北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

ウクライナ情勢-ロシア軍A-50早期警戒機また撃墜,各国早期警戒機に突き付けられる長射程地対空ミサイル

2024-02-26 07:00:34 | 先端軍事テクノロジー
■防衛情報-ウクライナ戦争
 A-50早期警戒機が先月に続きまた撃墜されました。ロシア軍のウクライナ侵攻には少なからぬ影響を及ぼしそうですが今回使用されたものよりも射程の長いミサイルをロシアと中国も保有する。

 ロシア空軍はアゾフ海近海のロシア領空圏内においてA-50早期警戒機を喪失しました。ウクライナ軍地対空ミサイルにより撃墜されたものとみられ、ウクライナ政府は撃墜の様子を撮影したという夜間映像を公表しています。A-50早期家回帰はロシア軍が現在8機を運用している早期警戒機ですが1月にも1機が撃墜、その前に地上でも破壊されました。

 ウクライナ側が公開した映像には夜間、IRフレアーのような機体自衛装置を連続作動させる航空機付近で爆発が連続し起こる様子が記録、1発は機体をやや離れた場所で爆発しますが2発目が命中する様子が記録、狙われた航空機はミサイルを回避するためにかなり低い高度まで退避しているものの明けきれなかった様子と墜落後の機体が映されていました。

 A-50早期警戒機の撃墜には不確定情報ですが、ウクライナ軍がソ連時代に運用していたS-200地対空ミサイルが使用されたものとみられます。これは1960年代の古いミサイルではありますが、射程が300kmと非常に長くミサイルの機動性は低いものの戦域後方の航空機などや高高度を飛行する偵察機を撃墜する為のミサイルでウクライナから撃たれたもの。
■防衛情報-ウクライナ戦争
 早期警戒機のレーダー警戒範囲は400kmから500kmで場合によっては射程300kmの地対空ミサイル圏内を飛行する必要があるし空対空ミサイルの長射程型も存在する。

 A-50早期警戒機撃墜は実戦における早期警戒管制機運用の様相を切り替える可能性があります。長射程ミサイルの脅威に対応しているのは我が国航空自衛隊で、ロシア軍長射程ミサイルの圏内付近を飛行する三沢基地や中国軍長射程ミサイルの圏内付近を飛行する那覇基地の早期警戒機には空母艦載機で小回りの利くE-2CやE-2D早期警戒機を配備する。

 E-767早期警戒管制機は後方の浜松基地に配備されていて、本州上空において防空作戦の中枢を担う、としています。アメリカ空軍などは大型のボーイング707旅客機を原型とするE-3早期警戒管制機の後継機として比較的小型のボーイング737を原型としたE-7早期警戒機へ置き換える方針でイギリスやNATOもE-3をE-7へ置き換え、イギリスは完了した。

 E-7早期警戒機はE-3よりは小型ですが、この他にG-550-AEWのような更に小回りに聞くビジネスジェット機を原型とした早期警戒機の配備を進めるポーランドや韓国、既に導入したスウェーデンやイタリアの事例などがあります。他方、同様の状況で運用される対潜哨戒機は、無人機や戦闘機、高い脅威地域での運用方法などが模索されている最中です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【防衛情報】APMアドバンストペオロートモジュールとHALO極超音速航空機発射対艦攻撃プログラム

2024-02-20 20:01:08 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム
 今回はズムウォルト級ミサイル駆逐艦に重点をおいて。しかし例によって肝心の駆逐艦ズムウォルト横須賀寄港の際にしっかり撮影しておけばよかったと反省しつつ。

 アメリカ海軍のズムウォルト級ミサイル駆逐艦は2024年に極超音速ミサイル発射試験を行うとロッキードマーティン社が発表しました。ズムウォルト級ミサイル駆逐艦は満載排水量1万4797tの、日本の自衛隊ヘリコプター搭載護衛艦を除けば世界最大の駆逐艦として建造されたもので、統合電気システムの採用など画期的な水上戦闘艦でした。

 極超音速ミサイルシステムは、当初155mmAGS先進艦砲を搭載し将来的にレールガンを搭載するものと期待されていたものの、肝心のズムウォルト級が当初計画の32隻量産から海軍運用戦略の対テロ作戦偏重への転換などを受け3隻のみの建造となり、155mmAGSそのものが僅か6門しか運用されず量産効果は皆無、維持費のみが掛かる結果となる。

 海軍共通極超音速滑空体、アメリカ海軍は155mmAGSを再検討し、しかしAGSが求められた長距離打撃能力を極超音速ミサイルを2025年までにこのズムウォルト級に搭載することとしました。これは射程2875㎞以上、マッハ12まで加速した後にマッハ8で極超音速滑空するもので、先行して陸軍がLRHW長距離極超音速兵器として配備します。■

 アメリカ海軍のズムウォルト級ミサイル駆逐艦極超音速兵器搭載計画について。この計画は紆余曲折を続けている代名詞的な問題ですが、元々ズムウォルト級ミサイル駆逐艦は155mmAGS先進砲を搭載し、ロケット補助推進段により射程200㎞級の155mm砲弾を搭載する対地攻撃艦により地域紛争を制圧する、フロムザシー構想時代の設計でした。

 AGSは期待されていたものの、砲弾設計に失敗し事実上即応して射撃可能という砲弾がありません、この為に海軍はAGSを撤去し極超音速兵器を搭載する検討を開始しますが、いったん撤去した場合に砲弾が開発できた場合でも再度搭載が難しいとして、2門の艦砲をどちらか維持したまま極超音速兵器を舷側に搭載する方針を検討中です。

