■掃海隊群四日市港一般公開
伊勢湾機雷戦訓練機雷戦艦艇一般公開の様子、本日は後篇を紹介です。
ひらしま型掃海艇、OYQ-201情報処理装置を中心とする国産機雷掃討システムが漸く海外の第一線級の水準に達した事で建造された掃海艇で、前期型3隻を建造し後期型として新型に区分されますが船体構造を改めたものがあります、そして我が国最後の木造掃海艇となっています。満載排水量650t、国産機雷掃討器具S-10をはじめとした機雷掃討器具と掃海器具両方を搭載しています。
S-10は従来の機雷掃討器具が搭載していなかったソナーを搭載しており、これまでは母艦となる掃海艇からソナー情報を得て運用されていましたが、S-10は自分でも機雷を探すことができる。また、すがしま型掃海艇はメーカーの説明によれば機雷探知用ソナーの性能から1200m先の機雷を探知できるとされていますが、S-10という機雷掃討器具そのものがソナーを搭載している事で、より掃海艇は遠くから機雷掃討が出来る、ということ。
S-10機雷掃討器具は、バッテリー駆動も可能ですが母艦から電力ケーブルを得て長時間航行する事が可能で、PAP-104ではバッテリーにより駆動時間が制限されてしまうのですが、S-10には有線ゆえの長時間運用でき、そしてもう一つ機雷処分用爆雷をS-4やS-7にPAP-104では一発しか搭載できなかったのですがS-10は4発の機雷処分用爆雷を搭載し、四基の機雷を処分する事が出来ます、長時間運用故の性能といえるでしょう。
ひらしま型掃海艇のS-10は、可変深度ソナーVDSの開発経験が応用されており、そのソナーの性能もかなり高いものがあります。また、すがしま型掃海艇では必要に応じ搭載されていました音響掃海器具や磁気掃海器具は、国産新型の機雷掃討システムが小型化に成功したことで常時搭載する余裕が生まれ、感応掃海具1型として音響掃海と磁気掃海を同時実施できる掃海器具を搭載しています。
一方ひらしま型の上部構造物は、すがしま型掃海艇の艦橋前部に配置されていた可変深度ソナーとCICの並列構造を、CICのみとなり、張出した上部構造物という外観上の共通点はあるのですが、その規模が縮小しており、前方からの両型の識別点となっています、もっとも、双方の最大の識別点は煙突が一本か二本か、という部分が最も大きな識別点なのですが、ね。
えのしま型掃海艇、ひらしま型掃海艇の船体を木造船体からFRP船体とした掃海艇です。木造掃海艇、といいますとこの科学文明の時代に木造か、と云われる方がいますが、機雷戦闘に対応する掃海艇は上記の通り掃海技術に限界がある為掃海艇そのものが触雷する可能性が残ります、すると、木造掃海艇であれば爆発の衝撃を受けても弾性を以て受け止める事が出来ます、複合素材ではそうはいかず、例えば楽器等もピアノやヴァイオリンがFPRで製造できないのもこのため。
木造船体は、磁気を帯びないという利点があります、木材に磁石を近づけても鋼製船体のような反応は当然おきませんので磁気機雷に対し有利です。ただ、木材は船大工による名人芸というべき加工技術が必要となり、更に良質な木材が必要となります。えのしま型掃海艇は、海上自衛隊がこの木材と職人の維持へ限界を来した時代を想定しFRP製船体の研究を進めてきました技術の成果です。
FRP製船体は木造船体に対して、温度変化持続と紫外線等により劣化し、突如割れる、という特性が当初指摘されていましたが、他に選択肢はありません。欧州ではドイツを中心に船体に微弱電流を流し磁気的に中和させ磁気機雷に備える軽合金船舶が開発されていますが、近年その微弱電流を感知する機雷が開発されており、結局添加剤と成形方式を工夫し海上自衛隊はFRP製船体を採用しました。
海上自衛隊はFRP製船体よりも木造船体を重視していたのですが、財政上の問題があり掃海艇の建造もかつての毎年二隻から三隻建造出来た時代から掃海艇は機雷掃討システムの費用高騰を受け、三年間に二隻を建造できる程度となり、船大工さんが防衛需要だけで産業を維持できない状態ともなりました、このため新型掃海艇として、えのしま型はFRP船体を採用した訳です。
