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F-2後継ニッポンFS-XにF-22&F-35日米共同開発案急浮上【1】アメリカLM社の非公式提案

2018-04-24 20:18:00 | 先端軍事テクノロジー
■ニッポンFS-Xにロッキード案
 ロイター通信20日付“空自F2後継機、米社がF22とF35両機ベースの開発案打診”驚きの報道がありました。

 航空自衛隊の次期戦闘機について、F-22戦闘機を原型としてF-35戦闘機により培われた新技術を応用した日米共同開発の提案がアメリカロッキードマーティン社側よりなされた、驚きのロイター報道がありました。F-2戦闘機の後継機なのだからF-22といっても“2”が一つ増えただけ、というような簡単なものではなく、輸出不能といわれたアメリカ製第五世代戦闘機の示唆です。

 F-22戦闘機は現在航空自衛隊が配備を開始したF-35戦闘機に先行する世界初の第五世代戦闘機、実戦運用から世界最強の制空戦闘機というアメリカ空軍のF-15戦闘機の後継として開発され、制空戦闘機の上を行く航空支配戦闘機と呼ばれる機体です。一方、F-22は制空戦闘に特化し過ぎた為、多用途戦闘機として汎用性を高めた機種がF-35戦闘機、となる。

 F-35戦闘機を導入する航空自衛隊ですが、当初、F-4戦闘機後継機として構想されていたのはF-22戦闘機でした、強力なエンジンと空中ではハガキ一枚分にしか反応しない徹底したステルス性能、レーダーや電子戦装置にて来襲する戦闘機が気付かぬまま優位な方向から一方的に撃墜する、F-22が航空支配戦闘機と誇示される背景には圧倒的高性能がある。

 航空自衛隊は2000年代前半、小泉政権時代に旧式化したF-4戦闘機、原型機の部隊配備は1959年という旧式機の最新型、その後継機にF-X選定を構想していましたが、F-22戦闘機導入への政治的障壁は意外なほどに高いものでした。実際、F-4が同盟国友好国へ輸出され実に5000機もの大量生産を実現したのに対し、F-22は元々輸出を想定していません。

 イージス艦きりしま情報漏洩事案は、こうした最中に発生しました。本事案は海上自衛隊の慢性的予算不足を背景に幹部自衛官が不足する業務用PCに代えて私物PCにて作業していたところ、ファイル交換ソフトを通じ機密情報が漏洩した事案です。本件事案を重く見た防衛省は、レーダー更新計画等幾つかの重要施策を中止し官用PC大量取得を行いました。

 イージス艦きりしま情報漏洩事案は、直接的にはF-22取得への交渉へ影響は及ぼしていない、しかも日本政府としてアメリカ政府へF-22戦闘機の有償軍事供与を正式打診する前の時点ではありましたが、事前調査の形で実質水面下での検討や研究が行われていた時期であり、高度な機密性を有するF-22の導入へ間接的影響を及ぼしたことは十分あり得ます。

 EF-2000戦闘機やF-15E戦闘爆撃機、次期戦闘機はF-22ありきであった一方、先んじて供与を要請したオーストラリア政府がアメリカ政府に公式に第三国移転不可能との結論を突きつけられ、航空自衛隊F-X選定は文字通り暗礁に乗り上げ、防衛省がF-35戦闘機へ正式決定したのは民主党政権時代に入ってからの事でした。しかし、F-22を求める声は続く。

 F-2戦闘機、航空自衛隊次期支援戦闘機としてF-1支援戦闘機の後継として1980年代より開発され1994年に完成した日米共同開発の支援戦闘機です。当初は国産開発を目指していましたが、政治的理由から日米共同開発へと落ち着き、主任務は対艦攻撃と航空阻止戦闘、続いて制空戦闘、この為、完成当時は要撃機と区別し支援戦闘機と区分されていました。

 日米共同開発、といいますと当初の日本が求めていたのは国産開発による第五世代戦闘機の完成でし。この為にステルス性を最優先し航空力学を無視した機体形状を航空機に仕上げる為のCCV実験機を筆頭に様々な構成要素を独自開発していましたが、当時は日米貿易摩擦が最大の政治課題、アメリカはF-16戦闘機を対日貿易赤字相殺へ調達を要求したほど。

 FS-X,とよばれた新支援戦闘機計画は結果として、F-16戦闘機を原型に日米共同開発とし、日米共同生産体制を採る、という玉虫色の結果で妥協が成立しています。もっとも、電子戦技術や航空戦闘等様々な装備体系と戦術要求の集大成である戦闘機を日本が独自にプログラムマネジメント出来たかは疑問符も残り、“妥協”に見せかけた“妥当”ともいえます。

 F-2戦闘機はシステムとしては完成度が高いものでした、しかし、制空戦闘を第一とする航空自衛隊部内では対艦戦闘重視の機体は海上自衛隊の任務であり航空自衛隊は防空第一とする意見があり風当たりが強く、一方、技術研究本部と現在の防衛装備庁中心に完全な純国産戦闘機であればF-2以上の制空戦闘にも完成度の高い戦闘機を開発できたとの声も。

 将来戦闘機、F-2戦闘機後継機こそは潤沢な予算と十分な開発期間を投じて納得のいく機種を開発しようと機運が残る中ではありますが、安全保障情勢緊迫化に伴う日米空対空戦闘能力強化や防衛協力強化の必要性、日本国内の秘密保全法制整備、F-35戦闘機に関する日本最終組立FACO施設整備等、状況が変わりF-22改良型共同開発が模索されたのでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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