 APMアドバンストペオロートモジュールという、ヴァージニア攻撃型原潜用に開発されたトマホークミサイルなどを搭載するVPMヴァージニアペイロードモジュールの発展型がズムウォルト級には搭載され、これによりMk41VLSなどよりも大型ミサイルが搭載可能という。AGSを1基撤去した場合は極超音速兵器を最大4発搭載できるもよう。■

 アメリカ海軍のHALO極超音速航空機発射対艦攻撃プログラムについて、開発を担当するレイセオン社はその試作機の技術審査終了を通知されました。レイセオン社が開発する極超音速兵器は空母打撃群を構成する空母航空団の主力であるF/A-18E/F戦闘攻撃機が搭載機として検討されていて2023年内にそのフィットチェックが行われています。

 F/A-18E/Fは海軍へ第五世代機であるF-35C戦闘機配備と共に最新鋭機の座を譲りつつあるという印象がありますが、ステルス機ではない故に機体外部へ大型の兵装を搭載可能で、射程1000㎞級のスタンドオフミサイルもF/A-18E/Fが搭載を想定し、F-35C戦闘機はJSMミサイルなど射程350㎞程度のミサイルを搭載することともなっていますが。

 HALO極超音速航空機発射対艦攻撃プログラムは、中国の接近阻止/領域拒否戦略に基づく大量の防空艦配備や空対空ミサイルの長射程化に在って、その射程外から迎撃困難な誘導弾により攻撃を加える計画です。今回のフィットチェックはアリゾナ州ツーソンで実施され、今後アメリカ海軍は対艦兵器の極超音速兵器への世代交代に本格的に取り組みます。■

 アメリカ海軍のコンステレーション級フリゲイトは人員不足が建造に影響を及ぼしている、アメリカ国防総省のカルロスデルトロ海軍長官が海軍技術シンポジウムの席上で厳しい現状を明らかにしました。人員不足とは、建造を担当するフィンカンティエリマリネットマリーン社の造船所工員不足であり、建造期間は少なくとも一年遅れるとのこと。

 FFG62コンステレーションの建造は一年間遅れることで2027年に引き渡し可能になるとしていますが、コンステレーション級フリゲイト建造プログラムのアンディボサック副マネージャーは、どの程度遅れるかは不明であるとともにその進行中の課題を整理しているところとしています。コンステレーション級は西太平洋地域の防衛に必要な新型艦だ。

 フィンカンティエリマリネットマリーン社の造船所工員不足は、ホワイトカラーとブルーカラー共に不足しており、海軍はこの問題に対応するべく同社へ臨時ボーナス費用5000万ドルを投じ、2024年1月1日から12月31日まで離職せず雇用されている従業員へ海軍から5000ドルの追加ボーナスを支払う契約など、離職防止に尽力しているとのことです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【防衛情報】F-35最新情報-オーストラリア戦闘機維持拠点建設と韓国KMPR大規模懲罰報復システム

2024-02-19 20:22:45 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム
 今回はF-35戦闘機のオーストラリアや韓国とベルギーにフィンランドなど最新情報を纏めてみました。

 オーストラリア空軍はハンターバレーにF-35戦闘機維持拠点建設を計画しています。オーストラリア政府は、F-35戦闘機について当初の限定的な調達計画から拡大する方針を示した事で、運用機数増大を背景に維持施設をオーストラリア国内へ建設する目処が立ったとしています。またこの施設はインド太平洋地域の友好国にも開放される見込み。

 BAEシステムズオーストラリア社は、2023年12月のオーストラリア政府とのF-35関連契約として1億1000万ドル規模の追加契約を発表、これはそれ以前に契約された1億ドルの契約に重ねて行われるという、実質的に契約規模が倍増した事を意味します。従来までの契約ではメンテナンスベイと呼ばれる航空機整備区画は7カ所分となっていましたが。

 メンテナンスベイ7カ所の施設は暫定的な施設規模となり、列せん整備以上の整備を周辺の整備デポからの協力を受け検査隊水準の整備を行うかたちでしたが、今回の施設強化により13メンテナンスベイを構築することとなり、その為の予備部品は周辺国ではなくハンターバレー内に恒久設置できる程度の備品消費量となった事が反映されています。■

 韓国空軍はF-35戦闘機20機の追加調達を計画中とのこと。これは韓国国防計画局が2023年12月27日に発表した戦闘機調達計画で、これまでに調達契約に至ったF-35戦闘機のオプション条項を発動するかたち。アメリカ政府は韓国政府によるF-35追加調達の打診について先立って2023年9月に了承の方針を示しており、正式契約を待つ。

 KMPR大規模懲罰報復システム、として韓国は北朝鮮の核開発及び核兵器の実戦配備化を受け、核兵器の攻撃の兆候となる事態に際し通常兵器を大量使用し一気に北朝鮮の戦争遂行能力を破綻させる運用を模索、更にKAMD韓国ミサイル防衛計画、そしてキルチェーン先制攻撃システムという三本の柱を新しい国防戦略としてしめしてきました。

 F-35戦闘機は、韓国自身も独自にKF-21戦闘機という第五世代戦闘機に伍する第4.9世代戦闘機として開発していますが、ステルス戦闘機であるF-35のポテンシャルは第一撃などの構成に不可欠であると理解され、こちらが優先されたかたち。韓国はこれまで、2014年に40機のF-35取得決定に続いて20機、将来的には艦載用F-35Bも検討中です。■

