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ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『QUIZ』2000

2019-05-03 00:00:16 | 刑事ドラマ HISTORY









 
2000年の春シーズン、TBS系列の金曜夜10時「金曜ドラマ」枠で全11話が放映された刑事ドラマ。

子供を誘拐し、警察や両親をあざ笑うかのようにクイズを出題して来る正体不明の犯人に、警視庁刑事部捜査一課のSITに所属する桐子カヲル警部(財前直見)が挑みます。

カヲルと無線越しにタッグを組む所轄署の白石巡査部長に内藤剛志、対立するインテリ課長の緒沢警部に生瀬勝久、その部下に温水洋一、佐藤二朗、誘拐された子供に当時6歳の神木隆之介、その母親に森口遥子、担任教師に鈴木紗理奈、そしてカヲルの過去を知るワケありの管理官=蓮見に竜 雷太が扮するほか、内山理名、星野真里、岡本 麗、浅香 唯、矢部美穂、光石 研、徳井 優、羽場裕一etc…といったキャスト陣が脇を固めます。

1話完結ではなく1クールかけて1つの事件を追うフォーマットと、女性主人公の病的なキャラクター、謎が謎を呼ぶゲーム的な展開、そして精神世界を描いたシュールな映像など、前年に同じ放映枠でヒットした『ケイゾク』(中谷美紀 主演) から笑いの要素を抜いて『沙粧妙子/最後の事件』(浅野温子 主演) とミックスさせたような世界観。

決して私好みの内容じゃないんだけど、独自の路線を突き詰めて新たなジャンルを開拓しようとする、創り手たちの心意気は素晴らしいと思います。素晴らしいんだけどしかし、これはちょっとやり過ぎたかも知れませんw

カヲルは人の心が読めちゃう特殊能力により精神を病み、ふだんは精神科に入院してる設定で、移動中の車内で自分の髪をバサバサ切るわ、イラついたら自分で髪を引っこ抜くわ、初対面の生瀬さんにいきなり真顔でグーパンチを食らわせるわと、そりゃ病院にいてもらわないと困っちゃうガイキチぶりを遺憾なく発揮。

しかも、かつて自ら堕胎して死なせた子供の幻影らしきものにも苦しんでおり、初回からいきなり『エヴァンゲリオン』後半みたいなカオス世界が展開しちゃう。

まだ主人公に感情移入できてない内からそんなもん見せられても……って思うし、人の心が読めるから病んでるのか、子供を堕ろしたから病んでるのかどっちやねん?とも思っちゃう。

盛り込み過ぎ&飛ばし過ぎで、我々視聴者が主人公に肩入れする隙間がない。謎解きに興味がない私にとって、そこが作品を観続けるか否かのポイントになりますから、この調子だとちょっとキツいです。

竜雷太さん演じる蓮見管理官のルックスや佇まいにも『エヴァ』の匂いがプンプンしてて、いよいよアニメ世代、ゲーム世代の感性が刑事ドラマにも反映されてきた実感があります。

私はゲームをやらないし、アニメは観てたけど『宇宙戦艦ヤマト』ブームあたり迄で『ガンダム』以降はほとんど観ておらず、やっぱり実写「テレビ映画」の感性が染み付いてますから、ちょっと肌に合わないんですよね。

まぁしかし、そんな自分の好みはともかくとして、似たような番組ばかりの団子レースになっちゃった今となっては、まだ各作品に強い個性があったこの時代が懐かしいです。やり過ぎ、飛ばし過ぎ、大いに結構!

