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【京都幕間旅情】金閣寺/鹿苑寺,楼閣建築舎利殿の謎-昭和期三層のみの金装は室町時代どう栄華を伝えたのか

2022-11-26 14:44:53 | 写真
■北山文化の栄華伝える
 豪華絢爛といいますか煌びやかな北山文化の象徴がこの建物なのでしょう。

 舎利殿、金閣ともよばれまして鹿苑寺が金閣寺と親しまれる所以という建物ですが、この舎利殿というものも、知っているようで知らない部分が多いのです。そもそもそのはじまりは昭和の1950年7月2日、あの有名な金閣寺放火事件からはじまるのかもしれない。

 三島由紀夫はじめ多くの文化人がその事件の背景と内心に迫ろうと世界観を織開いたのですが、明治の廃仏毀釈以降、権力と宗教に明確な一線が敷かれた時代にあって文化財を継承するか棄却するかの論点の土台が違うようみえるのですが、今回は建物を中心に添える。

 焼失前の金閣は三層のみに金箔が張られていた。つまり再建された金閣は別物なのではないか、という難しい問いです。難しいというのは銀閣寺こと慈照寺の観音殿、所謂銀閣に銀が貼られていなかったと科学的に確証がついたのは平成時代の解析技術であったため。

 金箔張りはどこまでであったのか、記録が余りに残っていないのです、室町時代の建築物故に記録に残すにも限度があるのですが、焼失前のように三層だけであったのか、全層にわたり金箔が張られていたのか。再建は三層に加え二層が金箔という分析に基づくという。

 楼閣建築の金閣は木造3階建、再建された金閣二層と三層の外面に全面金箔張りとなっています、焼失前の金閣は三層のみに金箔、では何故再建事故唸ったのか、明治の大修理の際に一部破損し新調された二層の隅木、元々の部材に金箔が張られていた為、根拠となる。

 明治の大修理というものは日露戦争の最中である1904年から1906年にかけて行われた解体修理で、日露戦争と云う国運を左右する総力戦の最中によく余裕あったものだと妙に感心する一方、その解体修理では綿密な図面も改めて引かれ、この資料が再建に役立った。

 二層の隅木に金箔が張られていたのだから二層全体がそうなのだろう、という事に依るのですが、十二世住職貫宗承一は1894年に拝観料を徴取して一般公開を始めるまで、ここは極限られた人々にのみ公開されていたというもので、寺は応仁の乱でも被害を受けている。

 応仁の乱では、此処も可と思われるかもしれませんが鹿苑寺そのものが西軍の陣となり建築物の多くが焼失しています、が金閣だけは焼失を免れたという。一方、金閣そのものは焼かれずとも被害には遭っているようで季瓊真蘂や蔭凉軒主が記した公用日記に記録が。

 蔭涼軒日録という公用日記なのですが室町幕府の政治経済基盤や禅寺の概況と将軍公用などを記したもの、ここに第8代将軍足利義政が拝観に鹿苑寺を訪れた際の鹿苑寺被害概況が明示され、庭園も伽藍も伐採され焼損し、金閣についても掠奪の概況が記されている。

 二層に安置されていた観音像は略奪被害に遭い行方不明、三層の阿弥陀如来と二十五菩薩像は白雲だけを残し略奪被害に遭い行方不明、と。すると金閣の取り外せる壁材などで金箔をはったものはどの程度略奪被害に遭っていたのか、被害に遭った可能性もあります。

 金箔は高熱で溶解しますし焼損します、が、昭和時代の分析技術ではいつごろの金箔、創建当初の足利義満の時代のものか、別の時代の金箔精製技法が用いられていたかは不明でしょうから、金閣の果たしてどこまでが金箔であったのか、今となっては分析できません。

 落慶法要から十年ほどで紫外線による金箔剥落が進み黒漆が露呈してしまった故、修理したという記録もあります。応仁の乱の市街戦以外に紫外線という劣化要素もあるために、果たして創建当初の金閣は全て金色だったのか、違うのか、永遠の謎という鹿苑寺でした。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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