『あなたに安全な人』 木村紅美 河出書房新社
3.11直前に教え子をいじめ自殺に追いやってしまったかもしれない元教師の妙と、沖縄新基地建設反対デモの警備中にデモ参加者を不慮の事故で死なせてしまったかもしれない便利屋の忍。過去の出来事に苛まれるふたりは、「感染者第一号」を誰もが恐れる地で出会い、奇妙な同居生活を始める。
終始、不穏で閉塞感に満ちている。しかも、コロナの出始めの頃なので、皆が感染を恐れて過敏になっている。番号違いから垂れ流されるファックスの抗議文。落書き。姪っ子からの脅迫ライン。他人の気配。どうなるんだろうとサクサクと読み進める。
妙は、忍に見張りの依頼をし、報酬として家を出た忍を住まわせる。男と女が同居しているのに、恋愛感情はない、メモのやり取りで会話もない。妙は、見張りをしてもらい安全を確保する。家族の冷たい視線もなく、食事や寝る場所、風呂など命の安全が確保された場所を忍は得る。安全なのだけどなあ。
そして、ラスト。やっぱり、もやもやする。本当のことは、何もわからず、ぼんやりしたまま。核心のまわりをグルグルと回っている感じ。
『大人になるまでに読みたい 15歳の短歌・俳句・川柳 ③なやみと力』 巻頭文=長嶋有 編=なかはられいこ ゆまに書房
若い人に読んでもらいたい短歌・俳句・川柳をテーマごとに編集
おばちゃんが読んでもおもしろかった。特に川柳。
わたしって何だろ 水が洩れている 加藤久子
虫に刺されたところを人は見せたがる 金築雨学
前髪を上げると削除キーがある むさし
オルガンとすすきになって殴りあう 石部明
歩いたことのないリカちゃんのふくらはぎ 八上桐子
五十歳でした つづいて天気予報 杉野草兵
泣いた泣いた沢山泣いた たくあんかじる 時実新子
雨の日のダイヤル通じそうで切る 時実新子
3.11直前に教え子をいじめ自殺に追いやってしまったかもしれない元教師の妙と、沖縄新基地建設反対デモの警備中にデモ参加者を不慮の事故で死なせてしまったかもしれない便利屋の忍。過去の出来事に苛まれるふたりは、「感染者第一号」を誰もが恐れる地で出会い、奇妙な同居生活を始める。
終始、不穏で閉塞感に満ちている。しかも、コロナの出始めの頃なので、皆が感染を恐れて過敏になっている。番号違いから垂れ流されるファックスの抗議文。落書き。姪っ子からの脅迫ライン。他人の気配。どうなるんだろうとサクサクと読み進める。
妙は、忍に見張りの依頼をし、報酬として家を出た忍を住まわせる。男と女が同居しているのに、恋愛感情はない、メモのやり取りで会話もない。妙は、見張りをしてもらい安全を確保する。家族の冷たい視線もなく、食事や寝る場所、風呂など命の安全が確保された場所を忍は得る。安全なのだけどなあ。
そして、ラスト。やっぱり、もやもやする。本当のことは、何もわからず、ぼんやりしたまま。核心のまわりをグルグルと回っている感じ。
『大人になるまでに読みたい 15歳の短歌・俳句・川柳 ③なやみと力』 巻頭文=長嶋有 編=なかはられいこ ゆまに書房
若い人に読んでもらいたい短歌・俳句・川柳をテーマごとに編集
おばちゃんが読んでもおもしろかった。特に川柳。
わたしって何だろ 水が洩れている 加藤久子
虫に刺されたところを人は見せたがる 金築雨学
前髪を上げると削除キーがある むさし
オルガンとすすきになって殴りあう 石部明
歩いたことのないリカちゃんのふくらはぎ 八上桐子
五十歳でした つづいて天気予報 杉野草兵
泣いた泣いた沢山泣いた たくあんかじる 時実新子
雨の日のダイヤル通じそうで切る 時実新子