なお、シリーズ物以外で2000年に放映された刑事ドラマは、この『QUIZ』と同じ春シーズンにフジテレビ系列・火曜夜10時枠で放映された『ショカツ』(松岡昌宏&田中美佐子主演、全12回) ぐらいしか他に見当たらず、ジャンル全体としては冬の時代が続いてる感じです。
 
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『科捜研の女』シリーズ '99~

2019-04-29 00:00:13 | 刑事ドラマ HISTORY









 
テレビ朝日系列の木曜夜8時「木曜ミステリー」枠で、1999年秋のシーズン1から2019年現在のシーズン19まで未だ続行中の、現役刑事ドラマとしては最長寿を誇る人気シリーズ。制作はテレビ朝日&東映。

ただし話数は(シーズン毎にインターバルがあるので)200を超えたばかりと意外に少なく、『太陽にほえろ!』の全730話には遠く及ばないんだけど、それでも同一女優の単独主演作で20年超えは前人未踏、今後も恐らく誰にも破られない記録じゃないかと思います。

DNA鑑定や画像解析を駆使して犯罪を解明する「科学捜査」を初めてメインに描いた連ドラとしても画期的で、よくアメリカの大ヒットドラマ『CSI:科学捜査班』のパクリと思われがちだけど、放映スタートは『科捜研の女』 の方が1年早かったそうです。

舞台となるのは京都府警科学捜査研究所で、主人公は法医学研究員の榊マリコ(沢口靖子)。科学オタクで浮世離れしたところはあるけど、決して天才ではなく努力の人。そこに老若男女から支持される人気の秘密があるかと思われます。

マリコ以外の登場人物は20年の間にほぼ入れ替わっており、彼女がいなければ事件を解決出来ない捜査一課の良きパートナー・土門刑事(内藤剛志)が登場したのもシーズン5(『新・科捜研の女』)から。内藤さんはシーズン2から4までプロファイラーの武藤役、つまり別人として出演されており、シーズン5以降はほぼ別作品といって良いかも知れません。

作風もシーズン4まではコメディ色が強く、マリコのキャラクターもお転婆だったりオッチョコチョイだったりと、現在のあくまでストイックな感じとは随分と違ってました。

シーズン4までマリコと共に事件を解決してきた捜査一課の木場刑事に小林稔侍、科捜研の所長を佐戸井けん太、山崎 一が歴任したほか、マリコの元夫である刑事部長に渡辺いっけい、解剖医に一路真輝、草川祐馬、木場刑事の部下に伊藤裕子、小林 隆、科捜研メンバーに斉藤 暁、橋本さとし、小林千香子、羽野晶紀、長江英和、深浦加奈子etc…といった歴代キャスト陣。

シーズン5からは土門刑事が登場し、マリコの父=榊伊知郎(小野武彦)が科捜研所長に就任、その後をやはりシーズン5から別キャラとして登場した斉藤暁さんが引き継ぐほか、刑事部長に田中 健、金田明夫、本部長に津川雅彦、西田 健、管理官に戸田菜穂、土門の妹に加藤貴子、土門の部下に高橋光臣、池上季実子、科捜研メンバーに泉 政行、奥田恵梨華etc…といったキャストが加わり、シーズン8から解剖医の風丘(若村麻由美)、シーズン10から化学担当の宇佐見(風間トオル)、シーズン13から映像データ担当の亜美(山本ひかる)等、現在の科捜研を支えるメンバーたちが登場していきます。

戸田山雅司さんなど後に『相棒』シリーズも手掛けるスタッフ陣によるハイクオリティーな脚本と演出、川井憲次さんの手による爽快なテーマ曲、京都という情緒ある町の背景、そして最新鋭の科学捜査を現実よりも早く取り上げた先見性(実際、この番組を参考にして科捜研が採り入れた機材や捜査法もあるんだとか)など、様々な魅力が挙げられる本作だけど、20年以上も人気を保つ最大の要因は何と言っても、主演女優=沢口靖子さんの衰え知らずな美貌と、マリコを地でいく実直なお人柄に尽きるんじゃないかと思います。

実際、結婚はおろか浮いた話の1つも聞こえて来ない沢口さんの清廉潔白さ、誰よりも台本を読み込んで撮影に臨むというストイックさは榊マリコそのもので、それが作品自体にもリアリティーを与えてます。

そんな沢口さんに感化され、全力で彼女を支えようと頑張る共演者たちの情熱、鉄壁のチームワークがまた作品世界とリンクして、その心地好さが我々視聴者にも伝わって来るんですよね。そこに少しでも嘘が見えたら、番組が20年以上も続くことは無かったんじゃないかと思います。

