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F-2支援戦闘機にAAM-4空対空ミサイルを搭載! 岐阜基地飛行開発実験団

2010-03-03 23:25:35 | 先端軍事テクノロジー

◆空自FX隠れた本命?進化するF-2の能力

 航空自衛隊次期戦闘機選定、本命のF-22輸出型は音沙汰なし、F-35は攻撃機だし選定に間に合わず、タイフーンは欧州機という運用上の不具合の危惧、F/A-18EやF-15FXは基本設計が古い。

Img_6023  そんななかで、次期戦闘機選定がなんとするべきか決まりかねてるうちに、戦闘機をライセンス生産し続けてきた防衛航空産業が、F-2支援戦闘機の生産終了とともに維持が難しくなりつつあるという事で、戦闘機の運用基盤ごと失われつつあります。日本で部品を含め生産しているからこそ、行える修理と整備、その基盤が失われれば稼働率が下がりますから、より多くの戦闘機が必要となり、予算も多く必要になります。そんな中で、一つの打開策としては、F-2の生産継続という選択肢があり得るのではないかな、と思う今日この頃です。

Img_6035  F-2支援戦闘機は、空対艦ミサイル四発を搭載する対艦攻撃に重点を置いた航空機として日米共同開発されていて、アクティヴフューズドアレイレーダーを搭載、長く研究を続けてきた複合素材の採用による機体の軽量化や、フライバイワイア方式の機体制御などが惜しみなく投入されている機体で、総合性能は非常に高いのですが、一つ欠点がありました。空対空ミサイルでは、中距離ミサイルとしてAIM-7スパローを運用していたのですが、このミサイルはレーダーにより誘導する方式なのですけれども、ミサイル本体を発射した戦闘機がレーダーで誘導してやる必要があるものでした。

Img_6034 航空戦で用いられるミサイルはレーダーで目標を追尾する中射程のレーダーホーミングミサイル、目標のエンジンなどが発する赤外線を追尾する短射程のミサイルに分けられるのですが、現代の航空戦は、秒単位の変動する状況との戦いですから、ミサイルを発射したのち、ミサイルが目標に命中するまで誘導しなくてはならない方式のミサイルと、ミサイルが発射されたらば目標までレーダーで自分で命中することが出来るミサイルとがあれば、後者の方が、戦闘機が航空戦で生き残るには好都合です。この点で、命中までレーダーで誘導しなくてはならないF-2の問題は、大きな欠陥といわれていたわけです。

Img_6037  航空自衛隊は、レーダーホーミングミサイルで、発射後誘導が不要なミサイルとして99式空対空誘導弾AAM-4とこの種のミサイルとしては世界的に有名なアメリカ製のAIM-120AMRAAM空対空ミサイルをF-15戦闘機に搭載し、運用しているのですが、昨年からF-2支援戦闘機へも、このAAM-4空対空ミサイルの搭載試験を行っています。写真は、岐阜基地の飛行開発実験団に所属するF-2初号機に搭載されたAAM-4空対空ミサイルと、そして外側に搭載されている燈色のものが精密誘導爆弾であるGPS誘導爆弾JDAM。これは試験飛行を終えて岐阜基地に着陸するときに撮影した写真です。

Img_6041  AAM-4は、発射後にレーダー誘導が不要である撃ち放し方式の空対空ミサイルですが、精密誘導を行う場合はレーダーによる指令誘導が可能な方式を採用していて、射程は100km程度ある、とされています。ミサイル本体は、アメリカ製のAIM-120AMRAAMよりも大型となっていますが、これはAIM-120AMRAAMが航空機を攻撃することに重点を置いているのに対して、日本の防空の場合では巡航ミサイルなどへの迎撃も必要であるだろう、と考えられ、威力を高める必要からミサイルに搭載する炸薬を多く搭載しているため、ミサイルが大型化しています。

Img_6042  発射後の誘導が不要な撃ち放し方式のミサイルですから、一機の戦闘機が同時に多数の目標に対処することが出来るという特性がありまして、このミサイルをF-2が運用能力を獲得することは、その能力を大きく高めることになるでしょう。更にAAM-4には、空気取り入れ口を設けてダクテッドロケットエンジンを搭載し、極超音速で射程を延伸する改良型の開発が行われています。また、ミサイルの誘導シーカー部分にも改良を施し、次世代の航空戦に対応できるレーダー誘導ミサイルとして開発が進められていますから、この将来発展性が大きいAAM-4をF-2に搭載するという意義は重要です。

