ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『俺の話は長い』#01~#05

2019-11-10 00:00:11 | TVドラマ全般









 
2019年秋シーズンは特に「ハマった!」と言える連ドラが無い中、唯一毎週欠かさず観てるのがこの番組。日本テレビ系列・土曜夜10時枠で放映されてる異色のホームコメディです。

カツオが大人になって事業に失敗し、6年もプータローを続けてるパラレルワールドの磯野家、みたいな話と言えば分かり易いかも知れませんw

いや、屁理屈じゃ誰にも負けない主人公のキャラクターはむしろ『ちびまる子ちゃん』に近いかも? 毎回2話構成になってる作りがよけいにそう感じさせます。

そんな一見ろくでなしの長男=満(生田斗真)、気長に彼を見守る優しい母親=房枝(原田美枝子)、満の天敵とも言えるキャリアウーマンの姉=綾子(小池栄子)、そんな綾子に頭の上がらない再婚相手=光司(安田 顕)、綾子と離婚した前夫との娘=春海(清原果耶)、というファミリーの日常が描かれます。

お父さんは既に亡くなっており、お母さんが1人でプータロー・満の面倒を見てるんだけど、口うるさい姉・綾子のファミリーがマイホーム建て替えの期間だけ同居することになり、満の平穏(怠惰?)な日々に波風が立って……というシチュエーション。

ありとあらゆる屁理屈を並べて自分を正当化する満は、どう考えてもダメ人間に違いないんだけどw、彼の話には筋が通ってて不思議な説得力があり、時には感心すらさせられます。

特に第4話の2幕目エピソード。満の父が遺した喫茶店の常連客である営業マンの薗田くん(本多 力)が、新入社員の渡利くん(間宮祥太朗)を店に連れて来て、会社の中途採用試験を受けないかと、二人がかりで満を熱心に勧誘するシーン。

薗田くんには、プータローの息子に手を焼く店主=房枝さんから肩の荷を下ろしてあげたい気持ちもありつつ、真っ当な社会人として優越感に浸りたい気持ちが奥底にあったはず。

そして新入社員の渡利くんも、満と同じように大学を中退してしばらく好きなこと(彼の場合はバックパッカー)をしたけど目が覚めて、今は素晴らしい会社に就職できて充実してる、おまけに無職の時にフラれたカノジョから逆に求婚されたと、まるでネズミ講や新興宗教の勧誘みたいに我が身のハッピーをやたらアピールする。

けど、満には全く通じないんですよね。以下、全て満の台詞です。

「俺、無職でもカノジョいたけどね。逆に就職した途端に付き合えたって怖くない? カノジョは渡利くんの人間としての本質を全然見てないよね、そんな人と結婚して本当に大丈夫なの?」

「あとさ、ここまでたっぷり話す時間与えてるのに会社の魅力が全然伝わって来ないってことは渡利くん営業に向いてないと思うんだ、会社で令和の給料泥棒っていうあだ名つけられてない、大丈夫?」

「さっきからしきりに大学中退をアピールして来るけど20代で一般企業に勤めてるなんて中退の無駄遣いだと思わない? 完全にドロップアウトに失敗してるよね、同じ中退として恥ずかしいからあんまり言わないでもらえるかな?」

「あとバックパッカーで海外を放浪してたから自分のことを冒険心があって勇敢だと勘違いしてるようだけど、周りがどんどん就職して結婚してるのに自分だけが無職でカノジョもいないという孤独に耐えられなかっただけじゃないの?」

で、お母さんに申し訳ないとは思わないんですか?と薗田くんに問われ、返した台詞がこれ。

「だってそれはもうしょうがなくない? 俺には働かなくていいっていう才能があるんだから。東京に実家があってわざわざ独り暮らししなくていい才能、母親が未亡人で息子の将来より時に寂しさが上回ってしまう才能、薗田くんみたいに家族のために働く苦労や寂しさとは無縁の星に生まれた才能」

言ってて恥ずかしくないんですか?と反撃されても全く動じません。

「逆に上から目線で働くことを強要して恥ずかしいとは思わないの? キミのやろうとしてることは動物園のライオンに檻から出て自分で獲物取って来いって言ってるようなもんだよ?」

「そりゃ檻に入ってるから身の危険は無いし黙ってても毎日エサは出てくるし傍目からすればラクしてるように見えるかも知れないけど大間違いだからね? 動物園のライオンは闘ってないように見えて野生のライオンより闘ってんの。客に笑われて指差されながら毎日夢と孤独の狭間で闘ってんだよ!」

で、素晴らしい会社に就職してカノジョも出来て充実してた筈の渡利くんが、泣きながら言うんですよね。

「満さんのおっしゃる通りです! 俺は動物園の孤独から逃げて、野生の群れに紛れ込んだ臆病なライオンです! だから俺は会社辞めてもう一度檻に戻ります!」w

会社で学んだ営業トークでプータローを勧誘することなどチョロいもん、と完全にナメてかかってた二人を、その場の思いつきで並べた屁理屈で完膚無きまでに凹ませちゃう、その痛快さたるや! マトモに就職した人を指して「ドロップアウトに失敗した人」と形容しちゃう発想が凄すぎる!w

その後で薗田くんが言った通り、満の方がよっぽど営業マンに向いてるのかも知れません。もし勧誘に応じて就職すれば、トップクラスの成績を上げて出世するのかも?

