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ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『妹の夏』

2021-03-19 23:23:26 | 日本映画






私の敬愛する映画監督=城定秀夫さんの、ピンク映画界における作品をこれから何本かご紹介させて頂きます。

記事はいずれも何年か前にアップしたものだけど、公序良俗に反するというワケの分からない理由で公開停止処分を食らい、泣く泣く削除したものです。

画像に写り込んでた女優さんの乳首が問題にされたみたいだけど、哺乳類なら付いてて当たり前のものが見えて一体何が悪いのか、私にはサッパリ理解できません。まったく理不尽です。

しかし、城定監督の素晴らしい作品群を新しい読者さんにも紹介したいので、不本意ながら「見えてはいけない」とされてる部分は見えないよう修正し、再掲載させて頂きます。本当は見えてる方が正常なのに「修正」と書くのもおかしな話だけど。

どこまでがOKでどこからがNGなのか、その基準がそもそも曖昧で、どうやら審査する人の「気分」だけで判断されてるきらいがあり、せっかく再掲載してもまた公開停止になる可能性は充分にあります。もし記事がいつの間にか消えてたら「ハリソンのやつ、またやられたんだな」と笑ってやって下さい。

ほんとに、いったい何がいけないのやら?

☆☆☆☆☆☆☆

2013年にリリースされた、城定秀夫 監督・脚本によるVシネマ。クレジットが「城定夫」になってたもんで「似たような名前の監督さんがいるんだな」と思ったら、城定秀夫さんの別名義なんですね。ろくな撮影日数を貰えなかった時に「秀」を抜いちゃうんだとか(ハリウッドで使われるアラン・スミシー名義みたいなもん?)。 でも、これはとても突貫作業で撮ったとは思えない良作です。

売れない官能小説家のアキオ(磯田泰輝)は、雑誌編集者の妻(堀口奈津美)の収入を頼りに暮らす冴えない日々。

そんな夏のある日、妻の留守中に妹のナツ(星美りか)がアパートを訪ねて来ます。プチ家出をして来たと言うナツは、強引に押し入れの中に住み着きます。

で、アキオはナツを実家に帰らせる為に、わざと妻との激しいセックスを見せつけるんだけど、それは逆効果でした。

「お兄ちゃんさぁ、私にしてたのと全然違ってたね。すっごい激しくしてさぁ、なんで私にはしてくれなかったの? 私が子供だから?」

実はこの兄妹は血が繋がっておらず、かつて両親の留守中に一度だけチョメチョメしちゃった事があるのでした。

「してよ、奥さんと同じように。じゃなきゃ、バラすから」

そんなワケで、兄と妹は激しくセックスし、妻の留守中はずっとイチャイチャします。お陰で小説の執筆は遅々として進まず、担当編集者(吉岡睦雄)の催促がエスカレートするばかり。

でも、それはナツのせいじゃなくて、本当はアキオ自身がスランプだから。そもそも妻にも「官能小説なんか向いてないよ」と言われており、作家として限界を感じてたのでした。

そんなアキオに、ナツは提案します。

「ねぇ、お兄ちゃん。あの日の私たちのこと書いてよ」

アキオは、ナツと初めてチョメチョメした、三年前の夏の日の出来事を書き始めます。その頃書いてた官能小説を盗み読みし、興奮したナツにキスされ、つい処女を奪っちゃったあの日……

順調に筆は進み、初エッチのくだりは書き終えたんだけど、その後、ナツが自転車でコーラを買いに出かけてからの事が思い出せない。

「あれ? ナツと俺は、あの後どうなったんだ? なんで俺は今、ナツとは別の女と暮らしているんだ? ……どうしても、思い出せない」

「……私、やっぱり好きだな。お兄ちゃんの、困った顔」

「ナツ……」

「もういいよ。ごめんね」

「え?」

「もう、奥さん帰って来ちゃうから……お兄ちゃん、またね」

そう言ってナツは、涙を隠しながら押し入れの中へと帰っていきます。

アキオの妻には内緒で何日もアパートに住み着いてるナツ。どうしてバレないのか、考えてみれば不思議な話です。

帰宅した妻は、喪服の準備をしようとして押し入れを開けますが、そこにナツの姿はありません。

「なんで喪服を?」

「え? 明日、妹さんの三回忌でしょ?」

「…………!」

そう、三年前のあの日、自転車で出かけたナツは交通事故で亡くなったのでした。アキオはあまりのショックでその記憶を無意識に封印。そしてここ数日、彼はずっと幽霊とセックスしてたワケです。

