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ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『踊る大捜査線』1997

2019-04-08 00:00:05 | 刑事ドラマ HISTORY









 
1997年冬シーズンに全11話が放映された、フジテレビ系列・火曜夜9時枠の連続ドラマ。

お台場にある湾岸警察署・刑事課強行犯係の新任刑事=青島俊作(織田裕二)の活躍と成長を縦軸にしながら、警察組織の業務形態や実情をリアルに、そしてコミカルに描いた、刑事ドラマというより「警察ドラマ」のパイオニア的作品です。

スタート時のレギュラーキャストは他に、青島と対立しながら友情を育んでいく本庁捜査一課の管理官=室井慎次に柳葉敏郎、湾岸署刑事課盗犯係刑事=恩田すみれに深津絵里、強行犯係の若きエリート=真下正義にユースケ・サンタマリア、定年間近のベテラン=和久巡査長にいかりや長介、魚住係長に佐戸井けん太、袴田課長に小野武彦、秋山副署長に斉藤 暁、神田署長に北村総一朗、そして事件関係者から湾岸署交通課婦警になり、やがて真下と結婚することになる第2ヒロイン=柏木雪乃に水野美紀。

さらにスペシャルドラマや劇場版シリーズで筧 利夫、内田有紀、真矢みき、寺島 進、小泉孝太郎、伊藤淳史、小栗 旬といった新メンバーが加わっていきます。

TVシリーズはそれほど高視聴率でなかったにも関わらず、その斬新さと面白さがクチコミや再放送で世間に広まり、絶妙なタイミングで公開された劇場版の大ヒット(『相棒』もそうでした)により、『太陽にほえろ!』を凌駕しかねないほどメジャーなタイトルになりました。

2012年まで劇場版が4本、TVスペシャルが3本のほか、脇キャラを主役にしたスピンオフの劇場版が2本、TVスペシャルが3本、更に短編ドラマや携帯配信ドラマなど、もはや把握しきれない程の副産物も生まれました。

ですが、私が本当に「素晴らしい」と思ってるのは、最初のTVシリーズ全11話のみです。劇場版はどれも残念な出来だと思うし、今じゃ可愛さ余って憎さ100倍で、最も嫌いな刑事物になっちゃいました。

その「素晴らしい」TVシリーズでさえ、今あらためて観直したら嫌悪感を覚えるかも知れません。だから再放送はあえて観ないようにしてます。

私がなぜ、最初のTVシリーズに胸躍り、もしかしたら『太陽にほえろ!』を超える番組になるかも……とまで思ったのか? なのになぜ、映画化されて以降は虫酸が走るほど嫌いになっちゃったのか?

その答えは、脚本の君塚良一さんが書かれた『テレビ大捜査線』というエッセイ本を読んで明確になりました。『踊る大捜査線』というドラマがどんな過程を経て生まれたのか? そこに全ての答えがあったんですね。

まず、最初から決まってたのは織田裕二が主演であること。織田さんは直前までラブストーリーの連ドラに主演しており、次は全く違った内容のドラマをやりたがってた。そして君塚さんもプロデューサーの亀山千広さんも、いつか刑事物にチャレンジしたいと思ってた。

そんなワケで君塚さんは、かつて視聴者として夢中になった『太陽にほえろ!』の脚本集を引っ張り出して、徹底的に研究されたんだそうです。

その結果『太陽~』が当時としては画期的な実験作であった事、そして現在ある刑事ドラマは全て『太陽~』のバリエーションでしかない事に気づくワケです。

それを嬉しそうに報告する君塚さんに対して、亀山Pは冷めた顔をして「じゃあ、それを全部、禁じ手にしちゃいましょう」と言ってのけた。

誰も見た事がない「新しい刑事ドラマ」を生み出すには『太陽~』がやらなかった事をやるしか無い。その辺りの嗅覚と判断力は、さすが名うてのヒットメーカーと言えましょう。

そこで君塚さんが自らに課したタブーは「刑事をニックネームで呼ぶ」「聞き込みシーンを音楽に乗せて見せる」「刑事と犯人の心情がリンクする」「刑事がよく走る」「刑事が殉職する」ほか、銃撃戦やカーチェイス、主役の刑事が犯人を逮捕する事すら禁じ手にしちゃった。(大事件となると捜査もさせてもらえず、本庁のパシリをやらされる所轄の現実)

と同時に、伊丹十三監督の映画『マルサの女』みたいに、それまで描かれて来なかった組織の内部、捜査現場の裏側を、ドキュメンタリーのようにリアルに、そしてハウツー物の楽しみを乗せながらエンターテイメントにしていく手法を思いつかれたそうです。

この時点で既に、私が『踊る大捜査線』を大好きになる理由と、大嫌いになる理由が、両方ハッキリと示されてます。要するに、君塚さんと亀山Pの温度差ですよね。

君塚さんには『太陽にほえろ!』が大好きだったという下地があり、大いにリスペクトした上で、それをタブーにするというチャレンジをされたワケです。

一方の亀山Pには『太陽~』への思い入れなど毛頭無くて、とにかく番組を当てる事しか頭に無い。それはまあ、プロデューサーとして当然の姿勢なんだろうと思います。

だけど、少なくともTVシリーズを立ち上げる時点では、両者が「全く新しい刑事ドラマを創る」っていうクリエイティブな志を共有されてた事が、君塚さんのエッセイからは伝わって来ます。何しろお互い「これはカルトになるね」「視聴率は取れないよね」って、そんな会話まで交わしてたんだそうです。だからTVシリーズは面白かったんですよ!

実際、私も初めてTVシリーズを観た時は、久々に衝撃を受けたもんです。最初の2回は見逃したんだけど、評判を聞いて観た第3話の冒頭、発見された死体の位置(ほんの数メートル)を巡って、他署の刑事たちと縄張り争いするシーン。

実はずっと以前に『太陽~』の後番組『ジャングル』でも似たような場面があったんだけど、その時には感じなかった新鮮さと面白さを『踊る~』には感じて、一気に引き込まれた記憶があります。

そこんところが、君塚さんの仰る「エンターテイメントにしていく手法」による効能だったのかも知れません。リアル志向は『ジャングル』も『踊る大捜査線』も一緒なのに、後者は見せ方が斬新でユニークだったんだろうと思います。

それと、これは『ジャングル』の記事にも書きましたけど、正統な続編である『ジャングル』よりも、他局の新世代スタッフたちが創った番組『踊る大捜査線』の方が、基本スピリットは『太陽にほえろ!』に近いんですよね。

『ジャングル』を創ったのは15年間も『太陽~』に携わって来たチームですから、また刑事物をやるなら根本から違うものをやりたかった筈です。対して『踊る大捜査線』チームは『太陽~』を観て育った世代ですから、アプローチは真逆でも根本的には『太陽~』に憧れ、自分たちの『太陽~』を創りたかったに違いありません。少なくとも君塚さんはそうでしょう。

だから、私がハマらないワケが無いんです。基本スピリットは『太陽にほえろ!』と同じなのに、全く新しい手法による刑事ドラマ。『太陽~』が終了して以来ずっと求めてた作品が、ついに現れたんだから。

ところが!『踊る大捜査線』は変わってしまった。劇場版1作目を観た時に、私は「何かが違う」って感じながらも、具体的に何が変わったのか答えを出せませんでした。

さらに劇場版2作目を観て、その戸惑いは怒りに変わって行ったんです。もう明らかに「つまんない」ものになってるのに、なんと日本映画史上ナンバー1の大ヒットを記録しちゃったもんだから、私の怒りは世の中全体にまで向くようになり、いつの間にか「破滅です」が口癖になっちゃったw

