北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

ノルドストリーム破損は人為的爆破-スウェーデン捜査当局爆発物痕跡確認,バルト海の海底ガスパイプライン

2022-11-26 07:01:44 | 防衛・安全保障
■臨時情報-北海爆破
 エネルギー危機というものは日本では中東情勢により生じるかシーレーン防衛の問題と考えられていましたが、この冬は別の要因からリスクを突き付けられる。

 スウェーデンの検察当局は20日、バルト海の海底ガスパイプラインノルドストリームにおいて発生した大規模破損事案について、現場から爆発物を示す化合物が確認され、これが破壊工作であった明白な証拠が確認されたと発表、CNNなどが報道しています。これによりノルドストリーム破損は破損事故から破壊工作による破壊事件へ大きく転換しました。

 欧州ではロシア経済制裁の報復としての天然ガス供給制限が指摘された今年春頃から天然ガスの欧州域内備蓄を続けています、こうした中で今年9月にノルドストリーム1で二カ所、ノルドストリーム2でやはり二カ所、大規模な破損が発生しており、現場がスウェーデンとデンマークのEEZ排他的経済水域内であったことから捜査が行われていましたが。

 天然ガス、特にロシア産天然ガスはこの二十年間欧州が新エネルギーとして依存度を特に高めており、ロシアからの供給遮断は死活的な問題となります。これには欧州固有の背景があるのです。欧州では環境保護運動が世界でもっとも盛んな地域となっています、これは気候変動の影響をもっとも顕著に受ける、欧州での近現代史過去の歴史に起因しますが。

 環境運動、欧州は過去火山噴火などによる気候変動の影響をたびたび受けており、これはフランス革命やナポレオン戦争と第一次世界大戦など、気候変動による食糧不足が戦争として多大な影響をおよぼしてきたという歴史の教訓が背景にあります。そして近年は火山噴火よりも経済活動による温室効果ガスの影響が特に問題視されています。故に敏感に。

 天然ガスは、こうした厳しい視点にあって地球環境に配慮したエネルギーとして、仮に大規模な使用をおこなったとしても企業へ不買運動などの影響が及ばないエネルギーとして、転換が進んでいます。天然ガスの主成分であるメタンガス、燃やせば確かに二酸化炭素が発生しますが、そのまま大気中に放出するよりは、という言い分で活用されているのです。

 メタンガスは短期的に二酸化炭素の84倍という温室効果を及ぼすとされ、天然ガスが地表に1t自然放出された場合、石油などを80t燃焼させた場合よりも温室効果が高く地球環境に影響する、若干分かりやすく説明しますとこうなります、水圧破砕などを行わずとも天然ガスは自然放出されるため、使うほど環境によいエネルギーとなる、そういう言い分だ。

 自然放出でなく掘削しているではないか、という環境保護運動の視点からの反論はありますが、このほかのエネルギーは不安定な再生可能エネルギーか、原子力発電、地熱発電、水力発電となります。原子力発電に対しては過度な依存へは別の市民運動からの反対に多く、天然ガスは欧州からみた場合非常に安価で安定しており、依存度が高まったかたち。

 ノルドストリームでの事案は欧州からウクライナ情勢で譲歩を引き出したい勢力の人為的関与が指摘されていましたが、物的証拠が必要であるとされ、このために慎重に調査が行われていました。なお、このほかのノルウェー海上ガスプラントなど有志連合方式での欧州域内ガスプラントでは同様の攻撃を警戒し艦艇や航空機による警戒が強化されています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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