2019年に公開された、周防正行 監督・片島章三 脚本による東映配給の日本映画。
私が城定秀夫さんと同じくらい敬愛申し上げてる周防監督の最新作だけど、巷から評判が聞こえて来ないし、タベリストgonbeさんがブログに書かれた感想からもイマイチ感がひしひしと感じられ、イマイチなんだろうなあ~と思いながら観てみたらやっぱりイマイチでしたw
およそ100年前、映画がまだ「活動写真」と呼ばれてた時代の関西地方。無声映画の上映時にナレーションを生披露するカツベン=活動弁士に憧れる貧乏青年の成長を、当時の喜劇映画よろしくスラップスティック調に描いた純然たるコメディー。
gonbeさんと私にはチャップリンの映画(つまりあの時代のサイレント喜劇)が大好きっていう共通点があり、題材との相性はバッチリな筈なのに、このイマイチ感はどこから来るのか?
登場する男のキャラがみんな横柄なのは「そういう時代だったから」と理解はするものの、それにしたって皆そろって魅力が無さすぎる。
それ以上に私が気になったのは、ギャグのキレの悪さ。同じ周防監督の作品でも『シコふんじゃった。』や『Shall we ダンス?』にはキレがあったと私は思う。だからファンになったんです。
果たしてこのキレの悪さが、100年前の映画(の演出)を模倣してるからなのか、あるいは周防監督の感性が老いてしまったからなのか?
たとえ100年前の映画でも、チャップリンやキートンの笑いには多分、いま観てもキレがある。その点で日本の無声喜劇はどうだったのか、ほとんど観たこと無いから分からないけれど……
ってことはつまり、周防監督の演出にキレが無くなったということなのか? 振り返れば前作『舞妓はレディ』の時も、現代の映画とは思えないキレの悪さを何となく感じたけど、それは意図的に古き良き時代の日本映画を再現してるから、と私は好意的に解釈しました。
今回はもっと古い時代の演出を、それこそハッキリ意図的に再現してるんだから、キャラクターが皆ステレオタイプなのも当然かも知れない。けど、それにしたってギャグのキレが…….特にタンスの引き出しを使ったドタバタなんて、ドリフのコントなら爆笑必至だろうに……
そもそも主役の成田凌くんが二枚目すぎる、っていうのも大きな足枷になってる気がします。ドタバタ喜劇は滑稽さがあって初めて笑えるんだから。
ヒロインの黒島結菜さん(祝・朝ドラ主演決定!)は弾けた演技で笑わせてくれそうなのに、逆におとなしい役で勿体なかった気がします。それも時代背景を考えると仕方ないんでしょうけど。
関西弁の竹野内豊、永瀬正敏、高良健吾、成河(ヨカナーンよ!乳首よ!)、小日向文世、井上真央、酒井美紀、山本耕史、池松壮亮、そしてお馴染みの竹中直人&渡辺えりコンビに田口浩正、徳井優etc…と、そうそうたる顔ぶれなのに、演じるキャラに魅力が無いから活かされない。
本編の内容よりも、劇中で上映される無声映画、それもよく知られた古典名作のキャストがなにげに上白石萌音ちゃんだったり城田優くんだったりシャーロット・ケイト・フォックスさんだったりするのが面白くて、創ってる人たちもそこを一番楽しんでるように感じちゃうのは如何なもんでしょう?w
たぶん、ギャグにキレが無いと感じるのは「毒」が足りないから。『Shall we ダンス?』あたりまでは充分あったのに、草刈民代さんと結婚されてからどうも……ってな見方は意地悪に過ぎないかも知れないけど(私、草刈民代さんがイマイチ苦手で……)。
結婚し、守るべき家庭が出来て、影響力が桁外れに強そうな奥さんがいて……となると創る作品の内容も確実に変わって行きます。かく言う私の文章のキレも確実に鈍ってるしw 乳首よ!