いったい『踊る大捜査線』の何が変わってしまったのか? その答えが、君塚さんのエッセイに記されてたんですよね。私はホント、目からウロコが落ちました。

事件は、TVシリーズがいよいよ最終回に向けて盛り上がろうとしてる時に、それこそ会議室で起こったんです。

「最終回の視聴率が20%を超えたら、映画化の許可が下りる」

亀山Pのこの言葉が、全てを変えてしまった。いや、亀山Pの中じゃ最初から何も変わってないのかも知れないけど、番組の方向性はここで180度変わってしまったんです。

君塚さんが最初に「禁じ手」とした筈の、『太陽にほえろ!』最大の武器とも言える「レギュラー刑事の殉職」っていうカードを、視聴率20%以上を稼ぐ為に、ここで使ってしまったワケです。それを今は後悔してるって、君塚さんは正直に書かれてました。

カルト扱いされてもいいから、全く新しい刑事ドラマを創ろう!っていうクリエイティブな心意気が、亀山Pの持ち込んだ「映画化」という甘い蜜によって、脆くも崩れ落ちたワケです。

ユースケ・サンタマリア扮する若手キャリアの真下刑事が凶弾に倒れ、その犯人検挙に燃える主人公=青島刑事たちが、この番組で初めて拳銃を手にするシーンには正直、私も燃えましたw ていうかメチャクチャ嬉しかったです。

だって、それはまさに『太陽にほえろ!』そのものなんだから。だけど今にして思えば、それこそ『踊る~』が『踊る~』でなくなっちゃった瞬間なんですよね。

結局真下は死ななかったんだけど、劇場版1作目では青島の殉職を匂わせ、2作目ではヒロイン=恩田刑事(深津絵里)の殉職を匂わせ、完結編でまたもや青島の殉職を匂わせるというw、もうそこにはクリエイティブな志しはカケラも残ってません。プライドも無く、ただひたすら商売あるのみ!

殉職うんぬんは置いといても、恐らく君塚さんが『踊る大捜査線』でやりたかった事、生み出したかった事は、最初のTVシリーズで全部やり尽くしたんだろうと思います。だから劇場版以降はもう「出がらし」であり「同じことの繰り返し」にしかなってない。

そんなワケで、素晴らしいのは最初のTVシリーズだけなんです。TVシリーズは脚本のみならず、キャスティングも音楽も素晴らしかった。深津絵里さんも水野美紀さんも大好きですw

織田裕二さんも良かったですよ。最高の当たり役である事に変わりはないと思います。ユースケさんも良かった。いかりや長介さんと柳葉敏郎さんの芝居は、ちょっとクサかったw

もう1つ『踊る大捜査線』が斬新だったのは、警察組織の縦割り社会を一般企業以上にサラリーマン的と捉え、湾岸警察署という場所をごく普通の会社みたいに描いたこと。

そして警察上層部を、アニメの『エヴァンゲリオン』みたいにダークかつ無機質な連中として描いたのもユニークで、これ以降の番組はこぞって真似しましたよね。

『踊る大捜査線』が同じ話を繰り返すループ状態になった事で、青島刑事の成長ドラマはフリーズしてしまい、組織内部のゴタゴタばかり描くようになったのも、刑事ドラマ全体の流れを変えてしまった気がします。

つまり『太陽にほえろ!』が築いた本当の意味での「刑事ドラマ」ってジャンルを、いよいよ絶滅させちゃったのも『踊る大捜査線』だった。『踊る~』以降の刑事ドラマは、刑事(人間)ではなく警察(組織)が主役の「職業ドラマ」。

しばらくそのブームが続くんだけど、『相棒』がヒットして以降の刑事ドラマは「捜査」「謎解き」が主役になっていきます。それって『太陽にほえろ!』がテレビ界に登場する以前の形なんですよね。

つまり原点は「捜査(事件)ドラマ」で、『太陽~』以降が「刑事(人間)ドラマ」、『踊る~』以降が「警察(職業)ドラマ」で、『相棒』から再び「捜査(事件)ドラマ」に戻ってる。

