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レッドフラッグアラスカ演習へ航空自衛隊、戦闘機や早期警戒管制機など12機を派遣

2015-07-27 23:08:42 | 防衛・安全保障
■レッドフラッグアラスカ演習派遣
 本日27日より、航空自衛隊のレッドフラッグアラスカ演習派遣部隊が出発を開始しました。

 レッドフラッグアラスカ演習は、実際の航空戦闘に関わる航空戦闘と航空管制や迎撃と対地攻撃に航空阻止、基地機能維持と空輸による第一線整備能力維持や基地防空と航空救難など、実戦において想定される状況を実戦に参加しない状況でも高度に再現し参加、判断と行動を練成し実戦に対応できる人材を高度な訓練環境と過酷な状況下で再現するべく1976年より開始されたもので、開始当時の演習呼称はコープサンダーでした。

 演習はアメリカアラスカ州アイルソン空軍基地及びエレメンドルフ-リチャードソン米軍統合基地並びに同周辺空域において展開され、自衛隊は7月27日から8月28日にかけ部隊を派遣、8月7日より8月22日までの期間が演習期間となります。レッドフラッグアラスカはアメリカや日本のほか、アメリカの同盟国や友好国の多くの国が参加しますが、集団的自衛権に関する慎重な配慮が為されます。

 航空自衛隊は本訓練への参加を例年通り、米空軍の実施する演習に参加し日米共同訓練を実施することにより部隊の戦術技量及び日米共同対処能力の向上を図る、とし各国との集団的自衛権行使の形はとらずアメリカとの二国間演習のかたちを強調しています。自衛隊の訓練は、防空戦闘訓練と空中給油訓練及び戦術空輸訓練、更にアラスカ間を渡洋する中途に米空軍空中給油機及び空自KC-767による空中給油を行う、とのこと。

 自衛隊の参加規模は、F-15戦闘機6機、E-767早期警戒管制機1機、C-130H輸送機3機、KC-767空中給油輸送機2機、以上12機で、航空総隊及び航空支援集団より訓練参加部隊として310名が参加します。この12機という規模は昨年度のレッドフラッグアラスカへの航空自衛隊派遣規模と同じ。

 訓練は、米空軍を筆頭に米軍航空部隊と同盟国や友好国が参加し、アメリカ及びその友好国と同盟国へ脅威を及ぼす国が運用する、スホーイSu-27系統の航空機をF-15戦闘機が、MiG-29系統の航空機をF-16が、それぞれ再現した仮設敵部隊、いわゆるアグレッサー部隊を相手に航空作戦を展開する。

 我が国の防衛力を考える際に、実戦を経験していないので実力が低いのではないか、という視点が向けられる場合があります。しかし、航空自衛隊が想定する、第一線航空機同士の航空管制や早期警戒管制機による前線航空管制を背景に中射程戦闘を戦端として航空団規模の航空戦闘が展開、という事例は過去30年間を見ても湾岸戦争くらいのもので、これも一方しか早期警戒機を運用しませんでした。

 双方が早期警戒委を運用する組織的航空戦を実施した事例はまだ戦史には無く、ジェット機同士の航空戦を含めてもイランイラク戦争やフォークランド紛争、小規模なものを含めて印パカシミールカールギル紛争とエチオピアエリトリア国境紛争、くらい、滅多に発生するものではありません。したがって、実戦経験の有無よりも、想定される最大規模の航空戦闘を十分再現し要員を練成可能な規模の演習を行う方が重要度が高い、という事が理解できるでしょう。

 現在、我が国南西諸島をその周辺空域は世界でもっとも、大規模な航空戦闘が発生する危険性を有する地域の一つで、特に航空自衛隊は数的劣勢を背景に同盟国アメリカと共に航空優勢を維持し、沖縄や鹿児島県島嶼部と九州という本土防空を達成しなければなりません。派遣規模は航空自衛隊の戦闘機数からは多いものではありませんが、ここで得られる様々な成果が、我が国防空へ大きく反映される事でしょう。

北大路機関:はるな くらま
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2 コメント

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Unknown (付箋の誓い)
2015-07-29 10:20:31
>ジェット機同士の航空戦を含めてもイランイラク戦争やフォークランド紛争、小規模なものを含めて印パカシミールカールギル紛争とエチオピアエリトリア国境紛争、くらい、滅多に発生するものではありません。
中東戦争とベトナム戦争と言う代表事例を除外したのはなぜでしょう?ただのケアレスミス?
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過去30年間 (はるな)
2015-08-13 20:04:50
付箋の誓い 様 こんばんは

過去30年間、としていますので・・・中東戦争とベトナム戦争は含むのはちょっと・・・

もっともフォークランド紛争を含めたのは単なるケアレスミスです・・・スマン
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