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陸上防衛作戦部隊論(第三一回):装甲機動旅団編制案の概要 高射特科部隊の防空作戦能力

2015-09-24 22:43:04 | 防衛・安全保障
■装甲機動旅団防空の傘
装甲機動旅団、その防空網についてどの規模で、度の脅威へ対応するのかとの論点を今回は扱いましょう。

装甲機動旅団は機甲部隊を中心とした骨幹戦力を、航空機動旅団は航空部隊を中心とした骨幹戦力を、それぞれ集中させ、各方面隊に1個の異なる編成と運用を担う旅団2個より編成される広域師団を機動運用させる、というものですが、言い換えれば大型化した少数の師団への集約を行う、言い換えれば侵攻側には初動の我が防衛力は1個師団のみとなる訳ですから、近接航空支援と航空阻止攻撃により徹底してわが前進や集結を妨害するでしょう。

高射特科大隊については、現行の師団高射特科大隊の編成をそのまま応用できます、旅団ですが師団高射特科大隊型の編成を採る必要は、特に普通科連隊の編成が機械化大隊を基本とした編成を採るとの方針を背景とします、逆に航空機動旅団には高射特科隊、増強中隊規模が妥当となるでしょう。正面から相手を圧する、つまり攻撃衝力の持続を重視する部隊と機動力を重視する部隊、もちろん一方の編成だけでは事態拡大阻止が出来ませんし、反撃が出来ません、防空編成の相違はここから来る。

本部管理中隊が情報小隊に対空レーダ装置と低空レーダ装置を配備し、第1中隊に直掩防空用の近距離高射特科装備を配備し小隊ごとに連隊戦闘団へ配置、第2中隊に短距離防空用高射特科装備を配備し旅団の戦術防空を担います、それ以上の規模の防空は戦域防空となり、方面隊直轄部隊と航空自衛隊の任務です。他方、わが国土への着上陸を想定する際には、航空自衛隊の航空優勢確保の能力が巡航ミサイル攻撃や制空戦により相応の打撃を被っていると想定せねばなりません。

高射特科大隊、第2中隊に策源地と旅団段列地域防空用に81式短距離地対空誘導弾や11式短距離地対空誘導弾を配置し、戦域防空、特にサーモバリック弾頭やクラスター弾等を搭載し威力が増大する巡航ミサイルなどから旅団後方支援部隊を防護する必要があります。遠距離から我が集結と後方支援拠点での行動を妨害し得るこの種の装備への対処能力は急務で、81式短SAMは巡航ミサイル防空能力に制限がありますが、11式短SAMは巡航ミサイル対処能力が設計時に盛り込まれました。

第1中隊には直掩防空にあたる、93式近距離地対空誘導弾か近接戦闘車防空型乃至87式自走高射機関砲を配置し、小隊編成毎に普通科連隊戦闘団の骨幹戦力である機械化大隊の防空に充てる必要があります、機械化大隊は滝ヶ原駐屯地部隊訓練評価支援隊第1大隊方式の戦車中隊、2個装甲普通科中隊という編成を示しましたが、掩砲所に隠れるわけにも掩蔽も攻撃前進に際しては不可能であり、相手からは絶好の打撃目標となり得るので、ここに防空の傘を掛けなければならない。

理想としては直掩防空部隊には自走高射機関砲を装備する、こちらはミサイルと異なり瞬発交戦能力があり最低射程距離の制限が無い、という利点がありますが取得費用が大きく、装甲戦闘車の砲塔を利用した防空型、若しくは近接戦闘車防空型導入が理想です、他方、既存の93式近距離地対空誘導弾は、CH-47輸送ヘリコプターにより空輸可能であるため、航空機動旅団への重点配備が理想です。

高射特科部隊の大隊編制は、航空機動旅団の高射特科隊乃至増強中隊編成の任務が、航空部隊の策源地防空が第一である半面、普通科連隊の骨幹戦力が四輪駆動軽装甲車を基幹とした普通科中隊に軽装甲機動車小隊を増強配備する増強中隊編成が基本であり、機械化大隊と比較し高度に分散運用できるためです。しかし、集合分散させられないのが装甲機動部隊の運用です。もっとも、頑強に防護された機甲部隊への航空攻撃は相手に大きな行動制約を与え、高射特科部隊を強化する事で相手の航空攻撃部隊に対し打撃を与え、かつ空対空装備の運用や搭載を制限できます。

装甲機動旅団は攻撃衝力持続性の観点から離隔距離を採っての対空疎開には限界があり、逆に中隊ごとに行動する航空機動旅団の中隊戦闘群は携帯地対空誘導弾による自隊防空と観測ヘリコプター等による防空掩護に期待できますので、増強中隊か大隊編制を採るかの相違点はここにあります。即ち、小隊規模の高射特科部隊が構成する防空網の域内に、機械化大隊が装備する車両群を離隔を採った状態でその傘の下に収めなければならない、ということ。

なお、大隊本部は情報小隊を隷下にもち、対空レーダ装置と低空レーダ装置により師団防空情報を隷下部隊へ展開させます、しかしこれだけに依存すると部隊の展開範囲が制限差r手かねませんので、航空自衛隊の防空監視網とのデータリンクを第一線部隊規模で共有する現在の運用に加え、早期警戒機等との直接連接等も課題です、装甲機動旅団の機械化大隊は、主力戦車13両、暫定装甲車/装甲戦闘車30両、自走榴弾砲10門、装甲車両は以上の通り53両の大所帯となりますが、自走高射機関砲が3両配備され、第一線に防空の傘を展開させ、加えて中隊本部などに配備される自衛用の携帯SAMを併せる事で、一定水準の航空攻撃までは対処が可能となるでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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