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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

自衛隊とスーパーハーキュリースの可能性【3】 戦術輸送機へ求められる不整地離着陸能力の度合

2016-02-09 21:22:24 | 先端軍事テクノロジー
■戦術輸送機と不整地運用
 C-2輸送機よりもC-17中古機若干数とC-130Jを導入すべきとの指摘を受けその可能性を図る連載の第三回です。

 C-130H輸送機後継機にC-130J輸送機が選定される可能性ですが、航空自衛隊がどの程度路外離着陸能力と不整地運用を重視しているかによるものがあります、C-1輸送機に不可能ではあるがC-130輸送機には可能であること、これは滑走路以外の不整地への着陸能力、着陸した不整地からの離陸能力です。なにしろC-130輸送機は着陸装置が頑丈ですので平らな所ならば例えば習志野演習場のような場所を含め何処でも発着できる。

 C-2輸送機も未舗装滑走路や誘導路は可能であっても不整地発着能力は要求されておらず、降着装置特性からその能力は無いものと解されています。もちろん、C-2輸送機は短距離離着陸性能がC-1と同様に高く、前線飛行場や誘導路への着陸能力を有していますので、戦術輸送任務への能力は高く、またC-1輸送機以上に高い巡航速度性能を有し、戦域間輸送機としての能力は特筆すべき点を忘れてはなりません。

 そこでC-130J輸送機が航空自衛隊へ導入される可能性に不整地発着能力の重視度により左右されるであろう、と挙げた訳ですが、元々のC-130輸送機が何故不整地発着能力を重視したのかを理解する必要があります。元々C-130輸送機はアメリカ空軍による空挺部隊輸送任務を重点として不整地発着能力を重視したもので、これは第二次世界大戦中のグライダーによる車両空輸任務、当時は車両輸送を念頭とした輸送機が稀有であった為、車両輸送をグライダーに依存していた為で、この能力を戦術輸送機へも求めた事にあり、胴体着陸さえ設計に盛り込みました。

 戦術輸送任務には戦闘機部隊が展開する前線飛行場への戦闘支援物資継続的補給という任務と陸上作戦の支援任務という二つの要素が大きいのですが、アメリカは空挺軍団と空挺師団を維持し緊急展開任務を重視していた為、輸送機にも飛行場以外での理発着能力を求め、具体的にはC-130輸送機は、重量物を搭載し不整地の草原などに胴体着陸し重量物を卸下し、軽くなった機体を強力な油圧系統に依拠し車輪を強引に展開させ機体を持ち上げ、そのまま胴体着陸から回復し離陸するという離れ業も想定し、設計にも反映しています。

 C-1輸送機の発想は開発された時期の東海道新幹線に近いもので、輸送力を高めるには巡航速度をジェット化することで高め一日当たりの輸送本数を増大させる、というものでしたが、当時はジェット機により不整地運用を行う際、砂塵の流入防止機構を持った汎用ジェットエンジンに適当な機種が無く、ソ連が1971年に初飛行を果たしたイリューシンIl-76やアメリカの1963年に初飛行を果たしたC-141スターリフターなど、実現例も少ない。

 航空自衛隊ですが、不整地発着訓練を実施しているものの、舗装されていなくとも離発着する、という程度で、アメリカ軍がC-130輸送機に想定したような胴体着陸運用は採りません、実際、胴体着陸運用は機体を使い捨てとする覚悟が必要であり、15機のC-130H輸送機を装備する航空自衛隊において実施すれば、実任務は勿論、平時の訓練においても全損する機体が出かねません、1000機以上のC-130輸送機を装備したアメリカ軍だからこそ機体よりも優先する任務を念頭に機体寿命を大きく減退させ、場合によってはそのまま機体が破損する可能性があったとしても投入するとの選択肢があった、運用といえましょう。

 実際、C-46輸送機を運用中の時点では不整地発着運用そのものを行っていません、エンジン配置上C-46輸送機は胴体着陸すれば確実にエンジンを破損する低翼配置であるのですが、訓練体系として取り入れていないのです。ただ、丘珠飛行場等未舗装滑走路をもつ飛行場へ着陸実績は有り、更に元々C-46輸送機が設計された1930年代末には舗装滑走路よりも無舗装滑走路の方が一般的であったため、路外での運用、未舗装滑走路での運用と未舗装滑走路にある程度の障害物、通常の舗装滑走路よりも小石などが散乱する状況での運用がもりこまれていますので一概には言えないことですが、一方で航空自衛隊がC-130H輸送機導入以前に不整地発着能力を重視しなかったことは確かです。

北大路機関:はるな くらま
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