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【防衛情報】F-2後継機と米F-16後継准第五世代機構想,T-7A高等練習機とAT-6E軽攻撃機

2021-04-13 20:15:45 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 F-2後継機開発を考える上で興味深いアメリカ空軍の話題とT-7Aレッドホーク練習機やAT-6Eウルヴァリン軽攻撃機の話題などを。

 航空自衛隊はF-2戦闘機後継機の開発を本格化させます。これはF-35戦闘機の第五世代戦闘機を上回る第六世代戦闘機の開発開始と理解されていますが、実際のところ同じように第六世代戦闘機の開発を進めるイギリスでは、その定義を安価で取得性の高い点、整備の自動化による運用費用低減として挙げています。そこで今回はアメリカを視てみましょう。

 アメリカ空軍のチャールズブラウン参謀総長はF-16戦闘機の後継機となる准第五世代戦闘機の必要性について発言、新型戦闘機はF-16戦闘機の能力全般を保持しつつ超音速巡航能力やデジタル情報共有能力等について充分な第五世代戦闘機に準じた性能を有する、第五世代戦闘機には及ばないが第4.5世代戦闘機を凌駕する機体の必要性を提唱しました。

 F-16戦闘機後継機についてはF-35戦闘機が量産されていますが、2500機以上を配備されているF-16を1:1で置き換える水準ではなく、F-35はどちらかといえばF-15CとF-16C双方の一部を置換えている航空機です。そしてF-15については戦闘爆撃機型のF-15FXの生産が開始されており、空軍がF-16再生産の可能性も検討している最中の発言というもの。

 T-7Aレッドホーク練習機、アメリカ空軍ではスウェーデン製JAS-39戦闘機の技術的延長としてT-7A練習機を開発しており、ブラウン空軍参謀総長はT-7A練習機の技術に依拠した、若しくはT-7Aが養成する第五世代戦闘機要員の航空デジタルエンジニアリング技術を応用した航空機を意図しており、参謀総長発言は間接的にF-16再生産を否定したものです。

 上記の通り、アメリカ空軍ではF-16戦闘機後継の動きが模索されている訳ですが、同時に元々F-16後継機として開発されたF-35戦闘機は高性能化と共に取得費用が増大しており、F-16を1:1で置き換えるには十分ではなく、しかしF-16最新型の、F-16Vは性能面でF-35に匹敵こそしないが準じる、既存の性能水準では対応出来ない事を率直に認めた構図です。

 自衛隊のF-2戦闘機後継については、ある意味、F-2は開発当時F-16block42と比較されたものですが、F-2戦闘機の水準では将来航空戦闘においては性能が充分でない点、生き残れない事を示したといえるのかもしれません。そしてアメリカもF-35に続く戦闘機は更なる高度な戦闘機を求めるのではなく、現実に取得否用な費用を求めている点は実に興味深い。

 JAS-39派生のT-7Aレッドホーク練習機、面白い点はF-16後継機の話題に、勿論JAS-39派生機とは明示しないものの、敢えてT-7Aという名称を示した点に興味深い所があります。勿論T-7Aは第五世代機要員の養成に特化した機体であり、要するにこの機体で練成した要員が操縦できるという意味に留まるのかもしれませんが、派生型の可能性もあるのか、と。

 T-7Aレッドホーク高等練習機は新しい話題がありますが、ここで考えたいのは、JAS-39設計を原型とした文字通り高等練習機であるT-7A、同時に日本ではT-4練習機の老朽化が本格化しており、そろそろその後継機を、国産かライセンス生産かを含め考えなければならない時期となっている点です。さて、そのT-7A練習機の新しい話題は以下の通り。

 アメリカ空軍が進めるT-7Aレッドホーク高等練習機についてボーイング社はフルレート生産へ移行しました。この計画は2018年9月に発表された量産計画に基づくもので、ボーイング社は練習機本体351機と地上練習シミュレータ装置46基を92億ドルで生産、またスウェーデンのサーブ社はボーイングへ胴体部分を製造し、供給することとなりました。

 T-7Aレッドホーク高等練習機はボーイングサーブT-Xとして、サーブ社が開発したJAS-39グリペン戦闘機の技術を元に第五世代戦闘機要員養成に特化したカリキュラムを具現化する練習機として開発されています。全くの新型機ですがJAS-39の確たる技術に依拠した事から、計画は36カ月でモックアップから初号機初飛行へと順調に進んだ計画でもあります。

 以上がT-7Aレッドホーク高等練習機に関する新しい話題です。一方、アメリカ空軍ではF-16戦闘機の一部がMQ-9リーパー無人攻撃機などに飛行隊機種転換している事例があるのですが、そこで問題化しているのが、戦闘機要員の不足です。これはF-35を操縦する為には、特にF-35は複座練習型が無い為に一定程度の別の戦闘機での経験が求められるが。

 MQ-9リーパー無人攻撃機などに機種転換されてしまいますと、戦闘機で操縦経験を積む事は出来ません、戦闘機操縦要員には独特の感覚が求められるものの、これは経験意外に数値化する事が難しい、そこでアメリカ空軍では練習機をCOIN機として運用する、ちょっと先進国においては珍しい選択肢により戦闘機要員に高い経験を積ませようとしています。

 アメリカ空軍は2月にAT-6Eウルヴァリン軽攻撃機初号機及び二号機の納入を受けたと発表しました。これはテキストロン社が製造しているT-6中等練習機の派生型である軽攻撃機で、2機のAT-6Eはオハイオ州のライトパターソン空軍基地へ配備されたとのこと。T-6練習機はスイスのピラタスPC-9をアメリカ空軍が採用したもので強力なエンジンを積む。

 ピラタスPC-9はターボプロップ練習機であり、一見初等練習機のような印象を与える機種ですが1600hpの強力なエンジンを搭載しており、ジェット練習機が本来担当していた速度領域の高等練習を可能としています。PC-9を採用した諸国では戦闘機要員までを養成する事例もありますが、アメリカ空軍ではT-38,T-7A練習機を続く高等練習機としています。

 AT-6Eウルヴァリン軽攻撃機はCOIN機、対叛乱ゲリラ航空機に位置付けられるもので武装としては12.7mm機銃や70mmロケット弾と複合光学式アイボールセンサーを搭載し運用しています。この種の航空機は中国軍やロシア軍は勿論、シリア軍やイラン軍水準を相手とした場合でも生き残る事は不可能に近いですが、軽装備のゲリラには威力を発揮する。

 以上の新しい試みです。ピラタスPC-9派生の攻撃機、アメリカ以外の先進国ではNATOも自衛隊もオーストラリア軍も、この種の任務は戦闘ヘリコプターが実施します、何故ならばCOIN機は戦闘ヘリコプターのように競合地域の野戦飛行場ではなく、不整地滑走路なりの滑走路を必要とする為で、即時の航空支援や航空阻止任務には全く不適だからです。

 しかし、アメリカ空軍もAT-6Eウルヴァリン軽攻撃機を主力として用いるのではなく、T-7Aに繋がる中等練習機に、何らかの用途を見い出す事で戦闘機要員を確保しようとしている、興味深い選択肢と云える。いずれにせよ、あのアメリカ空軍でさえも第五世代戦闘機に費用高騰には苦慮している点は、日本の次期戦闘機開発に何か方向性を示すように思います。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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