そこからホラー展開になってもいいところだけど、城定監督は優しいんですよね。各キャラクターへの愛を感じます。

「これ、遅くなってごめんね」

またもや執筆に悩んでるアキオのそばに、ナツが冷たいコーラを持って再び現れました。

「ねぇ、お兄ちゃん。書いてよ。私たちの、これから」

「……うん!」

ナツが3年経ってから現れたのは、たぶん兄がスランプに苦しんでるのを見てられなくなったから。これもまたエロいい話です。

ありがちな設定と言えばそうかも知れないけど、約60分という尺でちゃんと切ない気持ちにさせてくれる手腕はさすが城定監督!と私は思いました。

星美りかさんの妹演技がまた絶品なんですよね。その良さは文字じゃ伝えようがないんだけど、観れば萌えますw その裸体、本当に柔らかそうなオッパイがすこぶるエロくて、確実に身体の一部をホット☆ホットにしてくれます。

レビューでは長くなるから省略したけど、アキオと妻の関係も添え物に終わらせず、ナツの出現によって微妙に変化していく様がちゃんと描かれてます。それも、悪化するんじゃなくてかえって良くなってるのが「エロいい」んですよね。

やっぱり城定作品にハズレなし。この名前を見かけたら、安心してご覧になれること請け合いです。


 


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『アルプススタンドのはしの方』

2021-03-18 09:27:07 | 日本映画









 
2020年に公開され、コロナ禍にも関わらずスマッシュヒットを飛ばした、城定秀夫 監督・奥村徹也 脚本による日本映画。

タベリスト仲間のgonbeさんがブログで推奨されてたのに加え、もしかしたら私が大林宣彦監督の次に敬愛してるかも知れない、ピンク映画界の巨匠=城定監督が手掛けられた一般向け青春映画ということで観たくなりました。

さらに、元々は登場人物4人だけの高校演劇で、それを映画会社のスポッテッドプロダクションズが一般公演用にグレードアップ、その舞台のキャストをまんま使って制作会社レオーネが映画化したという、ユニークな成り立ちにも興味を引かれました。

ついでにもう1つ言えば、城定監督と何度もタッグを組まれてるプロデューサー(レオーネ社長)の久保和明さんは俳優でもあり、かつて私が演出したテレビの連続ミニドラマでレギュラー出演されてた方です。その時だけのお付き合いだけど、言わば知り合いが映画で1発当てたと聞けば観ないワケにいきません。

しかしなぜ、エロ要素は皆無の本作で城定監督が起用されたのか? 久保プロデューサーと旧知の仲だからってことも勿論あるでしょうが、それ以上に城定監督がピンク映画、すなわちチョー低予算の映画で傑作をいくつも生み出された名手であることが大きいかと思われます。

なにせこの作品、夏の高校野球大会で母校の応援に来た高校生4人プラスアルファ(小野莉奈、平井亜門、西本まりん、中村守里、黒木ひかり)が、タイトル通り球場のアルプススタンドのはしっこで会話する、ただそれだけの内容なんです。まさに演劇のために生まれたストーリーで、それを映像作品として成立させるのは簡単そうに見えてメチャメチャ難しい!

ふだん潤沢な予算で映画を撮ってる監督には、おそらくムリな仕事だろうと思います。低予算の現場に慣れてるだけでなく、低予算をむしろ逆手に取って面白くする術を知り尽くした人、つまり城定監督みたいな人にしかこういう映画は創れない。「映画なんだからプレーしてる高校球児たちも撮らなきゃ!」とか言い出す人じゃダメなんです。

それともう1つ。有名スターでも演技派でもない若手女優さんたちを輝かせるには、幾多のセクシー女優さんを映画女優として輝かせて来た、城定監督のマジックが必要不可欠だと判断されたんでしょう。

こだわりの照明で女優さんをキレイに撮るだとか、良い演技を引き出すまで何十回もテイクを重ねるだとか、低予算の現場でそんな悠長なことはしてられません。にも関わらず、城定監督が手掛けられたピンク映画のヒロイン(つまり普段はAVで活躍されてる人)たちはみんな魅力的で、濡れ場以外の演技も上手に見えてしまう! まさにマジックとしか言いようありません。

