北大路機関

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海上保安庁第八管区海上保安部『わかさ』

2007-04-27 23:03:57 | コラム

■舞鶴海上保安部の大型巡視船

 海上保安庁は、全国を11の管区に分け、わが国周辺海域における警備救難任務にあたっている。今回は、舞鶴基地護衛艦隊集合訓練福井港サマーフェスタの際に撮影した巡視船“わかさ”を特集したい。

Img_1638  護衛艦隊集合訓練撮影二日目、商業港である西舞鶴において艦艇の見学を終えた頃、白い一隻の巡視船がこちらに向かってくることに気付いた。望遠レンズのフレーム一杯に写る船型から“しれとこ”型巡視船であることが見て取れた。

Img_1643  “しれとこ”型巡視船三番船“わかさ”は常備排水量1200㌧、全長77.8㍍、最大幅9.6㍍、喫水5.3㍍で、ディーゼルエンジン二基7000馬力の出力は20ノットの速力を発揮する。公称船型は1000トン型で、航続距離は4400浬と外洋航行に適した型である。就役当時は警告用に40㍉単装機銃、20㍉単装機銃各1基を搭載していたが、現在は20㍉多銃身機銃に換装している。

Img_1644  ブリッジ前方にグリーンのカバーが被せられているのが20㍉多銃身機銃である。他方で、後部マスト直下にある搭載艇は7メートル型警備救難艇で、同型船には標準装備として搭載されている。なお、原作コミック、映画、ドラマともに大ヒットの“海猿”に登場する巡視船“ながれ”はこのタイプシップという設定である。

Img_1646  “しれとこ”型は、1978年11月から1982年3月にかけて28隻が建造された巡視船であり、これにより警備救難能力は大幅に向上したものの、現在では一斉に老朽化を迎えていることもあり、後継船の建造が急務となっている一方で、決して潤沢とはいえない海上保安庁の予算枠内において、予算工面をなんとか行っているのが実情という。

Img_4537  福井港サマーフェスタに向かう途上の一枚。真夏の日本海が醸す広大な情景であるが、同時に海難事故の危険性が高まる期間でもある。第八管区海上保安部では、舞鶴・敦賀・境の海上保安部、浜田・宮津・香住・網代・三国に海上保安署、美保航空基地などを設置し警備救難を展開する。

Img_4517  長大な海岸道路を順調に進む途上、海水浴場の沖合いに“わかさ”が停泊しているのを発見した。国連海洋法条約に基づく新海洋秩序に対応するべく建造された巡視船であるが、海上保安庁の第一任務は“海の安全”ということを端的に示す様子である。

Img_4518  能登半島沖工作船侵入事案、九州南西海域工作船事件というように、わが国近海の情勢は年々緊迫度合いを増し、また、冷戦時代にあっては東西冷戦の最前線として工作船による法人拉致事案や工作員上陸の舞台となっていた日本海であるが、“しれとこ”型巡視船はいましばらく、第一線において任務にあたるのであろう。

HARUNA

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