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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

浜田新防衛大臣と防衛費GDP2%問題【2】財政的裏付けは必要だが定数割れと老朽化に調達せねばならぬ装備

2022-08-18 20:11:21 | 国際・政治
■増える任務と維持の予算
 T-4練習機後継機始めそろそろ先送りし続けてきた装備の後継を目指すか自衛隊の任務を減らすかを選択しなければならない状況があるとは前回に論点として挙げました。

 浜田新防衛大臣と防衛費GDP2%問題について。岸防衛大臣を引き継いだ浜田防衛大臣は防衛大臣就任が実に14年ぶりとなります。この14年間、防衛費は過去最大、といいつつ御実のところミサイル防衛や島嶼部防衛と邦人保護という新任務の増大が続いており、その都度防衛費の増額を最小限として既存の部隊や予算体系を再編してきましたが限度がある。

 岸防衛大臣は岸田総理の示した防衛費GDP2%増額という、日米首脳会談においてバイデンアメリカ大統領に示した事で一種対外公約の様になってしまった事業には必要な施策との見解を示していましたが、浜田防衛大臣は財政規律が必要であるとして反対はしないがくぎを刺す構図となりました。実際当方もそうした視点は必要だと思うのですが、ただし。

 即応機動連隊の相次ぐ新編による装甲車不足、自衛隊は絶対に調達しなければならないものがいくつか存在するのですが、そのかなり上位の部分に即応機動連隊新編に伴う自衛隊全体での装甲車の不足を何とかせねばなりません。そして装甲車の調達は、新しい部隊が創設されたという一点に留まらない、幾つかの重要な要素もあるのです。例えばひとつ。

 軽装甲機動車の調達開始は2000年からであり、初期の軽装甲機動車はそろそろ構造寿命を迎える事となります。もちろん、車体延命改修やエンジン換装を行うならば更に長期間運用する事は可能なのでしょうけれども、今のままでは既にいま一つエンジン始動等に苦慮する車体も徐々に出始めていますから、これらの後継車両を調達しなければなりません。

 軽装甲機動車の後継車両は、予算が必要となります、何故ならば軽装甲機動車を設計し製造を担当した小松製作所が防衛産業の新規事業からの撤退を表明しており、もちろん新規生産から撤退を表明しているだけですので、原稿と同じ軽装甲機動車を追加生産するという選択肢はあるのですが、ここで課題となるのは軽装甲機動車が短期間で量産されたこと。

 200両以上調達された年度もあり、自衛隊には陸上自衛隊の他に航空自衛隊と併せて2000両近い軽装甲機動車が2017年までに生産されました。軽装甲機動車は量産効果により高いとされた自衛隊装甲車の中でも一両当たり2700万円と取得費用を抑える事に成功していますが、その分だけ今後耐用年数を迎えるならば年間数百輌単位で除籍される事となります。

 M-ATV、アメリカ陸軍はハンヴィー高機動車の後継としてJLTVとして調達すると共にオーストラリア軍も調達するなど太平洋地域で標準化しつつある車両をライセンス生産するという選択肢、設計は20年以上前ですが軽装甲機動車を再生産として要請する選択肢、三菱重工など新型小型装甲車を要請する試案、トヨタ自動車の高機動車を装甲化する案など。

 軽装甲機動車の後継は幾つか考えられますが、M-ATVは一両100万ドルと96式装輪装甲車よりも高価になっていますし、兎に角費用が必要となります。これを予算が限られるとはいっても、何とかせねばなりません、特に2000年以降、戦闘防弾チョッキや01式軽対戦車誘導弾、個人装備の重量が激増しており、車両が無ければ長距離搬送に限界がある。

 96式装輪装甲車よりも高価、という視点を示しましたがもう一つ、この96式装輪装甲車についても、軽装甲機動車よりもさらに古い為に後継車両が必要となるのですが、こちらはかなり深刻です、深刻というのは即応機動連隊を新編する為に北海道の重装備部隊であった装甲近代化旅団や総合近代化師団の装甲車中隊から96式装輪装甲車を絞り出している。

 即応機動連隊は将来的に7個連隊を改編する計画ですが、各即応機動連隊には3個のAPC中隊があります。そして肝心の96式装輪装甲車を殆ど増やさないままに即応機動連隊を次々と新編した為、もともと北海道の第3普通科連隊に第11普通科連隊と第27普通科連隊と第28普通科連隊は完全な装甲化普通科連隊だったのですが、ここから抽出しすぎた。

 中央即応連隊からもかなり96式装輪装甲車を抽出している、そして82式指揮通信車も老朽化が進み、後継が必要で、本来ならば毎年ひとつ即応機動連隊を創設するのですから、必要な装輪装甲車50両と機動戦闘車20両を最低でも、機動戦闘車は偵察戦闘大隊所要もある為に最低30両となるのですが、揃えなければならないはずなのですが、それが無い。

 パトリアAMV装甲車か16式機動戦闘車派生型の機動装甲車を自衛隊は96式装輪装甲車の後継に充てるべく装備実験隊が富士学校の協力を受け選定中です、しかしこれらは一億円以下まで下がった96式装輪装甲車と比し確実に高くなる装甲車です。防衛費に上限はある、しかし現状装甲車を放置する事は出来ません、予算は必要な部分がここにあるのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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