初期には見られたチーム内の対立や警察上層部からの圧力、妨害などの描写がすっかり無くなったのも、それがかえって嘘っぽく見えてしまうから、なのかも知れません。

確かに、どうしても逆らえない相手や乗り越えなきゃいけない壁があった方がドラマは盛り上がるんだけど、何も仲間内のゴタゴタに限らなくたってそれは描けるワケで、昨今の刑事ドラマに必ず登場してくる「保身の為に捜査を妨害する上層部」だの「主人公を目の敵にする同僚」だのに飽き飽きし、心底から辟易してる私から見れば、そういう輩がいっさい登場しない本作の方がよっぽど新鮮だし面白いと感じます。

そんな描写が無くたって、魅力的なキャラクターと優れた脚本さえあれば面白いドラマは創られる。それを証明して見せた『科捜研の女』を、やれワンパターンだのマンネリだのと言って他のドラマ制作者たちが軽視してるとしたら、それは大間違いだと私は思います。

2019年、テレビ朝日は開局60周年記念として『科捜研の女』シーズン19を通年放映、つまり平成と令和をまたいで1年間放映することを発表し、世間を驚かせました。

NHKの大河ドラマを除いて、ゴールデンタイムに1年間放映し続ける連ドラは今や皆無で、テレビ朝日としても『暴れん坊将軍』以来20年ぶりの快挙なんだとか。

マンネリだけでそんなことが実現するワケがなく、今あらためて本作の凄さを見直すべきなんじゃないでしょうか。
 
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『TEAM』1999

2019-04-28 00:00:20 | 刑事ドラマ HISTORY



 
1999年の秋シーズン、フジテレビ系列の水曜夜9時枠で全11話が放映され、好評につき2000年から2003年まで年1本ペースでスペシャルドラマ(計4本)も創られた、フジテレビ&共同テレビ制作による刑事ドラマ。

『古畑任三郎』シリーズの制作スタッフに脚本が『踊る大捜査線』の君塚良一さんという強力タッグで、まだ『踊る~』にそれほど失望してなかった当時の私は大いに期待したし、実際とても見応えがあったように記憶してます。

が、なぜかDVD化はされておらず、最近は再放送も無いので再見する機会がなく、内容はおぼろげにしか憶えてません。

文部省(現・文部科学省)の若きエリート官僚である主人公=風見(草なぎ剛)が、研修か何かで警視庁の叩き上げ刑事=丹波(西村雅彦)とコンビを組んで少年犯罪を捜査するストーリーで、『古畑~』&『踊る~』混合チームにしては結構シリアスなドラマでした。

エリート官僚の風見が性善説を信じる温厚なキャラで、現場捜査員の丹波が性悪説を押し通すクールなキャラという、『踊る~』とは真逆の構図を打ち出してる点も新鮮で良かったです。かつての『俺たちの勲章』を彷彿させるキャラ付けですよね。

あのころ少年犯罪が増加傾向にあり、被害者よりも加害者側の人権を手厚く保護する少年法を疑問視する風潮が強まった時期で、その問題に真っ向から切り込む真摯なドラマでもありました。

捕まった少年の更正を信じて罪の軽減を願う風見と、高い再犯率という現実を直視して厳罰を与えるべしと主張する丹波。

私はもちろん丹波派で、未成年者が相手だろうが一切容赦しない彼に拍手を贈ったもんです。更正できるか否か以前に、未成年であろうが無かろうが犯した罪に相当する罰は与えて当然。過失ならともかく確信犯には人権も性善説もへったくれも無いでしょう。破滅です。

天下のアイドル=SMAP(当時) の草なぎ君に性善説を唱えさせたのはたぶん建前で、創り手の本音はこっちにあったんだろうと思います。百歩譲って更正を信じるとしても、被害者より加害者側の人権が優先されるのはどう考えたっておかしい。