えのしま型掃海艇ですが、FRP船体を採用した事で掃海艇としての寿命は30年に延びました、木造船体は機雷戦を展開する場合には利点が多いのですが木造故に劣化に曝されるため、長期間の現役運用には向きません。アメリカなどは苦肉の策としてオスプレイ級機雷掃討艇に木造船体上からFRP船体で覆う構造を採用していますが、海上自衛隊は切り替えた訳です。三番艇からは、管制式機関砲を搭載しました。
以上の通り掃海艇を紹介してきましたが、海上自衛隊の機雷戦部隊の最大の至宝は訓練された乗員にあります。掃海艇気質、と云われるものは、競技会も休日返上で兎に角順位にこだわるという、旧海軍の駆逐艦乗り気質に通じるものがあり、護衛艦と比べれば小型であり波浪には動揺にも曝される艦艇ではありますが、長期間の航海に耐える気概があるという。
海上自衛隊の掃海部隊は規模と能力共に高く、欧州のNATO諸国とのペルシャ湾多国籍訓練へも展開しています。この際に所用期間は往路袋共に一ヶ月の航海となり、NATO海軍では一部に台船を利用して掃海艇を運搬している事例もあるようですが海上自衛隊の気質では自分の船は自分で動かすもの、という認識があり一か月間の航海でも難なく遂行します。
また、湾岸戦争後の機雷処分任務では新型機雷に悩まされましたが、海外製機雷戦装備とその後の新開発の国産装備を導入し能力水準を第一線水準とすると共に、国際訓練を繰り返すことで最新の機雷戦への能力構築を精力的に進めています。もちろん我が国周辺には中国とロシアという伝統的に機雷戦を重視する海軍が存在しており、能力は幾ら整備しても十分というものはありませんが、今日この瞬間も任務と能力向上に傾注しています。
北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
伊勢湾機雷戦訓練機雷戦艦艇一般公開の様子、本日は後篇を紹介です。
ひらしま型掃海艇、OYQ-201情報処理装置を中心とする国産機雷掃討システムが漸く海外の第一線級の水準に達した事で建造された掃海艇で、前期型3隻を建造し後期型として新型に区分されますが船体構造を改めたものがあります、そして我が国最後の木造掃海艇となっています。満載排水量650t、国産機雷掃討器具S-10をはじめとした機雷掃討器具と掃海器具両方を搭載しています。
S-10は従来の機雷掃討器具が搭載していなかったソナーを搭載しており、これまでは母艦となる掃海艇からソナー情報を得て運用されていましたが、S-10は自分でも機雷を探すことができる。また、すがしま型掃海艇はメーカーの説明によれば機雷探知用ソナーの性能から1200m先の機雷を探知できるとされていますが、S-10という機雷掃討器具そのものがソナーを搭載している事で、より掃海艇は遠くから機雷掃討が出来る、ということ。
S-10機雷掃討器具は、バッテリー駆動も可能ですが母艦から電力ケーブルを得て長時間航行する事が可能で、PAP-104ではバッテリーにより駆動時間が制限されてしまうのですが、S-10には有線ゆえの長時間運用でき、そしてもう一つ機雷処分用爆雷をS-4やS-7にPAP-104では一発しか搭載できなかったのですがS-10は4発の機雷処分用爆雷を搭載し、四基の機雷を処分する事が出来ます、長時間運用故の性能といえるでしょう。
ひらしま型掃海艇のS-10は、可変深度ソナーVDSの開発経験が応用されており、そのソナーの性能もかなり高いものがあります。また、すがしま型掃海艇では必要に応じ搭載されていました音響掃海器具や磁気掃海器具は、国産新型の機雷掃討システムが小型化に成功したことで常時搭載する余裕が生まれ、感応掃海具1型として音響掃海と磁気掃海を同時実施できる掃海器具を搭載しています。
