はかなり長い期間活性状態を維持しますので油断できません。

 浮流機雷、意外なところでその単語が出てきます、1954年公開の映画“ゴジラ”でも次々と船舶がゴジラにより撃沈される状況を劇中の新聞が、浮流機雷か、と報じており、その深刻度は現代に映画を通じても伝えたといえるやもしれません。そして今日を見ますと、我が国周辺では朝鮮半島有事と台湾海峡有事で大量に機雷が使用されることとなりますので、浮流機雷が我が国海上交通路を脅かすこともまた確実でしょう。

 戦後日本はGHQの許可を受け旧海軍が大量に建造した一号型駆潜特務艇を掃海艇に転用、新たに創設された海上保安庁の航路啓開部へ掃海艇を集中配備し、ここから今日に至る掃海部隊、そして海上自衛隊が発足する事となりました。朝鮮戦争での掃海作業には当時国連加盟国でさえなかった日本が参加、北朝鮮軍の敷設した機雷へ触雷し殉職者も出ており、また航路啓開業務でも戦死者というべき殉職者も少なくありません。

 海上保安庁航路啓開部はそのまま朝鮮戦争における機雷掃海任務へも協力として派遣され、日米間の関係改善への象徴的な役割を担い、この事からアメリカ海軍部内へ日本海軍再建を支持する層を大きう広める事となったほか、国際公序への参画を強く示した我が国の姿勢は1950年のサンフランシスコ平和条約締結と1956年の国連加盟と、日本の主権回復へ大きな助力となりました。

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平成二十七年度二月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2016.02.13/14)

2016-02-12 22:43:46 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
国産ステルス機X-2、県営名古屋空港での滑走試験開始となり、世界中から注目が始まる最中如何お過ごしでしょうか。

 最初にお詫び。昨日2月11日、三重県四日市港にて伊勢湾掃海訓練掃海艇一般公開が行われました。当初は一般公開は抽選のみ、とされていましたが、四日市港岸壁はソーラス条約対象岸壁以外の岸壁に係留され、16隻もの機雷戦艦艇が並びました。抽選行事のため北大路機関広報の対象としませんでしたが、間近に見る事が出来たようで、ご紹介できなかったことをお詫びします。

 日曜日に北朝鮮が弾道ミサイル実験を強行、防衛省は我が国陸上と周辺海域へ落下する場合に備えミサイル破壊措置命令を発令していましたが、北朝鮮のミサイル実験とその終了宣告と共に解除となりました。これにともない、ミサイル迎撃部隊は撤収、イージス艦や地対空ミサイル部隊とその展開に協力した輸送艦も撤収しました。

 海上自衛隊週末基地一般公開と艦艇広報についてですが、舞鶴基地、佐世保基地、呉基地、天候次第で変更となる場合があり、今週末の土曜日と日曜日は天候が荒れ模様となる予報がります、週末艦艇広報一般公開については各基地HPにて足を運ばれる前に最新の情報をご確認ください。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

自衛隊関連行事はなし

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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そうりゅう型潜水艦輸出交渉 自衛隊潜水艦豪州海軍次期潜水艦選定への優位性 続

2016-02-11 23:44:18 | 先端軍事テクノロジー
■日本潜水艦高性能化の背景
 日本EEZは地中海の1.78倍として1月28日に掲載しました特集の続き。

 海上自衛隊そうりゅう型潜水艦の外洋航行能力の高さと、静粛性についてその高さが強調される事が多いのですが、実のところ最初からこのような潜水艦を建造する能力があった訳ではありません、海上自衛隊の潜水艦はアメリカ海軍のバーベル級通常動力潜水艦を範として建造した潜水艦うずしお型から、ゆうしお型、はるしお型、おやしお型と技術を積み重ねて建造し続けてきました潜水艦、という位置づけにあります、アメリカ海軍から海上自衛隊の潜水艦を評価する際に、バーベル級が通常動力潜水艦として発展し続けた、という事もあるのかもしれません 。

 バーベル級潜水艦ですが、1959年に一番艦が就役し、その最新技術が惜しみなく同盟国である日本とオランダへ提供されました、何故最新技術が提供されたのかという視点ですが、バーベル級潜水艦の整備時期に当たる1959年にアメリカ海軍は潜水艦の原子力潜水艦への統合を発表、スキップジャック級原子力潜水艦への建造へと移行します、バーベル級潜水艦もバーベルにブルーバックとボーンフィシュの三隻で建造終了となっており、その最新技術を持つものの、このまま通常動力潜水艦建造終了とともに失わせるには惜しい技術という背景がったのでしょう。

 アメリカが日本に提供したバーベル級潜水艦の技術について、その技術を受けて建造された潜水艦うずしお型は、海上自衛隊最初の涙滴型潜水艦として完成しました、技術提供を受けて一番艦就役の1968年まで、というものは建造期間に上乗せする技術研究の基幹としては例外的なほど早いといえるもので、前型あさしお型潜水艦については、従来型船体を採用しました、あさしお型潜水艦建造に際しても涙滴型船体の採用を検討したものの、一番艦建造が盛り込まれた1963年度予算の時点では技術不充分となっていました 。

