北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

特集:平成27年度防衛予算概算要求概要⑳・・・自衛隊の特殊武器防護能力拡充Ⅲ

2014-11-05 23:22:48 | 防衛・安全保障

◆市街地や基地施設の除染も任務へ 
 特殊武器防護に関する来年度予算概算要求第三回は、施設内部除染と排水処理について。
Ncimg_2281  特殊武器攻撃は、化学剤による特に地域汚染を目的とした糜爛剤の散布などが行われた際、完全に密閉され通気口に化学剤対応フィルターを装着していない場合には室内に侵入します。そして糜爛剤は家屋の軒下や扉の隙間等にも長期間残留するため、例えば行政やライフライン施設がこの種の攻撃を受けた際には施設内部除染が必要となるのです。
Ncimg_0537  施設内部除染は平成27年度防衛予算概算要求概要において自衛隊に付与される新しい特殊武器御対処能力として要求される能力であり、自衛隊では従来施設内部の除染はあまり重要視されてきませんでした。また、この能力は航空基地や艦艇基地に対する特殊武器攻撃への除染にも寄与することでしょう。
Ncimg_0935  特に海上自衛隊基地や航空自衛隊及び海上自衛隊の航空基地に着いて、重要区画は必要な措置が行われ、人員に対しても防護装備が付与されてはいるのですが、基地全体が特殊武器に対応しているのかと問われたならば、残念ながら十分とは言えない部分があり、自衛隊の戦闘能力維持からも重要な施策です。
Ncimg_1382  その方法ですが、施設内状除染機材、ガス除染装置、等を新たに取得することとなります。これら除染機材の詳細は現在のところ発表されていませんが、新たに調達される新除染セットの取得として8両5億円の要求があり、この新除染セット、現在の除染車の後継装備という位置づけの装備に含まれているのでしょう、これらは順次除染車を置き換える事となります。
Ncimg_2327_1  施設用除染機材は、現在の携帯除染器が背負い式で中和剤を背負ったタンクから携行するノズルにより散布されている方式から可搬式の除染装置へ施設外に待機する除染車両より中和溶液を補充し、一機で比較的広い範囲に渡る複数室内を効率的に除染する方式に置き換えられるもの。
Ncimg_2469  ガス汚染装置は燻蒸方式での置換と無毒化を行うもので、やはり車両から薬剤溶液を補充しつつガスが充満する室内へ噴霧装置を挿入し、燻蒸することでガスを無力化します。基本糜爛剤よりも生物剤のような燻蒸方式での除染が一般的な装備を想定してのものなのかもしれません。
Ncimg_2637  現在の装備でも過去の地下鉄サリン事件では、除染作業を実施する事は出来ていましたがやはり背負い式では携行できる薬剤に限界があり、化学科隊員に普通科隊員を増援し除染したとしても施設が大型の場合にはどうしても時間を要することとなりますので、新装備に置き換え、広範囲の除染を同時に展開する必要性があったのでしょう。
Ncimg_2757  他方、高圧噴射装置が従来の化学防護装置の範囲内であるため、除染に核汚染が想定されておらず、地域除染能力へダーティーボムのような核汚染機能を有する大量破壊兵器による攻撃が行われた際の対処能力整備は、今後の課題、ということになるのでしょうか。我が国の周辺情勢を見た場合、必要な装備です。
Ncimg_2766  排水処理能力、こちらも新たに導入される能力です。廃液処理装置が要求され、これにより特殊武器除染に用いた排水などを現在のそのまま廃棄する方式から、排水を通じての二次被害、こちらの二次被害は野戦による戦術的な危惧は低く民生被害の部分が大きいのではないかの考えますが、こちらについても重視されることとなります。
Ncimg_7252  廃液処理装置は車両や航空機の精密除染などを行う際に除染機材そのものの排水を堰で囲うことで漏えいを防ぎ、除染による廃液を処理装置により濾過することで無毒化するという能力をもちます。福島第一原子力発電所対処の御潜水ではなくあくまで廃液、中和されているもので危険性は少ないのですが、必要として導入されるものなのでしょう。
Ncimg_9648  最後に、化学剤検知器(改)の取得として76式の取得に3億円が要求されています。新型ではなくすでに装備開始されているもので、化学防護隊や特殊武器防護隊の他にも、連隊や大隊規模の部隊に対し本部管理中隊経も配備されるもので、これにより迅速な検知能力を整備し、特殊武器による被害を迅速な防護装置装着へ先んじて警報を出し、防ぎます。
Ncimg_9769  施設除染は海上自衛隊と航空自衛隊にとりこれまでの能力整備の課題として当方も挙げてきましたが、改善されることとなります。加えて自衛隊の特殊武器への対処能力が強化される方向性が大量破壊兵器による国民への被害からの防護を現行能力の延長で行うのではなく主体的に強化するという施策だ、ということが重要な転換と言えます。

北大路機関:はるな

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