今回はオリジナル(舞台)の良さを損なわず再現することに徹しておられる印象だけど、マジックのお陰でキャスト全員がより輝いて見える効果はあったに違いありません。

話の内容に関しては、主役が甲子園や演劇の舞台で輝くヒーローたちじゃなく、輝きたかったのに輝けなかった子らである点に共感したし、夢を諦めるという若者の選択を否定しないスタンスも良かったと思います。

若い子らに夢だの目標だのを強要する時代はもう、とっくに終わってる。だからと言ってがむしゃらに頑張ることも否定はしない。どっちの道も「あり」なんだから、自分が歩みたい道を正直に選べばいい。そんなメッセージがこめられてるように私は感じました。

その解釈が当たってるとすれば大いに賛成だけど、ただ、エンタメ作品として観ると、私にはちょっと真っ当すぎるというか、爽やかすぎて物足りなく感じたのもまた事実。

あくまで個人的な好みを言えば、前回レビューした『スイートプールサイド』みたいに屈折してる方が、私のハートには強く響いて来ます。私の青春も屈折しまくりでしたから。(さすがに毛を食べたりはしないけどw)

しかしそれにしても、間違いなくチョー低予算の作品です。撮影にはたぶん5日もかけてません。それがヒットを飛ばしたんだから効率が良いにも程があり、久保プロデューサーはきっとウハウハですw

私はふだん日本映画の貧乏臭さを嘆いてますけど、こうして多くの観客に感動を与える映画を、ほんの数日で仕上げちゃうノウハウを(過酷な現場で鍛えられたお陰で)持ってるクリエイターって、もしかしたら海外にはあまりいないかも?

是非ともNHKさんに『プロフェッショナル』で城定監督を取り上げて頂き、エロ映画の製作現場に密着して欲しいですw いやマジメな話、大作映画の現場なんか見たって、これから映画創りを始めようとしてる人たちには何の参考にもなりませんよ。

予算が無くたって面白い映画は創れる。城定監督の背中を見れば、それがよ~く分かるはずです。

セクシーショットは共に優等生を演じられた、中村守里さんと黒木ひかりさんです。


 

コメント (2)
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『スイートプールサイド』

2021-03-17 00:00:03 | 日本映画










2014年に公開された、松居大悟 監督・脚本による松竹配給の日本映画。原作は押見修造さんの連載コミックです。

押見さんといえば『漂流ネットカフェ』や『惡の華』あたりの作品が有名かと思いますが、私は連載デビュー作の『アバンギャルド夢子』('03) を読んでファンになりました。

『アバンギャルド夢子』の内容は、チンコを見たくて見たくてしょうがない女子高生の夢子が、クラスメイトのおたく少年をヌード絵画のモデルにすることで存分にチンコを観察し、弄ぶという映画化不可能なものw

そんなちょっと歪んだ性の話に私は強く惹かれるし、それを単なるエロで終わらせず、思春期に誰もが抱えるコンプレックスや葛藤といったテーマを、良い意味でくだらない味付けで(だけど大真面目に)描いた作風も実に私好み。

『スイートプールサイド』の原作は『~夢子』の翌年に週刊ヤングマガジンで連載されたものだけど、私はまだ読んでません。ファンなのにうっかりしてましたw

ストーリーは、チンコになかなか毛が生えず、クラスメイトたちから「ツルツルくん」と呼ばれて悩んでる男子中学生の太田(須賀健太)が、毛深くて悩んでる水泳部の美少女=後藤(刈谷友衣子)から「(不器用すぎて自分で剃れないから)わたしの毛を剃って」と頼まれちゃうという、実に押見さんらしい内容w

もちろん、彼女が剃って欲しいのは見える部分の毛、つまり産毛なんだけど、「じゃあ、いくよ」とか「そんなに見ないで」とか言うやり取りは明らかに「初体験」のメタファ―。産毛の次は腋毛、そしてその次は……さてどうなるか?ってなお話だけど、これはあくまで一般映画、青春映画なのでチョメチョメな事にはなりません。

『~夢子』もそうだったけど、ヒロインは相手を異性として見てないんですよね。夢子はただチンコが見たいだけだし、後藤はただ上手に毛を剃って欲しいだけ。相手が全然タイプじゃないから「ヌードを描かせて」とか「わたしの毛を剃って」とか言えちゃうワケです。

だけど男子の側は、女子と2人だけの秘密を共有するうち、どんどん勘違いしちゃう。後藤には他に好きな男がいるもんで、太田の想いは完全に空回り。クライマックスはちょっとした狂気の沙汰になっていく展開も本作は『~夢子』とよく似てます。