 うずしお型潜水艦は騒音の大きい潜水艦、という誤解が、これはロシアが1990年代半ばに各国の潜水艦静粛性一覧表を示し、自国が輸出するキロ級潜水艦が如何に騒音が小さい潜水艦であるかを示した比較対象に、うずしお型が日本の潜水艦として提示されていたのですが、一番艦と初期の艦について、スクリューシャフトとその周辺部からガタピシ音と表現される独特の騒音発生があったことは確かです。

 潜水艦の騒音問題は、駆動部と船体の接触という建造時の不良と建造能力不足が大きな問題となっていました、水中は空気中よりも音の伝播性が高く、それだけ建造が難しかったことを意味しますが、ロシアが各国潜水艦静粛性一覧に、1960年代設計の潜水艦うずしお型を提示し、ゆうしお型、はるしお型、おやしお型を挙げなかった当たり、その後の日本潜水艦の静粛性を端的に表すのかもしれません。

北大路機関:はるな くらま
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自衛隊とスーパーハーキュリースの可能性【4】 C-2輸送機生産計画展望と二機種同時調達

2016-02-10 21:11:09 | 先端軍事テクノロジー
■C-2輸送機生産計画
 前回はC-130輸送機が有する不整地発着能力がC-1輸送機との運用の分水嶺であるとしました。

 C-130H輸送機後継機にC-130J輸送機が選定される可能性はあるのか、航空自衛隊が空挺部隊輸送をどの程度重視するのか、また路外発着を含めた不整地発着能力を今後増大する可能性がある特殊作戦群等の支援にどの程度考えているかにより、C-130J輸送機導入の可能性は左右される事でしょう、一方航空自衛隊の戦闘機部隊への補給物資輸送に不整地発着能力が重視される可能性は低いと考えます。

 何故ならば航空自衛隊には輸送機に不整地着陸能力がある現状でも、不整地発着を念頭に置いたジャギュア攻撃機や滑走路を必要としないハリアー攻撃機のような戦闘機を保有せず、故に従来型の輸送機が発着出来ない滑走路状況では戦闘機もまた発着不能となるのです。ひとつの可能性は方面航空施設隊の滑走路復旧能力を強化し、航空攻撃などにより滑走路が破壊された飛行場へ滑走路復旧部隊を空輸展開させる場合です、東日本大震災における仙台空港復旧支援を連想していただいても良いでしょう。

 ただ、空輸展開せずとも、航空施設部隊を陸上から展開した方が、所要時間は別として展開可能な車両数は多くなります。航空攻撃により滑走路が破壊される可能性は今後充分ありますが、基地までの道路が完全に破壊される可能性は、戦略核攻撃を唯一の例外として考えられません。しかし、周辺道路までもが被災した仙台空港復旧でも復旧支援任務の初動は松島基地からの自衛隊車両部隊と多賀城駐屯地などの陸上自衛隊災害派遣部隊の方が迅速でした。

 やはり、C-130H輸送機後継機にはC-2輸送機が最適という事となります。ただ、その場合にはC-2輸送機が45機程度必要となり、現行の生産計画を拡充しなければ所要を満たす事は出来ません。もっとも、現在の生産計画は当面、C-1輸送機の後継機所要であり、当面のところ後継機選定が行われていないC-130H輸送機後継所要を盛り込んだものでは無いことを忘れてはなりません。

 これはF-35調達計画の40機という数値と同じもので、F-4戦闘機後継所要のみを念頭としたものであるため40機という要求となりましたが、選択肢としてF-15J初期型の後継機もF-35以外の選択肢は無い為、40機という要求は暫定的であることが分かり、C-2輸送機についても同様に現在C-1輸送機後継機の所要のみを明示している為、増勢の可能性は残るという視点を忘れてはならないところでしょう。

 しかし、C-130H輸送機後継機としてのC-130J輸送機導入の可能性が皆無なのかと問われるならば、幾つか可能性があります。まず、C-2輸送機の胴体部分の問題が解決し予算面でも年間生産機数が増大、生産が急激に順調化し、更にC-130の構造延命などの措置が採られC-1輸送機代替完了からC-130H輸送機後継機選定までの期間に生産終了時期がある場合です。

 また、例えば輸送機以外の用途としてのC-130の能力、こちらは次回に示しますが評価された場合など。そして南海トラフ地震対策等、不整地着陸能力を持つ航空機が補正予算により別枠で認められる場合です、C-2輸送機取得予算に並行しC-130J輸送機調達予算が年度予算へ計上され認められるかは難しいものがありますが、陸上自衛隊MV-22導入の様に政治的背景から導入を求められる可能性はまだ捨てきれません。


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