ささやかな幸せ

SUPER EIGHT、本、美術鑑賞、俳句、お茶が好き!
毎日小さな幸せを見つけて暮らしたい。

NHK「日曜美術館 落慶 唐招提寺御影堂 〜鑑真和上と障壁画〜」

2022-06-20 16:03:19 | 美術鑑賞
 東山魁夷の唐招提寺の障壁画は、何回も見ている。が、たまたま見たら、新たな感動に包まれた。

NHK「日曜美術館 落慶 唐招提寺御影堂 〜鑑真和上と障壁画〜」
 宸殿の間の「濤声」。一面の海である。そこの襖を開けたら、そこには「山雲」。ガラリと変わる、鮮やかな展開に震えた。波の音から一転、無音。かすかな滝の音、さえずり。もやの清澄な空気が流れ込む。ただ、並べてある美術展と比べ、襖の開け閉めでわかる劇的な転回。絵から音や風を感じる事ができるのは、もちろんスゴイが、襖の開け閉めの効果に心を射抜かれた。
 日本の景色の北側の梅の間、鑑真和上像のある松の間、桜の間。始めは、梅の間、松の間、桜の間という名にちなんだ障壁画にしようとしていたらしい。しかし、日中国交正常化で中国に行くことができ、中国の風景を水墨画で描くことになった。鑑真和上の目に焼き付いている中国の風景を水墨画で、失明して見ることがかなわなかった日本の風景をカラーで描いた対比。東山魁夷の鑑真和上への気持ちが伝わる。

 そして、「濤声」の襖をあけると鑑真和上像が現れる。あまりの尊い御姿にテレビの前で手を合わせてしまった。鑑真和上像は、興福寺の阿修羅像と同じ脱活乾漆で作られている。粘土で原型をつくり、その表面に麻布を貼り固めたのちに、像内の粘土を除去して中空にするとともに、麻布の表面に木屎を盛り付けて塑形する。普通は、木屎をへらで均一に表面を仕上げるので、阿修羅像のように表面はなめらかになる。しかし、鑑真和上像の衣裳の表面は不均一。これは、へらではなく、手で仕上げたのではないかと。弟子たちが、鑑真に触れるように指先で作ったという推測だった。留学僧の要請にこたえて、失明の末、6回目に日本の土地を踏んだ鑑真和上。弟子たちの慕う気持ちが伝わってくる。
 日本には、肖像彫刻がなく、鑑真和上像は、中国のマネをした日本の肖像彫刻の始めとか。

 鑑真和上像のある御影堂は、昭和39年に興福寺一乗院の建物を移築したものというのにも驚いた。現在の奈良地方裁判所にあった一乗院の建物を鑑真没後1200年記念事業としてもらい受けたらしい。江戸時代初期の貴族の高貴な僧の住まいだったとか。
 御影堂の床下には、瓦を焼いていた窯跡が。唐招提寺は、鑑真の私寺であり、バックに貴族や皇族がいないので、修理なども自分たちでなんとかしないといけなかったらしい。後ろ盾がないのにここまで生き延びてきたのは、鑑真和上を慕う人々の寄進で成り立っていたとか!

 いやあ、よかった。鑑真和上像の開扉は、6/5~6/7。ぜひ、行って見たい!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする