北大路機関

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検証:防衛予算-令和五年概算要求【3】事項要求の妥当性-ちくご型護衛艦建造費は六年で32億円から81億円へ

2022-09-09 07:01:41 | 国際・政治
■事項要求と読めぬインフレ
 前回装輪装甲車での事項要求妥当性に疑義を示した事と矛盾する事は承知の上での論点です。

 防衛費の事項要求、これはある意味正解となるのかもしれません、こういうのは現在の物価上昇とともに進む円安により防衛装備品の輸入装備等は大幅な高騰が見込まれる為です。特にミサイル防衛専用艦のイージスシステムは既に発注済ではあるのですが、現状ではミサイル護衛艦こんごう型、来年で就役30年となりますが、この後継艦の建造費が読めない。

 32億円から81億円へ。これは護衛艦ちくご型の建造費の推移です、そんなに長期間建造したのかと思われるかもしれませんが、一番艦ちくご竣工は1971年で、最終艦となる11番艦のしろ竣工は1977年です、もちろん建造と共にハープーンミサイルを搭載したとか大型化させてヘリコプターを積んだわけではありません、インフレにより建造費が膨らんだ。

 ちくご型護衛艦は一例ですが、1971年から1977年の間にあった出来事、それは第一次石油危機、いわゆるオイルショックです。今では教科書に載る程度のものではあるのですが、石油価格の高騰に伴う物価高騰が猛烈なインフレを引き起こし、日本は朝鮮特需以降続いていた高度経済成長時代が終焉を迎えています。結果、物価高騰は護衛艦にも響きました。

 円安が同時に響いていますので、いっそ川崎重工が生産するCH-47JA輸送ヘリコプターや富士重工スバルのUH-2多用途ヘリコプターを輸出してみてはどうかとも思うのですが、それ以上にF-35A戦闘機やF-35B戦闘機、イージスシステムなどの有償防衛供与品などは直接影響を受ける事となります。逆に国産装備は影響が限定的となる可能性はあります。

 国産装備品も鉄鋼はじめ資材関連の円安に伴う影響は回避出来ません、しかし国内で建造する為に人件費の影響は円安と人件費高騰の影響をある程度コスト管理する事は可能かもしれません。これは艦艇を一例に挙げましたが、例えばUH-1を元にUH-2を生産したように、F-15Jを再生産しレーダーに国産AESAレーダーを搭載する等、検討の必要はある。

 96式装輪装甲車の後継も一旦棚上げし、2020年の時点で想定された後継車両は96式装輪装甲車の倍以上でしたが、今後の価格のよめない装備品よりはNBC偵察車を無改造で化学器材のみ取り外し輸送防護車として調達する、若しくは96式装輪装甲車をそのまま再生産するような選択肢も検討すべきなのかもしれません。いまの資源価格高騰と円安は石油危機以来なのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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3 コメント

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Unknown (軍事オタク)
2022-09-09 16:02:32
96式装輪装甲車をそのまま再生産なんて
絶対にダメだと思います。
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96WAPC (はるな)
2022-09-09 21:58:24
2型は先日一時間ほど乗せてもらいましたが、けっこう良かったですよ、冷房も付きましたし

パトリアAMVも機動装甲車も良いのでしょうけど、ね
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96式再生産に何の得が? (ドナルド)
2022-09-09 22:50:11
何の得もないと思います。円安を気にしてライセンス代が高騰するのを懸念するのなら、パトリアAMVではなく、MHIのMAVを選べば良いかと。16式と並行して建造することで、量産効果も上がるでしょう。いずれにせよ、パトリアAMVを試験することで、陸自の知見が高まって、世界の潮流を取り入れた改造をして欲しいですが。

96式は、もう2.5mの枠を破って良いので、B型の増加装甲の隙間を増やし、同時にタイヤを少し太くして不整地踏破性を高め、ネットワーク化を進め、外国製の小型のRWSを搭載した上で、380両を全て運用し続ければ良いかと。
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