時代は巡りますから、この次はまた「刑事(人間)ドラマ」の時代が再来するのかも知れません。現に『隠蔽捜査』や『BORDER』みたいに、事件よりも主人公のキャラクター(葛藤と成長)描写に力を入れた作品も出て来ましたからね。

もしかすると、そろそろ『太陽にほえろ!』や『踊る大捜査線』並みの起爆剤になる刑事ドラマが、また現れる時期なのかも知れません。現れて欲しいです。現れてくれないと、ほんとヤバいですよ、このジャンルは。
 
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『はみだし刑事情熱系』シリーズ'96~'04

2019-03-31 12:00:11 | 刑事ドラマ HISTORY








 
1996年から2004年にかけて『はぐれ刑事純情派』『相棒』等のシリーズと交互に放映され、8シーズン(全165話)続いた人気ドラマです。制作はテレビ朝日&東映。

テレ朝系列・水曜夜9時枠の番組中、私が一番よく観てたのが、この『はみだし刑事情熱系』(通称=はみデカ)です。理由はやっぱり、主演が柴田恭兵さんだった事が何より大きいかと思います。

単純に俳優として好きなだけじゃなく、恭兵さんが主役となればアクティブな番組にならない筈が無いし、ユーモアも盛り込まれるに決まってるから。実際、観たらその通りでした。

既に刑事ドラマもビデオ撮影の時代になってるのがホント残念だったけど、この『はみデカ』には昭和のアクション系ドラマのテイストが色濃く残ってる事も、私にとっては大きな魅力でした。

もっとストレートに言えば、かなり『太陽にほえろ!』に近い内容だったんですね。タイトルに『情熱』とあるように、世間からダサいと言われて久しい「はみだし刑事達の熱血」を、てらうことなく真っ直ぐに描いたドラマだったんです。

格闘や銃撃戦もふんだんに盛り込まれ、他の番組が「リアリティ第一」へと流れて行く中、頑なに娯楽アクションドラマのスピリットを守り続けてくれた番組でもありました。(使用拳銃がコルト・ローマン旧タイプなのがまた素晴らしい!)

更に、刑事のプライベートを半ば強引に事件と関連づけちゃう『太陽~』的な作劇を、ご本家以上に徹底させてたのも『はみデカ』の特徴でした。

例えば、刑事が私用で銀行に立ち寄れば、必ず強盗が押し入って来るw 刑事が休暇を取って旅行に行けば、必ず指名手配犯がそこに逃げて来るw 刑事が異性に恋をすれば、必ずその人は事件に巻き込まれるし、だいたい犯人と繋がってるか、その人自身が犯人だったりするw、といった具合。

事件そのものよりも、事件によって傷つき葛藤する刑事達の、心情と成長を描く為の作劇なんですよね。もはや世間では「古臭い」と思われてた手法です。

1986年にスタートした『あぶない刑事』辺りから、刑事の私生活は一切描かないのがトレンディーとされ、それがすっかり主流になってたんだけど、あえて『はみデカ』は『太陽~』が築いたスタンダードを貫いてくれました。

これを下手な役者さんがやると陳腐になっちゃうんだけど、そこはさすがのテレ朝水曜夜9時枠で、実力派の役者さんが揃ってました。

「警視庁特別広域捜査隊」のメンバーとして、まず課長の根岸玲子に扮するのが、風吹ジュン。この人が実は、恭兵さん扮する高見兵吾の、離婚した元妻なんですよね。つまり兵吾は、別れた嫁さんの部下になっちゃった。

堅実にエリートコースを歩む玲子と、組織のしがらみなど無視して突っ走る兵吾。そんな元夫婦が衝突しながら事件を捜査する設定がユニークだし、それを演じるのが恭兵さんと風吹さんですから、そりゃ面白くならないワケがない。

