北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

F-4戦闘機延命改修は不可能なのか? 次期戦闘機F-35開発遅延問題と共に考える

2011-12-28 23:54:14 | 先端軍事テクノロジー

◆2005年までF-104を第一線で運用した空軍も

F-35を制式採用した航空自衛隊にとり、F-4はいつごろまで運用されることになるのでしょうか。

Img_9352F-4EJ改、結局今年は主要航空誌等では大きく扱われることもありませんでしたが、今年はEJ型初飛行40周年、F-4米空母部隊配備50周年という節目の年にあたりました。臨時飛行隊が百里基地に新編されたのが1972年、来年は部隊配備40周年、ということになります。

Img_8042しかし、後継たるF-35は、航空自衛隊が要望している2016年引き渡しも、開発計画の遅延により難しい、とされている状況です。遅延の要因は機体各部でのクラックの発見、ということですから、複合素材は補強材を取り付けるとその部分からクラックが生じる、実用化されて間もない技術ですので、まだまだ予断は許しません。すると、初度作戦能力を獲得するまで、恐らく2020年代の半ばまではF-4を運用しなければならないことになるでしょう。

Img_5156実はF-35,2008年に実用型が生産開始となる計画でした。現時点で8年の遅れ、これが更に2年程度遅延する、ということです。笑わずに最後まで読んでいただきたいのですが、当初見積もりでは空軍仕様F-35Aはユニットコスト2800万ドルで2036機を導入予定、海兵隊仕様F-35Bのユニットコストは最大3500万ドルで642機取得を計画、空母艦載機仕様F-35Cは最大3800万ドルの見積もりで300機の導入予定でした。

Img_6947_1しかし結果としてF-35Aのユニットコストは米空軍取得費用で1億2000万ドルと四倍以上に膨れ上がり、英海軍は空母艦載機としてF-35Bの取得を計画していましたが一機当たり1億ポンドという見積もりが三年前に出され、空母整備計画そのものを再検討する状況に陥っています。米空軍はF-22の調達計画を見直し、その分F-35Aを下方修正されつつも1763機確保、F-35Bは340機、F-35Cも340機の生産は見込まれています。

Img_8049まあ、これだけの大風呂敷です。よもや、海空軍共用万能戦闘機をめざし機体が肥大化しすぎたF-111のように生産計画を劇的に大幅縮小、ということはないでしょう。というのも、開発費がかかりすぎていて、代替機を新規開発する選択肢がないため、アメリカはこの機体をどうにかするしかないのですから。

Img_8164すると、航空自衛隊はF-4の運用をF-35が導入されるまで続けられるのか、という問題になってきます。現実的には、F-35の生産メーカーであるロッキードから同社製F-16のリースを受ける、中継ぎの機体としてEF-2000やF/A-18Eなど偵察機などにも転用できる手ごろな戦闘機を探す、米空軍からF-4はもうないので航空自衛隊も運用するF-15のリースを探す、イギリスが早期退役させたトーネードF-3の取得を泣きつく等が考えられるかもしれません。

Img_8247_1ですが、ここはひとつ、F-4をライセンス生産した三菱重工と共に、ファントム2020計画として、F-4の延命計画を模索してはどうでしょうか。F-4は米軍では1996年に全機退役している過去の機体ですが、ドイツ空軍ではレーダーを新型に換装しAMRAAMの運用能力が付与され最後の運用が行われていますし、トルコ空軍ではF-4E-2020改修として2020年代までの運用を期した改修を実施、最近も実戦に投入されています。

Img_8331航空自衛隊は1984年にF-4EJをF-4EJ改へ改修する際に、レーダーを旧式化したAPQ-120からF-16Aと同程度のAPG-66Jとしているほか、空対艦誘導弾ASM-1/2を運用可能なセントラルコンピュータJ/AYK-1を搭載、このほか慣性航法装置や電子戦自衛装置等を新型に換装しています。しかし、これは80年代の技術ですから、2010年代の技術で改めて改修を行ってはどうでしょうか。

Img_8432特にF-4については、機体の経年劣化による老朽部分の問題を見落とすことはできません。補強材ではなく、機体そのものを分解し、老朽部分を新規製造した部品と入れ替える必要があるでしょう。レーダーをF-4に規模と重量の上では搭載可能とされるF/A-18EのAPG-73等に換装し、F-35と共に導入されるであろうAMRAAM空対空誘導弾の運用能力を付与させ、米空軍で配備が進む新鋭光学照準装置AAQ-33スナイパーポッドを搭載すれば、相当程度の脅威に対抗できる航空機となるでしょう。

Img_8689_1なにやら、季節がら、ぼくのかんがえたさいきょうのえふよんせんとうき、的な発想になってしまっていますが、これは承知の上で。F-15近代化改修に要する40億円程度に匹敵する費用を要する計画ですが、新規騎手を導入するよりは安価であり、AAQ-33はF-4完全退役後に別の航空機に搭載することも可能です。ほかの中継ぎやリースの機体を導入し、整備基盤を整え、教育を実施し、搭乗員と整備員を養成する、これらコストと比べて考えるべきだと考えます。

Img_8841_1最後になりましたが楽観的要素。イタリア空軍はF-104をなんと2005年まで運用しています。人気コミック”ガンスリンガーガール”の世界のイタリア軍は豪華絢爛ですが、地対空ミサイルはいまもナイキ、主力戦車アリエテ開発までは戦車は浮かず飛ばず、装甲戦闘車ダルドは開発後実戦配備まで予算不足から20年近く放置、海軍は大時代的な巡洋艦が最近まで維持され、そして戦闘機にF-104がありました。しかし、動態保存していたのではなく第一線で運用可能な性能を維持したのが重要です。

Img_8937イタリアのF-104は、機体が原型からエンジンやレーダーが徹底的に改修され、早い時期にレーダー誘導のスパロー空対空ミサイルが搭載され、最後にはAAM-4のような自律誘導型区謳いううミサイルの運用能力を獲得しました。さすがにF-104だけでは、とEF-2000戦闘機の導入と開発に参加しましたが、それまでの繋ぎとして1993年にイギリスからトーネードF-3の貸与を受け、続いて2000年代からアメリカからF-16の貸与を受けています。しかし並行してF-104の改修と運用を続けていたのです。2005年にF-104はその長い任務を終えましたが、この話を聞いたうえで、F-35引き渡しまでの期間、航空自衛隊も一つ、必死になってF-4を補強し改修し延命し運用してはどうか、と問われれば、また一つ違った答えが浮かんでくるのではないでしょうか。現場は大変でしょうけれどもね。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする