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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

チリ中部近海地震に伴う津波災害への防衛省自衛隊対処状況

2010-03-02 23:49:37 | 防衛・安全保障

◆陸海空自衛隊から730名、航空機72機が出動

 日本時間2月27日1534時に発生しましたチリ中部沿岸でのマグニチュード8.8の地震は、津波を引き起こし、半世紀ぶりに太平洋を越えて日本列島に到達しました。

Img_0849  1960年のチリ地震に伴うチリ津波、半世紀前の災害では、日本本土に到達した津波により三陸海岸を中心として132名が死亡、市街地も大きな打撃を受け、自衛隊は災害派遣を実施しています。その期間は一ヶ月以上に及び、半世紀前のチリ津波が及ぼした被害の大きさがうかがい知れます。

Img_7818  今回のチリ津波でも、千島列島の幌筵島では2㍍の高さを記録していて、日本にも1㍍以上の津波が押し寄せました。当初は3㍍に達するという予測もあり、気象庁による大津波警報発令以前の段階という、早い時期から防衛省では準備を開始させ、津波到達以前に部隊を展開させていたと報道発表されています。

Img_9319_2  災害派遣の予防というかたちでの派遣の事例としては、過去にも既に雲仙普賢岳災害派遣を始めとして火山噴火災害などでは事例があるのですが、津波災害に対して、災害発生前に被害の局限化を図る派遣というのは、今回が初めてなのではないでしょうか。一方で、今回の対応は非常に迅速で、自衛隊の即応力の高さを示してくれました。以下、斜線部は防衛省HPのhttp://www.mod.go.jp/j/news/2010/03/01e.htmlからの引用にて紹介します。

Img_0195_1 (1)活動部隊・・・陸 自:北部方面隊・・・ 第7飛行隊(丘珠)、第11飛行隊(丘珠)、東北方面隊・・・ 東北方面総監部(仙台)、東北方面航空隊(霞目)、第6師団司令部(神町)、第22普通科連隊(多賀城)、第44普通科連隊(福島)、第6偵察隊(大和)、第6特科連隊(郡山)、第6戦車大隊(大和)、第6飛行隊(神町

Img_0293_1  第9師団司令部(青森)、第9偵察隊(弘前)、第9特科連隊(岩手)、第9戦車大隊(岩手)、第2対戦ヘリコプター隊(八戸)、第2施設団(船岡)、第4地対艦ミサイル連隊(八戸)、東部方面隊・・・東部方面航空隊(立川)、第1師団司令部(練馬)、第31普通科連隊(武山)、第34普通科連隊(板妻)、第1戦車大隊(駒門)、第4対戦ヘリコプター隊(木更津)、西部方面隊・・・ 第101飛行隊(那覇)、中央即応集団・・・第1空挺団(習志野) 、その他・・・ 施設学校(勝田)、岩手地方協力本部(盛岡)、宮城地方協力本部(仙台)

Img_6654海 自:固定翼部隊・・・ 第1航空群(鹿屋)、第2航空群(八戸)、第4航空群(厚木)、第5航空群(那覇)、第31航空群(岩国)、徳島教育航空群(徳島) 、回転翼部隊・・・ 第21航空群(館山)、第22航空群(大村) (このほか、発表には含まれていませんが艦艇部隊も対処任務にあたっていたと考えられます)

Img_9434 ○空 自:航空総隊・・・ 第3航空団(三沢)、第7航空団(百里)、偵察航空隊(百里)、警戒航空隊(浜松) 、航空支援集団・・・ 松島救難隊(松島)、百里救難隊(百里)

(2)派遣規模・・・人員延べ約730名、車両延べ約230両、航空機72機

Img_6643  防衛省HPによる報道発表では、以上の部隊が待機態勢、もしくは出動したとのことです。戦闘機部隊や野戦特科部隊、戦車部隊も含まれていますが、これは戦車や火砲で津波を撃退するのではなく、各部隊から人員を抽出して災害派遣部隊を編成した、ということと、情報収集の為に航空機を展開させた、ということです。