 フィンランド国防省はF-35戦闘機の国内整備施設構築方針を発表しました。フィンランドのアンティハッケネン国防大臣が発言したところによれば、この方針は空軍のF-35導入計画における産業協力能力醸成と不可分の能力構築と位置付けられていて、すでに担当はパトリア社の子会社、政府財務委員会の了承とともに進められているとしています。

 F-35国内整備施設は、パトリア社の子会社であるパトリアアビエーションオイ社が担当、フィンランド政府はこの施設により周辺諸国の支援を受けられないような極限状態においてもF-35稼働率を維持できる体制を目指しており、この施設整備には最大1億1160万ユーロを当時、先ず2026年までの初期段階で9000万ユーロを支出するとしています。

 パトリアアビエーションオイ社はこの施設維持へ600名規模の新規雇用を想定しているといい、同時にロッキードマーティン社とプラットアンドホイットニー社との間でも協力を強化し、且つF-35を運用する友好国支援にも寄与するとのこと。なお、フィンランドはHX新戦闘機計画に30%の国内産業協力を義務付け、その上でF-35を選定しました。■

 ベルギー空軍が導入するF-35戦闘機初号機がロールアウト式を迎えました。ベルギー空軍は2024年にF-35戦闘機初号機を受領することとなっています。ベルギー空軍は長くF-16戦闘機を運用しており、特に開発当初の中射程空対空ミサイル運用能力を付与される前の段階でF-16戦闘機を採用、改良型の導入などF-16とともにあゆんできました。

 F-35戦闘機の導入はこのF-16を置き換える多用途性やNATO同盟国との運用基盤共通化とともに第五世代戦闘機という側面から選定され、34機の導入を決定しています。今回製造されたベルギー空軍向け初号機はAY-01と呼称されていまして、先ず2024年の引き渡し後は、アリゾナ州ルーク空軍基地において操縦士の機種転換訓練を行います。

 AY-01のロールアウト式と共にロッキードマーティン社によれば、既にアメリカ空軍を筆頭に納入されたF-35戦闘機は980機を超えており1000機が間近になっている点、また各国空軍のF-35戦闘機運用基地は31カ所となっているといい累計飛行時間は768000時間以上、F-35戦闘機パイロットもすでに2250名が任務にあたっていると発表しました。

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AH-2/UH-2新対戦車ヘリの可能性を考える【4】対戦車ヘリコプターの運用ノウハウ継承と世界市場

2024-02-17 20:15:44 | 先端軍事テクノロジー
■安価な選択肢として
 国際市場の戦闘ヘリコプターを見ますと例外が無いわけではないのですが全般的に専用機はたかくなっています。

 AH-64EアパッチガーディアンにAH-1ZバイパーとEC-665/PAH-2ユーロコプタータイガー、主な戦闘ヘリコプターは三機種ですがいずれも9000万ドルから1億ドル以上、F-2戦闘機よりも高い。製造時期が違うために安易に比較することはできませんが、年間1機の維持生産であった最末期のAH-1Sと比較して3倍、富士重工のAH-64Dの倍だ。

 UH-2派生のAH-2を開発するならば安価な選択肢となるとともに、なにより整備互換性が高まり、もちろん欠陥が判明した場合には全機使用停止となる可能性は生じますが、短期間の欠陥の可能性を考えてむやみに機種を増やし運用コストを高めるよりは、万一の欠陥に備えて是正体制を盤石とするほうが重要です、すると分母は多い方が良い訳ですよ。

 AH-2,要するに射程の長い対戦車ミサイルを搭載できて、即座の致死性を発揮できる。ランセット無人機のような、解釈次第ではミサイルに区分されるものを簡単に日常的に飛行させることはできません。コストコストといいますと、それならばやはりガンシップで数を駆使する様な総当たりしてはどうか、と反論があるでしょうが、逆の難しさもある。

 ガンシップは、しかし前述しましたとおり生存性の問題があります、専用の機体は胴体が細身で対空砲火が当たりにくいとともに、細身であるぶんは装甲を施しても差ほど重量増加となりません、これも生存性を高める、ただ専用機は高価であり買えない国がある、ここにある程度の需要を見通すことができるのかもしれません。金が無いのはどこも同じ。

 アメリカ設計の機体といいますか、AH-2といわず既にAH-1があるのだからアメリカが反対するのではないか、もしくはF-16VとF-2戦闘機のように結局競合してしまって売れないのではないか、それならばAH-1ZのT-700に代えてPT6T-9エンジン、UH-2のエンジンを搭載したものを開発した方が整備面で有利では、といわれるかもしれないのですね。

 ベルヘリコプターテキストロン社は、おそらく歓迎します、それはUH-1Yヴェノムが輸出市場において苦戦している一方でスバルUH-2は少なからず採用国が増えていまして、ベル412の運用基盤を使えるとともになによりUH-2はUH-1Yよりも大幅に安価で、多用途ヘリコプターとして用いるのに十分、不足する性能や欠点が基本的に無いためでしょう。

 国際市場も、おそらく受け入れられる余地があります、それはAH-1Zが伸び悩み、その市場の隙間にトルコのTAI社製T-129ATAKのような安価な航空機が入っているためです。アメリカは冷戦時代にM-113やF-16とM-48にOHペリー級やC-130と、凡庸中庸といわれながら秀才といえるような安価な装備を世界に供給していましたが、いまはどうか。

 AH-2を開発し、ベルヘリコプターテキストロンがスバルAH-2として世界に提示した場合、費用を抑えて一定以上の性能を有しているならば、文字通りかつてAH-1Sのユーザーであった国が選択肢として受け入れられ得る。そしてもう一つ、日本の場合は96機を調達したAH-1Sの運用ノウハウを活かせる後継機の重要性という視座も必要でしょう。

