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航空防衛作戦部隊論(第三〇回):航空防衛力、臨時分屯基地と分散展開の基地防空と警備任務

2016-02-08 22:21:05 | 防衛・安全保障
■分散展開の基地防空
 主要基地に集結し一撃で全滅、という状況を回避するために臨時分屯基地へ分散配置する提案を示しましたが展開先の臨時分屯基地には防空等支援はありません、滑走路と管制設備や民間機格納庫に給油施設がある程度です。

 航空団は全ての分遣部隊として臨時分屯基地へ基地防空隊を配置する事は物理的に難しいですが、しかし機動運用部隊として機動運用可能な基地防空隊を配置することは出来るでしょう。また、機動防空隊として携帯地対空誘導弾部隊を配置する事はできます。例えばアメリカ海兵隊などは前線飛行場防空へスティンガー小隊を配置し、防空の傘を供しています。

 スティンガー小隊は27基のスティンガーを配置しており、射手と射撃指揮官が防空に当たります。同様の機能を有する91式地対空誘導弾と共に航空自衛隊へ装備されているものですが、IFF入力や射撃安全装置解除や再装填と電源接続等、一見簡単に見える携帯地対空誘導弾ですが迅速に射撃するには一定の練度が必要です、他方、射程は4kmから5kmあり、防空情報に連接し脅威方向標定さえ充分できるならば非常に強力な火器です。

 航空自衛隊の場合は、27基の携帯地対空誘導弾を運用する場合、分散運用するという観点と射撃陣地構築の支援という観点から、スティンガー小隊に機関銃小隊を加え、航空自衛隊には適当な機種がありませんが軽量で可搬性が高い機関銃を運用し、分遣隊を運用する場合には機関銃班とスティンガー班を合わせて分遣防空チームとして機動させるという選択肢が妥当でしょう。

 機関銃はヘリボーン攻撃への対処能力が一定水準ありますし、スティンガー等携帯地対空ミサイルの最低射程内側へ侵入される事への防空が可能です。ただ、適当な機種が無い、と記載したとおり、例えば12.7mm重機関銃ですと対空三脚を加えかなりの重量となります。携帯地対空ミサイルのコンテナよりも大きくなる点に加え、機関銃の利点は瞬発交戦能力なのですから、30口径機関銃を採用する必要性について一考の余地があるやもしれません。

 飛行中隊規模の展開に際し臨時分屯基地には防空へ丸裸で展開させるわけではありません、ここで分遣防空チームの運用です。その主眼は飛行隊が必要とする機材など戦闘機を展開させる場合には持ち込まなければならない器材も非常に多いのですから、実質的には携帯地対空誘導弾2セットから4セット、機関銃数丁、というところが限度でしょう。もう少し展開できそうな印象がありますが、臨時分屯基地への脅威は空からだけではない。

 即ち、警備小隊を派遣し、飛行中隊の分散展開する各戦闘機を防護しなければなりません。8機展開させるにしても、一箇所に纏めておきますとクラスター爆弾の一発で破壊されかねず、2機毎、可能ならば1機1機を離隔し展開させたいところですが、そうしますと今度は敵浸透特殊部隊の対物狙撃銃や対戦車ロケット等により破壊されかねません。場合によっては軽装甲機動車の派遣も求められ、初動展開の装備は大きくなるばかり。

 一方、護衛艦への僚艦防空能力による支援の期待、とは、臨時分屯基地が軌道に乗るまでの期間、臨時分屯基地を巡航ミサイル攻撃や航空攻撃から警戒するレーダーピケット艦として、また、搭載する発展型シースパローESSMにより臨時分屯基地の防空支援を担う部分を期待する、というところ。海軍統合防空火器管制能力、所謂NIFC-CAによりレーダーピケット任務はE-2Dにより対応できるかもしれませんが、ESSMの運用能力は心強い。

北大路機関:はるな くらま
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