北大路機関

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新防衛大綱とF-35B&EA-18G【14】F-35B,護衛艦搭載と空母運用を隔てる弾薬搭載の壁

2018-04-25 20:06:45 | 防衛・安全保障
■艦上固定翼哨戒機の構想
 舞鶴の護衛艦ひゅうが、佐世保の護衛艦いせ、横須賀の護衛艦いずも、呉の護衛艦かが、全通飛行甲板型護衛艦は四隻揃う。

 ひゅうが型ヘリコプター搭載護衛艦、いずも型ヘリコプター搭載護衛艦はF-35B戦闘機を固定翼艦上哨戒機として搭載し、運用することは出来るでしょう。しかし、F-35B戦闘機を運用する航空母艦としては使用できない、という視点、これはF-35Bを固定翼艦上哨戒機としてではなく、戦闘機として航空打撃戦や制空権確保に用いる場合を示すのです。

 F-35B戦闘機を搭載するには、整備能力と弾薬運用能力や燃料搭載能力が必須となります。整備能力については、もともとF-35Bがアメリカ海兵隊やイギリス海軍において運用を想定し、狭い艦上での整備は勿論ですが野整備をも想定している航空機です。また燃料についてもヘリコプター搭載護衛艦は元々哨戒ヘリコプター用の大量の燃料を搭載しています。

 護衛艦の全通飛行甲板にF-35B戦闘機を並べて運用する事は、燃料や整備区画のほかに整備要員の収容能力も必要となりますが、ひゅうが型護衛艦、いずも型護衛艦ともに科員区画の二段ベッドを三段ベッドに転用する事で収容力を強化できますし、もともと便乗者の乗艦を想定し余裕ある設計を採っています、整備員を受け入れる能力もあるといっていい。

 空母として、それならば完全に運用できるのか、と問われますと、大きな問題は弾薬搭載能力です。弾薬は無造作に艦上や格納庫に並べる事は出来ず、定期的にミサイルコンテナの整備を必要とします。F-35Bが航空戦闘を実施する際には、AIM-120D-AMRAAMを2発とAIM-9Xを2発搭載しますが、この程度であれば十数発程度追加搭載は簡単でしょう。

 しかし、制空戦闘を実施するには少なくとも飛行中隊規模、6機程度は搭載しなければ、勘定での緊急発進の待機さえできません、前述したイギリスのインヴィンシブル級軽空母でもハリアー攻撃機を当初5機搭載、迎撃能力や戦力投射任務にあたる際には9機程度を搭載していました。6機搭載3任務飛行の弾薬を考えた場合、72発のミサイルが必要となる。

 制空戦闘を実施する場合、F-35Bはミサイルの機外搭載が可能です。これによりミサイルがレーダーに反射するためにステルス性は損なわれますが、機内兵装庫へAMRAAM4発を搭載した上で、主翼にAMRAAMを8発、AIM-9Xを2発搭載可能となり、仮に6機分を搭載した場合は一回の出撃でAMRAAMだけで72発、3任務飛行を行う際には216発要る。

 航空母艦がどの程度の頻度の戦闘を行うのかは運用により左右されますが、参考までに標準艦載機数が固定翼航空機52機とヘリコプター15機であるニミッツ級原子力空母で24時間の出撃機数は240機を想定、最新鋭のジェラルドフォード級原子力空母は電磁カタパルト採用等で将来的に270機を想定、24時間で3から4の任務飛行を想定しているようです。

 AMRAAMを216発、ひゅうが型の弾薬庫容積は弾薬庫専用エレベータを有するなど決して小さなものではありません、確証はありませんが搭載できる余地はあるでしょう。しかし忘れてはならないのは、F-35Bは統合打撃戦闘機であり、航空母艦として運用する際は戦力投射任務に際し、JSM空対地ミサイルやJDAM精密誘導爆弾を搭載せねばなりません。

 F-35Bを全通飛行甲板型護衛艦へ搭載したらば固定翼艦上哨戒機としてステルス性を活かした索敵任務や、わが方へ艦隊攻撃に際し防空戦闘を実施する事も可能ですし、JSMを搭載し運用した場合、艦隊間戦闘では相手に対し従来とは比較できない程のプレゼンスを発揮できます。しかしこの能力は制海艦としての任務であり、航空母艦運用ではないのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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