■海上自衛隊の将来艦構想
新春特別企画短期集中連載、今回から将来三胴船方式による将来艦艇について何回かにわけ考えてみましょう。
将来三胴船方式艦艇、日米での共同開発が進められている小型高速艦艇で、機雷掃討任務と哨戒任務を想定し、全長は80mで基準排水量1160t、満載排水量1400t、速力は35ノットを想定し、船体はアルミニウム合金が検討されているとのこと。あきづき型護衛艦と同程度の飛行甲板とヘリコプター一機を収容する格納庫を有し、小型ながら航空機運用能力をもちます。加えてその飛行甲板下にミッションベイとして600平方mの多目的区画をも配置するとのこと。
三胴船方式を採用する背景には排水量に対して上部構造物を大きく取れる事が利点ですから、ミッションベイと航空機格納庫、基準排水量では掃海艦やえやま型と同程度でしかないのですが配置できることとなり、そのミッションベイにはUUVやUSVなどの無人機材とRHIBなど小型艇を、さらに武装として76mm単装砲一門とCIWSを搭載するとのことでした。なお、レーダーは対水上と航海レーダーを搭載、対潜装備やソナーについては言及がありませんでした。
さて、一種類の装備で様々な任務に対応できることは理想的です。ここで例として示したいのが流氷観測任務、海上自衛隊が伝統的に気象庁の支援任務としてP-3C哨戒機により実施している任務です。P-2Vの時代やP-2Jの時代から続きます、が、しかし報道によれば、今年度の実施は大幅に削減される、とのこと。この背景には、ソマリア沖海賊対処任務や国際訓練の機会増大にあわせ、南西諸島警戒任務の増大などをうけ、10回程度毎年行われている任務を今年度は1回にとどめるとのことでした。
ただ、平時の警戒監視任務にあわせ北方方面飛行の際にあわせて流氷観測を実施し、全体として気象庁の支援は継続するとの方針です。自衛隊の近年の厳しい国際情勢の影響が反映されていますが、ついでとはいえ、支援は継続できるようです。ついでに、即ち二つの任務を同時に対処するとの行動ですが、複合的に任務遂行可能な装備というものはえてして重宝するものです。さて、掃海艇と護衛艦、現在開発が進められる将来三胴船方式艦艇ですが、海上自衛隊の重要な任務を同時に、対処出来ることとなるもよう。
将来三胴船方式艦艇は、現在設計が進められているコンパクト護衛艦とは全く異なるものとなります。コンパクト護衛艦は基準排水量3000tを期している、との事ですので護衛艦はつゆき型と同程度、満載排水量では4000t程度となり、満載排水量で3000tを越える水上戦闘艦艇は世界では大型水上戦闘艦に分類されますので、むらさめ型や護衛艦たかなみ型に護衛艦あきづき型と満載排水量6000t級の護衛艦が基本である海上自衛隊ではコンパクト、と称されるものの世界的に視ればコンパクト護衛艦は大型水上戦闘艦です。
コンパクト護衛艦にも機雷戦対処能力が盛り込まれるとのことですが、基準排水量3000tは消磁等の措置を採ったとしても機雷に対する能力としては少々限界があります、UUVやUSVを搭載し機雷原から離れた海域からの機雷掃討を行う能力があります、が、基本は護衛艦であるわけです。護衛艦を軸に掃海艇の能力を若干とはいえ盛り込んだコンパクト護衛艦に対し、将来三胴船方式艦艇は掃海艇に若干の護衛艦の機能を盛り込んだもの、といえるのでしょう。
北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
新春特別企画短期集中連載、今回から将来三胴船方式による将来艦艇について何回かにわけ考えてみましょう。
将来三胴船方式艦艇、日米での共同開発が進められている小型高速艦艇で、機雷掃討任務と哨戒任務を想定し、全長は80mで基準排水量1160t、満載排水量1400t、速力は35ノットを想定し、船体はアルミニウム合金が検討されているとのこと。あきづき型護衛艦と同程度の飛行甲板とヘリコプター一機を収容する格納庫を有し、小型ながら航空機運用能力をもちます。加えてその飛行甲板下にミッションベイとして600平方mの多目的区画をも配置するとのこと。
三胴船方式を採用する背景には排水量に対して上部構造物を大きく取れる事が利点ですから、ミッションベイと航空機格納庫、基準排水量では掃海艦やえやま型と同程度でしかないのですが配置できることとなり、そのミッションベイにはUUVやUSVなどの無人機材とRHIBなど小型艇を、さらに武装として76mm単装砲一門とCIWSを搭載するとのことでした。なお、レーダーは対水上と航海レーダーを搭載、対潜装備やソナーについては言及がありませんでした。
