北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

戦場はドネツク州へ,セヴェロドネツクとリシチャンシク失陥とドネツ川沿いの州都クラマトルスクへの脅威

2022-07-05 07:00:50 | 国際・政治
■臨時情報-ウクライナ情勢
 リシチャンシク陥落はウクライナの一地方都市が失陥したという以上の大きな意味があります。

 日本はウクライナ戦争の戦訓を御急ぎで洗い出すと共に、それを単なる学究の関心事に収めるのではなく防衛政策へ反映させねばなりません、その理由は単純で、ロシアは日本海を挟んだ隣国であるからです。そしてロシアが北海道や信越地方を確保する政治的蓋然性があれば、日本の非ナチ化やロシア住民迫害等を主張し根拠は無くとも仕掛けてきます。

 日本の地形は機械化部隊の運用には向かないとされますがウクライナ東部二州の戦闘を見る限り本当か、また今回は航空戦力の活躍の場が少ない戦場ですが、火砲に全て依存し得るのか航空機の余地はどの程度あるのか、ミサイル防衛も様々な射程の装備が用いられるため、北朝鮮脅威対応一辺倒のミサイル防衛体制は見直されるべきなのかもしれません。

 ロシア軍はウクライナ東部ルガンスク州全域を掌握した事を受け今後は隣接するドネツク州への攻撃に重点を移すことになる、ウクライナのルガンスク州ガイダイ知事が見解を示しました。ルガンスク州と共にドネツク州は東部二州を構成しており、州都は現在クラマトルスクに置かれています。2014年からのドンバス紛争では戦場となった地域という。

 セヴェロドネツクとリシチャンシクの両市は失陥した、ルガンスク州のガイダイ知事が認めた構図ですが、この両市の陥落は両市の中間を流れるドネツ川の渡河が自由になった事を意味します、ロシア軍は今後、クラマトルスクへ向け侵攻する事となりますが、ドネツク州では既に南部のマリウポリが陥落しており、ドネツ川の確保は大きな意味を持つ事に。

 クラマトルスクはドネツ川沿いにあり、地形障害という視点で見ればウクライナ軍は防衛拠点となる緊要地形が限られています、そしてクラマトルスクの他にもドネツク州には複数の都市があり、ウクライナ軍はどのように防衛を行うか、攻撃の主導権をロシア軍が掌握したままであり、分散すれば各個撃破、集中すれば迂回されるという、懸念があります。

 新しい局面を迎える戦争、セヴェロドネツクとリシチャンシクの両市失陥は、単に東部の主要都市が陥落しただけではなく、北海道で云えば音威子府を失陥した状態に近い、深刻な状況です。ロシア軍は先ず東部二州の確保を重点目標としており、緒戦でハリコフやキエフとオデッサと共に東部二州を狙う全方面作戦を執らなければ既に占領され得た場所だ。

 ロシア軍の行動で心配されるのは、思い切った迂回攻撃を行いクラマトルスクを一挙に確保する事です。これは下手に戦闘を展開するならば緒戦の様に街道沿いに損害を増やすだけですが、気になる事例が。これは2019年にリビア内戦において実施された“尊厳の氾濫作戦”で執られたのですが、全てを迂回し一挙に機動力を活かして重要都市を狙うという。

 ウクライナ軍の防衛配置や部隊編成については発表されている情報が限られており、一概には言えませんが、作戦部隊の集合分散が迅速に安納となる機械化部隊主体ではない場合、ロシア軍がウクライナ軍防衛拠点全てを迂回しクラマトルスクを電撃制圧する選択肢は有得ます、防衛拠点を機動力で全て迂回したのが、上記、尊厳の氾濫作戦の特色でした。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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