わが大地のうた♪

NPOグリーンウッド代表理事:辻英之(だいち)が今、南信州泰阜村から発信する炎のメッセージと…日々雑感!

【村長レポート4月19日 No.241】 ~役場職員に言っていること~

2016年04月30日 | 泰阜村長からのメッセージ
わが泰阜村の村長が、就任以来毎月毎月、村民に向けて発信する「村長レポート」。

2016年4月19日号を紹介したい。


村長レポート 4月19日 NO.241
役場職員に言っていること


 今年は、桜の花が大変きれいで、役場周辺の桜も見事なものでした。私は仕事柄、きれいな桜の花をみても心安らぐことも少ないのですが、村の皆さんは、花見で楽しんでいただけたでしょうか。役所は、4月からは新たな体制でスタートしました。希望の春とはいえ、桜同様、そうそう夢膨らむようなことばかりではありません。それでも、私自身が希望をもって、明るい気持ちにならないと役所全体に影響するのでは、と思いながらも4月も半ばとなりました。

 新年度のスタートなので、職員に一年間の心構えのようなことを話します。どんことを、どんな思いでしゃべっているのか、です。よく「役場が悪い」という言い方をされますが、この場合の役場は、社協(社会福祉協議会)でも、保育園でも同じです。しかし、「役場」といった総称には、人格がありませんから、要するに、対応した「職員」が悪い、ということになります。一年間の中では、その対応の悪さから、謝りに行くこともけっこうな数があります。本来なら、村長である私が行けばいいのでしょうが、ほとんどのケースは、担当者に上司がついていきます。それで何とか納めてもらうことになりますが、一番長い行政経験の私がその事案を聞きますと、そんなこともわからないのか、そんなこともできないのか、ということもたまにあります。確かに、事務そのものも仕事の仕方も変わりました。コンピュータ処理が基本となり、法律や制度を理解しなくても数字を入れれば答えがでる時代です。その面で、仕事への理解も浅くなっています。また、制度全体を考える、仕事全体を鳥瞰(ちょうかん)しながら考える、といったことができない職員もいます。これは、いまの教育にも問題があるのでは、と想っています。

 こういった事案は、ほとんどの場合、初期対応のまずさに起因します。つまり、コミュニケーションの基本的な問題です。住民の方が何を求めているのか、正しく理解しなければなりません。そして、わからなければわからないと言って、きちんと調べてあとから返事をする。分かれば迅速に対応する。生半可の知識で、分かったとうな対応をすると問題が起こります。これらのケースは、注意や訓練、経験で何とかしなければ、とうことで繰り返し話します。ただ、2回も3回も同じことを繰り返すのは、基本的な資質の問題で、それなりの対処をしなければ、です。

 そして、いま自治体職員に求められているのは、真の意味で「現場主義」、すなわち行政の最前線で働く者として、仕事を通じて村民の皆さんにどんな幸せを提供していくのか、それは法律や制度を超えた視点が必要でその意味で挑戦です。その視点を持った行政職員にならなければ、ということです。








 今年は、職員に「県庁そろそろクビですか?」はみだし公務員の挑戦(円城寺雄介著)という本の感想を含め、現場主義、そしてはみ出し公務員を目指そう、といった話をしました。この著者は、大学卒業後、佐賀県庁職員となったごく普通の公務員です。佐賀県庁医務課時代に、救急車に乗り込み、緊急医療が抱える課題を見て、救急車にiPad(アイパッド=パソコンの小型版)を配備することで患者のたらいまわしを防ぎ、搬送時間を短縮。これが佐賀モデルとして全国に普及したことで一躍有名になった公務員です。これは、文章にすればこれだけのことですが、すぐにできたわけではありません。そもそも救急車へ同乗すること自体が無理で、消防署からは「君は!ばかじゃかなね!」と言われたそうです。しかし、あきらめず、救急現場を自分の眼でみて、課題を見つけその課題解決を考えた、ということです。現場主義ということはよく言われ、私も職員にすぐ現場へ、といいますが、これは単にそこへ行くというだけです。現場で、つまり村の中で何が起こり、何が「課題」なのか、これを感じ、その解決方向を考える感性があるかどうか、ということです。この円城寺氏は、最初に土木事務所に配属され、その時担当したバイパスを何年か後に訪れたとき、一人の老女が安全になったと喜んでいた声を聞き、道がちょっと広がったなんて多くの県民はしらないがこんなに喜んでくれる人がいる。お役所仕事だって、すばらしいではないか、と思ったそうで、この時から現場感覚が育ったそうです。

 4月13日に一般社団法人振興センター泰阜の総会が開催され出席させていただきました。この法人は、農協がガソリンスタンドをやめると言ったときに、農協OBが立ちあがってガソリンスタンドの経営を引き継いでいます。この経過を振り返ってみると、まさに、現場主義だったのです。国や県が言うからではなく、法律があるからではなく、移動手段が車しかない村に暮らす生活者のために必要だ、と思った人達が動いた結果です。

 福祉の現場もそうです。大変な仕事だと思いますが、福祉に対し、権限や財源を持っているのは、実は、現場で汗を流して働く人ではなく、ネクタイを締めた役所の人間です。だからうまくいきません。ほんとうに支援を必要としている人にザービスを提供している介護員の人の発想が反映される福祉施策でなければなりません。もしかしたら、それが役所の発想からはずれるかもしれません。そでも、私利私欲でなく、住民、利用者のためにやる人をはみ出し公務員というのです。そして、上司の仕事は、その責任をとることです。きっと職員もわかったはずです。



今後も、折に触れて村長の言葉を紹介したい。

代表 辻だいち






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