だけどしかし、やっぱり意図的に古典を再現してるがゆえのキレの悪さだと、私は思いたい。次ですよね。この次の作品でそこがハッキリ見えて来るんだろうと思います。
ここ数日の流れを受けてピンク映画と誤解しそうなタイトルだけど、この「ハァハァ」はあの「ハァハァ」ではなく、もっと爽やかな「ハァハァ」です。『スイートプールサイド』の松居大悟監督による、2015年公開の青春ロードムービー。
北九州市に住む女子高生の一ノ瀬(井上苑子)、さっつん(大関れいか) 、チエ(真山朔)、文子(三浦透子)の4人が、人気ロックバンド「クリープハイプ」のライブ会場で出待ちしてたらボーカルの兄ちゃんに「東京のライブにも来てね」と声をかけられ、すっかりその気になって東京は渋谷を目指し、無謀な自転車の旅に出かけるというストーリー。
途中で自転車がパンクしてヒッチハイクしたり、資金が底をついてキャバクラでバイトしたり等のトラブル&冒険を経て、対立と和解も乗り越えて、渋谷の会場まで「ハァハァ」言いながら走って辿り着いたら、もうライブ終了寸前で……と、つい最近レビューした『リトル・ミス・サンシャイン』を例に挙げるまでもなく、ロードムービーってだいたいこんな展開だよねって、冷めた言い方をすればそんな感想でした。
『~サンシャイン』の時ほど私がのめり込めなかった理由は、大雑把に2つあります。まず1つは、女子高生たちが夢中になってる「クリープハイプ」っていう実在の人気バンドにまったく魅力が感じられなかったこと。これは単なる嗜好の違いだから仕方ありません。
それともう1つは、本作の長所でもあるかも知れないんだけど、女子高生たちがまったく普通の明るい子たち、つまりマジョリティであること。『~サンシャイン』のファミリーみたいにそれぞれが深刻な問題を抱えたマイノリティじゃないんですよね。
彼女らの家庭環境とか学校でのポジションとか、背景がほとんど描かれてないから断言できないけど、見る限りじゃイジメられっ子でも極端な不良でもなく、学校にいる時も同じようにキャピキャピしてそうな普通の女子高生。それが悪いって言うんじゃ勿論ないけど、集団生活にまったく馴染めなかった私にとっては共感度が低いワケです。
クリープハイプってバンドがまさに、そういう多数派を喜ばせる為に音楽やってるミュージシャンの代表みたいに見えちゃう。実際はそうじゃないかも知れないけど、この映画で見る限りはそう感じてしまう。
窮屈な日常から脱出したい気持ちはよく解るし、自転車によるツーリングも学生時代に(日帰りだけど)したことあるから、まったく共感できないワケじゃないんだけど、他人事と感じてしまうとちょっと、こういう映画はノレないですよね。
けど、それでも最後まで楽しめたのは、女子高生を演じる若手女優さんたちの演技がとても自然で、芝居臭くないから。これにはホント感心しました。
もちろん松居監督の演出力も凄いんだろうけど、もし昭和の頃の若手俳優を使って同じことしたら、たぶん映画として成立しないんじゃないでしょうか?
それはきっと、演技力の問題とはまた違うんですよね。彼女らの演技がいくら自然で素晴らしくても、だからって多部未華子さんみたいにどんなキャラにでもなり切れるかといえば、多分そうじゃない。
監督はおそらく、4人のキャラクターをほぼ「素」で演じられる子たちをオーディションで選んだ(あるいは脚本を彼女らに合わせて当て書きした)筈で、彼女らが演じてるのは自分自身なんだろうと思います。
今の若い人らは生まれた時からカメラで撮られ続けて、すっかりカメラ慣れしてるもんだから、素をそのまま撮られることに抵抗がない。本作の素晴らしさは、彼女らのそんな資質をうまく生かしたのと、そうすることで今どき女子の生態をリアルに描き出したこと。それに尽きるんじゃないでしょうか?
