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新飛行艇US-3を開発せよ!【3】国産飛行艇に代替装備なし-緊張度増す安保情勢には必要装備

2023-11-30 20:01:44 | 先端軍事テクノロジー
■毎年一機調達を前提
 US-3なんて夢みたいなと思われるかもしれませんが今まで通りUS-2を調達し続ける事の方が夢なのかもしれないという前提です。

 US-3飛行艇を開発するべきだ、この提案はより新しいものを開発して自衛隊をより強く、という安易なものではなく、結局は海洋国家という頸木を抜けられない我が国に必要不可欠である飛行艇というものを生産維持するためには、もう現在の三菱重工と川崎重工が合理性で判断しているUS-2は限界がきているという判断が背景です。

 US-2も、毎年一機、それが無理ならば中期防衛力整備計画で確実に3機、隔年を挟んででも確実にほぼ毎年を原則に調達し続けているならば、US-2はそのままの姿であり得たのかもしれません、けれども調達する側の独りよがりな合理性を押しつける調達、次の調達はいつかわからないが一括調達、では民間企業はつきあいきれません。

 US-3はUS-2の調達行政の失敗というもはや後戻りできない防衛三行もとい防衛産業からの三行半の突きつけを背景に、しかしせめて生産維持できる飛行艇、という選択肢として量産が継続されているP-1とC-2の共通部品を応用して生産を維持できる航空機として提示したもので、それはいままで通りのUS-2は膨大な予算を積まねば調達できないゆえ。

 飛行艇、問題はほかの選択肢がないということです。いいやオリョーノックWIGのような地面効果機が代案だ、とかV-22可動翼機か開発が進んでいると雑誌に書かれているV-280を自衛隊が導入できれば、雑誌に書いているセンセイガタは安いと言っているし合理的な代案だ、と主張されるのかもしれませんが、それは果たして現実的なのでしょうか。

 WIG機が実用化されない背景には予算以外の技術的問題がなければ40年間進展しない理由を見いだすことはできません、その理由は我が国がWIG機を実際に開発していない為なのかもしれませんが、それをトライアンドエラー方式で試す余裕というものは、いまの安全保障環境となにより予算面で十年単位の研究余裕がありません。即座の装備が必要だ。

 V-22については有用な選択肢かもしれませんが生産終了間近の航空機であるため、もしUS-2の後継機にV-22を考えるならばこの年内の数週間で補正予算を緊急計上し、7機から9機、予備部品を加えると1000億円でしょうか、緊急調達しなければ生産ライン閉鎖に間に合いません、V-280は先ず実用機が飛んでいない以上、比較できない。

 軽装甲機動車に89式装甲戦闘車と96式自走迫撃砲やAH-64D戦闘ヘリコプターとUH-1J多用途ヘリコプターやOH-1観測ヘリコプター、我が国防衛調達は、政府が防衛産業に仕事を下賜するのだからありがたく思っていつでも製造しろ、という殿様目線での調達計画が、センセいまはもう明治維新から150年以上経ています、と三行半の構図だ。

 明治維新云々まで遡るかは意見が分かれるでしょうが、こうした国が望めば好きなだけ防衛装備が製造されるという、旧陸軍や旧海軍のような価値観は唾棄されるべきですし、どうしても行うならば下請け企業を担う部品生産に特化した国営工廠、文字通り親方日の丸、仕事が数年間無くとも国が面倒を見る組織を構築してから臨むべきではないでしょうか。

 AH-64DやUH-1Jはじめ、官は間違いを冒さず、の原則から明らかに調達が失敗した場合でも、その装備は元々使い道がなかったのさあ、と説明でごまかし、しかしその代替装備をより高い予算で調達することができるほど、日本経済に余裕はないという認識が必要です。いや、だからこそ保守的なUS-3を提案し毎年1機調達を提示したのです。

 ロッキードマーティンに代案を、例えばC-130の飛行艇型を要請した場合、たぶん日本が示した要求仕様通りのものは開発されるでしょう、しかし仕様書にない拡張性が一切ないか、もしくは開発遅延や評価試験の問題点などはオプション扱いとなり、確実に契約書や仕様書に抜け穴が確保され、新明和のような既存機にあたるものは開発されない。

 国産しかない、たとえばの話を続けることは難色があるのですが、防衛産業、国内産業に対して日本は甘えの構図があったのだと思う、いやだからこそ例えばF-15JSP計画におけるボーイングの追加請求を不当請求だ、と詰めの甘さを棚上げした反論が出てきているのかもしれない、と思う。厳しい安全保障環境、と言葉遊びだけでは実感できないもの。

