北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

エチオピア危機!北部紛争拡大と全土非常事態宣言,東アフリカ地域大国で進む国家崩壊の危機

2021-11-27 14:14:15 | 国際・政治
■各国が自国民退避勧告
 国家崩壊の危機といいますとアフガニスタンでの苦い経験がまだ鮮明ですが、もう一つアフリカで危機が進行中です。

 アフリカの緊張、アメリカ政府は内戦激化の様相を見せるアフリカのエチオピア情勢に鑑み、空軍輸送機部隊と陸軍レンジャー連隊をジブチに前進、また海軍の両用戦部隊を遊弋させ海兵隊による自国民救出体制を固めています。軍事介入は行わないが自国民救出へ米軍部隊を展開させる構えで、エチオピア情勢が風雲急を告げる情勢となってきました。

 エチオピア、内戦から一年、反政府勢力がいよいよ首都を陥落させようと言う緊張した状態にあります。エチオピアは人口1億1000万、AUアフリカ連合本部もおかれアフリカ地域成長の原動力となっていました。経済は2000年代から毎年10%の経済成長を続けるアフリカの地域大国、植民地主義時代をも独立を維持し、長く安定していた筈だったのですが。

 アメリカ、イギリス、フランス、ドイツは戦闘激化を受け自国民に退避勧告を発令、日本政府も同様の施策をとっています、邦人輸送もあり得る。実際、ティグレ人民解放戦線の攻勢は首都から100km近くまで迫っており、このままでは現在のエチオピア政府は事実上崩壊しかねません。もっとも、このエチオピア内戦には国内要素が大きく影響しています。

 北部内戦。一年前、ティグレ人民解放戦線が北部で行動を開始ししたため、アビー首相は北部への食料供給を遮断する飢餓作戦を開始しましたが、飢餓の深刻化をうけ国連が援助を開始、この行動をエチオピア政府軍が阻止したため、国連はエチオピア政府へ国連職員の解放を強く要求する状況となっています。一方、ティグレ人民解放戦線の攻勢は強まる。

 邦人救出任務が必要なのか、こう問われますと一概には言えない難しさがあるのです、エチオピア在留邦人は外務省によれば2019年時点で201名、11月初旬の段階で外務省は在留邦人へ情報収集に努め不要な外出を避けると共に出国検討を行うよう緊急情報を発しています。ただ、自衛隊は隣国のジブチに海上自衛隊航空部隊が展開中、実施は可能です。

 非常事態宣言の全土への布告、アビー首相はエチオピア全土へ非常事態宣言を布告し、国民に武器を取って戦うよう訴えていますが、情勢悪化は続いています。それは武装蜂起しているのが前政権とその支持者であり、特に国軍の要職を長く担った支持層も参画している為、エチオピア軍による鎮圧作戦が二の手を踏む状態なのです。その背景もまた複雑だ。

 1991年に社会主義政権から民主化を進めた結果、民主化の主導力となった北部出身者による政権要職の独占状態が生まれましたが、現在のアビー政権がこの状況を打破しました。しかし、今回の内戦の要因には、アビー政権が前与党をテロ勢力扱いし非合法化したため、不当な施策を前に、選挙に負けた事は非合法化の根拠とならないとして蜂起した構図だ。

 アビー政権とティグレ民族解放戦線の対立構造は、単に政権を追われた側が選挙無効を訴えたというような構図ではなく、選挙に勝利した側が敗北した側を非合法化する一種の弾圧構造が背景にあり、安易に反政府勢力と政党政府に善悪を点けるには、それでは自国民に飢餓作戦を行う政党政府は人道上正当性を担保できるのか、という疑問符が付くのです。

 アフリカ情勢への影響。上記の事情はあるのですが、エチオピアが今後大規模な内戦に突入する様な懸念は否定できません、すると東アフリカ情勢全般に大きな悪影響を及ぼす懸念があるのです。これは大袈裟のような表現ではありますが、エチオピアの立地と、そして前述の安定した地域であった、要石的な同国の内戦と考えれば決して誇大表現ではない。

 エチオピア隣国は、北部にエリトリアとジブチ、南部にソマリアと西部にはスーダンと南スーダンが国境を接していますが、この地域は現在非常に懸念すべき緊張状態にあります。スーダンが今年発生した軍事クーデターによる混乱、南スーダンは独立後の内戦が継続、ソマリアは破綻国家のまま、ジブチは内政安定するもエリトリアは独裁政権の混乱が続く。

 南スーダンでは内戦状態の懸念から自衛隊が派遣していたPKO部隊を撤収させたことはご記憶の方が多いでしょう、その際に自衛隊日報に戦闘と記載されたか武力衝突と記載されたかの言葉狩りが、日報問題、として国会で問題視された事もご記憶でしょうが、スーダンやエリトリアも含め周辺の不安定な地域からの難民を受け入れているのもエチオピアだ。

 PKO部隊派遣の必要性、こう安易に主張する事も出来ません、現在のPKOは安保理決議に基づく軍事色の強いものである為、派遣されれば戦闘に発展する懸念が高く、これは内戦を悪化させます。しかしながら、こうした情勢があり、悪化した場合は東アフリカ地域全般の情勢緊迫化に繋がるとして安全保障上リスクがある事は認識しておくべきでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 令和三年度十一月期 陸海空... | トップ | 【土曜詳報】HNLMS-Evertsen... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

国際・政治」カテゴリの最新記事