北大路機関

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MV-22岩国到着!米海兵隊新型ティルトローター機配備の背景と今後を考える

2012-07-24 23:52:13 | 先端軍事テクノロジー

◆旧式化CH-46を置き換える待望の新型機

 昨日7月23日、米本土から岩国航空基地へ海兵隊新ティルトローター機MV-22が12機、海路により到着しました。

Iimg_1655 海兵隊は旧式化したCH-46中型ヘリコプターを新型のMV-22により2014年までに置き換える方針で、ティルトローター機という構造から空気抵抗が小さくなり速度は二倍で航続距離は四倍になるというもの。岩国航空基地第一海兵航空団隷下の普天間基地へ現在の24機配備されているCH-46はまず半分を昨日到着のMV-22により置き換え、最終的に24機のMV-22を普天間へ前方展開させることとなります。CH-46は1958年に初飛行し、海兵隊が1961年に強襲揚陸艦用輸送ヘリコプターとして採用、我が国でも陸上自衛隊が輸送ヘリコプター、海上自衛隊は掃海ヘリコプター、航空自衛隊が救難ヘリコプターとして採用しています。

Iimg_2029_2 CH-46は運用開始から多くの年数を経ており、ヴェトナム戦争や湾岸戦争をはじめ多くの実戦に投入されたことで問題点が過去の事故と喪失を経て洗い出された結果、非常に事故発生率を低く収めているのですが、同時に非常に古い機体であるので老朽化が事故発生率に反映される前に置き換えねばなりません。CH-46は古いので代替されなければならない、という指摘に対して米陸軍や陸上自衛隊が多用するCH-47は初飛行が1961年であるのに、まだまだ使われているではないか、という指摘があるかもしれませんが、CH-47はボーイング社や川崎重工において生産が継続されています。しかしCH-46の場合では米海兵隊向けの機体製造は1987年に終了しており一番新しい機体でも25年を経ており、補強により飛行している状態、生産継続のCH-47とは根本的に条件が異なる点を忘れてはなりません。

Vimg_9939 何故MV-22が日本に配備されるのか、海兵隊は空地一体の運用による緊急展開を重視しているため、砲兵や戦車を最小限としてAH-1Wや後継のAH-1Z攻撃ヘリコプター、AV-8B攻撃機やF/A-18C戦闘攻撃機を保有、重輸送ヘリコプターに兵員55名や装甲車に火砲を空輸可能なCH-53D/E,兵員輸送に25名の輸送を可能として車両輸送も可能なCH-46,多用途ヘリコプターとしてUH-1Yを運用するのですが、このなかで中型輸送ヘリコプターを代替するために必然として後継機に選定されているMV-22が配備されるということ。

Iimg_1166 実のところ事故発生率は数字の上では高くないのですが、事故率が高い、と一般に言われているV-22ですが、これは試作作業中に事故が発生したためであり、制式化が成ったのは問題点を全て是正できたため。この評判は運用と共に解決することでしょう。事故率は例えばジェット旅客機にも当てはまる事です。世界初のジェット旅客機デハビラントDH-106コメットは高高度飛行による乱気流回避の安全性や定時発着能力で航空移動の普及に大きな一歩を刻みましたが初飛行二年後に次々と三機が空中爆発する連続事故に見舞われました。当時は原因不明で、危険な航空機と広く認識され、一時は検証により初めて金属疲労による変形という問題が発見、是正されたことによりジェット旅客機は現在、国際空輸の完全な主力となっています。ジェット機は危険という意識は払拭され、皆さんの中でも空港にダグラスDC-6とボーイング737が並んでいた場合、体験飛行以外では後者を選ぶのではないでしょうか。

Iimg_4712 MV-22ですが準同型機CV-22についてはエンジン出力が不十分ではないのかという指摘が米空軍OBにより為されているのですけれども、少なくとも垂直離陸が出来る時点で出力重量比は1.0を超えています。元々推力不足で1.0であれば、滑走路を使い揚力を稼がねば離陸できないはずで、高山部着陸など特殊な事情が含まれないのか、本当なのか情報を待ちたいところ。CH-46の米国での生産が終了したのちにも、日本では川崎重工がライセンス生産を続けていたため、スウェーデン軍やサウジアラビア国境警備隊用に輸出が続けられています。仮にCH-46を川崎重工に日本政府が要請し生産を再開させ、日本が取得し米軍へ貸与する方式で、とすれば生産ライン再生に百数十億円と一機当たり数十億円を要することになるのですが、予算に糸目をつけないならば安全性が確認されるまでの間、日本が応急機を供給という手段、民主党が政権交代した当時に既にMV-22の沖縄配備は決定していたのですし、採ろうと思えばとれたのかもしれません。