Img_6986  今回の待機態勢は、津波が日本本土に到達するまでの期間、通常の日本近海で想定されています海溝型地震に伴う津波よりも、到達までに時間があるために行われた措置なのですが、一方で、将来の東海地震における警戒情報発表においても、同様の待機態勢が採られるのだろう、と考えることが出来ます。

Img_1685 (3)主な対応状況
【28日】   
08時30分 防衛省災害対策室設置
10時00分  防衛大臣指示
・地方自治体との連携を強化すること
・部隊の情報収集などに万全を期すこと 
10時00分以降 青森県庁、岩手県庁、宮城県庁等の9都県庁、気仙沼市、石巻市、鴨川市等37市町役場等に連絡員を派遣。

Img_7908 10時20分以降 第9偵察隊(弘前)が地上からの情報収集活動のため駐屯地を出発。以降、人員約100名、車両約40両により東北及び関東地方各地において地上からの情報収集活動を実施。 
10時57分以降 第2航空群(八戸)P-3C×1機が離陸。以降、航空機72機(陸自32機、海自21機、空自19機)により情報収集活動を実施。 

Img_7915 13時15分以降 第22普通科連隊(多賀城)の人員約80名、車両約20両が駐屯地を出発。以降、東北地方各地において人員約470名、車両約120両が被害発生に備え事前展開。
19時10分 官邸対策室から官邸連絡室への改組を受け、防衛省災害対策連絡室に改組。
19時26分 航空機による情報収集活動を終了。 
23時45分 地上部隊の事前展開を終了。

Img_6683 【1日】   
00時04分 地上からの情報収集活動を終了。
11時00分 官邸情報連絡室の閉鎖を受け、防衛省災害対策連絡室を閉鎖。 
11時23分 県庁等へ派遣していた連絡員の活動終了
。(防衛省発表)

Img_0085  今回の災害派遣は、今後日本を襲うだろう東海地震や、その他の地震、その他の地震は地震予知連絡会の対象として警戒はされていないのですが、今後加えられた場合も考えれば、大きな経験として蓄積されてゆくことでしょう。そういう意味では、意義は大きかったということができます。

Img_9562_1  更にもう一つ付け加えるならば、これは二次的なものなのですけれども、完全に突発的な災害に対して、自衛隊が迅速に出動する能力と指揮系統がしっかりとしている、ということが周辺国に対して明示することが出来た、という一点を一つ挙げたいと思います。つまり、有事即応の能力を示した、ということです。

Img_9781  もちろん、これらのことは他の災害派遣に対しても当てはめることが出来るのですが、再規模災害への対処能力は一種の危機管理ですから、この対処能力が十分、という事は一種の抑止力となりますし、日本の非常事態への対処能力という明示は、日本との国際関係や投資関係などを展開するうえでも、好影響がある、といえるのではないでしょうか。

HARUNA

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
災害への対応は、確かに自衛隊の訓練になりますね (災害と戦争)
2010-03-03 08:28:30
災害への対応は、確かに自衛隊の訓練になりますね
状況把握・資源動員の計画と実行
突然起こるだけに、さらに良いと思います。
ただ、ハイチへの派遣は少し疑問に思いました
やはりアジア一帯だけにとどめておくべきだと思いましたが、チリの地震も起きて・・・・
鳩山首相は金持ちだから、付き合いの限度を考えることはないのでしょう
返信する
災害と戦争 様 こんばんは (はるな)
2010-03-03 19:05:03
災害と戦争 様 こんばんは

今回は運が良かった、と割り切るべきでしょうね。過去には来ているのですし、大津波の破壊力は、日本では忘れられているようにも思います次第。

ハイチですが、未曾有の激甚災害ですから、行く必要はあったのでは、と。ただ、地震発生後即座に準備を開始し24時間以内に先遣隊を派遣、48時間以内に本隊発見の決定を行って、一ヶ月以内に復旧を行う、というのが理想ですね。PKOに派遣というのは、ちょっと違うようにも。
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