北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

富士山麓の砲声 陸上自衛隊富士総合火力演習と東富士演習場

2007-08-22 11:59:12 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

■富士総合火力演習と天候

 富士総合火力演習と富士学校の歴史について、簡単に紹介したが、本日は富士総合火力演習と東富士演習場を語る上で、欠くべからざる内容を、経験上得た点とともに紹介したい。

Img_0386_4  90式戦車は、その主砲である120㍉滑腔砲を、如何に悪天候下であっても命中させる。これは熱線暗視装置により目標から発する熱を霧や雨、霞を越えて捕捉し、自動装填装置により揺れる車内でも迅速に装填した砲弾を砲安定装置により走りながらでも必殺の砲弾を放つことが出来るからである。

Img_6541  しかしながら、富士総合火力演習は、特に一般公開演習について、陸上自衛隊広報の一環であるので、標的が見えないと撃つ意味が無い。同時に標高の高い東富士演習場は、天候が崩れることで有名。富士教導団の隊員に聞いてみると富士山の稜線が見えなくなり、霞が湧き始めると一雨来る予兆なのだとか。

Scan10013  航空祭などで経験された方もいるかもしれないが、天候悪化は航空機の天敵である。特にプログラム冒頭にある近接航空支援の展示は低空に降りる為、天候悪化では危険防止の観点から中止されてしまうことがおおい。実際、05年、06年の本番では中止されている(写真は02年撮影)。

Img_01451  また、誘導弾に関しても射撃展示が中止になることがある。写真は2005年に撮影した96式多目的誘導弾の発射。重量60kgもの誘導弾を発射し、射程は10km前後といわれている。戦車の弱点とされる装甲の薄い上部から命中し、この弾体の重量であれば、中型揚陸艦に対しても大きな打撃を加えることが出来る装備である。

Img_0145_1  このミサイルの誘導には、ミサイル先端の光学映像を、ミサイルと発射装置を繋ぐ光ファイバーにより伝達し、地上誘導装置の誘導により命中させるものだが、昨年のアナウンスでは天候悪化により目標が確認できない、とあった。先端の光学装置は熱画像方式といわれているが、標的命中という展示上の問題だろうか。

Img_6687  01式軽対戦車誘導弾は、非冷却型赤外線画像誘導誘導方式により悪天候であっても射撃展示を行うが、戦車の上部攻撃を行うトップアタック方式の誘導は悪天候では展示せず、直接目標に命中させる低伸弾道方式の射撃展示となる場合があった。二発が発射され、05年は一発づつ両方を展示、06年は二発とも低伸弾道方式の命中を展示、という方式であった。

Fh020027  空挺降下も天候の影響を受けやすい展示の一つである。空挺降下は、写真のような大型ヘリコプターからの自由降下傘による展示と、輸送機からの空挺傘696型(または60式)による降下が過去に行われているが、後者は輸送機が発進する入間基地と東富士の天候に左右され、自由降下傘も気流により中止されることがある。

Fh010005  UH-60JA多用途ヘリコプターによるリペリング降下の展示。ヘリコプターに関しては、余程の悪天候でもなければ中止ということはない。実は展示が行われる畑岡射場の隣にヘリポートがある為、展示参加までの時間が短く、天候に対して適宜対応できるという強みがあるからだ。

Img_6963  富士総合火力演習、一般の人が見ることの出来る数少ない実弾射撃の展示であるが、天候については、特に変りやすい為、演習展示のほかに、観覧される方も、雨合羽やポンチョなどの雨具の準備が必要である。他方、やはり熱中症の恐れも充分ある季節と天候なので、水分補給も重ねて重要である。

HARUNA

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