北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

南スーダン内戦恒久停戦宣言,今度こそ実現か?反乱軍首都撤退交渉進展と国連PKO課題

2018-07-16 20:18:31 | 国際・政治
■自衛隊UNMISS撤退から一年
 日本では忘れられていないか、南スーダン自衛隊派遣が撤収完了より1年と二ヶ月が経ちました、内戦はその後も継続中です。幾度も停戦がありましたが再発、今年六月にも恒久停戦で合意しています。

 南スーダン内戦は2013年より激化し、建国以来UNMISS国連南スーダン支援団へPKO部隊を派遣していた陸上自衛隊も2017年に活動地位である首都ジュバの情勢悪化を理由にPKO部隊を撤収させました。派遣当時は日本から南スーダンへ直接展開可能なC-2輸送機は今と違いまだ試験中、自衛隊の無事任務完了は僥倖といえました。しかしこの内戦での死傷者は南スーダン政府の集計が行えない点と、人道支援団体の活動も制約されている為不明ですが、数万とも数十万ともいわれています。

 停戦は概ね維持されていまして、AFP報道によれば反乱軍の首都ジュバ撤収に関する交渉が進められているという。国家再建へ、南スーダン内戦が長期的に停戦し反政府勢力の武装解除と内戦後の総選挙を担う基盤へ目処がつくならば、再度日本自衛隊へも南スーダンUNMISS任務へ自衛隊派遣を要請する声が国連から示される可能性もあるでしょう。ただ、内戦の背景の一つにアフリカとアラブの対立、国連PKOの平和執行への変容という点に留意しておくべきでしょう。

 サルバ-キール大統領とリヤク-マシャール前副大統領の対立から端を発する南スーダン内戦は、先月末に恒久的停戦で合意しました。南スーダン内戦が遂に終了した、というわけではなく、実はこの恒久的停戦は数か月間隔で繰り返されている停戦と停戦協定が第一線での小規模戦闘により破綻するという繰り返しの一環ではないかとの懸念はまだ残ります。自衛隊が派遣された当時、活動地域で安定していたという首都ジュバでも反政府軍のT-72戦車が突入し政府軍のMi-24攻撃ヘリが阻止するという状況、何度停戦しても戦端が開き、自衛隊が安全に任務を遂行するにはAH-64D戦闘ヘリコプター程度を派遣しなければならないと正直に思ったもの。

 エジプトを盟主とするアラブ連盟とアフリカ諸国から構成されエチオピアに本部を置くアフリカ連合や同調する西アフリカ経済共同体、南スーダン内戦は同国がアフリカ諸国の一員であるとして独立した背景があり、1956年にアラブ連盟へ加盟したスーダン、アラブ連盟とアフリカ連合双方に加盟する国も多いのですが、主導権争いも内戦長期化背景の一つといえるでしょう。

 キール大統領とマシャール前副大統領が6月27日に72時間以内の恒久停戦で合意、しかし停戦後の戦闘は6月30日の停戦発効同日午前中に発生、南スーダン北西部ワウ市近郊のムボロ反政府軍拠点が政府軍の装甲車を含む数十両の機械化部隊により攻撃を受けた、反政府勢力のラム-ポール-ガブリエル報道官が南スーダン軍の停戦協定違反を非難しました。

 国家創設直後の内戦で国家再建が課題となる南スーダン、しかし武装勢力へスーダン領内などから武器弾薬が供給されており、南スーダンという新生国家の主導権を巡る摩擦は、上記の通り残っています。その上で国連PKO部隊は先月も戦死者を出しており、国連は6月26日に非難声明を出していますが、内戦終結への主導権を発揮する事が出来ていません。勿論、国連が紛争解決に主導権を発揮する場合は完全に紛争当事者となる事を意味します。例えば1992年の国連第二次ソマリア活動では、激戦となり多数の戦死者が出ています、紛争解決といっても一方が完全に戦闘力を失うか共倒れになり戦闘が文字通り燃え尽き自然鎮火をまつというところ。

 最大の被害者はスーダンより独立を果たした新生南スーダンの国民で、国内難民は既に人口の三分の一にあたる400万名に達しており、国連PKOにより建設されたインフラは内戦により破壊、自衛隊も橋梁や水道設備と灌漑設備などを相当規模構築しましたが、破壊されるか自然崩壊のまま、独立前から存在したインフラも破壊され、灌漑設備や道路と橋梁や水道等の多くが損傷、国家再建の道筋は独立後の国家創建よりも苦難の道となるかもしれません。

 自衛隊PKO任務史において、2018年7月段階では最後の国連PKOとなりました。現在自衛隊は民主党鳩山内閣時代に開始された友愛ボート構想に基づくパシフィックパートナーシップへの参画や染まり曽木海賊対処任務等の国際協力は実施していますが、国連PKO任務は行っていません。これは1992年のカンボジアPKO以来継続された国連PKO派遣について、2002年より国連PKOに関する決議が従来の国連総会決議ではなく、国連安全保障理事会の安保理決議、国連憲章七章決議という拘束力を有する決議に基づき派遣され、PKOそのものが転換した為です。

 平和創造から平和執行、必要であれば武力紛争の当事者として文民保護や施設防護を行うとの2002年以降のPKO、自衛隊も南スーダンPKOまでは偶発的戦闘を除く戦闘の逼迫度が比較的低い地域へ派遣されてきましたが、内戦激化を受け国連はUNMISS部隊へ文民保護任務を付与、情勢悪化下、自衛権行使を厳密に制約する自衛隊の派遣維持は出来ません。

 国連主導の平和創造と文民保護という平和執行を行い、紛争解決に国連がより大きな責任を果たしたい、こうした要求からの変容ではありますが、これは必然的にPKO部隊が紛争当事者となる事を意味します。そして南スーダンを含め地域紛争にはその背景となる周辺国や地域的な国際関係が影響します、そこまで深層へ関与せず、国連が加盟国と周辺国とPKO派遣国とを調整しつつ、平和創造と平和執行を行う事の難しさを、南スーダン内戦は示しています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)

コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【G7X撮影速報】上陸訓練!,沼... | トップ | 【京都幕間旅情】祇園祭二〇... »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (二読者)
2018-07-19 07:00:37
いつも拝見しておりますが、誤字脱字や断定調とですます調の混用がどうしても目に付きます。
時期を逸さぬ記事アップを心掛けられているのは分かりますが、書き上げられた後に一度でも推敲されれば、よりよい文章になると存じます。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

国際・政治」カテゴリの最新記事