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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】アメリカLCS計画とLAW軽揚陸艦,中国江凱Ⅱ型輸出とイギリスハリアー就役

2020-10-19 20:18:27 | インポート
■週報:世界の防衛,最新10論点
 今回は各国海軍の水上戦闘艦や空母と全通飛行甲板艦や水陸両用艦艇や哨戒艇等の話題を集めて議論してみましょう。

 アメリカの防衛造船大手オースタル社は9月2日、現在進めているインディペンデンス級沿海域戦闘艦量産計画への建造参画に続き、海軍の水陸両用艦船建造を見越し新たに造船施設の拡張工事への投資を発表した。これは以前取得し子会社化したモダンアメリカンリサイクルアンドリペアサービスの施設跡地に新たに造船施設を建設する為の投資という。

 オースタル社はこの投資で20000t級パナマックス規格船舶用ドックの建設、10平米屋内型艦船修理施設建設費用等が含まれている。オースタル社では現在インディペンデンス級4隻が建造中であり、更にインディペンデンス級4隻の建造計画がある。しかし海軍沿海域戦闘艦量産計画はあと数年程度で終了するが、これに続く海軍からの受注は現在まだ無い。

 FFG(X)計画として海軍ではアーレイバーク級ミサイル駆逐艦を補完する6000t規模のミサイルフリゲイト量産計画を推進中であり、一番艦はコンステレーションとされる。オースタル社も応募していたが選定には至っていない。同社では軽金属を多用する艦艇建造能力に定評があり、万一経営破たんともなればインディペンデンス級の整備にも影響する。同社は小型輸送艦建造参画を希望している。
■ボノムリシャールは放火か
 現在もサンディエゴ基地において事故調査が続き12月まではそのままとされるボノムリシャールについて。

 アメリカ国防総省当局者は8月27日アメリカCNN記者に対し、サンディエゴ基地において7月に発生した強襲揚陸艦ボノムリシャール火災について、原因が放火である可能性を示唆しました。ボノムリシャールはワスプ級強襲揚陸艦で海兵航空部隊のMV-22やCH-53による揚陸を担当するほか、F-35B戦闘機20機を搭載し制海艦としても機能します。

 ボノムリシャール火災は当初乗員が消火に務めたものの停泊中で乗員は僅かであると共に爆発危険が高まった為に総員退去が命じられ、四日間にわたり燃え続けた為、船体主要部が大きく破損し、修理期間は元より修理可能かという水準まで破損区画が広くなっています。なお、アメリカ海軍は現在まだ事件捜査中であり立件はされていない、としています。
■クワンゲドデワン級改修
 金大中大統領が初めて挙行された韓国建国観艦式に旗艦として乗艦したのはクワンゲドデワン級でした。

 韓国国防省は9月7日、海軍の運用するクワンゲドデワン級フリゲイトの近代化改修を完了したと発表しました。今回の近代化改修では情報処理能力の強化が中心となり、レーダーが捕捉した目標情報を従来の三倍程度まで識別追尾が可能となります。また戦術コンピュータの切替えにより一部情報は情報処理速度が100倍まで強化されたと発表しました。

 クワンゲドデワン級はKDX-1計画として一番艦が竣工したのは1998年、韓国海軍初の外洋型水上戦闘艦として竣工し、韓国海軍では初めてシースパローミサイルやヘリコプターを搭載、3隻が建造されています。今回改修が完了したのはクワンデドデワン級のヤンマンチュンで、韓国海軍では2021年までに残る2隻の近代化改修を完了させたい構想です。
■新世代エアクッション揚陸艇
 LCACエアクッション揚陸艇について遂に次世代型が建造されることとなりました。

 アメリカ海軍は8月27日、テキストロンシステムズよりSSC第二世代型LCACエアクッション揚陸艇の一番艇を受領した。LCACはアメリカ海軍に91隻が導入され海上自衛隊でも6隻が運用中だ。しかし、製造終了から長く、初期建造分については老朽化を受け延命改修が重ねられている状況であった。新しいLCACの識別番号はLCAC-101とのこと。

 SSC-LCACは現在12隻が製造されており、将来的に10隻の増勢も検討されている。SSC計画では当初、船体長を延伸させ搭載能力を増強する検討も為されたが、既存揚陸艦との適合性などから齟齬を来すとして見送られ、全長や全幅など主要要目は現行LCACと同様だ。しかし標準搭載量は強化され54tから60tへ拡張、最大搭載量も70tまで可能である。
■アメリカのLAW軽揚陸艦
 LAW,といってもM-72ではありません。アメリカ海軍は海兵隊の機動用に多数の揚陸艦を建造する計画です。

 アメリカ国防総省は8月28日、海軍が進めるLAW軽揚陸艦計画について進捗状況を議会へ報告しました。LAW軽揚陸艦計画は28隻から30隻を建造する計画で、数十両の車両を上陸ではなく海岸や港湾へ揚陸させる為の艦艇で、太平洋島嶼部での中国への対抗が主眼、2021会計予算年度において研究費用や設計作業に3000万ドルが盛り込まれています。

 LAW軽揚陸艦は第一に建造費を抑える事が要求されており、1隻あたりを1億ドル以下とする事を求めています。その上で全長を60mから120mとし、早ければ2023会計年度から建造を開始、2026年には竣工させるという、極めて迅速な建造計画が求められ、安価な調達と素早い建造を念頭に、近く造船事業者へRFI情報要求書を提示する計画とされます。