で、結局なんだったんだろう?って、解ったような解んないような感じで終わるのもよく似てる。

青春って、そういうもんですよね。昨年からレビューしてきた昭和の青春ドラマ『あさひが丘の大統領』も、結論を示さないまま終わる回が多かったです。

人生の初心者に結論など出せっこない。まして恋愛に関しては。歳を重ねてしまった私の場合、悪い意味で境地に達しつつあるんだけどw、それを語ったところで若い人らには何も響かない事でしょう。

青春とはカオス。微エロを通して押見修造さんと松居監督は、それをリアルに描いておられると私は思います。素晴らしい!

で、その難しいモチーフを見事に体現して見せた、須賀健太くんと刈谷友衣子さん、さらに荒井萌さん、仲野太賀くんら若い俳優さんたちはもっと素晴らしい!

特に、全裸ヌードを披露する(させられる)ばかりか、剃って集めた後藤の毛を夜な夜な食べたりしちゃう変態ぶりを見せてくれた、主役の須賀健太くんにはマジ脱毛、いや脱帽です。(どうスか、おやじギャグの切れ味は?w)

刈谷友衣子さんの腋毛はホンモノかどうか判らない(たぶんホンモノに付け毛を足したんでしょう)けど、思春期まっただ中の彼女には勇気が要ることだったはず。お2人とも出演を引き受けた時点で天晴れです!

あと、太田に想いを寄せ、2人の秘密を探ってカオスに導いていくクラスメイト=坂下を演じた荒井萌さんもまた好印象。以前ここでレビューした『富江/アンリミテッド』('11) で富江(仲村みう)と闘うヒロインを演じた女優さんで、現在は「あらい美生」の芸名で活躍されてます。


 

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『君よ憤怒の河を渉れ』

2020-07-30 22:10:05 | 日本映画










 
そう言えば、これを今の今まで観てませんでした。1976年に公開された、佐藤純彌 監督による松竹配給の日本映画。2時間半の超大作です。

ストーリーは日本版『逃亡者』と言えば分かり易いかと思います。何者かの罠により殺人犯の濡れ衣を着せられ、自ら真犯人を捕らえる為に逃亡する主人公に高倉健、彼を執拗に追跡するやさぐれ警部に原田芳雄、逃亡を手助けするヒロインに中野良子、その父親に大滝秀治、黒幕に西村晃が扮するほか、倍賞美津子、伊佐山ひろ子、池部良、田中邦衛、岡田英次、内藤武敏etc…といった豪華キャストが集結。我らが長さん=下川辰平さんも所轄のベテラン刑事役で出演されてます。

この映画はやっぱり、高倉健さんという存在がもたらす説得力、それに尽きるんじゃないでしょうか? 刑事の原田芳雄さんが知らず知らず主人公にシンパシーを抱くのも、箱入り娘の中野良子さんが一目惚れして全てを捧げるのも、その父親が自分のセスナ機を逃走用に「くれてやる」のも、もし主役がムロツヨシさんならギャグにしかなりませんw

そもそも、主人公には検事という立派な肩書きはあるものの、彼が本当に無実であることを我々観客が信じるための根拠を、映画は何も示してないんですよね。それでも、健さんだから、無実に決まってると我々はすんなり信じちゃう。

ハリソン・フォード主演で大ヒットしたリメイク版『逃亡者』も同じことで、ふだん映画を全く観ない人がそれを観たら、主人公自身が真犯人である疑いが捨て切れず感情移入できないかも知れません。だけどハン・ソロやインディアナ・ジョーンズに魅了されて来た我々は、たとえ彼が真犯人であっても応援しちゃうw

きっと主人公は悪くない。なぜならハリソン・フォードだから。健さんだから。そこがスーパースターのスーパーたる所以。かったるい説明を省いても自然と観客を味方につけちゃう。彼に協力する刑事や箱入り娘にも共感させちゃう。ムロツヨシさんじゃそうはいきませんw

タイトルは硬派な感じだけど、これは純娯楽映画でありスター・ムービーです。チープな特撮や軽妙すぎるBGMなどツッコミどころは多々あれど、それを挙げつらうのも楽しみ方の1つです。マジメに考えちゃいけませんw