しかも2人の間には、みゆきという娘がいるんですね。まだ幼い頃に2人が別れたもんだから、みゆきは父親の顔を知らないワケです。

兵吾のことを「お母さんの部下」としか認識してないみゆきが、実の父親を「兵吾くん」って呼んで、親友みたいに接する不思議な関係がまた可笑しかったです。

兵吾がいつ、自分が父親である事をみゆきに告白するのか?っていうサイドストーリーが、事件の内容よりもスリリングだった気がします。「今日こそは言うぞ!」→「ああ、やっぱり今日も言えなかった……」のパターンで5年ぐらい引っ張ってましたよねw

シーズン1から5までみゆきを演じたのが、後に六代目・中村勘九郎さんと結婚する事になる、前田 愛。ロリータフェイスながら、しっかりとした芝居をする人でした。(シーズン6以降は木内晶子にバトンタッチ)

そして、兵吾とは対照的にクールかつ優秀な相棒=西崎刑事に風間トオル、鑑識係出身の温厚なベテラン刑事=杉さんに平泉 成、元敏腕刑事の庶務係=菊ちゃんに樹木希林と、まさに実力派揃いのレギュラー陣。

さらに黒谷友香、梅垣義明、中山 忍、甲本雅裕、来栖あつこ、伊藤かずえetcといった人達が、歴代のレギュラー刑事を務められました。初期には愛川欽也さんが本部長、晩期には柴田理恵さんが監察医、中村嘉葎雄さんが兵吾の父親として出演されてます。

最後に、2019年現在もなお続くテレ朝水曜夜9時枠の刑事ドラマを列挙しておきます。前身は水曜夜10時→木曜夜9時枠で10年間放映されてた『特捜最前線』(主演・二谷英明)、更にその前身は『特別機動捜査隊』と云われてます。

『大都会25時』(小野寺昭、山下真司)→『ベイシティ刑事』(藤 竜也、世良公則)→『はぐれ刑事純情派』(藤田まこと)→『さすらい刑事旅情編』(宇津井健)→『風の刑事・東京発!』(柴田恭兵)→『はみだし刑事情熱系』(柴田恭兵、風吹ジュン)→『相棒』(水谷 豊)→『刑事部屋/六本木おかしな捜査班』(柴田恭兵、寺尾 聰)→『警視庁捜査一課9係』(渡瀬恒彦、井ノ原快彦)→『PS-羅生門-』(木村佳乃、舘ひろし)→『警視庁捜査ファイル/さくら署の刑事たち』(高島礼子、とよた真帆)→『ゴンゾウ/伝説の刑事』(内野聖陽)→『臨場』(内野聖陽)→『遺留捜査』(上川隆也)→『Answer/警視庁検証捜査官』(観月ありさ)→『TEAM/警視庁特別犯罪捜査本部』(小澤征悦)→『刑事7人』(東山紀之、吉田鋼太郎)→『特捜9』(井ノ原快彦、寺尾 聰)。
 
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『刑事追う!』1996

2019-03-31 00:00:07 | 刑事ドラマ HISTORY






 
1996年の4月から9月まで、テレビ東京系列の月曜夜9時枠で全25話が放映された、テレビ東京&東映の制作による刑事ドラマ。

役所広司&布施 博のダブル主演で、演出に工藤栄一、降旗康男、佐藤純彌、桝田利雄、長谷部安春、和泉聖治、澤井信一郎、出目昌伸、村川透etc…と、そうそうたる顔ぶれが揃い、OP/EDのタイトルバック(そこだけフィルム撮影)を市川崑監督が撮られて話題になりました。

それだけに内容も従来の刑事ドラマとは一線を画し、主役の刑事2人は「バディ」じゃなくそれぞれ違う部署に所属し、片方しか登場しない回も複数あり、当時テレビ大阪で観てた私は大いに戸惑いましたw

それは今思えば売れっ子2人のスケジュールを長期間確保する(掛け持ち出演を可能にする)為の苦肉策だったのかも知れないけど、当時は「さすが一流監督を揃えた番組は一味違うなあ」なんてw、妙に感心したのを憶えてます。