 海兵隊の沿岸連隊、LAW軽揚陸艦は第二次世界大戦後最大の海兵隊改編を念頭に進められています。海兵隊は2030年までに保有するM-1戦車を全廃し、新たに地対艦ミサイル部隊を創設し無人偵察機を増強、太平洋島嶼部にミサイル部隊とその警備部隊という、陸上自衛隊の先島諸島展開部隊のような改編を予定、その為の両用戦艦艇を必要としています。
■パキスタン向け054型進水
 中国は友好国へ廉価な費用で武器を輸出していますが、今回は比較的新しい054型フリゲイトをパキスタンへ輸出するとのことです。

 中国国家造船公社CSSCは8月23日、パキスタン海軍輸出用054A型フリゲイト江凱Ⅱ型フリゲイト一番艦の進水式を発表しました。パキスタン海軍は江凱Ⅰ型フリゲイトについて2017年と2018年に各2隻、合計4隻の導入を発表しており、4隻とも2021年までに竣工する。契約金額は未公表だが友好国価格として1億ドルから4億ドル程度という。

 江凱Ⅱ型フリゲイトは満載排水量4050t、ディーゼル推進方式を採用し射程180kmの中国製YJ-83/CSS-N-8対艦ミサイルと射程50kmのロシア製3K90艦対空ミサイルを搭載し、艦載ヘリコプター1機の運用能力を有しています。ただし上記は中国海軍仕様であり、パキスタン向けの装備は発表されていません。中国海軍は2015年までに配備を完了しています。
■ハーミーズ記念艦化成らず
 歴史的な艦艇は保存の声こそ毎回湧き上がるのですが費用面で相当な準備と覚悟が必要です。

 インド海軍の空母ヴィラート、旧イギリス海軍の空母ハーミーズが8月25日、記念艦への転用を断念し解体される方針である事が発表されました。ヴィラートは2017年、新空母ヴィクラマディーチャに交代する形でインド海軍より除籍されグジャラート州アランに拠点を置くシュリーラムグループがホテルシップか洋上博物館に改装する計画はありました。

 ハーミーズは第二次大戦中の1944年に起工、当初艦名はエレファントとされていましたが1945年に終戦を迎え建造中止、1952年に建造再開となり漸く1953年に進水式、その艦名はイギリス海軍初の空母で1942年に日本海軍により撃沈された艦名を継承し1959年に就役、シーヴィクセン戦闘機等20機を搭載し基準排水量23000tで満載排水量は28700tです。

 バッカニア艦上攻撃機などの運用能力を獲得しつつ1971年にはコマンドー空母へ改修されます、しかしこの際に搭載したシーハリアー攻撃機が1982年フォークランド紛争において大活躍、イギリス海軍旗艦ともなりました。1984年には除籍、インド海軍ヴィラートとなり上掲の通り2017年に除籍されましたが保存成らず解体、船体はバイクの原料となります。
■イギリス海軍新型ハリアー
 ハリアーといいますとVTOL攻撃機を思い出すか乗用車を思い出すかでその人の関心事が分るといいますが、このハリアーは第三のハリアーです。

 イギリス海軍、新無人掃海艇ハリアーが8月21日に竣工したとのこと。ハリアーはアトラスアトランティックUK社により建造されたハザード級無人掃海艇の二番艇で全長は11m、双胴型複合素材製船体を有しています。ハリアーは、イギリス海軍が進める海上無人システム試験部隊MASTT計画の一環として建造、同社では三番艇ハーベが建造中です。

 ハリアーは有人航行と遠隔操作及び完全自律航行何れでも対応しており、曳航式サイドスキャンソナーによる機雷探知と機雷処分弾薬の投射による機雷無力化が可能であるほか、自律航行能力を用いた港湾哨戒任務にも対応しています。海上無人システム試験部隊MASTT計画は2022年までに機雷掃海の作戦能力獲得を視野に進めているとのことです。
■中華民国の装備近代化計画
 中華民国台湾は昨今中国からの急激な軍事圧力に曝され、九州沖縄へ向けられていた中国軍機が中国政府の宥和政策の終りを突き付けられた構図ですが、備えは進められる。

 中華民国台湾は8月9日、巡航ミサイルと機雷増強へ2021年国防費を増額すると発表しました。台湾は中国本土の中華人民共和国より強大な軍事圧力に曝されていますが、今回、新装備の巡航ミサイルと機雷の増強へ14億ドルの追加を発表しました。台湾は独自の雄風Ⅲ型ミサイルを開発していますが、今回増勢されるミサイルはアメリカ製となる可能性が。

 アメリカ厚生長官のアザール長官台湾訪問、アメリカの台湾国交断絶以来最高位の高官訪問となりました歴史的な日の直後に台湾政府が巡航ミサイルと機雷の増強を発表した事から、アザール長官訪台を経て何らかの先端装備供与について合意された可能性もあります。なお、アザール長官訪台に際し中国がJ-11戦闘機を台湾に接近させる一幕もありました。
■フィリピン海軍一挙88隻増強
 中国の軍事圧力に屈しつつあるともされたフィリピンですが小型艇とはいえ88隻を一挙に揃えるという。

 フィリピン海軍はアメリカより88隻の小型戦闘艇及び武装を1億2600万ドルで取得する、アメリカ国務省が七月末、有償軍事供与について承認した旨を発表しました。小型戦闘艇はアメリカのウィラードマリン社製9m型複合艇36隻とウィラードマリン社製10m型複合艇36隻、18m型LSB16隻で、1億2600万ドルの契約は搭載する装備品も含まれる。

 88隻の小型戦闘艇用の武装としてはM-134ミニガン多銃身機銃36丁、M-2/12.7mm重機関銃24丁、M-240/7.62mm軽機関銃156丁、無線機90基と照準装置や航海レーダー、予備エンジンなどを含むもので、小型戦闘艇は近年緊張を増す中国の島嶼部への軍事圧力への抑止が期待され、ミニガンか重機関銃と複数の軽機関銃を搭載する事が読み取れます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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