さて、一種類の装備で様々な任務に対応できることは理想的です。ここで例として示したいのが流氷観測任務、海上自衛隊が伝統的に気象庁の支援任務としてP-3C哨戒機により実施している任務です。P-2Vの時代やP-2Jの時代から続きます、が、しかし報道によれば、今年度の実施は大幅に削減される、とのこと。この背景には、ソマリア沖海賊対処任務や国際訓練の機会増大にあわせ、南西諸島警戒任務の増大などをうけ、10回程度毎年行われている任務を今年度は1回にとどめるとのことでした。
ただ、平時の警戒監視任務にあわせ北方方面飛行の際にあわせて流氷観測を実施し、全体として気象庁の支援は継続するとの方針です。自衛隊の近年の厳しい国際情勢の影響が反映されていますが、ついでとはいえ、支援は継続できるようです。ついでに、即ち二つの任務を同時に対処するとの行動ですが、複合的に任務遂行可能な装備というものはえてして重宝するものです。さて、掃海艇と護衛艦、現在開発が進められる将来三胴船方式艦艇ですが、海上自衛隊の重要な任務を同時に、対処出来ることとなるもよう。
将来三胴船方式艦艇は、現在設計が進められているコンパクト護衛艦とは全く異なるものとなります。コンパクト護衛艦は基準排水量3000tを期している、との事ですので護衛艦はつゆき型と同程度、満載排水量では4000t程度となり、満載排水量で3000tを越える水上戦闘艦艇は世界では大型水上戦闘艦に分類されますので、むらさめ型や護衛艦たかなみ型に護衛艦あきづき型と満載排水量6000t級の護衛艦が基本である海上自衛隊ではコンパクト、と称されるものの世界的に視ればコンパクト護衛艦は大型水上戦闘艦です。
コンパクト護衛艦にも機雷戦対処能力が盛り込まれるとのことですが、基準排水量3000tは消磁等の措置を採ったとしても機雷に対する能力としては少々限界があります、UUVやUSVを搭載し機雷原から離れた海域からの機雷掃討を行う能力があります、が、基本は護衛艦であるわけです。護衛艦を軸に掃海艇の能力を若干とはいえ盛り込んだコンパクト護衛艦に対し、将来三胴船方式艦艇は掃海艇に若干の護衛艦の機能を盛り込んだもの、といえるのでしょう。
北大路機関:はるな くらま
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今年もよろしくお願いいたします。
さて、今回から始まるトリマランハルを持つ小型の将来艦艇ですが、個人的にも興味深い分野ですので、コメントを寄せさせていただきます。
記事にもあるとおり、最大の利点は小型艦のわりに、後部に広いデッキスペースを設けることができることです。そのほかにも、高速を出しやすいとか、吃水を浅くできるなどにも有利ですが、よくトリマランの解説として言われる安定性については、少し吟味が必要です。
というのも、高い波浪や長周期のうねりなどの条件下で、特にサイド方向からの波・うねりに対しては船体の動揺がモノハルより大きくなる傾向があります。
事実、米海軍のインディペンデンス級では、外洋での船体動揺が運用上の問題となり、船上作業がしにくくクルーにも不評だという話を聞きます。
トリマランハルは、レース用のヨットなどではすでに普及していますが、これは高速性能を重視しており、船体動揺については問題にならない世界ですので、船上でのさまざまな作業が派生する艦艇には、そのまま当てはめることはできません。
防衛装備庁の艦艇装備研究所でも研究が続けられているのは、ご存じのところでしょう。昨年のシンポジウムで艦艇装備研究所の解説員にお話しをお聞きしたところ、やはり研究の最重要テーマは船体動揺をいかに低減するかという点にあるような趣旨で話されていました。
この部分が解決されるならば、トリマランハルは次世代小型艦艇にとってメリットが大きいので、その研究成果が実ることを、切に願っております。
なお、中国でも同様の艦艇をすでに建造しているようですね。いかにURLを張っておきます。
http://blog.livedoor.jp/corez18c24-mili777/archives/40149390.html
有用なURLありがとうございます。写真を見ると極端に小さい船のようですね。設計思想もモノハルにそのまま左右のハルを加えただけのようで、リンク先でも指摘されている構造上の問題とも相俟って、このまま規模を拡大すれば破綻しそうに見えます。これからトリマランの設計技術を取得しようとしている経過段階に見えます。