ただ、最初の3~4話しか観た記憶が無いことを思えば、決して私好みの内容とは言えなかったみたいです。

暗くて後味の悪いストーリーが多く、刑事のみならず容疑者や目撃者など、事件関係者1人1人の心情を丁寧に描くというコンセプトが、当時まだ若かった=人間ドラマより格闘や銃撃戦が見たい年頃だった私には渋すぎたんだろうと思います。大人になった今、あらためて観れば……やっぱり同じかも知れないけれどw

『太陽にほえろ!』や『あぶない刑事』の焼き直しみたいな企画なら、あんな一流どころの監督たちが参加するワケがなく、我々にとって心地好いお馴染みの作劇はあえて避けてたんでしょう。

とはいえ、監督によって作風は違った筈で、中には村川透さんみたいにアクションがお好きな監督もおられますから、全話通して観れば自分好みのエピソードも見つかるかも知れません。

役所広司さん扮する沢木警部補が所属する警視庁刑事部・捜査共助課の同僚刑事に角田英介、野村祐人、山口粧太etc、布施博さん扮する馬島警部が所属する捜査一課第一係の係長に大杉 漣、刑事に石倉三郎etc、検視官に井川比佐志、沢木が通うスナックのママに原田美枝子、馬島の妻に渡辺典子と、共演陣も豪華です。

なぜか2019年現在に至るもDVD化される気配が無く、VHSのソフトも第1話(2時間スペシャル)しか発売されなかったみたいで、再見するすべがありません。いろんな番組で刑事を演じられた布施博さんはともかく、役所広司さんの刑事ドラマなんて貴重ですから、是非とも商品化して頂きたい作品の1つです。
 
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『風の刑事・東京発!』1995~1996

2019-03-30 12:00:13 | 刑事ドラマ HISTORY









 
テレビ朝日系列の水曜夜9時枠にて、1995年10月から翌年3月まで全20話が放映された、テレビ朝日&東映の制作による刑事ドラマです。

名物シリーズ『さすらい刑事旅情編』の路線を引き継いだ、鉄道警察隊・東京駅分室の捜査官たちが事件を解決する地方ロケ主体の番組で、この放映枠における最後のフィルム撮り作品でもあります。

主演は『もっとあぶない刑事』以来の刑事役となる柴田恭兵さん。この'95年は舘ひろしさんが『新宿鮫/無間人形』、浅野温子さんが『沙粧妙子/最後の事件』と、あぶデカの中心メンバー3人がそれぞれシリアスな刑事ドラマで主役を張っておられるのが面白いです。

さらに柄本 明さんが主任に扮するほか、岡本健一さん、中野英雄さん、大寶智子さん、渡辺 哲さんといった顔ぶれが刑事を演じておられます。

そして東京駅構内の診療所に勤める女医に扮したのが萬田久子さん。画像で萬田さんの診察を受けてるのが、婦警役レギュラーの八木沢れいなさん。

この診察シーンに大した意味はありませんw そうした「ただのお色気サービス」がゴールデンタイムの番組で観られたのも、今となっては懐かしい思い出です。復活を強く望みますw

これは第5話『完全犯罪の女!? 記念写真の謎』(1995.11.15.OA/脚本=柏原寛司/監督=原 隆仁)の1シーンで、実はこの番組を観たのはこれが唯一。CATVで放映されてたのを気まぐれで録画し、どんなものかと観てみたら犯人役が石原良純さんだったもんで、笑いましたw。

内容的にはスタンダードな「アリバイ崩し」の捜査物で、特筆すべきものはありません。舞台は和歌山マリーナシティで、ポルトヨーロッパが思いっきりフィーチャーされてます。(開業して間もない頃だった?)