その一方で、何の罪も犯してない加害者の家族が袋叩きにされ、社会から抹殺されてしまうという矛盾。そんな世の中でどうして性善説など信じられるというのか? 破滅です。

レギュラーキャストは他に、水野美紀、大杉 漣、戸田菜穂、黒木 瞳etc…といった布陣。小泉純一郎元総理のゲスト出演も話題になりました。

DVD化されないのはデリケートな問題を扱ってるからなのか、版権にうるさいらしいジャニーズのせい(だとしたらもうOK?)なのか分からないけど、今あらためて観直したい作品の1つです。
 

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『ケイゾク』1999

2019-04-27 00:00:18 | 刑事ドラマ HISTORY









 
1999年に放映された主な刑事ドラマは、浅野ゆう子&田中美佐子のW主演による『ママチャリ刑事』(TBS系)、中森明菜主演『ボーダー/犯罪心理捜査ファイル』(日テレ系)、草なぎ剛&西村雅彦主演『TEAM』(フジ系)、そして沢口靖子主演『科捜研の女』(テレ朝系)と、女性刑事を主役にした作品が明らかに増えて来ました。

また、もう1つの傾向として挙げられるのが'95年にテレ東系で放映されたロボットアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の影響です。'97年の『踊る大捜査線』にも顕著に表れてましたが、よりあからさまに「刑事ドラマで『エヴァ』みたいな事をやりたい」って趣旨で創られた(と思われる)のが、この作品。

メイン演出を務められた堤 幸彦さんの嗜好が全面に反映された刑事ドラマ『ケイゾク』は、1999年冬シーズンにTBS系列・金曜夜9時枠で全11話が放映され、カルトな人気を集めて年末にはスペシャルドラマ、翌年には完結編となる劇場版も公開され、さらに10年後の2010年には同一の世界観を有する連ドラ『SPEC/警視庁公安部公安第5課 未詳事件特別対策係事件簿』(長いわ!) もやはりTBS系の同じ枠で放映されました。植田博樹プロデュース、西荻弓絵メイン脚本という座組みも共通してます。

迷宮入りした事件を形だけ「継続」捜査させる為に新設された窓際部署「警視庁捜査一課弐係」に、形だけの研修で派遣された東大卒のキャリア官僚・柴田 純(中谷美紀)が、驚異的な記憶力・洞察力・推理力によって難事件を解決していく、形だけはありがちな「天才(変人)による謎解きドラマ」としてスタート。

柴田のぶっきらぼうな相棒=真山警部補に渡部篤郎、女子高生と不倫してる温厚な係長=野々村警部に竜 雷太、なぜか弐係に入り浸る一係の庶務=木戸 彩に鈴木紗理奈、キャリア組の冷血漢=早乙女管理官に野口五郎が扮するほか、徳井 優、長江英和、泉谷しげる、矢島健一、西尾まりetc…といったレギュラーキャスト陣でした。

『エヴァンゲリオン』の影響もさることながら、私としては『太陽にほえろ!』へのオマージュも見逃せないポイントです。

「柴田 純」っていう主人公の名前はジーパン刑事(松田優作)と同じだし、渡部篤郎さんは優作さんのモノマネみたいな芝居をするし、竜雷太さん扮する野々村係長はかつて「ゴリさん」と呼ばれてたことを仄めかすし、他にも「なんじゃこりゃあ」をはじめとする小ネタが満載でした。

我々と同じように『太陽~』を観て育った世代が、この時期からテレビ業界の中心で活躍し始めるんですよね。『太陽~』的な作劇がもはや化石となりつつある一方で、オマージュやパロディーが(刑事ドラマに限らず)あちこちで見られるようになります。

そんな半ばフザケた感じで始まった『ケイゾク』だけど、かつて妹が惨殺された未解決事件を執念深く捜査する、真山刑事の裏の顔が見えて来るにつれシリアス度が増し、精神論や心象風景を映像化する『エヴァ』的なカオス世界へと変貌して行っちゃう。

私自身は、そういう「謎が謎を呼ぶ」みたいなストーリーがあまり好きじゃありません。真相なんて作者が勝手にその時の都合で決めちゃうもんだし、そもそもこのテの謎には最初から答えなんか無いんだから。あったとしても大抵は後付けのもんでしょう。