 飛行艇は、前述の通り日本の防衛に絶対必要な装備で、代替装備はありえても費用対効果ではUS-2を越えるものはなかなか考えられない、その上で、相手にも生活がある、という視点を先ず持った上で、その生産維持を考える必要が、国にはあるのではないか、と思うのですね。そのために、US-3の開発と毎年1機調達が、必要なのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
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確信は持てませんが。。。 (ドナルド)
2023-12-01 00:42:03
「飛行艇は、前述の通り日本の防衛に絶対必要な装備で、代替装備はありえても費用対効果ではUS-2を越えるものはなかなか考えられない」とおっしゃいますが、V-22 and/or V-280の空中給油で全く問題なく代替できると思います。そもそも日本はV22を使いこなせていませんので、追加の調達すら不要かと。費用対効果も、多用途に使え、世界生産数が2桁以上多い、V-22やV-280の方が圧倒的に上でしょう。

一方で飛行艇技術を失うのは、非常に勿体無いとは思います。なのでやはり、飛行艇だからできる任務をきちんと定義して、飛行艇としてのUS2 (or US3)をきちんと調達できないか、にかかっていると思います。

一つ思いつくのは、日本の国際貢献としての世界SAR展開です。
・2機+整備部隊で1隊とする。
・北海道と沖縄と硫黄島で3隊=北西太平洋SAR部隊
・パプアニューギニアとニュージーランドで2隊(南西太平洋SAR部隊)
・シンガポールとスリランカとジブチで3隊(インド洋SAR部隊)
・アイスランドとアゾレス諸島、カーボベルデ、セントヘレナかアセンション島で4隊(大西洋SAR部隊)

これで12隊、24機(前線配備)。長期メンテナンスの機体を含めれば、36機は最低必要になります。

飛行艇の利点は、空港がなくても島嶼にアクセスできることと、海上の船舶の非常事態にも対応できることです。ティルトローターに対する利点は、構造が簡素で整備が容易なはずなこと、航続距離で勝てるはずで故に独立の空中給油機が不要なことです。

世界に日本の SAR 部隊を配備することの利点は、日本のソフトパワーの強化だと思います。国際的影響力を強化する上で、SARで貢献するというのは、平和国家を標榜する日本ぽいですし、唯一無二の飛行艇部隊であればさらにキャラも立つ。世界中に影響力を持つことは、世界のどこでテロなり戦争なりが起きても、日本人の退避などにおいて、圧倒的に有利になります。世界中が助けてくれますから。

まあ、あくまで空想ですが、こんなのはどうでしょう?
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Unknown (成層圏)
2023-12-01 17:27:08
飛行艇は広大な領海を有する日本に必要不可欠な装備だと思います。
また、サプライヤーの撤退を受け、US-3開発は必要になるでしょう。
今の自衛隊では台湾有事は想定内で、起こらなければラッキー、と捉え準備していると思いますが、その時に一番必要な機体なのかも知れません。
アメリカのシミュレーションでも明らかなように、台湾有事には沈没艦艇から多くの将兵を救出しなければいけません。これが出来るのは飛行艇以外にないでしょう。その証拠にアメリカもUS-2に乗り込んで調査しているわけですから。
 US-3ははるな様の提案のように、国産機P-1、C-2の部品を最大限活用し、US-2より大型にするのがいいと考えます。人員・物資輸送と救助の両方を満たす万能機にする方が、各種タイプを作るより使いまわしの点で有利になると考えます。KC767のように。

 尖閣有事の際には、少人数が暮らす有人離島に向かい、防衛隊と入れ替えで住民を回収・避難させ、海戦後の救助時には、行きは救命ボートなどを満載し、帰りは可能な限り救助者を回収できるでしょう。
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Unknown (ねこまんま)
2023-12-02 02:10:03
US-3の開発は、金額を考えると地方空港の扱いにメスが入らないと厳しいと思いますが。 維持も楽では無いようで、とある地方空港がヘリポートと太陽電池畑になっていました。 飛行場の維持が難しいなら陸上機でなく、飛行艇の選択もありかと思う、観光旅行中のワンシーンでした。
次に軍用機と旅客機の性能が違っても良いとの思いもあります。最近、英アエラリスとの提供や旅客機への認証の動きもあるので、US-3は一般旅客機用に安全面とコストパフォーマンス重視の機体を開発し、救難救助機用に高性能な機体の開発して頂ければと思います。
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