Vimg_7999 繰り返しますが、MV-22の事故発生率は高くはありません。今年二機が事故で失われている点が強調されるのですが、これを言いますと海上自衛隊のSH-60も一機が強風で横転、もう一機が低空飛行中に練習艦へ衝突する事故が発生しています。確かに試作作業中には事故が発生しました。実のところ90年代後半には、CH-46退役時期に間に合うかという議論があったことも事実で、海上自衛隊がMCH-101として採用したAW-101やS-92といった30~35名輸送用ヘリコプターを中継ぎに採用する模索も行われてはいたのですが、問題が解消されたことから海兵隊に採用されたわけです。

Img_6245 一部には軍用なので許容できる安全性、言い換えれば一定の危険性を無視して採用しているのだろう、という憶測に基づく反対もありますが、絶対落ちない航空機は計画で終わった飛行実績のない機体だけです。機体要因の事故皆無として自衛隊でその信頼性に根強い支持のあるUH-1は戦闘喪失含め千機以上が落ちていますし、あの四発機であるボーイング747でも日航機御巣鷹山事故を含め少なくない数が落ちていますし、世界一のベストセラーと呼ばれるボーイング737も同級機種では一番落ちています、一番飛んでいるのですから。名古屋空港中華航空機事故で有名なエアバスA-320も傑作機に数えられますが、就航三か月後にデモフライト機が航空ショーで乗客を乗せ墜落しています。

Iimg_1367 それにしても不思議なのは反対の理由です。もともとMV-22反対の主流は事故率ではなく騒音の大きさでした。CH-46の四倍ものエンジン出力があるので騒音も大きいだろうと反対されていたのですが、航空自衛隊のT-3練習機とT-7練習機の新旧騒音比較、P-3C哨戒機とジェット機となったP-1哨戒機の騒音比較では新型の方が静かですし、もう少しわかりやすく事例を出せば新旧四半世紀の自動車で比較するとわかりやすいのですが馬力あたりの騒音は段違いです。もともと航空機のエンジン音は対空戦闘部隊へ発見される大きな要素となりますのでエンジン音を低減する技術は音響ステルスとして重視されているのです。実測値がデジベル変換でCH-46よりもかなり小さく抑えられ、数分の一とも言われます。最近は、航続距離が多きので沖縄から周辺国への脅威となる、という論調が出始めていまして、欠陥機と批判する一方で高性能機として周辺国への脅威というのは矛盾した論理ですが、反対する理由を探しているようにも。

Iimg_9780 さて、この機体ですが、自衛隊に配備される可能性を考えてみましょう。取得費用はかなり大きいのですが、自衛隊として装備されていれば心強い機体なのです。南西諸島防衛に必要、という視点以外にも那覇駐屯地の第15旅団へ配備された場合、重要な役割を担うこととなります。写真は那覇航空祭の陸上自衛隊UH-60JAですが、第15旅団にはこのほかCH-47JAが配備され、共に取得費用35~50億円の高価な高性能機、速度と航続距離はヘリコプターとして最優秀の部類に入ります。第15旅団にこの機体が装備されているのは、南西諸島における急患輸送を行っているためです。島嶼部は救急車で那覇の拠点病院に重篤患者を運ぶことが出来ません。このため災害派遣として陸上自衛隊のヘリコプターが出動しているのですが、2010年までに急患輸送実績7758回、搬送人員8113名を数えています。

Vimg_8422 MV-22は海兵隊納入価格が6000万ドル、陸上自衛隊が導入すれば確実に一機100億円を超え、海上自衛隊のUS-2救難飛行艇に匹敵するところ。初度調達部品や整備教育費で数百億円は必要になるでしょうが、速度と航続距離が大きくともCH-47の半分以下の人員しか運べず調達費は二倍以上、必要ですが手が届かないところ。救難機としてだけをみれば、洋上遭難ではUS-2のように着水できませんのでホバーリング時間による行動半径低下を考えた場合救難機にはUS-2には及びませんが、陸上自衛隊の患者搬送、いつか装備としてほしいところ。

