北大路機関

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八月八日は八八艦隊の日!新しい八八艦隊の必要性と全通飛行甲板型護衛艦6隻体制の可能性

2019-08-08 20:09:37 | 北大路機関特別企画
■次のヘリコプター搭載護衛艦
 今年も八月八日がやってまいりました、八月八日のこの特集は毎年恒例ではありますが今年は令和元年の八月八日です。

 本日は八月八日、八八艦隊の日です。海上自衛隊の八八艦隊、一個護衛隊群を護衛艦八隻とヘリコプター八機で構成する、というささやかでも壮大な名称と防衛計画は1996年の護衛艦みょうこう竣工をもって完成しました。旧海軍の高速戦艦八隻と巡洋戦艦八隻を基幹とした艦隊建造構想よりは規模は小さいですが、一つの防衛力整備の一大目標といえた。

 護衛艦隊の世代交代は八八艦隊の整備に続き、はるな型護衛艦の護衛艦ひゅうが型への置き換えへと転換します。即ちヘリコプター巡洋艦型の護衛艦から全通飛行甲板艦時代への転換が始まり、くらま除籍の2015年、かが竣工をもってヘリコプター搭載護衛艦の世代交代は完了しました。これにより艦載機が多様化、8隻8機体制は大きく転換する事となる。

 新しい八八艦隊が必要だ、この話題は、毎年八月八日に掲載している恒例の内容ですが、本年は昨年末の新防衛大綱画定とともに、護衛艦隊と自衛艦隊に新しい潮流が生まれている点、いずも型護衛艦へのF-35B戦闘機搭載が画定するとともに、掃海隊群への護衛艦配備開始、いわば第二水雷戦隊といいますか、第二の護衛艦隊へ改編が盛り込まれました。

 これは海上自衛隊の運用を大きく転換させる可能性がある。新しい八八艦隊の必要性、これは持論で、現在の護衛艦隊を構成する四個護衛隊群は、各二個の護衛隊より編成され、イージス艦主体の護衛隊とヘリコプター搭載護衛艦主体の護衛隊より構成されている。しかし、イージス艦は順次各護衛隊へ配備が進むのだから、編成を統合できるのではないか。

 同一編成、即ちヘリコプター搭載護衛艦とイージス艦に汎用護衛艦2隻の編成に統一したほうが、作戦単位を8単位とでき、合理的ではないかという視点です。しかし、イージス艦は現在、一つの護衛隊に集約される傾向があり、イージス艦2隻と汎用護衛艦2隻の護衛隊、ヘリコプター搭載護衛艦1隻と汎用護衛艦3隻の護衛隊へと、転換が進んでいます。

 新しい八八艦隊という提案は的外れと成りつつあることを認識してはいるのですが。新しい八八艦隊、要するに護衛艦32隻だけでも海上防衛は可能との視点なのですが国の認識は防衛力削減という冷戦以後の潮流から、特に護衛艦定数についても増強に転じる等、大きく転換し始めています。これは中国の脅威、中国の不透明な海洋進出という現状を、前に。

 新防衛大綱はこうした問題領域に大きく踏み込んだ内容であり、勿論厳しい財政状況、なによりも厳しい少子高齢化による募集難の深刻化、マルチハザードと脅威正面の多極化、従来の防衛力整備の念頭、そして北東アジア地域に置ける緊張の拡大は悠長な防衛力整備では平和憲法の平和的生存権を担保出来ない認識を突きつけ、新防衛大綱が閣議決定へ。

 いずも型護衛艦へのF-35B搭載、空母として運用するには弾薬庫からして不十分であるとの指摘、空母として運用するには発着を同時に行う必要があり甲板面積が若干不足するという指摘、ひゅうが型護衛艦についてはF-35B運用を行うには過小であるとの指摘、F-35B発着資格は米海兵隊では21日間で失効するため訓練が大変という指摘など、指摘は数多い。

 かが、いずも。AMRAAM等弾薬庫の問題についてはイージス艦等に搭載する射程の大きなスタンダードSM-6艦対空ミサイルをF-35により誘導する研究がアメリカ海軍において行われており、こんごう型、あたご型、まや型、海上自衛隊のイージス艦から弾薬を補給といいますか、イージス艦のSPY-1レーダーの代わりを務めることで問題は解決できます。

 問題は航空自衛隊が海兵隊型の運用を制度として理解し採用するか、という。航空自衛隊は例えば戦闘機が地対空ミサイルのレーダー運用を行うような方式ではなく、防空監視所の迎撃誘導は受けますが、戦闘機が自己完結した防空装備の主体であり、他機の誘導下で更にもう一機が攻撃を行う運用は研究が進むも、イージス艦との連携は考えられていない。

 シャルル-ド-ゴール,発着を同時に行えないほどに甲板が過小という問題は、艦尾部分と艦橋周辺に張り出し、バルジを追加する必要があるとの指摘がありますが、フランス海軍の原子力空母シャルル-ド-ゴールを見てみますと、艦載機の数という視点もありますが、発着同時運用は行っていません、F-35Bの搭載数も少なく必ずしも必須なのか、とは考えまます。

 ひゅうが型の過小、完全装備した場合には発着不能、ソナーがあるためスキージャンプ台の増設も不能というが、上記の通りイージス艦との連携、センサーノード機として運用するならば過小か、上記発着同時を考える場合、着艦と発艦を二隻の護衛艦に分けて行う手法の有用性、一個護衛隊群に二隻のヘリコプター搭載護衛艦配備の必要性併せて考えます。

 ワスプ、ボノムリシャール、アメリカ海兵隊のF-35B発着艦資格は21日間で失効する、この為の自衛隊の艦上運用資格は大丈夫なのか、という視点ですが、F-35Bの配備基地は宮崎県の新田原基地が予定され、これは岩国航空基地の第5空母航空団と連携しやすい位置にあるとともに、防衛省が航空訓練施設造成を計画する馬毛島とも近い位置にあります。