一方ひらしま型の上部構造物は、すがしま型掃海艇の艦橋前部に配置されていた可変深度ソナーとCICの並列構造を、CICのみとなり、張出した上部構造物という外観上の共通点はあるのですが、その規模が縮小しており、前方からの両型の識別点となっています、もっとも、双方の最大の識別点は煙突が一本か二本か、という部分が最も大きな識別点なのですが、ね。
えのしま型掃海艇、ひらしま型掃海艇の船体を木造船体からFRP船体とした掃海艇です。木造掃海艇、といいますとこの科学文明の時代に木造か、と云われる方がいますが、機雷戦闘に対応する掃海艇は上記の通り掃海技術に限界がある為掃海艇そのものが触雷する可能性が残ります、すると、木造掃海艇であれば爆発の衝撃を受けても弾性を以て受け止める事が出来ます、複合素材ではそうはいかず、例えば楽器等もピアノやヴァイオリンがFPRで製造できないのもこのため。
木造船体は、磁気を帯びないという利点があります、木材に磁石を近づけても鋼製船体のような反応は当然おきませんので磁気機雷に対し有利です。ただ、木材は船大工による名人芸というべき加工技術が必要となり、更に良質な木材が必要となります。えのしま型掃海艇は、海上自衛隊がこの木材と職人の維持へ限界を来した時代を想定しFRP製船体の研究を進めてきました技術の成果です。
FRP製船体は木造船体に対して、温度変化持続と紫外線等により劣化し、突如割れる、という特性が当初指摘されていましたが、他に選択肢はありません。欧州ではドイツを中心に船体に微弱電流を流し磁気的に中和させ磁気機雷に備える軽合金船舶が開発されていますが、近年その微弱電流を感知する機雷が開発されており、結局添加剤と成形方式を工夫し海上自衛隊はFRP製船体を採用しました。
海上自衛隊はFRP製船体よりも木造船体を重視していたのですが、財政上の問題があり掃海艇の建造もかつての毎年二隻から三隻建造出来た時代から掃海艇は機雷掃討システムの費用高騰を受け、三年間に二隻を建造できる程度となり、船大工さんが防衛需要だけで産業を維持できない状態ともなりました、このため新型掃海艇として、えのしま型はFRP船体を採用した訳です。
えのしま型掃海艇ですが、FRP船体を採用した事で掃海艇としての寿命は30年に延びました、木造船体は機雷戦を展開する場合には利点が多いのですが木造故に劣化に曝されるため、長期間の現役運用には向きません。アメリカなどは苦肉の策としてオスプレイ級機雷掃討艇に木造船体上からFRP船体で覆う構造を採用していますが、海上自衛隊は切り替えた訳です。三番艇からは、管制式機関砲を搭載しました。
以上の通り掃海艇を紹介してきましたが、海上自衛隊の機雷戦部隊の最大の至宝は訓練された乗員にあります。掃海艇気質、と云われるものは、競技会も休日返上で兎に角順位にこだわるという、旧海軍の駆逐艦乗り気質に通じるものがあり、護衛艦と比べれば小型であり波浪には動揺にも曝される艦艇ではありますが、長期間の航海に耐える気概があるという。
海上自衛隊の掃海部隊は規模と能力共に高く、欧州のNATO諸国とのペルシャ湾多国籍訓練へも展開しています。この際に所用期間は往路袋共に一ヶ月の航海となり、NATO海軍では一部に台船を利用して掃海艇を運搬している事例もあるようですが海上自衛隊の気質では自分の船は自分で動かすもの、という認識があり一か月間の航海でも難なく遂行します。
また、湾岸戦争後の機雷処分任務では新型機雷に悩まされましたが、海外製機雷戦装備とその後の新開発の国産装備を導入し能力水準を第一線水準とすると共に、国際訓練を繰り返すことで最新の機雷戦への能力構築を精力的に進めています。もちろん我が国周辺には中国とロシアという伝統的に機雷戦を重視する海軍が存在しており、能力は幾ら整備しても十分というものはありませんが、今日この瞬間も任務と能力向上に傾注しています。
北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)