Img_6115  F-4戦闘機の後継機というものは、なかなか決まりそうになく、そうした中で、老朽化だけが進んでゆく、という状況にあるのですけれども、F-2支援戦闘機の生産継続を行うのならば、近代化改修の為に必要な技術情報は、F-2に関しては日本側が持っているのですから、F-2の生産を継続してゆくのならば、将来の近代化を行う場合には、日本が独自に行う事が出来る自由度が広くなります。ステルス性はステルス機に比べれば低く、超音速巡航も出来ないF-2ではありますが、日本が独自に改修できる、という自由度では、他の候補機を圧倒しているのですよね。

Img_6166  日本の領空は非常に広いのですが、その広い空を隣国と比べて少ない作戦機で防空を行う事が出来るのは、機体の性能もさることながら、防衛産業各社が少ない機体が全て自前で整備して修理し、点検し飛行させることが出来るように運用基盤を創っていることが挙げられます。そして、こうした基盤を持たない国では旧式化してしまうような機体でも、日本であればバージョンアップして使えるように能力を向上させることができるわけです。この基盤を維持するためにも、本命となるようなステルス機などが誕生し、日本で生産することが出来るときまで、F-2の生産を継続して、更に一機一機の能力を高めてゆくことも重要なのではないかな、とAAM-4&JDAMを搭載したF-2を見上げて、ふと思いました。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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13 コメント

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 はるなさん、こんばんわ。 (闇部長)
2010-03-04 00:06:25
 はるなさん、こんばんわ。

 F-2にAAM-4運用能力が付与されると、
撃ちっ放しの中距離ミサイルを4発搭載でき、
対空戦や邀撃任務にも対応できますね。
 そうなるとF-4EJの代替えに本仕様のF-2が
現状において最適ではないかと思えます。
 なにせこれから海外の機体を導入となると、
最低でもあと4・5年見なければならない
でしょうから...
 はるなさんが述べられているように、自国で
整備や補修部品の製造または改造が出来ると
いうのは大変重要なことだと思います。
 またF-2の追加生産となれば次期F-Xまで
生産ラインの保持が出来、生産技術の喪失が
防げるという利点もありますね。
 ただロッキード・マーティン社担当製造分の
問題はありますが(^^;;;)
返信する
闇部長 様 どうもです (はるな)
2010-03-04 00:18:56
闇部長 様 どうもです

F-2の場合、近代化改修を今後繰り返すことで、次世代機に活かすことのできる先端技術の研究を合理的に進めることが出来る、という利点もあるのではないでしょうか。

もうひとつは、AAM-4、これ、考えてみるとかなり凄いミサイルなのですよね・・・。AMRAAMと違い、スパローのように中間誘導を行える、ということは、長距離でAAM-4ミサイルのシーカーが発見できないようなステルス機や小型の巡航ミサイルに対して、母機のアクティヴフューズドアレイレーダーが捕捉することが出来たならば、AAM-4のシーカーが発見できる位置まで誘導することが出来ますからね。

この技術は、今後、ステルス機に対処する中射程以上の赤外線誘導方式空対空ミサイル、というようなものが一部の国で模索されている、とのことですが、それに中間誘導は活かせるのだろう、と。

こうした独自の発展を続ける国産ミサイルを搭載できる、というのも大きな魅力でしょうし、ASM-3のような空対艦ミサイルの運用能力も重要な点です。

付け加えれば、F-2生産継続は、調達コスト、運用コストの面で新型機よりも優れている、というのも緊縮財政下の今日では、大きいのでしょうが。
返信する
F2に搭載されるべく開発中のASM-3ですが射程... (平成昭和)
2010-03-04 01:39:20
F2に搭載されるべく開発中のASM-3ですが射程はどの程度になると管理人さんは予想しますか?。やはり次世代型対艦ミサイルというからには二百~三百キロ前後くらいでしょうか?。また改良型空対空ミサイルAAM4改良型に関しても同程度の射程になると予想しますか?。
あと素朴な疑問ですが空対空ミサイルにしても対艦ミサイルにしても長射程のミサイルを現在自衛隊に装備保有されてないのは専守防衛の国策と関係があるのでしょうか?。対地ミサイルなどに制限をかけている事はわかるのですが。
質問ばかりで申し訳ありません。
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しばらくぶりにきてみたが、相変わらず突っ込みど... (Unknown)
2010-03-04 20:12:16
しばらくぶりにきてみたが、相変わらず突っ込みどころ満天だな。

ミサイルが大型化しているのは、対ECM、ECCM能力を向上させてるとも聞いているが。

>AIM-120AMRAAM空対空ミサイルをF-15戦闘機に搭載し、運用しているのですが、

運用はしていない。
試験のみ。

>精密誘導を行う場合はレーダーによる指令誘導が可能な方式を採用していて

それ、セミアクティブレーダーホーミングっていうんだよ。

>AMRAAMと違い、スパローのように中間誘導を行える、

AMRAAMにも中間誘導は出来たはずだが。

>一機の戦闘機が同時に多数の目標に対処することが出来るという特性

目標に命中するまで誘導を行う必要がないため、発射後直ちに回避機動に移ることが出来るとういう特性、だろ。

>日本が独自に改修できる、という自由度では、他の候補機を圧倒しているのですよね。

F-2生産中止の際に上がった理由と正反対ですが・・・

>ただロッキード・マーティン社担当製造分の
問題はありますが(^^;;;)

ほかの人も書いてるけど、これどうクリアするの?

