北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

そうりゅう型潜水艦輸出交渉 自衛隊潜水艦豪州海軍次期潜水艦選定への優位性 続

2016-02-11 23:44:18 | 先端軍事テクノロジー
■日本潜水艦高性能化の背景
 日本EEZは地中海の1.78倍として1月28日に掲載しました特集の続き。

 海上自衛隊そうりゅう型潜水艦の外洋航行能力の高さと、静粛性についてその高さが強調される事が多いのですが、実のところ最初からこのような潜水艦を建造する能力があった訳ではありません、海上自衛隊の潜水艦はアメリカ海軍のバーベル級通常動力潜水艦を範として建造した潜水艦うずしお型から、ゆうしお型、はるしお型、おやしお型と技術を積み重ねて建造し続けてきました潜水艦、という位置づけにあります、アメリカ海軍から海上自衛隊の潜水艦を評価する際に、バーベル級が通常動力潜水艦として発展し続けた、という事もあるのかもしれません 。

 バーベル級潜水艦ですが、1959年に一番艦が就役し、その最新技術が惜しみなく同盟国である日本とオランダへ提供されました、何故最新技術が提供されたのかという視点ですが、バーベル級潜水艦の整備時期に当たる1959年にアメリカ海軍は潜水艦の原子力潜水艦への統合を発表、スキップジャック級原子力潜水艦への建造へと移行します、バーベル級潜水艦もバーベルにブルーバックとボーンフィシュの三隻で建造終了となっており、その最新技術を持つものの、このまま通常動力潜水艦建造終了とともに失わせるには惜しい技術という背景がったのでしょう。

 アメリカが日本に提供したバーベル級潜水艦の技術について、その技術を受けて建造された潜水艦うずしお型は、海上自衛隊最初の涙滴型潜水艦として完成しました、技術提供を受けて一番艦就役の1968年まで、というものは建造期間に上乗せする技術研究の基幹としては例外的なほど早いといえるもので、前型あさしお型潜水艦については、従来型船体を採用しました、あさしお型潜水艦建造に際しても涙滴型船体の採用を検討したものの、一番艦建造が盛り込まれた1963年度予算の時点では技術不充分となっていました 。

 うずしお型潜水艦は騒音の大きい潜水艦、という誤解が、これはロシアが1990年代半ばに各国の潜水艦静粛性一覧表を示し、自国が輸出するキロ級潜水艦が如何に騒音が小さい潜水艦であるかを示した比較対象に、うずしお型が日本の潜水艦として提示されていたのですが、一番艦と初期の艦について、スクリューシャフトとその周辺部からガタピシ音と表現される独特の騒音発生があったことは確かです。

 潜水艦の騒音問題は、駆動部と船体の接触という建造時の不良と建造能力不足が大きな問題となっていました、水中は空気中よりも音の伝播性が高く、それだけ建造が難しかったことを意味しますが、ロシアが各国潜水艦静粛性一覧に、1960年代設計の潜水艦うずしお型を提示し、ゆうしお型、はるしお型、おやしお型を挙げなかった当たり、その後の日本潜水艦の静粛性を端的に表すのかもしれません。

北大路機関:はるな くらま
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コメント (2)
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