Vimg_8539 仮に、ですがV-22は開発当時にレーダーを搭載し軽空母用早期警戒機とする案が出され、ボーイングによれば空対艦ミサイルを搭載する艦載攻撃機案も出されています。米軍はそうした場合にはAV-8なりF/A-18なりを展開させればよく、海外需要を当て込んでのことでしょうが、あのF-35と並ぶ高価な機体、採用の道筋は立てられていません。しかし、海上自衛隊が、特に対潜戦闘を重要視する中で、外洋作戦における広域哨戒用にSV-22として哨戒機型を装備する可能性は、ない。・・・、と言い切りたいところですが好景気で防衛費に余裕があれば検討位されることはあるかもしれません。いや、同じ取得費用ならばF-35Bを優先度の上とするでしょうか。やはり陸上自衛隊か、もしかしたらば、LR-2の後継機に費用を上回る必要性を認識された場合には陸上自衛隊へ配備という道は出てくるかもしれません。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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6 コメント

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MV-22導入反対を叫んでいる輩は、日本弱体化・日本... (軍事オタク)
2012-07-25 10:53:46
MV-22導入反対を叫んでいる輩は、日本弱体化・日本転覆を狙っている、左翼ですよ。
もしくはそれと走らずに協力している連中です。

原発反対もそう。自然志向などといいながら、結局は日本弱体化を図る中国や韓国の手先としての活動でしかないことを国民は肝に銘じておく必要があるでしょう。

みなさんの周りにも知らないうちに中国のスパイ等が入り込んだり、
母体をカムフラージュして団体やサークルに資金協力等左翼サポートをしている場合があります。

ご用心下さい。

政府は国民目線とかいって、弱腰、日本弱体化政策や外交をとるべきではありません。

そういうことは共産党や社民党・民主党左派にまかせておきましょう。

ところで、MV-22は日本にもほしいところですねえ。
セットで、CH130給油機の大幅増や、早期警戒型MV-22・F-35Bも装備してもらいたいところです。


返信する
MV-22導入反対を叫んでいる輩は、日本弱体化・日本... (軍事オタク)
2012-07-25 10:54:12
MV-22導入反対を叫んでいる輩は、日本弱体化・日本転覆を狙っている、左翼ですよ。
もしくはそれと走らずに協力している連中です。

原発反対もそう。自然志向などといいながら、結局は日本弱体化を図る中国や韓国の手先としての活動でしかないことを国民は肝に銘じておく必要があるでしょう。

みなさんの周りにも知らないうちに中国のスパイ等が入り込んだり、
母体をカムフラージュして団体やサークルに資金協力等左翼サポートをしている場合があります。

ご用心下さい。

政府は国民目線とかいって、弱腰、日本弱体化政策や外交をとるべきではありません。

そういうことは共産党や社民党・民主党左派にまかせておきましょう。

ところで、MV-22は日本にもほしいところですねえ。
セットで、CH130給油機の大幅増や、早期警戒型MV-22・F-35Bも装備してもらいたいところです。

返信する
こんばんは はるな様 (shootingstar)
2012-07-25 22:37:33
こんばんは はるな様
V22なぜこんなにバッシングされるのか?
世論操作の匂いも感じますが、V22がヘリコプター
だと思っている方々が多いからでしょうか?
実際は固定翼機でありSTOVLが出来る代わりに
ペイロードに劣る輸送機ですよね。
ですからホバー形態でヘリ並みに飛べないのは
当たり前と言うかSTOVLを取り入れた妥協点
ですね。

自衛隊での運用はやはりひゅうがや22DDHに
積んでもらいたいですね、搭載機器をパッケージ化
して貨物室に搭載して任務によってパッケージを取替え、対潜、AEW
機雷戦などにマルチロールに運用なんてどうでしょうか?
返信する
軍事オタク 様 こんにちは (はるな)
2012-08-14 11:46:56
軍事オタク 様 こんにちは

とりあえず、二重投稿はお止め下さい。
返信する
軍事オタク 様 (はるな)
2012-08-14 11:49:22
軍事オタク 様

MV-22の自衛隊採用可否ですが、米海兵隊調達価格が6000万ドルですので、開発費込みの対外供与価格はF-35を上回るのですよね、この点がどう考えるのか、というもの。
返信する
shootingstar 様 こんにちは (はるな)
2012-08-14 11:52:28
shootingstar 様 こんにちは

 ジェット旅客機も、コメットの連続事故後は危険な代物、と思われていましたので、古くは写真撮影と同じで、新しいものですので、危険なのだ、と誤解を解ける知識が普及していないだけ、と考えます。

 固定翼でも回転翼でも、もちろん可変翼でもない、可動翼機、ですので、これは実績が解決することと思います。

 ひゅうが搭載ですが、しかし、お値段がF-35Bと変わらないか、もう少し上ですからね、・・・。
返信する

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