だから、憧れのバンドがクリープハイプだろうがくりぃむしちゅーだろうが何だっていいんです。とにかく今を生きる女子高生、まさに等身大の17歳女子たちの言動を、犯罪を犯さずに覗き見できる、そこにこそ価値があるんだと私は思います。
自分たちの旅をSNSで公開し、助けを求めたりバッシングの的にされたり、カレシがいるくせに行きずりの池松壮亮(要するに見た目のいいヤツ)と簡単にディープキスしたり、まったく罪悪感なくタバコを吸ったり等、そういうのがすっかり日常風景になってる感じが、まあオジサンだからよく知らないけど多分リアルなんですね。
1つだけよく分からなかったのが、北九州から東京まで自転車で行くつもりの彼女らが、出発時に学校の制服を着てること。もちろん途中で着替えることになるんだけど、だったら最初から軽装で行きゃええやん!ってw、しょっぱなで疑問が沸いちゃったのも感情移入の妨げになりました。
朝から登校すると見せかけて……なら解るんだけど出発は夜だし、荷物が増えるだけの話で何のメリットも無い。もし、映像的に映えるからとか、ポスター写真を制服姿にしたかったからとか、そんなつまらん理由だとしたら心底ゲンナリです。
制服が窮屈な日常のシンボルで、最後にまた制服姿に戻ることが「旅の終わり」なんだと、そういう意味が込められてるのかも知れないけど、だとしたら演出過剰ってもんじゃないでしょうか? 何でもかんでも比喩すりゃいいってもんじゃない。
そんなワケでオジサンのハートに突き刺さるものは無かったけど、最初からオジサンなど対象外でしょうからw、なんの問題もありません。
クリープハイプってバンドがどれくらい人気あるのか知らないけど、ああいう音楽が好きなマジョリティにはオススメしても大丈夫そうです。
それと、今の若手俳優たちの凄さですよね。『スイートプールサイド』にせよ『アルプススタンドのはしの方』にせよ、今でなければ成立しそうにない。そこは素直に拍手を贈りたいと思います。
2016年に公開された、城定秀夫 監督・脚本によるピンク映画。第28回ピンク大賞で優秀作品賞と新人女優賞を獲得した傑作です。
街の交差点で交通量調査のバイトをしてたフリーター男・春生(麻木貴仁)は「1000人目の女を嫁にする」と決め、実際に1000回目でカウントした女性・真琴(古川いおり)をロック・オン。
5年後、町工場で働くようになった春生は、真琴がエリート商社マンの夫と住む家のすぐ近所にアパートを借り、夜な夜な真琴の生活を覗き見、朝は真琴が出したゴミを持ち帰ってチェックする等、立派なストーカーになっていたのでした。
読唇術まで習得し、真琴と夫の会話を読み解き、プライバシーを全て把握する春生の本格ストーカーぶりに、最初は笑いつつも嫌悪感を抱くんだけど、街で真琴にちょっかいを出すチンピラに殴りかかってフルボッコにされる姿など見る内に、春生の想いは純粋に恋なのではないかと思えて来ます。
もし1000回目にカウントした女性が全く好みのタイプでなかったら、いくらバカでもこんな事はしてないでしょう。たまたま1000人目の女性がストライクど真ん中だっただけで、そういう意味じゃ運命の出逢いと言えなくもありません。
だけど、どんなに彼が真剣に彼女を想ったところで、所詮はストーカーの一方通行。積もり積もった欲求不満を馴染みのデリヘル嬢を抱いて晴らすんだけど、その翌朝に目覚めて横を見ると、憧れの真琴がすぐそばで寝てるから驚いた!
ここで、真琴の出したゴミを春生が漁った数日前まで話が戻り、今度は真琴の視点から同じ出来事が描かれていきます。
その時に真琴が捨てた「お宝」の歯ブラシ(春生は毎日それをしゃぶってる)が実は旦那の物だったことやw、一緒に捨てたワンピースが旦那の実家から送られたプレゼントだったことが判明します。しかも彼女は「今日はお宝よ」と呟きながらゴミを捨てるんですよね。
つまり、こっそりストーキングしてるつもりの春生の存在に、真琴はとっくの昔から気づいてた。さらに理想的な円満夫婦に見えた旦那との関係が実はそうじゃないらしいこと、そして真琴という女が見かけ通りの天使じゃないってことが、この1シーンだけで分かっちゃう巧みな構成。
真琴は、良妻を演じて夫とセックスだけしてりゃ裕福な生活を送れると思ってる実はビッチな女で、夫が会社の同僚と不倫してることも見て見ぬフリをしてる。
だけどやっぱり人間だから、夫が出張を装って外泊した夜には気分がモヤモヤし、酒に酔って春生のアパートを見下ろしてみたら、ストーカーのくせにヤツは商売女を連れ込んでる。その怒りと酔った勢いで春生の部屋に忍び込んだ真琴は、その状況を夢だと思った春生にキスされ、そのままチョメチョメしちゃったというワケです。