 対戦車ヘリコプターの運用ノウハウ、戦域の段列地域など後方の航空基地よりも遙か前方に進出し、必要ならば即座の攻撃を行う。いっぽうでその実は航空機であるために方面隊単位の長距離展開を迅速に可能である。匍匐飛行で航空優勢の競合地域を踏破し地対空ミサイルの脅威さえ低空飛行のその下をかいくぐるのが匍匐飛行だ。訓練は大変ですが。

 MANDPSに代表される携帯地対空ミサイルに戦闘ヘリコプターの脆弱性が指摘され続けていますが、例えばその最新事例であるロシアウクライナ戦争では、フランス国防省の戦況分析によれば撃墜された機体は匍匐飛行ではなく低空飛行、MANDPSの有効射高を飛行したためという、匍匐飛行のノウハウの薄い要員が操縦していたための損害という構図で。

 自衛隊が有するノウハウ、いまならば継承できます。ただ、時間とともに厳しくなる、運用し続けることにより初めて継承できることがおおいことは、例えば行事一つとって僅か若干回のCOVID-19による中止が響いていることを目の当たりにされているでしょう。そうした意味でもUH-2からのAH-2の開発は必要な選択肢と考えるのですね。

 重要なのは無人航空機のノウハウが標的機くらいしか蓄積が無く出遅れている自衛隊が、中途半端に予算をつぎ込んで試験を行った結果、駄目だった、となった場合、対戦車ヘリコプター豚のノウハウが消滅した後では建て直すのに膨大な予算が掛かります、その予算を捻出できる見通しが無い、すると今あるものを維持する選択肢が合理的だと思うのです。

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ウクライナ情勢-ロシア軍3M22ツィルコン極超音速滑空兵器実戦使用!

2024-02-16 07:00:56 | 先端軍事テクノロジー
■臨時情報-ウクライナ戦争
 今回ロシア軍が使用した新兵器の性能は日本のミサイル防衛においても大きな脅威であると共に対策を確立させる必要性からその詳細な情報が必要です。

 ロシア軍は新型の3M22ツィルコン極超音速滑空兵器をウクライナへ実戦使用した可能性が高い、イギリス国防省2月14日付ウクライナ戦況報告がキエフ科学捜査研究所分析を引用するかたちで発表しました。ウクライナ当局がツィルコン極超音速滑空兵器の特徴を備えた出力偏向制御装置の一部を残骸から識別し、エンジンの残骸も回収しているもよう。

 3M22ツィルコン極超音速滑空兵器はマッハ9という極超音速滑空兵器で有効射程は1000km、ロシアが次世代の戦略核兵器運搬兵器としてアメリカのミサイル防衛システムを弾道ミサイルの速度と共に低空を滑空する事で回避するためのシステムであり、今後3M22ツィルコン極超音速滑空兵器が多用された場合、ウクライナ防空の深刻な脅威となります。
■3M22ツィルコン
 どこから発射したのか。

 3M22ツィルコン極超音速滑空兵器は、ロシアが開戦直おから多用するキンジャール空中発射弾道ミサイルよりも脅威であるとされています、もっともキンジャールも当初はペトリオットミサイルでは迎撃不能と考えられていましたが、ツィルコンこそ迎撃が難しいとされています。ただ、問題はこのミサイルは海軍用で何処から発射したか、ということ。

 イギリス国防省の分析では、ツィルコンは昨年から配備開始され黒海艦隊の艦艇には搭載出来ない事から、K-300地上配備型沿岸防衛システムを発射用に転用したものと推測しています。ウクライナの防空システムは落下速度の速い弾道ミサイル迎撃でも苦戦を強いられていますが、極超音速架空兵器は不規則軌道をとるためにさらに迎撃が困難となります。
■クピャンスク方面
 クピャンスク方面の展開状況について。

 ウクライナ東部戦線クピャンスク方面に展開するロシア軍の規模について、ISWアメリカ戦争研究所2月2日付ウクライナ戦況報告ではウクライナ軍東部軍集団のイエヴラシュ報道官の発言を引用、クピャンスク方面のロシア軍は人員4万名、戦車500両、装甲戦闘車両650両、火砲430門、多連装ロケット砲150両としています。

 ライマン方面とクピャンスク方面合わせた東部戦線全体でロシア軍は5万7000名という。ウクライナ南方作戦司令部報道官のフメニュク大佐はザポリージャ州とヘルソン州ドニエプル川東岸に展開するロシア軍について、その人員規模は7万名と見積もっており、ロシア軍の損耗は大きな水準となっているが予備人員を補充できる体制としています。

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AH-2/UH-2新対戦車ヘリの可能性を考える【3】ガンシップへの対戦車ミサイル搭載という課題

2024-02-15 20:00:50 | 先端軍事テクノロジー
■ガンシップの難しさ
 多用途ヘリコプターに機銃を積んだだけで用を済ませるならばなぜ世界中が乏しい国防予算から専用機を買うのかを考えねばなりません。

 AH-2をUH-2から開発すべきだ、こう提示したのはUH-2の完成度が比較的高いとともにリスクがそれほど大きくなく、リスクが大きくないということは開発費用などもある程度管理できる可能性があるためであり、また、ガンシップのような武装ヘリには難しい任務にも対応できるという利点があります、実際ガンシップは難しい点を忘れるべきでない。

 ブラックホーク、UH-60などはヘルファイアミサイル運用能力があると開発当時の1980年代には盛んに喧伝されましたけれども、部隊配備を行ったのはコロンビア軍くらい、麻薬組織対策のアメリカ援助により装備しました。配備しなかったのは射程8kmのミサイルを搭載するには8km先の目標を識別し照準する能力が必要、これが高価だったのですね。

