平地治美の漢方ブログ 

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村井弦斎と脚気

2014年02月24日 | 養生
脚気の原因がわからなかった時代、多くの人がこの病で命を失いました。

「米ぬかが脚気に良いらしい」

ということは経験的にわかっていたようですが、政府管轄の東大医学部はこれを無視し、
細菌説を支持して白米の配給を押し通しました。
その結果、多くの人が命を失いました。

身近な人々が脚気で苦しむのを見て心を痛めた村井弦斎は、自身が執筆の場であった雑誌
「婦人世界」の読者アンケート紙上で、米ぬかによる脚気の治験例を集めて公開し、
脚気に米ぬかがよいということをいち早く民間に広めました。

「食道楽」にも脚気について書かれています。



「食道楽 春の巻 第五十六 玄米の粥」より
 …………「諸君、今度こそ誰もまだ試みた事のない珍料理で僕の新発明だ。玄米のマッシ、即ち玄米のお粥というようなものだ」小山が先ず一匙ひとさじを試み「なるほど、玄米は非常に滋養分が多いそうで僕も試みたいと思ったけれども料理の方法が分らん。これはどうしたのだね」主人「それは粉屋へ頼んで先ず玄米を細こまかく碾ひかせて、それから料理する前に炮烙ほうろくでよく炒いって湯の中へ適宜てきぎに入れて塩と砂糖を加えて三十分ばかり掻かき廻まわしながら煮ると粉末こなが膨ふくれてドロドロになる。そこへ牛乳を入れて交ぜるのだがこれは上等にして最初から牛乳ばかりで煮て玉子を交ぜたのだ。僕は夏になると脚気かっけが起っていかん。脚気は白米の中毒という説だから去年の夏は玄米と麺麭ぱんばかり食べていたら脚気が起らなかったよ。脚気がなくとも米の滋養分は糠ぬかにあるから玄米で食べる方が非常に営養になるね」……………

○玄米は水田のもの平均蛋白質八分六厘、脂肪二分、含水炭素七割二分九厘、繊維一分三厘、鉱物質九厘、水分壱割四分三厘なり。
○白米は蛋白質六分三厘、脂肪二厘九毛、含水炭素七割一分九厘五毛、繊維四厘四毛、鉱物質三厘七毛、水分弐割一厘三毛なり。
○米飯は蛋白質三分一厘六毛、脂肪五毛、含水炭素三割二分二厘七毛、繊維二厘七毛、鉱物質一厘七毛、水分六割四分三厘三毛なり。
○この割合にて見る時は玄米を搗つきて白米にすれば蛋白質と脂肪の三割余を失う。白米を洗い滋養分を白水に流して飯に炊けばまた蛋白質と脂肪の大半を失う。
○ 陸田玄米は蛋白質九分六厘、脂肪二分二厘にて水田玄米より滋養分少しく多し。



これを読んで桜沢如一や西勝造は「玄米クリーム」の元としたのではないでしょうか?
私も鍼灸学校に通う母が当時校長であった小倉重成先生の影響を受け食べさせられていましたが、
この玄米クリームはとても美味しいです。

食道楽は、この後に確立されるさまざまな食養法の基礎になっているのではないかと思われます。


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2 コメント

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中山忠直資料集 (漢方1日1歩)
2014-02-27 22:49:34
漢方の臨床誌の中山忠直資料集の記事を読みました。先生のブログがなければその名前さえも知らずにいたかもしれません。先生のご努力で埋もれた漢方医家にスポットライトが当たる事を大変すばらしく思います。遅ればせながら『漢方医学の新研究』を古本屋で購入して読んでいるところです。これからもブログの更新を楽しみにしております。平治先生にはお会いしたことがありませんが、ブログを見ているせいか勝手に親近感があります。いつか東洋医学会や漢方治療研究会でお会いできてお話しできる機会があればうれしく思います。今年は東洋医学会で一般演題発表予定です。
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嬉しいです (平地)
2014-02-28 08:30:01
ありがとうございます。
このようなコメントをいただき、とても励みになりました。
中山忠直に関しては今後も力を入れて普及していきたいと思っています。

東洋医学会も漢方治療研究会も参加予定ですが、私は先生を認識することができないので、見かけたら声をかけてください。お話出来る日を楽しみにしています。
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