北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【日曜特集】金沢駐屯地創設63周年記念行事(5)普通科連隊の攻撃前進!(2013-09-08)

2018-12-09 20:04:18 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■普通科戦車特科協同
 金沢駐屯地祭、中隊規模で第14普通科連隊の能力を最大限に展示すべく、普通科戦車特科協同の訓練展示が展開されてゆきます。

 普通科連隊は第一線中隊に本部管理中隊長、第1中隊長、第2中隊長、第3中隊長、第4中隊長、重迫撃砲中隊長、対戦車中隊長、を配置し攻撃や防御に関する近接戦闘に火力支援から対戦車戦闘へも当たる陸上自衛隊の骨幹戦力です。そして近年は、装備更新が進む。

 軽装甲機動車は2002年より第一線への大量配備が開始された普通科部隊期待の新装備で、普通科部隊の他に偵察部隊や戦車部隊本部車両としても配備、航空自衛隊基地警備用も含めれば1950両程度が既に配備されています。軽量に加えて比較的安価と出来た点が大きい。

 LAV,と愛称を冠する本車は小型装甲車として開発が進められ、普通科部隊の小銃小隊を複数の車両に分散させ乗車戦闘を基本とする事で分散集合を迅速化させたもの。研究当時は小型装甲車としてフランスのVBL軽装甲車やドイツのウィーゼル空挺装甲車を参考とした。

 小型装甲車という開発当時の名称の通り、重量4.5t、全長4.4m、全幅2.04m、前項1.85mと非常にコンパクトで車内には座席が4席、ただ、車内には人員だけであればまだ余裕があり、後部と銃座を加え詰め込めば更に3名程度は乗車可能、これが市街戦では心強い。

 軽装甲機動車配備当時の訓練展示では普通科の攻撃に際し、敵弾幕下での攻撃前進に車体後部に更に3名を乗車させ、前進する様子が展示されていまして、元々狭い車内ですので個人装備だけで満員の状態ですが、隊員の盾に装甲車が必要な場合は柔軟な運用が可能だ。

 1950両も量産されていますので、用途は多様で、陸上自衛隊普通科部隊を象徴する装備となっています。具体的には北海道の機甲師団以外の普通科連隊では中隊本部車両や情報小隊の車両として配備され中隊単位で配備の96式装輪装甲車と連携し運用されています。

 本土師団や旅団では即応機動連隊以外の普通科連隊に中隊単位で配備されており、集中運用を念頭としています。普通科連隊では高機動車主体の中隊と共に普通科部隊の主力を構成、軽装甲機動車化中隊を有する事で限定的ではありますが半装甲化する事が出来ました。

 小銃班には2両が装備され、3個小隊と小隊長車の7両で一個小隊を編成し、普通科中隊には22両が配備されています。96式装輪装甲車化中隊は13両乃至14両で構成されますので、分散能力は高く広範囲に展開でき、装甲車ですので正面緊迫が必要な際の集合も早い。

 VBL軽装甲車を研究当時に参考としている分、形状がVBLは片側二扉、LAVは片側四扉、という部分を除けば車体形状の特色は合致する部分が多いのですが、VBLは乗車戦闘を基本としているのに対し、軽装甲機動車は下車戦闘を基本としている運用に違いがあります。

 VBL軽装甲車はフランスでは騎兵小隊や偵察小隊に8両が配備され、12.7mm機銃搭載型が2両と7.62mm機銃搭載型が2両と対戦車ロケット搭載型が2両に対戦車ミサイル搭載型が2両、という四種二両の車両が地域制圧と対戦車任務や火力支援用とで相互支援する。

 フランス第1機甲師団や第3機甲師団の隷下旅団での運用は上記の通りですが、軽装甲機動車も12.7mm重機関銃は搭載可能ですので、01式軽対戦車誘導弾や84mm無反動砲と基本型のMINIMI分隊機銃搭載車を合わせフランス方式の8両一組の運用が理想かな、と。

 陸上自衛隊での運用ですが、普通科中隊では基本的に下車戦闘を行うという。小銃班が2両に分乗している為、各車に操縦手と車長を小銃小隊から合計4名出す必要があり、実質半数を操縦に充てている、この為に下車戦闘を基本としなければ小銃手が不足するという。