 ガンシップへの対戦車ミサイル搭載、射程がロケット弾の延長戦程度のTOWミサイルやHOTミサイルであれば、ドイツのPAH-1ことBo-105や韓国のMD-500など例が多いのですがヘルファイアのようなミサイルとなりますと途端に事例が少なくなる背景には、費用面があり、高い費用をかけるならば専用機、生存性の高い機体収斂したため。

 ハヤブサ2、こんな名前にしますと宇宙に行ってしまいそうですが、AH-2,コブラ2にしますとベルヘリコプターテキストロン社から怒られそうですし、コブラとハヤブサでスペースコブラにしますと寺沢先生に怒られそうです、ハヤブサから二文字とってハブとでもするか、まあ名前のことはさておき、武装次第で需要は考えられる。長い射程が必要と思う。

 TOW対戦車ミサイル、少なくともこの射程3750mのミサイルでは残念ながら活躍できるのは演習場くらいしか考えられません、特殊部隊相手であっても難しい。なにしろジャベリン対戦車ミサイルが射程1600mから2500mを経て改良型は射程4000mに達していますから、なにか別のミサイルを搭載する必要が挙げられます、しかし候補となる装備は多い。

 ARKPAS精密誘導弾薬、これは70mmロケット弾の精密誘導型ですが射程は8kmあり非常に計量、あとはグリフィンミサイル空対地型、ジャベリンミサイル派生の低威力射程延伸型ですが射程が16km、もっともヘルファイアミサイルやスパイクミサイル、国産装備でも、射程の長い川崎重工の中距離多目的誘導弾の空対地型を開発してもよいでしょう。

 AH-2を開発すべきという視点をもう一つ挙げますと、AH-1Zは高価であるという問題があります。それは自衛隊にとって高価であるという点はもちろんなのですが、AH-1Sがアメリカと日本はもちろん、イスラエル、スペインとトルコ、バーレーンやヨルダンとパキスタン、タイに台湾と最近ではフィリピンに採用されてはいましたが。しかし後継機は。

 AH-1Zについては費用が高いため、それほど採用国が伸びていませんし生産数も、運用環境が変わったという背景は差し引くべきですが、伸び悩んでいます。いやリンク16に連接できますしヘルメットマウントディスプレイ対応でTSSホークアイ照準システムなど相応に高性能ではあるのですが、輸出費用はアフリカ輸出仕様の場合で9000万ドルと若干高い。

 射程の長い対戦車ミサイルを発射でき、ある程度のデータリンク能力を持つとともに生存性が高い航空機、要するに高望みしない航空機、AH-2を開発すべきと考えるのは自衛隊がUH-2に高望みし過ぎなかった、もちろん南西諸島を防衛できる航続距離は視点によっては高望みでしょうが、次世代機に固執しない妥協はしていました。革新的な案は蹴っている。

 AH-1Sにデータリンク能力と射程の長いミサイル運用能力を付与した上で洋上飛行に安定した双発と航続距離を有するUH-2発展型の安価な姉妹機、これけっこう高望みでは、という反論はさておき、性能を最小限として同じくコストを抑えたコブラのライバル、イタリアA-129マングスタのような航空機、AH-1Zを買えない国向けの機体、というところか。

 MD-500のTOW搭載型のような機体は一応需要があります、実際MD-530はケニアなどアフリカ諸国やイラクとアフガニスタンに、アフガニスタンは共和国時代の供与でしたが、販路がありましたし、つい先日ラトビアが極秘裏に調達計画を立てていまして、こちらはTOW搭載型ではなくガンシップ型でしたが、手軽な航空打撃力の需要をつかんでいます。

 輸出といきなりいわれても、防衛と商売は分けなければ、と反論されるかもしれません。しかし日本の経済成長が停滞する現状、自己満足のように武器を輸出しない平和主義だ、と納税者が高い装備品の更なる高騰を歓迎するのかは、考える必要がある。輸出は関連部品の量産効果を高め、需要と合致するならば輸出による量産促進は選択肢に含むべきです。

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ウクライナ情勢-ロシア黒海艦隊揚陸艦シーザークニコフ,ウクライナ海軍USV攻撃を受け撃沈!

2024-02-15 07:00:20 | 先端軍事テクノロジー
■防衛情報-ウクライナ戦争
 タランタル級コルベットに続いてまたロプチャー級戦車揚陸艦が。

 ウクライナ海軍はロシア黒海艦隊の戦車揚陸艦シーザークニコフを無人艇により撃沈しました。シーザークニコフはロプチャー型戦車揚陸艦で、複数のUSV無人艇による群狼攻撃を受け撃沈されたもよう。ロプチャー型戦車揚陸艦はストームシャドウミサイルやHIMARSのGMLRSロケット弾、無人艇によりこれまで複数が撃沈されています。

 ロシア黒海艦隊はクリミア半島などの占領地へクリミア大橋が度々ウクライナ軍の無人艇やストームシャドウミサイルにより破壊された際、戦車揚陸艦を運用しフェリーのように兵站輸送を担ってきました、既に複数を撃沈されロシア黒海艦隊の可動揚陸艦は2隻前後となっていましたが、今回また一隻を喪失した事は大きな痛手としか言いよう有りません。

 ただ、ロシア黒海艦隊には複数のキロ級潜水艦が維持されています。内一隻はドック内でミサイル攻撃を受け全損しましたが、潜水艦にはカリブル巡航ミサイルの運用能力があり、また巡航ミサイル発射能力を持つコルベットなども複数あり、黒海艦隊は洋上からの打撃力などは維持していることも確かですが、海上輸送能力はうしなわれつつあるもよう。
■防衛情報-ウクライナ戦争
 USVは今後海軍のある種の焦点となり得ます。

 ウクライナ海軍はこの数週間で連続し戦果を挙げています、その戦果はUSV無人水上艇によるもので、水上戦闘艦艇の大半をクリミア併合など2014年の混乱期に喪失しているウクライナ海軍にとり、艦隊が壊滅した状態であっても特攻兵器などに依存せず一定の戦果をUSVにより挙げられる事を自ら証明した事は大きな意味があるでしょう。

 USV無人艇について。仮に哨戒ヘリコプターが周辺を警戒監視していた場合には、センサー類を露出させているUSVの探知は必ずしも難しいものではありません、それは哨戒ヘリコプターは数秒間の潜水艦潜望鏡露呈であっても探知する為です。ただ、哨戒ヘリコプターを常時飛行させるには限度があり、性能面で無人機により代替するにも限度があります。

 冷戦時代の外洋海軍にとり、哨戒ヘリコプターを常時飛行させる運用は対潜警戒の観点から必須とされてきました。ただ冷戦後の大国間による全面衝突のリスク低減を受け哨戒ヘリコプターの任務はより多用途を帯びてきましたが、今後はUSV警戒という側面から、哨戒ヘリコプターか対水上レーダーを備えた無人機の常時滞空が再度必要となるでしょう。
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【防衛情報】F-15EXイーグル2戦闘爆撃機とスロバキアF-16block70,インドネシアラファール戦闘機

2024-02-12 20:21:40 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム
 今回は第五世代戦闘機を除く戦闘機関連の最新情報を纏めました。

 アメリカ空軍に新たにF-15EXイーグル2戦闘爆撃機2機が納入されました。EX-3,EX-4として納入された2機の機体はエグリン空軍基地へ配備され、第96飛行開発実験航空団と第53航空団へ配備されました。イーグル2の名の通り、またF-15EXが示す通り、この機体はF-15Eストライクイーグル戦闘爆撃機の後継機にあたる戦闘機です。

 イーグル2ですが、しかしEX-4の名称が示すように未だ4機しかアメリカ空軍に納入されておらず、特にF-15EからF-15EXへの改良型として開発リスクが比較的低いものと考えられていましたが、その能力構築については当初予定よりも停滞しており、更に製造費用の高騰などからアメリカ空軍はF-15EX計画について議会からの追及を受けている。

 第96飛行開発実験航空団によれば、プラットフォームを再興の水準とできるようテストを進めており、今までに提示された課題はすべて克服している、ともしています。一方でF-15EXは既に製造費用でF-35戦闘機を上回っていており、開発当時のF-22戦闘機不足やF-35戦闘機の開発遅延とは背景が大きく転換していることから今後が注視されます。■

 インドネシア空軍が導入するラファール戦闘機24機の調達契約が完了しました、これは1月8日、フランスのダッソー社とインドネシア政府との間で6機の調達と続く三度に分けての18機調達、四度に分けて実施された調達契約の第四次契約が成立となり、これによりインドネシア空軍は順次ラファール戦闘機24機を受領してゆくこととなります。

 ダッソー社は今回のインドネシア空軍によるラファール戦闘機取得はインドネシアが東南アジア地域における地域大国として機能するうえで必要な防空能力を示す事ができる、としていますが、インドネシアは2022年9月に最初のラファール戦闘機6機の取得を決定して以来、実際に契約は履行されるのかについて大きな関心を集めていました。

 ラファール戦闘機は当初2022年2月に42機の取得契約を結んでいますが、インドネシアが過去に幾度も調達契約を結ぶものの実際に契約せず、これが競合機に対する有利な条件を示すためのブラフであることが多々あった為です。このため、ダッソー社は四度に分け契約を結び、先ず24機分の支払いを受けてから最初の6機を引き渡すこととしました。■

 スロバキア空軍はF-16block70戦闘機の受領を開始しました。スロバキア空軍は14機のF-16戦闘機を導入予定であり、1月10日にロッキードマーティン社が発表したところによれば、スロバキア空軍は受領したF-16戦闘機の慣熟訓練を行ったのちに2024年半ばにもスロバキアへ回航、老朽化したソ連製MiG-29戦闘機を置き換える事となります。

 MiG-29戦闘機後継機の模索をスロバキア国防省が本格化したのは2018年、この時点ではスウェーデン製JAS-39戦闘機とF-16戦闘機が競合しており、スウェーデン政府はリース契約を提唱していました。戦闘機リースの提案そのものは2015年に受けていたものの2016年にリース契約の価格検討の上で撤回された過去があり、今回はその焼き直し。

 F-16戦闘機はこの結果、14機18億6000万ドルの契約が妥当とされ、調達が決定します。一方、F-35戦闘機フルレート生産を進めるロッキードマーティン社には、F-16戦闘機の受注は残り135機、生産ライン閉鎖が近づいていますが、最近になりブルガリア政府がF-16戦闘機8機の追加契約を模索中で、生産ラインはもう少し伸びるのかもしれない。■

 ポーランド空軍は新たにFA-50軽戦闘機12機を受領しました。韓国のKAI韓国航空宇宙産業が開発したFA-50戦闘機はポーランド空軍が現在運用するF-16戦闘機の能力を補完し、且つ今後ポーランドが取得するF-35戦闘機までの戦力維持を行う上で重要な戦闘機としていて、またウクライナへ供与したMiG-29戦闘機の一部任務を代替します。