>専守防衛の国策と関係があるのでしょうか?。

変わりに答えておくと、関係ない。
空対空ミサイルは、システムで装備すると価格が高いし、対艦ミサイルなら誘導が難しい(核弾頭装備なら命中精度は無視できるが)。
今後、技術の進歩で変わるかもしれないけどな。

返信する
ロッキード社担当分の問題をみると、やっぱり無理... (Unknown)
2010-03-05 02:01:02
ロッキード社担当分の問題をみると、やっぱり無理してでも国産を開発しておくべきだった、あるいは早々に打ち切るのは間違いだったと思えてなりません

結果的にせよ、これまで高いライセンス料を払ってでも築いてきた生産設備を全部喪失してしまうというのはあり得ない程愚劣な判断だと思いますから…
返信する
平成昭和 様 こんにちは (はるな)
2010-03-05 12:25:25
平成昭和 様 こんにちは

次世代対艦ミサイルの定義がまだ曖昧なのですが、ASM-2の制式化以降、冷戦終結の影響から対艦ミサイルの開発は優先度が下げられていますので、開発期間が長期化しています、すると、要求水準が“次世代”を想定していたのか、ということになるのですよね。一方でASM-3はミサイルの超音速巡航の能力付与が考えられていますので、総合的には強化されたものとなっているでしょう。

AAM-4は概ね射程が100km程度、ASM-2で150km程度ある、と考えられていますし、これを射程が短い、と考えるか、相応に高い、と考えるかは議論の余地があると思います。
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2010-03-04 20:12 様 御指摘どうもです (はるな)
2010-03-05 12:32:03
2010-03-04 20:12 様 御指摘どうもです

AMRAAMですが、長射程誘導を行う際にセミアクティヴ方式で中間誘導を行う、とのことで、C型から射程は大きくなっているようですね、するとミサイル本体のシーカーの能力はどの程度なのでしょうか、興味がわいてきます。

F-2生産中止の際に提示された理由、ですが、ちょっと・・・、どうなのですかね、F/A-18EやF-15FXであれば、機内そのものの空間ではF-2よりも優れているのですが、F-2のように“技術的に”日本が開発したものと同じように技術情報が提供されるのか、と気になります。

生産継続の模索ですが、行うとすれば関連設備をロッキードマーティンから買収する必要が出てくるでしょうね。しかし、新規機種のライセンス生産を、二個飛行隊分の導入の為に実施するよりは、安価に収まると思うのですが・・・。まあ、F-22をライセンス生産出来れば問題ないのですが、ちょっと非現実的ですよね。F-35の保険としてF-22の廉価版を開発し、生産継続を米国に提示、小泉政権時代ならばアメリカに提案できたのでしょうか。
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2010-03-05 02:01 様 こんにちは (はるな)
2010-03-05 12:35:50
2010-03-05 02:01 様 こんにちは

FSX開発の際には、日米貿易摩擦の問題になっていましたから、安全保障と言うよりも一種の外交問題になっていまして、これはF-16Cの輸入、とならなかっただけでも頑張った、というべきなのかもしれません。

ただ、手続きを踏んで日本の防衛能力負担の為にF-2の増産を行う必要があり、ロッキードマーティンに生産継続か生産関係設備の対日売却を要請したい、と日米政府間で調整を行えば、打開策は見えてきそうなのですけれどもね。
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管理人さん、さん 回答下さり有り難うございまし... (平成昭和)
2010-03-05 13:02:25
管理人さん、さん 回答下さり有り難うございました。
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はるな様 度々の投稿失礼します。読みもらしてま... (ボンバル)
2010-07-14 12:53:41
はるな様 度々の投稿失礼します。読みもらしてました岐阜でのF-2の記事、拝見させていただき思ったのですが、F-X選定において、ラ国不可能な機体の選定、もしくは何にも選定されない場合、航空雑誌上で危惧されている、戦闘機生産基盤の喪失、既存の戦闘機の稼働率の低下ですが、この稼働率低下、どのあたりまで低下すると考えられますでしょうか?現状の稼働率は90パーセントとも言われてますが、60パーセントを下回る恐れも考えられますでしょうか?お忙しいところ恐縮でありますが、ご教示いただけましたら幸いです。
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