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ジェラルドRフォード級原子力空母とトランプ大統領のアメリカ空母戦略“戦略的意義の欠缺”

2017-04-04 20:59:29 | 先端軍事テクノロジー
■巨大空母の戦略的意義
 アメリカ空母の位置づけと欠缺について、前回3月23日にロイターコラム“トランプ大統領が誇る米空母戦略の「落とし穴」”についての紹介ともう一方からの視点を紹介しましたが、今回はもう少し掘り下げて考えてみましょう。

 航空母艦の能力、潜水艦への脆弱性や弾道ミサイル脅威など、文字通り無敵ではありませんが、そもそもアメリカの航空母艦が大量建造された第二次世界大戦当時を振り返ればアメリカ海軍空母は決して無敵の存在ではありませんでした、日本海軍との回線により少なくない数が撃沈されており、その上で能力強化と脆弱性払拭等の努力が重ねられ、今日に至る訳です、故に改良できる部分には必要な措置を取ればよい訳です。

 新しい脅威、空母の問題点として、空母を狙う対艦弾道弾という新兵器が開発されつつある点への脆弱性を指摘する声もあります、対艦弾道弾はF/A-18Eや開発が進むF-35C戦闘機の戦闘行動半径よりも射程が長い、この点に対しては大丈夫なのでしょうか。実は対艦弾道弾とはソ連も冷戦時代に開発を試みましたが、弾道ミサイルの長射程は幾らでも延伸できるものの、動く目標をその射程の先に捕捉する事は容易ではありません。

 空母は移動する事が可能で、巨大な航空母艦も大洋では非常に捕捉が難しい点目標であり、動ごけい陸上基地とは根本的にその位置づけが異なると共に、艦隊護衛艦はイージス艦が多数配備されている事から、イージス艦の弾道ミサイル防衛能力と共に、仮に捕捉できたとしてもミサイル迎撃能力が高く、更にイージス艦は敵哨戒機や長距離無人偵察機など、索敵手段を確実に破壊する能力を持ちます。

 対応策があるのに対処していない、という視点も必要です。航空母艦の能力には問題はない、と考える一方、潜水艦脅威への備えがアメリカ海軍ではかなり軽視されている点は無視できません。冷戦時代には空母艦上機としてS-3対潜哨戒機が配備され、駆逐艦やフリゲイトに配備される対潜ヘリコプターよりも大型の対潜哨戒ヘリコプターを搭載していましたが、現在、駆逐艦の全てはイージス艦となり対潜用のスプルーアンス級駆逐艦等は全て除籍、潜水艦への備えは非常に希薄となっています。

 潜水艦脅威に対して、アメリカ海軍も全く打つ手なしというわけではありません、対潜任務に当る哨戒機へ従来のP-3C哨戒機を更新するP-8A多目的哨戒機とRQ-4無人機との連携能力が整備されましたし、友軍原潜の支援や陸上哨戒機の支援、新たに無人ソナー船等をセンサーとする研究等が進んでいますが、潜水艦脅威が本格的に再来しているという認識を充分に共有し、その対抗策を構築する必要性に気付く点でしょうか。

 例えば沿海域戦闘艦インディペンデンス級やフリーダム級への対潜掃討能力強化改修の実施による水上戦闘艦勢力の、対テロ戦争型装備体系を従来型戦闘へ対応する体制への転換、また、現在のSH-60を上回る艦上哨戒機の調達や固定翼艦上哨戒機S-3の後継となるCV-22可動翼機を原型としたPV-22哨戒機の開発や、航空母艦外縁を防護する対潜中枢艦、自衛隊の全通飛行甲板型護衛艦のようなものが必要となるかもしれません。

 忘れてはならないのは、空母には50機の艦載機が搭載されているという点でしょう。ニミッツ級航空母艦は甲板係留を含め80機程度の航空機を搭載可能です。この為、空母艦上には艦載機を更に搭載する余裕があるのですが、対潜航空機や例えば対艦弾道弾攻撃に先立つ索敵機を確実に破壊する無人戦闘機等を搭載する事で、航空母艦の脆弱性はかなり払拭できることは確かです。まだまだ搭載能力、そして発展余地は、ある。

 ポテンシャルとプレゼンスという意味を航空母艦は有している事を忘れるべきではないでしょう。航空母艦は乗員と航空要員併せ5000名が乗艦する洋上の巨大航空基地です。併せてイージス艦数隻と攻撃型原潜が空母機動部隊として戦闘群を構成します。この規模の部隊へ対抗する海軍力は勿論空軍力を持つ国も限られており、それだけの規模の部隊を派遣するには背景に政治的意志と平和維持への示威という任務も含まれるわけです、これは戦略爆撃機や陸軍機甲師団では補えるものではないものです。

北大路機関:はるな くらま
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コメント (2)
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