 さて。いずも型へのF-35B搭載と併せ、過小と判断された護衛艦ひゅうが型、場合によっては掃海隊群の掃海母艦後継として移管されるのではないか、と考えています。F-35B搭載には過小でも、輸送艦おおすみ型を支援する航空中枢艦としては最適であり、MCH-101掃海輸送ヘリコプターを用いれば機雷敷設が可能、ヘリコプターの運用能力は概して高い。

 掃海隊群へ配備開始となる新型護衛艦30FFMの機雷敷設能力と併せ、性能は充分と考えます。ひゅうが型の能力の一つに多機能レーダーFCS-3の搭載があり、30FFMは個艦防空用装備しか有さない為、艦隊防空程ではなくとも僚艦防空能力を有するFCS-3の有用性は高く、護衛艦隊を補完する艦隊としての用途は、それ相応に高いものといえないでしょうか。

 いずも型は更に二隻増勢されるのではないか。上記視点は併せて海上自衛隊が、ひゅうが型を掃海隊群へ移管するのに併せて、ヘリコプター搭載護衛艦を増勢する可能性を考えてしまいます。ヘリコプター搭載護衛艦の建造費用は、あさひ型護衛艦よりは割高ですが、まや型護衛艦よりは非常に安価です。F-35B運用に思うところがあるならばどうでしょう。

 いずも型増勢、この選択肢は、次期中期防の30FFM整備完了後の次々期中期防にはあり得る。護衛艦隊いずも型4隻が四個護衛隊群を構成し、掃海艦隊ひゅうが型2隻が二個掃海隊群を構成する。こうした可能性は意外と有るのではないでしょうか。現状でプレゼンスオペレーションという新任務、この定期実施を考えますと、増勢はある種説得力をもつ。

 ヘリコプター搭載護衛艦6隻体制の可能性、という訳です。プレゼンスオペレーションとは、遠隔地の友好国を相手とした長期訓練航海の定期的な実施を考えるならば、いずも型護衛艦2隻では不足している、と考えます。もっともこれは可能性を示しただけであり、現場に多大な苦労を継続的に呑ませる前提で、2隻で運用が継続の可能性もありますが。

 まや型について、新防衛大綱ではイージスアショアの整備が本格化することで、ミサイル防衛へのイージス艦の負担は軽減しましょう。極超音速滑空兵器などの将来脅威にたいしても、イージスアショアが探知し、スタンダードSM-3の射程外を飛来する脅威へは、既存のイージス艦とイージスアショアの連携が考えられます、任務を一本化する必要は、ない。

 イージスアショアと舞鶴や横須賀と佐世保のイージス艦が母港からスタンダードSM-6により迎撃する、という運用は考えられます。移動式Mk41も検討されるでしょう。具体的には陸上自衛隊が運用するイージスアショアがミサイル防衛の主軸となり、併せて高射特科の職域そのものが隷下に日本周辺のあらゆる防空装備を包括化する可能性がある、と。

 30FFM、それではこの量産には反対なのか、と問われるかもしれません。難しいところです、ただ、これを大量生産した30年後、後継艦を我が国は量産できるのか、持続的な防衛力という視点を持つ必要があります。故に対案として、ヘリコプター搭載護衛艦8隻とイージス艦8隻からなる新しい八八艦隊を、一つの防衛力完成系として、つまり護衛艦は32隻程度で防衛力を完成させられないか、と考えるのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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3 コメント

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Unknown (軍事オタク)
2019-08-09 09:27:29
次期DDH?
ひゅうが型代替艦の大きさがどうなるのか
大変興味がありますね。
いずも型よりもちろん大型にして戦闘機運用能力を大幅に向上させてほしいです。
イギリス空母並み
そうすると喫水問題があるから、横須賀の岸壁脇等をを浚渫しないといけないかもしれませんね。
もちろんF-35B戦闘機も50機以上は追加配備
Unknown (人民の目)
2019-08-12 22:51:23
8月は日本が愚かな道を辿った歴史の月です。

8月6日広島原爆投下
8月9日長崎原爆投下
8月10日ソ連対日戦参加
8月15日日本降伏

日本の指導者が愚かな侵略戦争を始め、最終的に1945年8月は激動の月となりました。愚かな日本指導者は保身の為に降伏を拒み、多くのアジアの民衆、日本人民にさえもいたずらに犠牲を強いました。8月6日以前に降伏すれば、広島や長崎も無かった。そういう歴史を悔悟する月なのです。
こういう視点に思い至らなければならない。
それにも関わらず8・8艦隊等と嬉々として悪ふざけを言うのは戦争犠牲者への冒涜です。
今の世代がブログ主のような無分別な者であるならば、戦争犠牲者はいたたまれないでしょう。
Unknown (流線形)
2019-08-15 00:57:05
であれば、この7,8月は、中華人民共和国こそ、国籍に関係なく人間の自由に対する欲求に対し、素直に頭をたれる契機になるのではないでしょうか?
香港の民主主義運動が、何故、沈静化しないのか、ひるがえって、日本では、国会が包囲されるようなデモが続かないのか、機動隊が強制排除に至らずとも”安保法案”というものが通過した理由と正当性の契機についてご考察されることを人民の目様に期待致します。
それから、日本において、米騒動(1918年)、男子普通選挙(1925年)以降、軍が、政治的活動に関して、国民を撃つということは起きておりません。
是非是非、人民の目様にもご考察頂けると、香港の問題もStakeholder全員が満足し、解決させることが出来るでしょう。
ちなみに、血が流れている時点で、既に失敗していると思いますが…。

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