結局、作者がその場その場で思わせぶりなヒントを振り撒き、観客を煙に巻いておちょくってるだけのゲームに過ぎないんですよね。そのテの作品全てがそうとは言わないけど、少なくとも『ケイゾク』と『エヴァ』には答えなんか最初から存在しない。ファンもそれを承知の上で謎解きゲームを楽しんでるんだろうと思うけど、私は趣味じゃありません。

だけど『エヴァ』は革新的なロボットアニメとしてリスペクトするし、それを刑事ドラマに応用してみせた堤さんのチャレンジ精神や、人を食ったようなユーモア感覚は決して嫌いじゃありません。

昭和刑事ドラマへの歪んだ愛情といい、コロンボや金田一耕助みたいな野暮ったいキャラを若い美人女優に演じさせる変態性といいw、堤幸彦さんにはやはり『エヴァ』の作者=庵野秀明さんに通じるものを感じます。

そんなワケで、思わせぶりで難解な方向へ行っちゃう後半は好きじゃないけど、ユニークなキャラクター達による独特な世界観を持った刑事ドラマとして、前半の『ケイゾク』は楽しんで観てました。殺人事件の謎を解くにせよ、堤さんが後に手掛けられるドラマ『トリック』シリーズを彷彿させる奇抜さと大胆さがあって面白く、退屈しません。

映像も音楽もスタイリッシュで、後続の刑事ドラマ群に少なからず影響を与えたんじゃないでしょうか。
 
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『七曲署捜査一係』1997~1999

2019-04-11 00:00:06 | 刑事ドラマ HISTORY









 
『太陽にほえろ!』のスタッフによる正式な続編(と言うよりはリメイク)です。ただし連ドラではなく、日本テレビ系列『金曜ロードショー』の枠で1997年、’98年、’99年に放映された、年1回の2時間スペシャルです。

2001年には、視聴率好調ならば連ドラ化もあり得るって事で、ついに『太陽にほえろ!2001』というタイトルが使われましたが、こちらはボス以外のメンバーが一新されてますので、別物扱いとします。


☆『七曲署捜査一係』(1997.7.18.OA)

新ボス=山岡英介(舘ひろし)、新人刑事ダンク=松井陽平(浜田 学)、紅一点オネエ=島田涼子(多岐川裕美)、カンさん=菅原徹(小西博之)、アオイ=青井宗吉(中村繁之)、デカ長=大高道夫(石橋蓮司)。

以上が七曲署捜査一係の新メンバーです。オリジナルメンバーが1人も残ってないのが残念でなりません。

岡田晋吉プロデューサーによると「この人に声をかけて、この人にはかけないとなると不公平だから、いっそ総入れ替えにした」そうです。ファン心理を無視した言い草で、本当に残念としか言いようありません。

せめてものファンサービスって事で、冒頭に長さん(下川辰平)が「保護司」という肩書きで顔を見せてくれました。で、七曲署の建物を見上げた長さんが「随分と変わってしまったなあ……」って寂しそうに呟くんだけど、まさに我々視聴者がそんな心境でした。実際、建物まで変わってるし。

まぁ、その辺を愚痴っても仕方ありません。とにかく『太陽にほえろ!』が、それもフィルム撮影で復活してくれたんだから、気を取り直して応援しようって思いながら私は観ました。

そう、フィルムで制作してくれたことは本当に嬉しかったです。『Gメン'75』も『西部警察』も『特捜最前線』も、復活版はみんなビデオ撮影に変わってましたから。

フィルムとビデオとでは世界観そのものが違って来るので、ビデオで創るぐらいなら復活なんかしない方が良いです。全く新しい企画でやるべきです。

もう1つ嬉しかったのは、オリジナルの音楽を担当された大野克夫さんが、復活版のサウンドトラックも全て手掛けられたこと。不滅のメインテーマは勿論、マカロニやジーパンのテーマ曲が新アレンジで再録されたCDは、復活版のドラマ本編よりも貴重でしたw

ただ、荒削りな昔のサウンドに比べると、新録音バージョンの方が格段にクオリティーは高いんでしょうけど、そのぶん躍動感に欠けてる気がしました。25年の歳月を感じますね。

