北大路機関

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【京都幕間旅情】仁和寺,太陽が描く一瞬の美は絶景という表現が多用され続ける現代に在って具現化する絶景

2023-11-30 07:00:12 | 写真
■太陽の陽光は動いている
 一瞬の輝きという表現は実は写真の世界では散見できるものでその一瞬を写真として記録する為には様々な調整と準備が必要という。

 仁和寺、右京区御室大内という妙心寺の北側に壮大な堂宇を構えるとともに衣笠山を借景とした寺院は本尊に阿弥陀如来を奉じまして、その伽藍の雄大さと共に優美な御影堂は開基は宇多天皇が造営を命じた勅願寺院で云々、寺院の歴史は深いのですけれど。

 右京区御室大内、嵐電を利用しますと御室仁和寺駅の小さな駅舎から参道が二王門の方へ延びていまして、そしてこの御仁王様に左右一礼しまして二王門をくぐりますと、左手に御所清涼殿を移築した本坊と、一直線の先には現在修復中の中門がみえるのですが。

 五重塔、紅葉の季節は桜の季節もそうだったような気がするのですが足早でして、そう走ってはならない場所の様な気もしますから速足、競歩の勢いで向かうのですが、もう一つ足早に過ぎ去ってしまうものがあります、それは夏には気にならない、太陽のうごき。

 紅葉に浮かぶ五重塔、この情景を恋焦がれる頃のように思い浮かべていた、それはこの季節にしか見られないという単調なものではなく、この時間帯の僅かに輝くのみという特別な瞬間でして、快晴で、そしてこの時間帯の十数分だけ見える、これが絶景という。

 絶景、わたしたちはこの言葉をあまりに日常的に用いているので、絶景紅葉とか絶景京都とか絶景借景に絶景風景と絶景絶景、絶景のインフレが起きているような錯覚があります、けれども、この風景は、ほんとうに十数分間しか見えない故、絶景とはこの言葉の通り。

 五重塔は重要文化財に指定されていて寛永年間の寛永21年こと西暦1644年に、前のものが焼失したためというものを再建したという。その高さは36.18mにも達し、なぜそんなに詳しいかというと目の前で仁和寺の僧侶の方が拝観者の一団に解説していましたため。

 カメラと三脚を構えて瞬間を待つ写真愛好家やカメラマンの方を見ますと、そこにはほかの時間を差し置いて待つに値する価値ある瞬間を待っていることになりますので、わたしはあまり邪魔しないようにしている、少なくとも射界というか写界を考慮して行動する。

 太陽の向き、陽が過多組むとともにこの五重塔の前に散在しています椛の一つの、刈り込まれたことで太陽に口を開けるように陽光を導いている狭間に、こうひとすじの、ぽおっというように太陽が絶妙な角度で差し込む一瞬があり、十数分間だけ椛が輝く。

 三脚を使うということは、被写体深度つまりAF値を極限まで上げて手前の紅葉遠くの五重塔双方に焦点が合うようにしながら、ISO感度を低めにしてざらざらした粒子荒れを避けるぶん、露光時間つまりシャッター速度が遅くなるためブレさせないためという。

 夜間特別拝観の時にはこうした三脚は実のところ必須なので持ち歩くのだけれども、日中はどうしても手持ち撮影になるなあ、とは身軽さとともに、兎に角枚数を様々な角度から撮影するために、大きく引き伸ばした極上の一枚を愉しむ方を少し羨ましく思うが。

 撮りたかったこの光景、十五分遅れると見ることのできない、一年間で数時間しか見ることのできない、いや快晴の日だけで曇天の日には見られないから紅葉の色付きを考えると百数十分、若しくは一年間で数十分間だけの、これこそが絶景、なのだと考えます。

 太陽は動いている、そうこの仁和寺は天子様というか天皇さんの勅願寺院というゆえ、という訳ではないのでしょうが、太陽の動きと共に輝く角度が刻一刻と変容してゆく寺院でして、それゆえに五重塔を最初に拝んだのち、さあこれから拝観が始まるのですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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