■ボンバルディアDHC8とはどのような機体か?
三月十三日0850時、伊丹空港発高知行きの全日空1603便旅客機が着陸時に前輪の稼動部分に支障を来たし、様々な施策を講じた後に1054時、胴体着陸を敢行、機体の一部が破損したものの幸いにして負傷者を出さず着陸した。
この不調に際して全日空機の今里仁機長は冷静に火災の原因となりうる燃料を消費、後輪のみによる滑走後徐々に減速し、機首部分を接地、この判断で火災などを免れ、機体は無事停止する。この機体は緊急時には手動にて脚を出すことが出来る設計ながら作動せず、着地時の衝撃を用いて脚の作動を意図したタッチアンドゴーも失敗に終わり、胴体着陸を決断したとのことだ。
結果的に機長の冷静な判断が惨事を未然に抑止したとして報じられている。
日本国内では、エアーニッポンが五機、全日空輸が14機、天草エアラインが1機、オリエンタルエアブリッジが2機、ニホンエアコミュータが11機、琉球エアコミュータが5機を発注し運用中である。
この他、国土交通省に納入され、海上保安庁でもYS-11型飛行機の後継として導入が決定している(なお、海上自衛隊、航空自衛隊の運用するYS-11輸送機の後継機は今尚選定中である)。
DHCとはデハビラントカナダの略で、胴体延長ごとに4シリーズがあり、30から70の座席数の需要に合致している。最初に導入を決定したイギリスのフライビー航空は、信頼性が高く就航率も高い、国内線用ではBAe146ジェット旅客機より速く、運用コストはボーイング737よりも安い、という理由を挙げている。特に高翼とT字尾翼は低速時の操縦性を担保し、短い滑走路からも運行が可能である為、ジェット旅客機の代替として考えられている節があり、全長32.8㍍、巡航速度650km/hと高い性能を発揮する。
特にターボプロップ機では、同規模の機体として競合する機体がサーブ2000が経営上の理由から中止となり、民間用に販売される機体としては単一機種となりつつある。このDHC-8は、1983年に初飛行した基本型の37~39席仕様のQ100型、胴体を延長し50~56席仕様のQ300型が1987年に初飛行し、1998年に初飛行した最新型のQ400型に移行している。独自の振動騒音抑制装置を搭載することで低騒音航空機としても知られ、QuietのQをとり、Qシリーズとも称されている。しかし、2006年11月28日の鹿児島空港において整備員が突如閉鎖した車輪格納庫に挟まれ重態となる事故もあり、13日の胴体着陸事故へ至っている。
この他、与圧異常や異常音、脚部分への手動操作など幾つかの問題があり、その発生率は全日空ではボーイング777の八倍、ボーイング737と比較しても1.5倍程度あるといわれ、この問題は韓国の民間航空でも見られるようである。しかし、一概に欠陥機というには、既にある運用実績などから難しく、冷静に原因を探求し、カナダ政府やボンバルディア社との協同での対応が望まれるのではないだろうか。
なお、今回掲載した写真は、伊丹駐屯地祭において撮影したものを主に用いている。
HARUNA
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