さて新メンバーですが、舘ひろしさんが七曲署捜査一係のボス(係長)っていうのは、私は違和感がありました。七曲署のボスは太陽を感じさせる人じゃないと、私はしっくり来ないです。

やっぱり『太陽にほえろ!』って、石原裕次郎さんのイメージ=太陽そのものなんですよね。渡 哲也さんにはまだ共通するものを感じたけど、舘さんは全然違います。どう見ても太陽じゃない。火星とか金星っぽいw

だけど、そこで引っ掛かってたら話になりませんから、受け入れるしかありません。そもそもオリジナルメンバーは誰も残ってないんだし。

その点、多岐川裕美さんは『太陽にほえろ!』と同じキャスト&スタッフで制作された『俺たちは天使だ!』で、スコッチ(沖 雅也)やドック(神田正輝)らとレギュラーで共演されてますから、違和感が無かったです。

そういう意味じゃデカ長(巡査部長)の石橋蓮司さんも、本家『太陽にほえろ!』に何度も出演されてますからね。主に凶悪犯の役でw

このドラマで一番の収穫って、私にとっては石橋さんの渋い刑事っぷりでした。暴力団の事務所に乗り込んでいく場面でも、厳めしいヤクザ俳優が何人出て来ようが、誰よりも石橋さんが怖く見えますからねw

小西博之さんは既に刑事ドラマを何本もこなされてて、バツグンの安定感でした。一目でゴリさん(竜 雷太)の後継者だと判るしw、それに相応しいキャラクター(体格も含めて)だったと思います。

中村繁之さんは殿下(小野寺 昭)のポジションだけど、キャラ的にはドックを継承したような感じでした。意外と……って言ったら失礼だけど、飄々とした良い味を出されてて、特に小西さんとの掛け合いは絶品でした。(テレ朝の『ザ・刑事』で共演済みなんですね)

そして新人刑事=ダンクの浜田 学さん。『太陽』に何度かゲスト出演された浜田光夫さんのご子息で、松田優作、宮内 淳、渡辺 徹、又野誠治に次ぐ文学座からの抜擢デビュー。

それだけに芝居は上手なんだけど、もひとつ華が感じられませんでした。連ドラで続けて行けば、もっと魅力が開花されたかも知れないですが……

だけど一発屋で終わること無く、現在もバイプレーヤーとして活躍されており、色んなドラマでよくお見かけします。息の長い役者さんになられそうですね。

そんなワケで、明らかに『太陽』初期のメンバー構成を再現したキャスティングは、地味ながら適材適所で、なかなか良かったと私は思ってます。

その地味な感じをカバーするには、やっぱり「舘ひろし」の持つ華とネームバリューは必要不可欠だったのでしょう。だから今は納得してます。

肝心のストーリーですが、さすが『太陽』スタッフですからクオリティーは高いんだけど、やはり古臭さを感じずにはいられませんでした。もちろん今風の要素は色々盛り込まれてるんだけど、基本は「熱血」の世界ですから。しかも同じ年に『踊る大捜査線』が登場しちゃってるし。

特に「ダンク」っていう新人刑事のネーミングには、正直「マイコン」を超えるダサさを感じてしまいましたw 刑事にニックネームをつけること自体、もはやパロディやコントのネタにしかならない時代です。

そのせいか、次作から登場する刑事達にはニックネームがありません。ニックネームが恥ずかしいなら『太陽』の続編なんかやめちまえ!って、私は言いたくなるんだけど……

まぁ、難しいですよね。難しくて当たり前なんだろうと思います。


☆『七曲署捜査一係’98』(1998.10.30.OA)

第2弾では残念ながら、石橋蓮司さんがメンバーから抜けちゃいました。でも代わりに新加入する香川刑事(吉田栄作)は、なかなか魅力的でした。

元SATの狙撃手で、犯人を射殺したトラウマで引き金が引けなくなり、クビになりそうな所を舘ボスに拾われたという、とても『太陽』らしさ溢れる設定で登場しました。

スコッチ路線の一匹狼キャラながら、肩肘張らない自然体な佇まいはむしろジプシー(三田村邦彦)を彷彿させ、更に吉田栄作ならではの男臭さも加わって、もしシリーズが続いたならイチオシの刑事になっただろうと思います。それくらい格好良かったです。

