北大路機関

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現代日本と巡洋艦(第十一回):日本に必要な巡洋艦案と新時代の長射程艦砲技術

2015-07-06 21:49:11 | 防衛・安全保障
■新技術の長射程艦砲
前回、巡洋艦に搭載すべき装備についての視点で艦砲を扱いました、近年はロケット補助推進方式の長射程艦砲が開発されている、と。

しかし、現代にはロケット補助推進方式ではなく、従来型砲弾に新しい潮流が形成されつつあります。こんごう型ミサイル護衛艦、たかなみ型護衛艦が搭載するOTOメララ127mm単装砲は、新型砲弾としてボルケーノ射程延伸弾が開発されていまして、これは戦車砲のAPFSDS弾の方式を応用したもの。

APFSDS弾のように装弾筒を着用し投射することで、射程を120kmと従来の艦対艦ミサイルなみに大きく向上させたものがあります。ボルケーノ射程延伸弾は、GPS誘導弾頭と赤外線誘導弾頭が開発中で、GPS誘導弾頭は海上からの連続発射により高度な対地攻撃能力を発揮させます。

特筆すべきはAPFSDS弾と同様に127mm砲弾の口径に比して、弾体が小型化されている点でして、これは威力を低下させます、威力低下は負の要素とうけとめられがちですが、付随被害の局限に寄与するという点を忘れてはなりません。赤外線誘導弾頭を装備するボルケーノ砲弾は、対艦用として開発されました。

弾速が初速で音速の三倍程度、さらに弾体が非常に小型ですので、どの程度誘導できるのか、捜索範囲はどの程度の海域なのかについての赤外線誘導精度が大きく性能を左右することとなるでしょうが、小型は即ちレーダー反射面積の低減を意味しますので、射撃前の目標位置情報という命題は残りますが、対水上戦闘を大きく変革する可能性をもつもの。

AGS155mm、ズムウォルト級駆逐艦用に開発された新型砲で、対地攻撃を重視したものです。かなりコストが大きくなるもので、重量は106t、非常に重い砲であるとともに最新型ですので有償供与が実現するかは難しいところですが、軽量型のAGSーLは51t、AGSは毎分10発の射撃能力にたいしAGS-Lは毎分6発と、低く対空戦闘能力には対応できません、が。

AGS-Lのマウント重量51tは、確かに重いですが、ヘリコプター搭載護衛艦はるな型、しらね型のMk42/73式127mm単装砲のマウント重量は58tですから、これよりは若干軽く、実際AGS-Lは対地攻撃能力向上の一環としましてアーレイバーク級ミサイル駆逐艦のMk45/127mm砲の代替として改修のさいに搭載する検討はなされています。

北大路機関:はるな くらま
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OTOメララ (21世紀の艦砲射撃たる対地砲撃)
2015-07-07 01:46:09
これらOTOメララ社製製品については、各国の実施している演習や実戦でもその高い品質均一性が知られている事は説明するまでもないですが、今回のボルケーノ砲による精密射撃については未だ実戦による戦果が挙がっていませんのでなんとも評価しかねます。
しかし100km以上の精密射撃がGPSなど最新誘導兵器のひとつとして戦力化される事があればやはり水上戦闘の有り方に変化をもたらす程のインパクトになるかもしれませんね。
我が国の防衛体制(特に中共による直接当初占領事態)に効果的な火力投射を実現するために、今後非常に重要なのは、意外にも現代に蘇った「アウトレンジ」的艦砲射撃ではないかと思い始めています。想定されるのは規模の小さな無人島ですから中口径である艦砲射撃であっても、その速度と連射性及び経済性(あくまでも対地ミサイルや、空からのJDAMによる爆撃などと比べた場合)に優れており、島嶼奪還部隊が上陸する際に敵の注意の一部を空に向けさせるというだけでも、十分な間接的援助として機能するのではないでしょうか。島嶼部を中心に構成される我が国やフィリピンなどはこのような超長射程型艦砲射撃を検討する価値は十分にあると思います。特に喫緊の課題であるフィリピン海軍については現在保有している旧米国カッターに搭載する事ができるサイズですので、仮にフィリピン共和国全体で使用できる限られた軍事予算であったとしても、艦砲であれば調達できるはずでありまして、彼らに必要なのはミサイル艇ではなく、我が国と同様占拠された島嶼部に対して遠距離から正確に射撃を行う能力だと思う次第。さすればさすがの中共も南シナ海の絶海の孤島たる環礁地帯において、延々と続く砲弾の雨に耐えながら島を占拠し続ける事は難しく、早晩放棄(彼らは戦略的撤退などと発表するでしょうが)させる重要な要因となりえます。比軍こそこの艦砲を調達できるだけした上で、米国からのGPSなど精密誘導体制の足しとなればと良い展開になるのではないかと勘案する次第。まずは艦艇自体の能力ではなく彼らには艦砲を搭載できるだけの数を揃えてもらう事が先決であり、必要であれば要衝となる各島嶼部への固定砲台としての設置も検討するべきでしょう、それでこそ複雑かつ数えきれないほどの環礁を持つ海洋国家フィリピンの生き残る道かと存じます。単年の比国軍事予算で大半を占めても構わないので調達に向かわせるべきかと思います。もちろん比国の保有ですから彼らの責任の元運用してもらいますが、技術的バックアップは万全として、南シナ海への軍事的均衡としたいものですね。彼らに危機感を増大せしむる事が最優先でしょう。そのための広報活動は強化するべき。
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