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【京都幕間旅情】鞍馬寺,今昔物語集と扶桑略記に記される鞍馬と鑑真高弟鑑禎奉じた毘沙門天と御寺のはじまり

2023-03-01 20:23:54 | 写真
■新しい堂宇の古い御寺
 鞍馬寺は平安遷都以前の即ち京都よりも古い歴史を今に伝える御寺なのですがはじまりという部分を辿ってみましょう。

 鑑禎が創建した寺院。創建は宝亀元年こと西暦770年にさかのぼる寺院であり、京都の平安遷都前の寺院で今もその地にある寺院はそれほど多くはありません、鑑禎は唐の出身の若き僧侶で、日本の仏教に大きな変革をもたらした鑑真とともに日本にやってきました。

 鞍馬寺はわかりにくい寺院、こういうのは教義も門徒でなければわかりにくいのかもしれませんが、江戸時代に何度も火災に見舞われており堂宇が新しいことと無関係ではありません、令和2年7月豪雨にも大規模な土砂災害に見舞われ、僥倖にも堂宇は無事でしたが。

 金堂、三尊尊天を奉じる金堂は1971年の、つまり戦後も戦後の昭和中期に再建されたものですし、多宝塔はもともと金堂東側にあったものが江戸時代後期の火災で焼失、再建されたのは昭和時代の1960年、仁王門も1891年に焼失ののち再建されたのは1911年のこと。

 仁王門は、しかし焼失前には平安時代末期の寿永年間、西暦では1182年から1184年の元号ですので鎌倉時代の入り口ということですが、この頃に造営されていたという。すると源義経と鞍馬天狗の時代にはまだないものの、その直後という歴史はあったということで。

 多宝塔と仁王門の間を、徒歩で登ることもできなくはないのだけれども、結ぶケーブルカーでは待ち時間のさなかに録音方式の寺の由来を聞くことはできるのですが、サナートクマラの信仰についての由来となりますので、少々驚かさせるのです、その寺の始まりは。

 鑑真が唐から伴ってきた高弟の中でも最年少であったという鑑禎、日本において毘沙門天を祀る草庵を造営したのが、この鞍馬寺の始まりといいます。ただ、鑑真とともにいまの鞍馬山に寺院を造営したのではなく、宝亀元年に草庵を造営したといい、鞍馬はそのさき。

 毘沙門天を安置した鑑禎、宝亀3年こと西暦772年に夢のお告げがあったといい、山城国の北方に峻険や山々が並ぶところに白馬が宝物を湛えた鞍とともに躍進する夢を見たために、当地へと向かった、こういう法話が鞍馬蓋寺縁起、寺伝には記されているといいます。

 鞍馬蓋寺縁起、説話的に記したものであり当時の情勢を考えるならば寄進された土地のうちの一つが山城国北部にあったと理解するべきなのかもしれませんが、白馬の鞍にで鞍馬という名を説明したものなのかもしれません。ただ、鞍馬蓋寺縁起のみにしか記載がない。

 南都奈良、鑑禎が創建した寺院であることは確かといいますので、平安遷都には旧都平城京における仏教勢力の拡大とともに政教分離を図ったという桓武天皇の施策による平安遷都と京都造営にあっても、南都の影響はあったという部分記したもう一つの説話といえる。

 今昔物語集と扶桑略記には、他方で鞍馬山と鞍馬寺についてのもう一つの記載があり、延暦15年こと西暦796年に造東寺長官に補職されていた藤原伊勢人が、自らの観音堂を造営するべく探し出した適地が鞍馬で、すでにあった毘沙門堂を基に寺院を造営した、とも。

 扶桑略記にも並ぶこの鞍馬寺の始まりについて、ふと思い出すのは清水寺と坂上田村麻呂の所縁というもので、この清水寺観音堂が平安遷都における日本の軍事と造作という、蝦夷討伐と定期的首都遷都に終止符を打った歴史は清水寺拝観の際にふれたところでした。

 坂上田村麻呂、黒漆剣という重要文化財に指定されています太刀がこのお寺に残されているのですが、実は清水寺と所縁ある坂上田村麻呂もここを拝観の際に太刀を奉納していまして、平安遷都前の庵が平安遷都とともにおおきくなっていった歴史を偲ぶことができる。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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