それが夢じゃないと判ってうろたえる春生に、真琴は「一言でも何か喋ったら警察に訴えるわよ」と言って脅し、その日から気が向けば春生を呼びつけセックスするようになります。
発言を許されない春生は真琴のなすがままの奴隷であり、主人公の視点が入れ替わったと同時に加害者と被害者の立場も逆転しちゃったワケです。
いや、春生はそもそも真琴の為(真琴を嫁にする為)に就職し、引っ越しまでしてるワケだから、最初から彼女に全てを捧げる人生なんですよね。
それが男と女、オスとメスの最も自然な関係であり、愛人を作りながら妻を養う真琴の夫も、種付けこそが使命であるオスの生き方を忠実に実践してる。城定監督はそういうことを描きたかったのかも知れません。
結局、真琴の夫は社内不倫がバレて地方へ左遷されることになり、それを知って春生は想いを彼女に伝えます。
「あんな男のことは忘れて、俺と一緒に暮らそう!」
「喋んないでよ。今のままが良かったのに」
「結婚しよう!」
「……じゃあ、指輪。私、安い女じゃないの。飛びっきり大きなダイヤがいいな」
それで春生は、新薬の人体実験という裏バイトでお金を稼ぎ、一世一代の買い物をするんだけど、真琴は夫と一緒に地方へと引っ越しちゃう。
夫婦が乗った車を愚直に走って追いかける春生に、たまたまそれを見かけた馴染みのデルヘル嬢が「ガンバレ~!」って声をかけて、さわやかに物語は幕を閉じますw
哀れと言えば哀れだけど、オスの本能に沿った明確な目標を持ち、なんの疑問も抱かずに突っ走る春生に対して、最初に感じた嫌悪感はもうありません。ただ無意味に「生きてるだけ」の私から見れば、むしろ羨ましいぐらい。
それは真琴にも言えることで、結婚の本質なんて大方あんなもんでしょう。それを幸せと感じられた者の勝ちです。
ろくでもない人間しか出て来ないのに本作が心地好いのは、主人公たちがとにかく前しか向いてないからだろうと私は思います。ホントそうありたいもんです。
この映画、クオリティーは城定秀夫級だけど描かれるキャラは城定さんっぽくない(だから他の監督の作品だろう)って思いながら観てたのに、最後のクレジットでやっぱりこれも城定作品だと判って、私はもう感服致しました。
今までレビューした城定作品群の中でも『エロいい話』シリーズみたいなファンタジー喜劇もあれば『僕だけの先生/らせんのゆがみ』みたいに暗いサスペンスもあり、作品がバラエティー豊かでどれも面白い。
ケーブルテレビの録画予約は作品のタイトルだけ見て選んでますから、別に城定作品を追いかけてるワケじゃない。なのにこうして頻繁に観てる=作品数もずば抜けて多い。それでいてほとんどハズレが無いという驚異的な高打率。エロ映画の世界にこんな凄いクリエイターがいたなんて!
主演の古川いおりさんも、以前観た別監督によるVシネマの時よりずっといい。新人女優賞受賞も頷けます。ストーカー役の麻木貴仁さんも上手いし、やっぱり役者を生かすも殺すも演出しだい。
今回は特に、ストーカーする側とされる側の視点の逆転、その鮮やかな見せ方にやられました。エロ描写の有無は関係なく、これは映画として純粋に面白かったです。
湊莉久 主演、城定秀夫 監督、2016年製作のVシネマだけど、劇場公開されても遜色ない、ちゃんとしたエロ映画で面白かったです。
平凡な女子大生=美雪(湊 莉久)が町で見かけたバイト募集の貼り紙をきっかけに、引きこもりの浪人生=清彦の家庭教師を始めるんだけど、雇い主である清彦の姉=智子(和田みさ)がなんだか胡散臭い。
古い一軒家に住むこの姉弟に親はおらず、実の弟である清彦を溺愛してる智子は、彼が一流大学に合格したら成功報酬として100万円払うなどと言って、美雪にプレッシャーをかけます。
ところが当の清彦は美雪を性の対象としか見ておらず、机の下に盗撮カメラを仕掛けるなどの変態行為がエスカレートし、ついに美雪を睡眠薬で眠らせ、全裸にして撮影&女体研究するに至ります。
ところが、いつもより早く帰宅した姉の智子に見つかっちゃう。そして全裸のまま美雪も目覚めてしまい、清彦、絶体絶命!……かと思いきや、取り乱す美雪を智子が殴って気絶させ、物置に監禁しちゃうのでした。
「暴れたりしないでね。もう人は殺したくないから」
そう言って智子は、物置で美雪を「飼育」しながら清彦の家庭教師を続けさせます。
早くに両親を亡くした智子と清彦は叔父の家に引き取られ、智子が夜な夜な酷い性的虐待を受け、見かねた清彦が叔父を殴り、智子がトドメを刺して死体を庭に埋めた。それ以来、智子は清彦の為にだけ生きていくことを決意し、密かに体を売って家計を支えて来たのでした。
清彦に対する智子の愛情には、姉弟の絆を超えたものがある。そして、清彦もまた……
