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【防衛情報】E-3早期警戒管制機後継,NATOのグローバルアイ早期警戒機RFI要求とアメリカのE-7早期警戒機契約

2023-04-11 20:11:44 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 アメリカでのE-3早期警戒管制機運用が終了した場合、自衛隊のE-767早期警戒管制機の能力向上改修が終了する為、その動向は大きな関心事です。

 スウェーデンのサーブ社はNATO北大西洋条約機構統合運用のE-3早期警戒管制機後継機にグローバルアイ早期警戒機についてNATOからのRFI情報要求に応じました。E-3早期警戒管制機はアメリカ空軍が完成させた高度な空中警戒管制機ですが、そのシステムは改良を重ねているもののNATOが導入したのは1982年からであり、老朽化している。

 E-3早期警戒管制機はNATOが共同運用する航空機として18機を導入しました、このうち14機についてはFLEP最終耐用年数延長プログラムとして2035年まで延命する計画なのですが、2035年より先には機体の構造部分が耐えられないとして、文字通り最終的な延命改修となっており、また4機についてはFLEP延命改修の対象とはなっていません。

 グローバルアイ早期警戒機はE-3早期警戒管制機の補完としてNATOに導入されるものとなっています。もともと早期警戒管制機と早期警戒機では性能が異なりますが、地上データリンク能力の向上により必ずしも大型の早期警戒機ではなくとも対応できるものですが、RFI情報要求というかたちでNATO運用での後継機の候補に挙げられたかたちです。

 アメリカ製E-3早期警戒管制機について尾翼脱落の懸念があるため、各国が運用するE-3早期警戒管制機が世界で一斉点検を実施中です。なお、E-3早期警戒管制機は現代航空戦闘に不可欠の空中警戒管制機であるためにどの程度の機体運用に支障が出ているか全ては発表できないとしたうえで、しかしNATO航空戦闘司令部は緊急点検を発表している。

 NATO航空戦闘司令部によれば3月3日、E-3早期警戒管制機について少なくとも5機が尾翼落下の懸念があり、また点検が完了していない機体は20機あるとしています、問題の部品はサブパーテールピンという備品に断裂の欠陥があり、この問題に先立ちKC-135空中給油機でも同様の問題が発生していることから世界規模の緊急点検が実施されている。

 E-3早期警戒管制機とKC-135空中給油機は同じ原型機でKC-135空中給油機の民間型であるボーイング707旅客機からE-3早期警戒管制機が開発されました、相応に老朽化していますが、整備維持部品が共通であるために今回の問題となったようです。なお、ロシア軍ウクライナ侵攻状況を監視するべく必要なE-3早期警戒管制機は稼働状態にあるとのこと。

 アメリカ空軍はE-7早期警戒機調達に関して最初の2機に関する12億ドルの契約を結びました。この契約はE-3早期警戒管制機の後継となる26機のE-7早期警戒機調達の第一弾となります。アメリカ空軍は2027年に今回契約されたE-7早期警戒機の受領開始を予定しています。しかし、急激な早期警戒機の導入にはアメリカ議会一部での反発もあります。

 E-3早期警戒管制機の半数に当たる15機をアメリカ空軍は2023年内に退役させる、アメリカ議会一部が反発するのはE-7早期警戒機導入予算を確保するために、E-3早期警戒管制機の退役を前倒しし、これにより浮いた維持費などをE-7早期警戒機導入予算に充てる構想ですが、2023年から2027年までの5年間、早期警戒管制機が激減するのです。

 E-7早期警戒機の配備開始を待ってE-3早期警戒管制機の退役を置き換えという事で進めるべきではないか、とのアメリカ議会一部の意見があり、またE-3早期警戒管制機はウクライナ情勢や南シナ海情勢と台湾海峡、朝鮮半島情勢の警戒監視任務にも不可欠の装備であるため、前倒しの退役と後継機の空白期に大きな不安が生じるのはいなめません。

 アメリカ政府は国防総省の研究に基づきアメリカ科学諮問委員会へ人工衛星コンステレーションを応用した航空機監視能力構築に関する実現性評価研究を命じました、早期警戒管制機を補完する新時代の航空警戒管制能力となるかもしれません。この研究では地表から2000㎞以内の低軌道を飛行する人工衛星と航空機を併用し広域の追跡を行うもの。

 宇宙軍を空軍から独立させたアメリカ軍では2024年にも人工衛星の能力について新しい段階の研究を開始する方針を示しており、その一環として人工衛星によりリアルタイムの航空機監視能力構築が模索、アメリカ政府はこれが実際に技術開発を行った場合に現実的な成果に至るのかをアメリカ科学諮問委員会により調査を行うよう命じたかたちです。

 人工衛星のMTI移動目標追尾機能とレーダー偵察衛星を中心として宇宙軍が運用する人工衛星や多数の商業用衛星とを併用する計画です。この背景には、将来予想される中国との軍事対立に際し、西太平洋上の限られた航空基地へ早期警戒機や支援に当たる空中給油機などを多数展開させるリスクを避け、新しい戦域情報優位を獲得する狙いがあります。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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