 FA-50軽戦闘機について、今回納入されたものはFA-50block10と呼ばれる新区分のもので、ポーランド政府はロシアウクライナ戦争開戦後の2022年9月に12機を関連機材と合わせ7億0500万ドルにて取得契約を結びました。ただ、FA-50block10について、ポーランド空軍では軽戦闘機ではなく高等練習機としての運用を想定しているとのことでした。

 FA-50block10と共にポーランド政府は2023年9月により新しいFA-50block20戦闘機を36機調達する方針で、これはFA-50PLといい、FA-50block10には付与されていないAMRAAM空対空ミサイル運用能力や新型のAESA方式レーダーファントムストライクを備えているといい、この契約は23億ドル規模、2025年から2028年に受領予定です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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AH-2/UH-2新対戦車ヘリの可能性を考える【2】UH-2多用途ヘリコプターをガンシップ化する運用上の難しさ

2024-02-10 20:24:13 | 先端軍事テクノロジー
■日の丸ガンシップ考察
 陸上自衛隊は過去にHU-1B用ハイドラ70ロケット弾発射機10機分を調達し実験した上でAH-1Sを選んでいます。

 富士重工スバルがUH-1Jの後継に手堅い設計のUH-2を開発した、そして富士重工時代にUH-1Hをライセンス生産していた傍ら、AH-1Sをライセンス生産していました、さらに重要なのは現在のUH-1Jというのはエンジン部分をUH-1HではなくAH-1Sと共通化させることで運用互換性を高めたという点です、そういう意味で姉妹機といえましょう。

 AH-1SからUH-1Jが誕生した、ふつう逆だろうと思われるかもしれませんが各国が冷戦時代のUH-1H、これは分隊を輸送できないUH-1Bを置き換え機内容積を拡張したという意味で非常に有意義な選択肢であったのですが、延々UH1-Hを造り続けるのではなくAH-1Sとエンジン互換性などを持たせた、という意味で大きな意味があったといえます。

 UH-1H,考えますと欧州は後継にNH-90を開発、非常に優れた機体ですが一時間当たりの飛行コストがユーロファイタータイフーンと同程度という高コストに悩んでいますし、アメリカはUH-60Aを開発しましたが全てを置き換えられず州兵用にUH-72A/Bラコタを開発し二分化、どの国も苦労している中、UH-1Jはある程度合理性を持たせられた。

 UH-2をもとに、AH-1Sを、そのまま移植した場合は武装システムが40年以上前ですのであんまりですから多少は能力向上し、操縦装置はUH-2並、ミサイル射程を延伸しデータリンクシステムもせめて広帯域無線機コータムに対応させる必要がありますが、AH-2として完成させることができれば、コスト面と運用面で理想的選択肢とはならないでしょうか。

 ベルヘリコプターテキストロン社はAH-1Wスーパーコブラ、AH-1Sを双発化した機体を既に1980年代に完成させ2000年代には四枚ローターとエンジンや駆動系を一新したAH-1Zバイパーを完成させていて、こちらはヘルファイアミサイル運用能力やスティンガー空対空ミサイルなどによる空対空戦闘能力を既に備えたものが市場に提示された。

 AH-1Zバイパーを調達したら良いではないか、という反論があるでしょうがUH-2はUH-1Yヴェノムではないように、自衛隊の場合UH-1Yと大半が部品として共通であるAH-1Zを導入する必然性はなく、またアメリカ海兵隊の運用に適合するように設計されているAH-1Zは必ずしも安価ではありません、政府武器援助があって安価となるだけです。

 チェコ軍がAH-1Zを導入し、比較的安価な取得費用であったとして話題になりましたが、これはチェコ軍がAH-1Zで置き換えた機体がMi-24ハインド攻撃ヘリコプターで、アメリカ政府はチェコがハインドをウクライナへ武器援助する見返りに安価にAH-1Zを供給、つまりAH-1Zをウクライナへ提供できないため迂回供与のかたちをとったわけです。

 自衛隊の場合はさすがにAH-1Sをウクライナへ供与してアメリカからウクライナ武器援助予算を流用して安価にAH-1Zを取得するという選択肢はとれません。他方、前述したような単純にUH-2をガンシップとしてAH-1Sの後継に充てることもできないのです。もちろんスタブウイングを増設してロケット弾等で武装することは可能なのでしょうけれども。

 キングコングでは一見有用に見えた方式ですが、日本にとり有用ではないという背景には、ヴェトナム戦争での運用で既に指摘、つまり1970年代から指摘されていることなのですけれども、機外に装備されたさまざまな武装は、その種類にもよるのですが物凄い空気抵抗になる、ということ。飛行性能、速度も落ちてしまいますし、なにより航続距離に響く。

 UH-2をガンシップ化する、もちろん搭載することそのものはベル412がガンシップ型を開発していますし、十分可能なのでしょうが陸上自衛隊が求めている航続距離を維持できるかについては、要求仕様にガンシップ装備での南西諸島での運用性能が含まれていませんので、確証できないところがあります、そこでAH-1の後継機という視座、つまりAH-2へ。

 AH-1が胴体を細身としたのは、対空砲火から機体が被弾しにくくするため、という視点は前述の通りですが、同時に細身とすることで空気抵抗を抑えるという効果も期待されています、つまりUH-1とAH-1が一緒に飛行することを念頭としたのです、AH-1はUH-1の降着地域への火力制圧やUH-1での空中機動部隊の近接航空支援も担う必要があります。