 下車戦闘となった場合に軽装甲機動車は置き去りとなり、敵に奪われないよう施錠できると云う利点がありますが、回収はどうするかと聞いてみますと、せっかく敵と接触した状況で当面の敵を撃破した後も接触を維持し、軽装甲機動車の回収は後続部隊に任せという。

 96式装輪装甲車ならば専門の操縦手と車長が居り10名を輸送可能、下車戦闘時にも車載機銃により下車要員を支援し続けると共に、攻撃前進に併せ必要ならば共に前進でき、当面の敵を撃破したらばそのまま乗車させ接触を維持しつつ攻撃前進に機動力を付与できます。

 四輪駆動の装輪装甲車ですので、不整地突破能力には装軌式装甲車と比較すれば限界があり、高機動車と比較すれば重心が高い為に錯綜地形での横転の頻度は高く、82式指揮通信車並みに横転する、という声もありましたので、不整地突破能力は装輪車の範疇だ、とも。

 また高機動車であれば小銃班の内、操縦手と車長以外は休息できますが上掲の通り、小銃班を二両に分けている為、操縦手と助手席の車長が二両分必要で、長距離移動の際に休めない、という話もあります。元々の研究が乗車戦闘用ですので、第一線要求との乖離、か。

 ただ、それでも普通科連隊の貴重な装甲車両、取得威容は96式装輪装甲車の三分の一以下に抑えられていますので、連隊長が期待する手札だ。そして軽装甲機動車はほぼ同時に制式化された、第一線の強力な01式軽対戦車誘導弾、通称軽MATを車載運用しています。

 01式軽対戦車誘導弾は射程1500m、赤外線画像誘導方式で発射後の誘導が不要な撃ち放し方式のミサイルで、タンデム弾頭方式により爆発反応装甲等の防御力強化車両に対する打撃力を重視しており、特に射撃後の誘導不要である点は射撃後迅速な陣地変換が可能です。

 重量は大きく、逆に言えば予備弾を含め小銃班が数十kmの攻撃前進に際し徒歩携行するには少々非現実的なものであり、軽装甲機動車での車載運用がその装備の真価を示すともいえるでしょう。射程1500mといえば制式当時僅かに残る64式対戦車誘導弾とほぼ同じ。

 第一線の対戦車火力を大幅に拡大させた01式対戦車誘導弾ですが、エンジンを稼働させる戦車については赤外線照準装置が確実に目標を捕捉する一方、小型発動発電機程度の熱源では条件次第では照準が難しく、一旦照準すれば赤外線妨害には強いものの使い勝手が。

 即ち、対戦車誘導弾を機銃陣地攻撃や敵火砲への攻撃に転用する事が難しく、相手が戦車や装甲車を伴わない場合には、火力支援等に使いにくいという指摘もあります。そういう意味では従来使用された無誘導の84mm無反動砲の利点を再評価する声もあるとのこと。

 84mm無反動砲の後継装備として導入された01式軽対戦車誘導弾、島嶼部防衛戦では水陸両用戦車やヘリコプターの降着を撃破するには非常に優れた装備といえますが、無反動砲の威力も大きい、其処で陸上自衛隊はカールグスタフM3を補完用に調達再開しています。

 現代火力戦闘や機動戦対応を考えれば、82式指揮通信車の四輪駆動型のような、1975年からフランスで運用が続くVAB装甲車や不整地に弱いがウニモグトラック派生のコンドル軽装甲車等四輪駆動の安い車種でもよいので小銃班用装甲車を大量配備する必要性は感じる。

 しかし、その上で陸上自衛隊普通科部隊は国土の七割が山岳地帯であり、高機動車の機動力の高さは特筆するものがあります。限られた平野部には都市部が広がると共に6800の島嶼部から構成される国土を防衛すべく、様々な創意工夫と訓練を日々続けている訳ですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【G7X撮影速報】新イージス艦... | トップ | 新防衛大綱とF-35B&EA-18G【2... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

陸上自衛隊 駐屯地祭」カテゴリの最新記事