『太陽にほえろ!』のマイコン刑事を卒業してから約8年、良純さんの動きがちょっと滑らかになってますw 走るシーンが無いのも幸いでしたw かつて初期型パソコンにバカでかいフロッピーを差し込んでた良純さんが、スマートにノートパソコンを使っておられる姿には、時流の速さを感じます。

主役の恭兵さんはアクション無し&ユーモアも控え目で、渋い刑事像を構築されており、脱『あぶデカ』の意志が見て取れます。その手応えが、よりヒューマンな新シリーズ『はみだし刑事情熱系』へと繋がって行くワケですね。

前述の通り、この放映枠におけるフィルム作品は本作が最後となり、次の『はぐれ刑事純情派』第9シリーズよりVTR撮影に変更されちゃいます。それまでフィルムで撮られてた作品が、いきなりビデオの安っぽい映像に変わったのを初めて観た、あの時の衝撃は未だに忘れられません。世紀末も近かったし、本気で「破滅です」って思ったもんです。破滅です。

ひとつの時代の終焉であったことは間違いないですよね。
 
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『沙粧妙子/最後の事件』1995

2019-03-30 00:00:03 | 刑事ドラマ HISTORY









 
1995年の夏シーズン、フジテレビ系列の水曜夜9時「水曜劇場」枠で全11話が放映された、飯田譲治 脚本による刑事ドラマ。'97年3月には続編となる単発スペシャル『沙粧妙子/帰還の挨拶』も放映されました。

女性刑事を単独で主役にした点でも、また連続猟奇殺人や犯罪心理プロファイリングを本格的に扱った点でも、日本の刑事ドラマとしては先駆的な作品かと思います。暗いけど、独特の乾いた世界観でカルト的な人気を集めた作品でもあります。

警視庁刑事部捜査第一課の警部補=沙粧妙子を『あぶない刑事』シリーズの浅野温子さんが、今回は暴走することなくw、シリアス過ぎるほどシリアスに演じておられます。(演技が過剰という意味じゃ変わってないかもw)

ほか、沙粧の相棒となる新米刑事=松岡に柳葉敏郎、科捜研の技官=池波に佐野史郎、捜査第一課係長の高坂に蟹江敬三、その片腕となる中堅刑事=矢田に金田明夫、公安部の管理者=卯木に山本 學、元プロファイリングチームのリーダーで沙粧の元恋人=梶浦に升毅、沙粧の妹=美代子に黒谷友香、松岡の恋人=理江に飯島直子といったレギュラーキャスト陣に、香取慎吾、国生さゆり、松田美由紀、西村雅彦etc…という豪華ゲスト陣、さらに中谷美紀、広末涼子、反町隆史、高橋克典、柏原 崇etc…と、当時まだブレイク前だった若手たちも絡んできます。

「人間というものがいる限り、この世界から悪意が消滅することはあり得ない。そして悪意は、目に見えないものとは限らない」

↑ という冒頭テロップのように、多かれ少なかれ誰もが持ってる悪意や妬み、破壊願望を巧みに引き出し、マインドコントロールして若い殺人鬼を何人も生み出した黒幕が、沙粧妙子の元恋人である梶浦。

沙粧自身も狂気に蝕まれながら梶浦と対決していくという重苦しいストーリーなんだけど、単なる謎解きじゃなく人間の心理(ダークサイド)を探求していく作劇は当時新鮮だったし、浅野温子さんの過剰演技や佐野史郎さんの不気味さがドラマ内容と見事にマッチして、観ればクセになる妙な面白さがありました。

過剰演技と言えば、後にいくつもの作品を「やりすぎ」芝居で破壊することになる香取慎吾くんが、猟奇殺人鬼を演じた『沙粧妙子』では凄く光ってるんですよね。演じることにまだ慣れてないのが逆に功を奏したのかも知れないけど、そうしてキャストそれぞれの個性を絶妙に活かした脚本と演出が、本作を成功に導いたのは間違いないだろうと思います。

長期放映&1話完結が基本だった刑事ドラマも、'92年の『眠れない夜をかぞえて』あたりから1クール(12話前後)で1つのストーリーを描くフォーマットが取り入れられ、この『沙粧妙子』のヒットにより定着した感があります。

そしてもはやビデオ撮影は当たり前となり、長らく「テレビ映画」を観て育った私としては寂しい限りなんだけど、そこは時代の流れですから受け入れるしかありません。
 
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