 ガンシップの難しい背景をもう一つ挙げますと、一見安価にみえるガンシップですが機銃ポッドとロケット弾発射装置だけならば装備は可能です、70mmロケット弾でも2000m程度の射程はありますし、機銃ポッドもM-134ミニガンを装備しましたらそれなりの制圧力があります、しかし対戦車ミサイルとなりますと、照準器が必要で高価となるのですね。

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AH-2/UH-2新対戦車ヘリの可能性を考える【1】AH全廃方針とシンコークーガッコー祭に舞ったUH-2ハヤブサ

2024-02-08 20:10:52 | 先端軍事テクノロジー
■明野のUH-2機動飛行
 対戦車ヘリコプターと戦闘ヘリコプターは現在全廃方針の下で削減が続いており今後は最小限度の武装を施した多用途ヘリコプターが空中打撃力を担うという。

 昨年11月4日の明野航空祭、シンコークーガッコーと銘打った記念行事における明野レインボー飛行展示において新しく装備されましたUH-2多用途ヘリコプターハヤブサと、その背景のように飛行し機動飛行を展示してくれましたAH-1S対戦車ヘリコプターが並ぶ様子をみましたらば、多くの方が思ったのではないでしょうか、AH-1の次、AH-2の可能性を。

 AH-2というのはおそらく全国の中学生がクラスに一人くらい授業中にノートの端に日本版AH-1Zバイパーか、OH-1観測ヘリコプターの重武装型を落書きしたことでしょう、そしてそのほかに一応OH-1の重武装型か過去にテストケースとして可能性が示されていますし、川崎重工自身もOH-1の多用途ヘリコプター型を提示したその先にはUH採用後、あり得た構想といえます。

 UH-2多用途ヘリコプター、実際に現物をみてみますとUH-1Jの設計を応用し、ベル412EPという比較的新しい機体の日本仕様という設計は、特に明野駐屯地のAH-1S対戦車ヘリコプターと並び飛行する飛行展示を併せてみることで、このUH-2のAH-1S版を開発することはできないか、とどうしても考えてしまいます、AH全廃という趨勢の中でも。

 AH-1S対戦車ヘリコプター、1960年代の設計であり、AH-1Sが開発当時単なるコブラではなくトゥコブラと呼称されていたとおり、AH-1JまでコブラはTOW対戦車ミサイルの運用能力を持たず、70mmロケット弾と20mm機関砲、もしくは7.62mmミニガンと40mm擲弾銃を基本装備とするいわゆるところのガンシップとなっていまして、TOWを備えた。

 TOW対戦車ミサイルは有線誘導式対戦車ミサイルの傑作であり、1970年代以降このTOWミサイルは従来のM-40無反動砲にかわりジープに搭載され3750mとM-40では命中精度が期待できない距離からも高い確率で敵戦車を撃破できる能力を有しており、これは続いてMD-500ヘリコプター、日本ではOH-6のほうが通りがよいか、搭載されます。

 コブラがトゥコブラと呼ばれるようになった際、AH-1は胴体部分の幅が1m以下でしかなく、敵対空砲火に際しても命中する可能性を抑えており、なにしろ有線誘導ですから命中するまでの誘導が必要、戦車に対してはTOWを、地域制圧や装甲車両に対しては70mmロケット弾と20mm機関砲を駆使する運用となっていました。今でもある程度は有効だ。

 AH-64アパッチ、最近はアパッチというだけで無印ではなくアパッチガーディアンかその原型であるアパッチロングボウを示すようになっていますけれども、こちらが開発されますと搭載するヘルファイアミサイルは6kmから現用型では8kmまで射程が延伸しています、そしてMANDPASに代表される携帯地対空ミサイルの脅威が顕在化しました。

 ヘルファイアミサイルであれば、携帯地対空ミサイルの射程で8kmに達するのは、スウェーデンのRBS-70、携帯するには重すぎるということで三脚運用するRBS-70くらいであり、自衛用に第一線に配備されている携帯地対空ミサイルであればヘルファイアはアウトレンジ、射程外から叩けるのですが、TOWの射程ではそうはいきません、あまりに射程が短い。

 AH-1Sが陳腐化し、そして自衛隊での配備開始が1981年であり、もちろん相当数が既に退役していますから、AH-1Sをそのまま維持することは不可能ですし、またライセンス生産として富士重工、いまはスバルですか、調達した場合でもTOWの性能限界から開発当時の性能は発揮できません、40年前の性能が陳腐化せず現代で通じる装備は少ないゆえ、ね。

 ハヤブサ、UH-2について、しかしUH-1Jから大きな設計変更なしに、もちろんコックピットなどはグラスコックピット化されていますし、なにより自衛隊が求めた南西諸島での運用を念頭に航続距離や洋上飛行性能に余裕がある機体ですので、もちろんこれをガンシップ化する安直な方法ではなく、これのAH-1S版を考えるのは意味があるのではないか。

 ガンシップ化、一応自衛隊は多用途ヘリコプターへの武装は念頭に置いているようで、思い浮かべるのはアメリカ海兵隊がUH-1Yヴェノム軽輸送ヘリコプターにイスラエル製徘徊式弾薬HERO-120を搭載し、これも機内から投げ出すように投下するという、お手軽な、運用方式を試験しています、これはコストさえ見合えば検討の余地があるのかもしれない。

 しかしAH-1がUH-1から開発された当時のガンシップ方式は、自衛隊には適合しません、UH-1のガンシップ化は、これは1973年の映画キングコングに出てくる機体か、映画ダイハードでFBIの人たちが使っていた機体を思い浮かべれば適当でしょうが、スタブウィングを追加して、ここに7.62mmミニガンとロケット弾を搭載するものでした。

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