健さんだけじゃなく、やさぐれ警部の原田芳雄さんはめっぽうカッコいいし、清純派の中野良子さんはヌード(吹替えっぽいけど)と濡れ場を披露してくれてます。

なお、本作は中国でも'79年に公開され、文化大革命後に初めて公開された外国映画ということもあって観客動員数8億人(!)の大ヒット。健さんと中野良子さんはあちらでも大スターとなり、2017年にはジョン・ウー監督により『マンハント』というタイトルでリメイクもされてます。
 


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『舞妓はレディ』

2020-06-04 22:10:14 | 日本映画








 
2014年公開の東宝配給による日本映画です。舞妓さんが1人しかいなくなった京都の小さな花街・下八軒の老舗お茶屋を舞台に、舞妓になる為に頑張る少女=春子(上白石萌音)の姿がミュージカル仕立てで描かれます。勿論ストーリーはハリウッドの名作『マイフェアレディ』がベースになってます。

世知辛い昨今、まだ無名の新人だった萌音ちゃんを主役に抜擢した懐の深さが、まず素晴らしいと思います。その分、長谷川博己、富司純子、田畑智子、渡辺えり、竹中直人、濱田 岳、高嶋政宏、岸部一徳etc…といった豪華キャストが脇を固め、チョイ役ゲストも小日向文世、妻夫木聡、大原櫻子、瀬戸朝香、加瀬 亮etc…と錚々たる面々です。

だけど私がこの映画のDVDをレンタルして観たのは、脚本も兼ねた周防正行監督の大ファンだからです。特に『シコふんじゃった。』『Shall we ダンス?』の2作は日本映画オールタイム・マイベスト10に入る大傑作です。

シンプルな成長ストーリーに、入念なリサーチによる業界(今回の場合は舞妓さんや言語学)のディティール描写を織り交ぜ、笑わせながらも最後に気持ち良く泣かせてくれる、ウェルメイドな純エンターテイメント路線が周防監督の真骨頂だと私は思ってます。

とにかく、シリアスとコミカルのバランスが私の好みにピッタリなんですね。いや、バランス感覚だけの問題じゃなくて、映画創りに取り組む姿勢が、そこによく表れてる気がするんです。

同じコメディーでも三谷幸喜さんはあまりにサービス過剰だし、宮藤官九郎さんはあまりに反則技が多過ぎる。このお二人に共通するのは、自分がウケたい!っていうエゴが強過ぎる点ですw 特に宮藤さんは、映画やドラマという媒体を軽く見てる(ようにしか見えない)姿勢が見え隠れします。

周防監督の笑いは、とにかく抑制が利いてます。絶対にやり過ぎないし、ストーリーや登場人物の心情を描くにあたって、その笑いが不必要と判断すればバッサリ切り捨てる潔さがある。

つまり、自分がウケることよりもキャラクターの心情をちゃんと優先してくれる。だから観客(少なくとも私)は素直に感動出来るワケです。「オレがオレが」の三谷さんや宮藤さんには不可能な事です。

今回の『舞妓はレディ』は、まるで’50~’60年代の日本映画みたいに落ち着いた雰囲気があって、今の若い人(特に『あまちゃん』にハマっちゃうような人)は退屈してリタイヤしちゃうかも知れません。たぶん周防監督はそれも承知の上で、とにかく「ちゃんとした日本映画を創るんだ!」っていう意志を、徹底して貫かれたんじゃないかと思います。

昨今のメジャーな日本映画(TVドラマも)のほとんどは国内でしかウケないし、10年~20年後には観るに耐えない代物になってるだろうと思うけど、『舞妓はレディ』はどこの国の人が何十年先に観ても変わらず楽しめる作品だと私は思います。

過剰なサービスや反則技で観客を笑わせるのは簡単です。(三谷さんや宮藤さんみたいなセンスがあればの話ですが) 周防監督みたいに徹底した正攻法で笑わせる方がずっと凄い。

と言っても『舞妓はレディ』はコメディ要素さえ抑え気味で、本当にストレートな成長物語です。竹中直人さんと渡辺えりさんが『Shall we ダンス?』の時と同じ扮装で踊ったりするお遊びはあるけどw、それも本筋が片づいた後のカーテンコールみたいなもんです。

そういう小ネタに頼らず、あくまでストーリーの内容で勝負する「ちゃんとした日本映画」です。 ヒロイン=上白石萌音ちゃんの初々しさも、ミュージカル部分(楽曲、歌声、踊り)も素晴らしかった。

まさに威風堂々! こんな日本映画が増えて行けば良いなあって、私は思いました。
 


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