智子の留守中に、清彦は物置から逃がしてあげることを条件に美雪とセックスするんだけど、その最中に呟くんですよね。
「お姉ちゃん……」
清彦の歪んだ性欲は、実の姉弟であるがゆえに成就できない、智子への愛に因るものだった。この姉弟は、女と男として愛し合ってる……
「気持ち悪いよ」
そう言い残して、美雪はその家から去って行く。警察に駆け込むか否か、葛藤する美雪の姿で映画は幕を下ろします。
盗撮、暴行、監禁はもちろん罪だけど、一度だけのセックスは合意の上だったし、あの姉弟はそっとしといてやって欲しいですね。いつかは破綻するのだとしても。
これは見応えがありました。AV界のトップアイドル、湊莉久さんのヌード&濡れ場が素晴らしいのは勿論のこと、智子役=和田みささんの熱演、そして実に映画的な演出、姉弟の正体が徐々に明かされていく構成も見事。
低予算のビデオ撮りエロ映画でも、稀にこういう良作があるからバカには出来ません。監督・脚本・編集の城定秀夫さんはエロ映画一筋の方だけど、以前このブログで絶賛した『エロいい話』シリーズもこの方の作品で、かなり信頼のおけるクリエイターとお見受け致しました。今後も要チェックです。
2016年にリリースされた、城定秀夫 監督・脚本によるVシネマ。共同脚本に長濱亮祐、製作はクロックワークス&レオーネ。
26歳の主婦・菜緒(天使もえ)は、夫(守屋文雄)と年老いた義父(飯島大介)との三人暮らし。淡々とした日々の中、菜緒は夜中に台所で酒を飲みながらオナニーすること、そして元カレとたまに会ってチョメチョメすることを密かな楽しみにしてるんだけど、そんな彼女の秘密を義父は知っているのでした。
認知症のフリをしてトボケながら、いつも菜緒のことを見てる義父にも、実は癌で余命宣告を受けているという秘密がある。
「なにか生き甲斐を持った方がいい」と医者に言われた義父は、菜緒に対する性的欲求を露にしていくんだけど、何も知らない彼女は戸惑うばかり。
で、義父の日記を読んで認知症が芝居だったことに気づいた菜緒は、足踏み健康法だとか言って裸足で乳首を踏ませようとする義父にw、いよいよ怒りを爆発させます。
「なによ、あの日記! 回りくどいのよ! そりゃ確かに不倫してたのは悪いですよ。でも、あなたのバカ息子が最初に不倫したのが悪いんじゃない! 仕返しに1回やってみたらハマっちゃっただけじゃない! 仕方ないじゃない、私、本当は淫乱で破廉恥な女なんだから!」
泣きながら本音をぶちまけた菜緒は「一度だけ」という条件で義父にカラダを許そうとしますが、彼のチンコはもうとっくに役立たなくなってたのでした。
で、翌朝、菜緒と二人で散歩に出かけた義父は、これまで誰にも言わなかった癌のことを告白します。
「どうして黙ってたんですか?」
「言ったら、入院させるでしょ? あなたに会えなくなるのが……」
義父は、息子の不倫相手に手切れ金を渡して別れさせたことも打ち明けます。
「あいつが離婚したら、あなたに会えなくなるから」
「……入院して下さい。私が毎日会いに行きますから」
「……まだ、やりたいことがあるんです。ゆうべの続き、させて下さい」
「出来ないくせに」
「私じゃなくていいんです。あいつを私だと思って下さい。一度だけでいいんです」
その夜、菜緒は気持ちを込めて夫とセックスし、義父は陰でそれを見ながら(お守りにしてた)梅干しの種を呑み込み、窒息死しそうになるのでしたw
それがきっかけで義父は入院し、余命が少し延びることになります。でも、それは本当にほんの少しで……
城定作品らしい、笑えて、ちょっと切ない「エロいい話」。これは名作だと思います。
ユーモアとペーソスに富んだ脚本、安定感ある演出とカメラワーク、そして素晴らしい演技。ベテランの飯島大介さんは勿論だけど、セクシー女優である天使もえさんの自然な演技にも驚かされました。
お陰ですんなり感情移入出来ますから、Hシーンではちゃんとカラダの一部がホット&ホットになります。特に足フェチの方に超オススメのシーンも。(もえさんの足先があまり綺麗じゃないのも高ポイントかも?)
私はもう、すっかり城定監督ファンになりました。もちろん全てが傑作とはいかないでしょうけど、ハズレはほとんどありません。安心のブランドです。
そして天使もえ(あまつか もえ)さん。2014年デビューの現役セクシー女優さんで、アイドルグループ「SEXY-J」所属の歌手でもあります。
AVは『美乳がチラリぽろり』という企画物しか観たこと無いんだけど、本作における素晴らしい演技を観て他の作品も観たくなりました。ピンク映画にも主演作が何本かあるらしく、今後注目していきたい女優さんです。