その香川刑事がボスの荒療治によって、トラウマを克服していく成長ドラマを軸にしつつ、敏腕弁護士(天海祐希)とボスの対立、そしてほのかなロマンスも描かれました。

香川とダンクが並んで疾走する場面は往年の『太陽』を彷彿させてくれたし、サウンドトラックにも若手ミュージシャンが加わって、前作以上にアクティブな仕上がりになってました。

ゆえに概ね満足出来たんだけど、1つだけ残念だったのは、七曲署一係に滝澤(斉藤晴彦)っていう内勤員が加わったこと。主に経理担当で、余計な出費をしないよう小言を言ったりするオジサンなんだけど、そういうのって全然『太陽』らしくないんですよね。どうせならマスコットガール(庶務係)を復活させて欲しかった。

そうやって『太陽』の基本スタイルを変えたいのなら、最初から違う番組にすりゃええやん!って、私は思いました。『太陽』を復活させるなら、とことん『太陽』らしさを貫いてくれよ!って。


☆『七曲署捜査一係’99』(1999.11.26.OA)

そして、極めつけはこれです。七曲署に「黒歴史」ってヤツがあるとすれば、まさにこれでしょう。

この回、岩井 薫という名の新人刑事が登場します。演じたのが、あの押尾 学なんですよね。数限りなくある芸能スキャンダルの中でも、押尾ほど卑劣なイメージを残した輩はなかなかいないだろうと思います。

今思えば、私はラッキーでした。実はこの回が放映された時期、我が家のビデオデッキが故障中で、録画予約が出来ない状態だったんですね。

で、放映日は仕事で帰りが遅くなり、テレビをつけた時には番組も中盤を過ぎようとしてました。まぁ、それでも今度の新人刑事はどんなだろう?と思って、しばらく観てました。

そしたら、茶髪で目つきの悪いチャラ男が派手なアロハシャツを着て、耳にピアスまでしてるじゃありませんか! ま、まさか、こいつが?って、私は自分の眼を疑いました。けれど残念ながら、間違いなくその男=押尾学が、七曲署の新たなホープだったんです。

「迷走してるな……」って思いました。何か大事なものを、そして今やるべきことを、創り手が完全に見失ってるように私は感じました。

恐らく、そうやって全く刑事らしくないキャラクターを登場させる事で、創り手は原点回帰を図ったんだろうと思います。長髪のマカロニ(萩原健一)や、ジーパン(松田優作)みたいに。

だけど’70年代の「反体制」と、’00年代の「チャラ男」とでは全然違いますよね? 同じ「刑事らしくない風貌」でも、その中身は全く正反対じゃないでしょうか?

私は、そこでテレビの電源を切りました。もはやこれは『太陽にほえろ!』じゃない。だったらもう観なくていいやって。

そしたら数年後に、あのスキャンダルですよ。私は神様に感謝しました。あの番組を観ないように導いて下さり、本当にありがとうございました!って。

もしちゃんと観てたら、私は押尾に好感を持ってしまったかも知れません。七曲署のメンバーには、自然と愛情を抱いてしまう癖がついちゃってますからねw 好感を持った上であのスキャンダルを知ったら、どれほどのショックを受けたか分かりません。だから、私は観なくて助かったワケです。

いずれにせよ、2作目でオジサン内勤員が登場した辺りから、この『七曲署捜査一係』シリーズは本来の『太陽にほえろ!』とは違う方向に行ってしまった。私はそう思います。オリジナルメンバーが出ない「復活」なんてそもそも意味が無いと思うんだけど、そうは言っても最初の2作には少なからず見所がありました。

フィルムで制作してくれた英断への敬意もこめて、最初の2作だけは「素晴らしい」作品としてここに記しておきます(3作目は無かった事にしますw)
 
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