だけど満は応じない。なぜなら、それは自分のやりたい事じゃないから。30歳も過ぎれば普通は世間体に負けて妥協するもんだけど、彼はどんなに笑われても檻に居座り続けてる。いやあ、立派です!……って錯覚させる力量がほんとに凄い!w

いや、錯覚なのかどうか、それは人それぞれの考え方次第であり、正解は無数にある。将来のことを考えれば早く就職するに越したこと無いけど、ムリしてまで急ぐ必要は無いし、高望みしなければ就職という形に固執する必要も無い。

実は誰も間違ってないのに、少数派を批判したり差別する人がやたら多いのは、自分の選んだ生き方が間違ってないと信じたいから。要は自分を正当化したいだけであって、満の屁理屈と何も違わない。

満の話が長いのは、そういう敵があまりに多すぎて理論武装しないとズタボロにされちゃうから。なにしろ多勢に無勢、ほぼ孤立無援なんだから。

敵を徹底的に避けるか無視する戦法(?)で生き延びてる私から見れば、逃げずに闘い続けてる彼はまさにライオン。幼い頃から口うるさい姉に鍛えられて来たお陰かも知れません。

ただ、そんな満にとっても最大の強敵は「孤独」なんですよね、きっと。孤独上等と開き直ってる私だって、そうやって開き直らないと負けそうになるワケです。

満の姪っ子である春海が義父の光司に、好きな同級生のことを指して無意識に言った台詞「あいつも寂しいヤツだから」の「も」は、つまり春海自身であり光司でもあり、家族みんな、人類みんなの事なのかも知れません。実際は孤独でなくても、孤独を恐れてる限りはみんな寂しいというか……私は何を書いてるんでしょうか?w

とにかく、プータローがサラリーマン2人をやりこめちゃう場面は痛快で、とても面白かった。それは満を演じる生田斗真くんの力量に因るものも大きいと思います。

斗真くん、映画『源氏物語』の時は全く魅力を感じなかったのに、数年で著しく成長されたのか単に私の眼が節穴だったのか、今回はそのパーフェクトな主役っぷりに驚いてます。

上記の長台詞は恐らくマルチカメラの長回しで、噛んだり間違ったりした形跡がほぼ皆無、しかも一言一句が聞き取り易くスーっと耳に入ってハートに響いて来ました。それに比して台詞量はずっと少ないのに聞き取りにくかった間宮祥太朗くんとは大違いで、キャリアの差を見せつけてくれました。

さすがに『リーガルハイ』の堺雅人さんにはまだ勝てないけど、『デート/恋とはどんなものかしら』の長谷川博己さん(いまいち良くない滑舌が弱点)には勝ってるかも知れません。それくらい上手かった!

清原果耶ちゃんはじめ共演陣もみな素晴らしく、それぞれの魅力を引き出した演出、そして日常の些細な出来事から面白いドラマを生む脚本と、文句なしです。

本来なら私にとって退屈でしかない春海の恋話(あんなクソガキのどこがいいんだ!w)も、そこに義父・光司を絡めることで面白くなってるんですよね。春海の知らないところで、好きな男子と義父がLINEのやり取りをしてる。それに気づいた春海が怒るかと思いきや、「あいつも寂しいヤツだから仲良くしてやってよ」っていう上記の台詞に繋がるワケです。

ギクシャクしてた義理の父娘がこうして距離を縮めていく、そのキッカケを作ったのが実は満なんですよね。

もし満というサンドバッグがいなかったら、綾子や春海のストレスはぜんぶ光司にぶつけられるだろうし、夫を亡くした房枝は寂しさに耐えられなかったかも知れない。ファミリーにとって満は、潤滑油として実は無くてはならない存在なのかも?

気がつけば私の話も長くなっちゃいましたm(__)m 今季はハマった連ドラが無いって書きましたけど、これはどう考えてもハマってますねw そんな風にジワジワと染み込んで来る作品なんです。

もう第5話まで来ちゃいましたが、前述の通り『サザエさん』や『ちびまる子ちゃん』みたいな構成なので、途中からでも全然大丈夫。未見の方には是非ともオススメします。

おしり画像は満と光司の隠れ家「Barクラッチ」のバイト娘を演じる、ファッションモデルのきなりさんです。
 

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